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投稿94日目!!
人助けをするためとは言っても、時間をかけすぎたと言うのはこの緊急時ではいただけない判断だったのだろうか。
「早く乗せろ!!」
「俺が先だ!!」
「子供がいるんです!!早く乗せて!!」
俺が白波を治療している間に、われ先にと安全ではなくなった学校から脱出するための避難者たちがトラックに群がっていた。
「お前ら今の状況がわかってるのか!?」
白鞘組の組員の1人が怒鳴っても、関係ないとトラックに乗り込もうとする避難者。
運転席にも乗り込もうとしている人がいるけど鍵をかけて籠城しているからそっちは問題なさそう。
「ああ、もう!!」
その様を見て、キレた白馬さんが、ショットガンの銃口を空に向けて引き金を引いた。
バンと大きな音がその場に響き渡り、注目がこっちに向く。
「都合のいい時だけ自分の都合を押しつける奴は、今この場であたしが頭に風穴を開けてやるよ!あの化け物たちの仲間入りしないだけ感謝しな!!いやなら、私らの指示に従えボケ共!!」
そして銃口をトラックに群がる避難者たちに向ける白馬さんの迫力に負けて、押し黙り隣の顔色をうかがう避難者。
「医者とその家族!が最優先に乗りな!!ほらさっさとしな!!時間がないよ」
だけどゴーレムたちが時間稼ぎをしてくれていると言っても限度がある。
遠目から見て、いくつか装甲が欠損しているゴーレムもいるし、軽自動車を使用したゴーレムは片腕が無くなっている。
日本の車は事故を起こした時のことを考えて軽くそして柔らかく作られているって聞いたことがあるけど、そんな部分まで反映しなくていいんじゃないか?
新しいゴーレムを生み出すか?と考えている間にトラックの脇が開き、中に乗り込めるようになった。
そこになだれ込もうとした避難者もいたが。
もう1発銃声が響き。
「医者とその家族、前に出な」
ドスの効いた白馬さんの言葉に従う避難者。
そして恐る恐る、出てきた家族が次々にトラックに乗り込む。
このトラックは2階建て構造になっていて、少し手狭になっているけど、それでも各階、詰めれば80人は乗れる構造になっている。
「次は小さな子供とその母親だよ」
「ちょっとまて!それだと俺たちが乗れる席がないじゃないか!!」
医者の家族は大体にして40人程度。
この段階で4分の1の座席が埋まってしまっている。
そしてその次に白馬さんが指示を出したのは女性と子供の親子の組み合わせ。
しかし、避難してきた面子を見ると、結構小さな子供数が多い。
白波が優先して救助していたこともあるだろう。
半分以上の席が埋まり、残ったのは座席は1割程度。どうあがいても残りの避難者たちが乗り込めるスペースはない。
「残りの席に歩けない怪我人を乗せな。一応聞いておくけど、こいつら噛まれてないだろうね?」
文句を言ってくる男の声など最初から無視している白馬さんは、組員に指示しながら白波に噛まれているかどうかの確認している。
さっきの白波の姿を見ていたからこそ、密室にあいつらを入れる危険性を考慮している。
「ええ、大丈夫です」
そのことを承知している白波は頷き、大丈夫だと太鼓判を押した。
そして組員の手によって怪我人が運ばれ。
そしてトラックの扉が閉まる。
残ったのは男と、若い女性。
「さてと、残りは見張り台に乗せていくが……おーい、カンナそっちにはどれくらい乗せられる?」
「見張りとか、考えると精々が30人ってところじゃない?」
「だってよ、悪いが乗せられるのは残り30人だよ」
白馬さんが優先したのは利益と、弱った人たち。
そして残されたのは健常な人たちってことになる。
「ふざけるな!!お前たちが下りればいいだろうが!」
「そうよ!自分たちばかり勝手に選んで、私たちを見殺しにするって言うの!?」
「はぁ、嫌ならそう言いな。私たちも別に乗せなくてもいいんだよ。目的は達した。あとはあの壁を退かして脱出するだけだからね」
文句をいう奴らと話し合うつもりはないとばっさりと切り捨てる。
そこに言い寄ろうとする人もいたけど。
「喧嘩を売る相手を間違えるんじゃないよ」
銃を持っている白馬さん相手では強気には出れない。
「生き残りたいって言うなら、助けられることを当然と思うな」
その強気な眼差しで射止められたように動けなくなる非難を続けていた避難者たち。
「坊や、時間だ。脱出するよ」
そして問答は終わりだ。
そう言い切るように避難者たちにはもう興味はないと言うように視線を切る。
これ以上ここにいる理由はない。
それを如実に言い表す仕草を見せる白馬さん。
「ふざけるな!!」
その態度にキレた避難者の1人が白馬さんに殴りかかる。
だけど。
「馬鹿か」
あっさり避けて、そして足を引っかけてその男は地面に転がる。
「そんな余分な力を使う余裕があるなら、ここで引きこもる方法を考えるなり、脱出する方法を考えろよ。こっちはもう定員オーバー一歩手前なんだよ。で?そんなあたしらにそれ以上何を求めるんだい?」
その姿を呆れたように見下し、そしてさらにざわめきを増す空間に、さらに余計なやつが紛れ込む。
「それが人の言うことですか!!」
玄関口から出てきた少年。
皇。
「さっきから聞いていれば、人を銃で脅して好き勝手にやって、楽しいんですか!!」
「楽しくはないね。特にあんたみたいな正義面する面倒なガキの相手はね」
