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高齢者の運転で高校生が

作者: マボロショ

「家ついて行ってイイですか」6月15日放送分の、第10話を活字化してみました。

テレビ東京系列で、2022年6月15日18時25分から放送された、「家ついて行ってイイですか」逆境を乗り越えた人特集で、12話ありました。

それぞれにユニークな人物だとは、思いましたが、中から、私が書ける話を、一つにしぼるとすれば、第10話になります。

放送順だと、このおじさん、最初は、ルー大柴のような軽い感じで、英語を振り回す、ちょっと変なおじさんに見えます。

しかし、実は、深刻な体験を、どうにか、乗り越えようとしている人でした。


川上徳男さん47歳の家に行ってみます。

母娘3人が寝ていたという部屋があります。照明を消すと、天井が、プラネタリウムのようになります。その、ロマンチックな仕掛けを、思い付いて、手づくりしたのが、この人でした。

ところが、今、この家には、その母娘は住んでいません。娘たちが小さいうちに、親が離婚したのです。

「まあ、性格の不一致、ということになりましょうか」

そして、娘2人は、母親と共に、去って行きました。

この家に、4人で暮らしたのは、8年あるか、ないか。

それ以後も、時々、会うことはあって、その時は、何でも、好きなものを買っていいということにしてありました。

品物を選ぶのに、時間がかかります。その時間が楽しくて、はしゃぎすぎてはいかんぞと、注意したこともあるくらいです。5時間、6時間なんか、あっという間でした。娘たちを楽しませるのが、男親にも、楽しみだったのです。


上の子は、負けず嫌いで、成績も、常にトップ級。

下の子は、謙虚な性格で、奥ゆかしいところがあります。


上の子、聖菜さんが、2015年4月、有名な進学校(公立)に進学しました。さあ、これからという時でした。

12月23日午後2時35分ごろ、交通事故に遭いました。あと2日で、16歳の誕生日になるというのに。

そしたら、毎年、恒例の、世界中の人が祝福してくれる日が待っていたのに。


横断歩道を渡り終えて、浦和駅の方へ歩いていた時に、80歳の男性が運転する車が突っ込んで来ました。

助手席の奥さんが、「あぶない!」と声を出したそうですが、ブレーキのつもりで、アクセルを力一杯踏んで、

聖菜さんの体は、もう、壁に押し付けられているのに、まだアクセルを踏み続けていたそうです。

運転席の窓を叩いて、出て来いと言われるまで、10分くらいかかったのじゃないか、ということ。

絶叫は、ビルの3階、4階まで聞こえたそうです。

救急車で日赤大宮病院に運ばれましたが、すでに心肺停止。開腹して、直接心臓をマッサージしたけれども、心臓の損傷がひどすぎて、絶命しました。 

私は、「仲なか」を自営していて、その時も、営業中でしたが、客を置いたまま、駆けつけましたよ。

でも、間に合いませんでした。

たまたま、その日は、学校は、休みで、RADWIMPSのコンサートを見に行くつもりだったようです。


生き返らせることは、無理です。あとは、親として出来ること。この子を成仏させたい。それだけです。

秩父の88ヶ所参りを、すぐしました。間を置くことなく、四国88ヶ所参りも。

寒さ、痛さに、自分が死ぬかという時もありましたよ。

でも、出来ることは、これしかない。そう思って、頑張りました。


大きな、立派な、朱印帳を見せます。確かな、満行の跡が見えます。


刑事裁判と民事裁判と、裁判があるたびに、お墓と、現場には、行っています。


玄関にスーツが掛けてあったでしょう。今日も民事があったんですよ。


刑事の判決は、もう出ています。禁錮1年6月。

民事も、秋口には出る見込みです。

でもね、今日、聞いて来たんですよ。 加害者は、2月7日に亡くなったというんですよ。


ふざけんなって、言いたくなります!

どこの誰に、何と文句を言えばいいんですか。

どんな判決がでるか、お金が出るか、そんな問題じゃないでしよ?

納得なんか、行くわけない。

それでも、判決が出たら、それに従うしかない。

悔しくて、無念で、………………。


今も、事故現場から拾ってきた、車の破片と、壁の破片は、引き出しの中に取ってあります。


これが、娘に痛い思いをさせたのか!

自分の手が痛くなるほど、強く握って、これで、あの子の痛みが、すこしでも、やわらげられないか、と、

思ったりします。


抱きしめたいよ。…………抱きしめたいよ。……………抱きしめたいよ。………………


スタッフに、聖菜ちゃんが幼かったころのスナップ写真を見せます。

榛名湖の水際で、無邪気に遊んでいます。


この子が、もう、いないと思ったら、俺だって死にたいよ。

こんな可愛い写真を見ていたら、前になんか、進めねえよ。


下の子は、もう、お姉ちゃんの年は、越えています。もうすぐ、17です。

この年ごろだと、男親と手をつなぐのとか、イヤがるらしいじゃないですか。

ありがたいことに、この子は、イヤがりません。ちゃんと、つないでくれます。

今、陸上競技に、懸命に取り組んでいます。応援にも行きます。

そういう時には、こっちも、しっかりしなくっちゃ、とか、そういう気持ちになります。


あの子たちは、僕の作った料理を、おいしいと言ってくれていました。

もう一回、プロフェッショナルに戻りたいという気持ちはあります。


放送に当たって、スタッフが、近況を聞いてみました。


今は、バスの運転手をしています。高齢者に、早く免許を返上してもらいたい、との気持ちからです、と。



私は84歳です。免許更新したばかりです。身につまされる話でした。

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