14 EX-4
投稿68日目です!!
秘密基地から船が出港してまだ間もないころ、東京都心。
日本で1番人口の多い日本の都は今、大混乱に陥っている。
外にいた人は慌てふためき、近くの建物に逃げ込めればまだマシな方。
屋内にいて未だ息をひそめているのは賢い人。
では屋外にいた人でまだ外を逃げ回っている人はどうだ。
答えは簡単だ。
いきなり人を食べ始めた暴徒相手に逃げ惑うしかなかった。
「開けてくれ!!中に入れてくれ!!」
その逃げ惑う人な中の1人である青年はガンガンと痛みなど気にすることなく、全力でシャッターを殴り、建物の中に入れてくれるように懇願しているが、その願いを無視するかごとく、その建物の住人は返事を返さなかった。
「誰か!誰かいるんだろ!!助けてくれっ!?ひっ!来るな!?来るなよ!?」
シャッターに追い詰められた青年は最後の希望を断たれ。
そこに、そっと食欲に支配された人であったものの目が向く。
あれだけ大きな声で叫べば当然奴らの視線を集める。
1人、また1人と青年の叫び声につられて、その元人であった存在は姿を現す。
『ア、ぁ、あ、アアア、アァァ』
うめき声のような、そして嘆き声のような声でゆっくりと姿を現せた人の形をし、人の姿をした何か。
決定的に人と違うのはその色だろうか。
本当であれば人は肌色を基準とした体色をしているはずなのに、その存在は見るからに真っ青。
血の気が引くとか、血色が悪いという次元の話ではない。
人の形人の姿を成しているが、それが初見で人だと断言できる人はおそらくいない。
体のどこかしらに欠損を抱えたそれは、全身を真っ青に染め上げ、よだれを垂らし、只食欲という本能のみで、目の前に動く存在を食事として認識して、その身を襲う空腹感から解放されようと、ただただ口を開き恐怖している青年に喰らいつこうとしている。
ギョロリと青色の血で血走った眼は目の前の存在が人であることなど、認識はしていない。
鞄を振り回して近寄らせないようにしている青年の行為など関係なしに1歩また1歩と近寄り、そしてよだれのたれ流した口を大きく開ける。
「止めろ!?止めろぉおおおおおお!?ぎゃあああああああああ!?」
その後なにが起きるか想像したくない若者はただただ拒否を続けたが、それで止まるようなことはない。
1人が噛みつきそして貪り始めれば、それに続くように1人、また1人と怪物が青年に貪りつく。
人であったものは肉に成り下がり、そして悲鳴や絶望の叫び声が聞こえなくなり、ピタリとその命が止まった途端に怪物たちの食事は終了する。
新しい食をもとめて徘徊を始める怪物たちは、辺りを見回すように顔を動かす。
そんな出来事が今では東京の街のど真ん中で行われている。
青年の悲鳴と叫び声が入り混じった声が周囲に響いたけど、それで誰かが助けに来ることも通報されることもない。
なぜならその青年に噛みつき肉を貪る暴徒の内の1人は市民を助けるための警察官の制服を着こんでいるのだ。
その光景を物陰で息をひそめて、逃げ遅れた親子がいる。
母親は必至に逃げようとあたりを見回しているけど、少しでも見つかれば奴らがやってくる。
彼女の腕の中ではまだ年端もいかない女の子が恐怖を我慢して必死に泣くのを我慢していた。
親が子を守るように子を抱きしめている光景は、健気であり、それを見る誰かがいれば助かってほしいと願うことだろう。
だが、現実はその親子の周りにいるのは怪物となり果てた元人であり、助けてほしいと願う親子の気持ち、それが天に届くかどうかなんて誰もわからない。
「………」
息をひそめ、そして逃げるタイミングを計っている母親の緊張はピークに達しようとしていた。
緊張で流れる汗は、冷たく、真冬の寒空で息をひそめる母親の体をさらに冷やす。
そんな緊張の最中、ガタンといきなり物音がしてびくりと驚く親子。
その方向を見るとたまたま怪物の1人が蹴り倒してしまった看板が横に倒れている。
それは親子たちを怪物たちから姿を隠してくれていた壁の1つ。
それが横に倒れてしまったことによって、隠れていた親子が怪物たちの青い目に留まる。
「ひっ!?誰か!誰か助けて!」
「ママァ!?」
その食欲しか持たない怪物たちの目はジッとその親子を見つめた後、さっきの青年みたいに1歩また1歩と今度は親子を喰らうために近寄ってくる。
彼女たちは恐怖に身をすくめ、抱き合いただ助かることを祈るしかない。
こんなことなら家から出なければよかった。