遅れてやってくるのが主役だと言いたいばかりに、あとから来て好き勝手いう皇。
そんな彼に向けって堂々と言い放つ白馬さん。
「正論言いたければ、こいつらに言いな。私は聞く気はないし、あんたの意見も聞いてない。あたしらはもう立ち去るだけだよ。後はあんたたちで好きにしな。もっとも」
皇への対応はおざなりだ。
相手にする気がないと言うのが目に見えてわかり。
なおかつ。
「この惨状を引き起こして、あんたが言ってた救助を待つことが本当にできるかどうかはわからないけどね」
この学校の防備などあっさりと崩れ落ちることが証明されてしまったことを指摘することを忘れないあたり白馬さんの性格は悪いのだろう。
まぁ、見るからに優等生のような皇とレディースに属していた白馬さんとそりが合うわけがないよな。
「だったら!なおの事だ!君たちがここを去るって言うのはここにいる人たちを見捨てるってことなんだぞ!!何も思わないのか!!」
「思わないね」
「な!?」
正論、常識、良心。
どの言葉を使ってもいいが、皇の言葉はそのいずれかに訴えかけるような言葉だった。
だけど白馬さんには届かないし、俺もさっきのやり取りをしているのでどの口で言うのだと呆れて物も言えない。
「助けてと言われて助ける仕事は警察官の仕事だよ。私たちはヤクザ。仁義は重んじるけどさんざん私たちのことを馬鹿にしてきたあんたたちを助ける義理はないよ」
この世の全ては正論で回っているわけではない。
それを理解させるように、言い放った白馬さんは。
「それとも、あんたがこのトラックに乗せる残り30人を選ぶかい?あんたの言う正しい行動ってやつで」
さらに追い詰めるように言い放つ。
暴徒の侵入を許した段階でもうすでに脱出するなと言うことはできなくなっている。
「……それは」
だからと言って、脱出に混ぜてくれということも難しい。
要するに、皇と言う男は俺たちに妥協することを求めているのだ。
俺たちが仕方ないと諦めて、妥協案を出すことを待っている。
そんな感じがする。
正直、そんな雰囲気を醸し出す皇に助け舟を出す形になるから、この提案はしたくないけど、もしこのまま何もしなかったら、理沙さんに助けてくれと頼まれた白波たちのことも見捨てることになる。
それは正直に言って気分が悪い。
「白馬さん」
「ああん?何だい坊や、また厄介事かい?」
「あはは」
次から次へと問題を引き起こしている自覚があるから正直、苦笑いが出てくる。
そして俺がこのタイミングで話しかけるということは皇の肩を持つということに他ならない。
それも仕方ないかと諦めつつ。
せめて、こいつを助けるつもりはないとアピールするために、皇のことは一切見ずに話を進める。
「移動手段があれば問題ないんですよね?」
「まぁ、あんな奴らを踏み潰せるような車が、あればの話だけどね」
俺たちが乗ってきた除雪車とトラックはじいちゃんたちが改造してくれた特別製。
多少の悪路も、ああいった妨害も防ぐことのできる車だ。
普通の乗用車とかだと人に乗り上げるだけで横転する可能性がある。
あんなに大量にいられたら、普通の車じゃ当然進むことはできない。
「出来るかもしれません」
「坊やのかもは、嫌な予感しかしないよ」
「すみません」
だけど、逆に言えばそれを改善できればどうにでもなるということだ。
また何かやる気だなこいつと、呆れた目線で見られつつ、実際にやらかす気であるのだから正直にごめんなさいって話だ。
「で?何をやるつもりだい?」
人を助けることに対しては俺の完全な自己責任。
それを理解して助けると言うのだから、白馬さんも呆れながら肯定してくれる。
「とりあえず、ここにある車を魔改造しちゃおうかと」
「ふーん、魔改造、ね」
そして俺が何をするか察した白馬さんは良いねと、笑った後。
「30分だ。それ以上は待てないよ」
時間を与えてくれた。
「わかった。それで何とかする。白波、この学校で送迎用のバスとかないの?」
「一応、ありますわ。けど、バスで脱出なんて」
「出来るようにするのが俺の仕事ってわけ、時間がない。急いで案内して」
「わかりました」
さっきまで威勢が良かった皇を放置して、白波の案内で校舎の脇を通り、大きなバスが駐車場に停められている場所まで連れて来てくれた。
流石お金持ちの私立学校。
観光業者が使っていそうな感じのバスが3台もある。
「これを使うつもりですか?」
「うん、そのつもり」
イメージは大体固まっている。
おあつらえ向きの大型バス、これで全員運ぶことも考えたが、それだと暴徒相手には些か不安が残る。
「さてと、さっさと作ってここから脱出だ」
「あの、何をするつもりですの?」
いかに悪路を進もうとも平気な代物。
首を傾げ、俺の行動を不安そうに見つめる白波に向けて俺は笑顔でこういうのであった。
「ちょっとロマンを作る」
「意味が分かりませんわ」
「見ていればわかるって」
多分俺の今の顔はいたずら小僧が悪戯を企む時のように悪い笑みを浮かべているのだろう。
こんな非常時に、不謹慎な気持ちだけど、結構楽しみになっている。
「さてさて自由工作の時間だ」
背中から白波の視線を感じながら俺は目の前のバスに触れ。
この数分後に眩い輝きが辺り一帯を包むのであった。
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