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とびら、あけて2

血みどろで女性の上を浮かぶ幽霊。

よく観察してみると、その幽霊はどうやらスーツを着ている様だ。だが、スーツはボロボロになっており、そこから覗いている素肌は全て真っ赤に染まっている。その他も表現のしようがない程の重傷具合で、血も滴っている様だがそれは幽霊から離れると消えていく。

紺屋はふと、自身の背中にめり込んでいるチーフを見上げた。あたしこわーい、と鼻にかかった声でふざけた様に言うチーフには、傷が一つもついていない。服装も白のワイシャツにスラックス。汚れや破れもない。

その視線に気づいたチーフは、紺屋に目を合わせわざとらしく瞬きをして見せる。

『なんかついてる?』

「その逆。お前は無傷だから、事故とかの幽霊じゃないんだなって、あの人見て思った」

言われて初めて気づいた様に口を尖らせたチーフは、めり込んでいた身体を離し自らの身体全体に視線を巡らせた。

『おお確かに。あんなグロやったらオレもさすがに察する』

「うん。それはいいんだよ」

再び女性と幽霊に視線をやる。

離れているとはいえ、人通りのほとんどない小道で通り過ぎた人が立ち止まっていれば気になるものだろうが、女性も幽霊の男性も気にした様子はない。むしろ全く気付いていないようである。

『声、かけとくか?』

「うーん。でも、除霊とか祓うとか、できねえしなあ」

『せやな。やめとこか?』

「そうだなあ」

くるりと女性たちに背を向け、腕を組んだ紺屋は俯きながら分かりやすく悩み始めた。

「ここで下手に首突っ込んで、状況悪くする可能性もありそうだしな」

『うんうん』

「……帰るか」

言いながら顔を上げた紺屋と視線を合わせたチーフは、表情に喜色を隠さず広げると、肩に手を組むようにして進行方向を指さした。

『よっしゃあ!気が変わらんうちに帰るで!ほらほら』

「あっ寒っ、急にやるとゾクッとするからやめろや」

『あ、すんません』

そして二人は何事もなかったかのように、その路地から大通りへと歩き出した。


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