ニュースやラジオといった媒体から避難勧告に素直に従って、避難所に行く最中だった親子だったが、道はその多くの避難者の車で進むことが困難になり乗り捨て、そして歩いてきたのが運の尽き。
あるけば30分ほどだという普段の安全基準で行動してしまった。
なんで道路の途中で車が乗り捨てられていたかという理由を考えることもせず、そのまま車の間を縫うように抜けて、進んでしまった。
最短距離を進む道はイコール人が多い地域だと言うのに。
その結果、途中に怪物とかち合い、逃げ惑い、目的地が先なのにも関わらず商店街の一角に追い込まれてしまった。
後悔が母親の中で生み出されていく。
せめて娘だけは逃がさないとと思うが、子供を隠すように抱きしめることしかできなかった。
恐怖で動けず、暴徒たちの食欲が親子を犯そうとした瞬間。
「おらぁ!!」
野太い声が辺り一帯に響く。
そして暴徒の頭に金属バットが振り抜かれ、ぐしゃっと生々しい音が響く。
「ひっ!?」
そして横に飛び、倒れる暴徒を見て再び悲鳴を上げる母親だったが。
「死ね!死ね!死ねぇええええ!!」
本当だったら過剰な打撃かもしれないが、それでも足りないと言わんばかりに殴打を続けるいきなり現れた男。
顔面の原型がぐちゃぐちゃになり、ピクリとも動かなくなってようやく攻撃するのをやめる。
男が振り回したバットには怪物の肉片らしきものがこびりついており、娘は恐怖で目を逸らし、母親は吐き気と格闘しながら、何が起こったのかを必死に理解しようとしていた。
「大丈夫か!?」
「は、はい」
ぜぇぜぇと怪物を叩きのめした男の声に、どうにか返事を返す母親。
「おおい!こっちだ生き残りがいたぞ!!」
「本当か!?おい!こっちにもあいつらがいる手を貸せ!」
「おう!」
その男の声にぞろぞろと現れるいかにも堅気ではない男たちに怯えながらも母親は子供を抱きしめながら様子を見守るしかなかった。
「死ねぇ!」
「頭かち割れ!!そうすればこいつらは動かなくなる!!」
親子を助けた男以外にも怪物たちと戦う強面の男たちの集団。
「怪我はございませんか?」
そんな集団の中で異質といっていい可憐な少女が親子の前に現れた。
「あ、あなたは?」
「自己紹介は後でお願いしますわ。あなた方が向かっている避難所は怪物の巣窟になっております。安全な場所に案内いたしますのでこちらへ」
礼儀正しく、安心させるように微笑んでから、キリっと表情を変え、母親の手を取り、そっと立たせる。
こんな荒くれ者たちの中にいるような少女ではないと思うのだが、今は気にしている場合ではないと母親は。
「ほら、いい子だから立って」
「うん」
この千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかなかった。
子供を立たせて、そしてその手を引く。
「周囲への警戒は常に密にしなさい!避難民の保護は全てうちの屋敷へ!!」
「「「「へい!!」」」」
強面の男たちを堂々と指揮し、襲い掛かってくる怪物に対して容赦なく、少女は指示を出して撃滅していく。
暴力に慣れていない一般人では決してできない暴力での返答。
その圧倒的な力は、瞬く間とまではいかないが、ドンドンと目に映る怪物たちを駆除しているように見える。
「暴徒への対応は最低でも2人で!!1人が動きを止めている間にもう1人で仕留めて!!大勢で襲い掛かられないように気を付けて!神代、ここ近辺で避難できなかった住人は」
「全て助けるのは無理ですぜお嬢、屋敷の方だって結構な人数を抱え込んでいる。隠れて黙りを決め込んでいる相手までは面倒を見切れません。これ以上は無理ですぜ」
「お父様から白鞘組の助けが来ると聞いています。最初はこの危険な土地にお姉様を呼び寄せるのは反対でしたが、私の心情だけで一般の方々を危険に晒すわけにはいけませんものね」
「そうやって、わざとらしく言ってますが白鞘組のお嬢さんを呼び寄せようって魂胆でしょう?」
「当然ですわ!!お姉様の事ですからこの窮地に当たって何もしないなんてことはあり得ませんわ!!お姉様でしたらきっと困っている方を助けるために先頭に立とうとしますわ!でしたら少しでも感動的な再開をしたいのが乙女心というもの」
容赦なく苛烈に制裁を加えている少女かと母親は思ったけど一転して、なにやら怪しい雰囲気を醸し出し始める。
大きなため息を吐いておつきの強面の男、神代と呼ばれた男は困ったと頭を掻き始めてしまった。
「これがなければお嬢は優秀なんだけどなぁ。お嬢、色々企みすぎて白鞘組とことを構えることになるような落ちは勘弁してくださいよ。こんな状況で白鞘組に見捨てられたら俺たちみたいな人間は本当に詰む」
オロオロとし始める母親の心内など関係なしに、次々に暴徒の頭を砕いていく強面の集団。
「ご心配には及びませんわ。私とてそこら辺の線引きはしっかりとしておりますわ。色々と白鞘のおじさまの状況とお姉様の家庭環境を鑑みて、これくらいなら大丈夫だと思っての行動ですわ。これで助けが来るのが早まれば、私がお姉様のお胸にダイブできてかつ助けが来るのも早まる。まさに一石二鳥、いやその後の楽しい夜のアバンチュールも含めれば一石三鳥ですわ!!」
その集団を指揮していたはずの、最初はカッコいいなと思っていた少女が怪物を呼び寄せかねない大声でオホホホホと高笑いを始めてしまう始末。
大丈夫なのかと辺り一帯を見回すが、怪物が来る様子はない。
母親はホッと安堵のため息をこぼすと。
「さて、長居は無用ですわ。このまま屋敷まで逃げますわよ。あなたたちもついてきてください」
「は、はい」
まるで母親が落ち着くのを待っていたようなタイミングで高笑いを止めた少女は動き出す。
それに合わせて色々と武器を片手に持っていた男たちの移動も始まる。
少し残念臭が漂う集団であったが、助けてもらったのも事実であり、このまま行く宛もないない親子はその集団に囲まれて移動を始める。
「お嬢、スーパーやコンビニに向かっていた奴らが戻ってきました」
「ご苦労ですわ。首尾は?」
そして続々と強面の集団が集結していき、途中現れた暴徒たちも撃退されていく。
「怪我人3人、軽傷ですが、1人噛まれました」
「そう」
そして1つの集団に少女は歩み寄っていく。
その集団は背中に鞄を背負ってその中に大量の食糧が入っているのは少女は知っていた。
「竹中、あなたでしたか」
「お嬢」
手首を血に染めたタオルで押さえながら背負っていた食料を運んでいた男に少女は近寄り。
「意識は?」
「ダメです。ドンドン何か食べたいって衝動が増しています」
「そう、他の患者と一緒ですわね」
今は正気を保っているけど、いずれダメだと言うように男は頭を振る。
そして、そっと背負っていた鞄を一緒に運んでいた男に渡す。
「………あなたのこと、忘れませんわ」
そしてその男の行動が何を指すかを察した。
唯一理解できないのは助けられた親子だけ。
他の男たちも離れ、口々に別れの言葉を言われる男は無理矢理笑みを作っている。
これから起こることが怖くないはずがない。
その男の覚悟を踏みにじらないように少女はその容姿からして不釣り合いである黒いL字型の物体を取り出す。
母親はそれが銃であることを理解するのに数秒かかり。
「最後に何か言い残すことはあります?」
「親父に世話になったとお伝えください」
恐怖を隠すための不器用な笑み。
漢らしく、そして覚悟を決めた男に向けて少女は笑みを浮かべ。
「馬鹿言いなさい。世話になったのは私たちですわよ。先に行ってなさい。後で私も行きますわ」
「婆さんになったお嬢の姿、楽しみにしています」
そっと最後の言葉を交わした少女は迷わず指に力を込めて引き金を引いた。
タァンと乾いた音がその場に響く。
「ひっ!?こ、殺したの!?」
「ええ、殺しましたわ」
何のためらいもなく、人が怪物を殺したのではなく、人が人を殺した。
どさりと眉間を銃弾で撃ち抜かれた男は仰向けになって倒れる。
それをさも当然と言わんばかりに行った少女の言い分に、さっきまで信頼の色を灯していた母親の瞳はあっさりと恐怖の色に染まる。
「ど、どうして!?」
「怪物になる前に、人として死を与えた。それだけですわ」
常識からかけ離れた光景についていけない。
それが慈悲だと断言する行為に納得ができない。
そんな混乱する母親の頭の中、少女は続ける。
「理解も納得も共感もいりませんわ。そのどれもができない人から死んでいく、この世界はそうなってしまった、ただそれだけですわ。あなたも今は混乱していていいから、死んで怪物になりたくないのならついてきなさい」
ついてきたくないならついてこなくていいと、強面の男たちを引き連れて少女は怪物たちがはびこる街を進む。
その集団に、散々迷って、母親はついていくが、その集団を見つめる朱い瞳がいたことにその場にいる面々は気づかなかった。
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