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連続投稿5日目でございます!!
「秘密基地!!」
何と心躍るワードだろうか!!
ワクワクと心が弾むのが抑えられない。
きっと今の俺の目はキラッキラに輝いているに違いないと断言できる。
いきなり出てきた黒い箱の正体は、旧日本軍が極秘裏に開発していた秘密の基地の入り口だったのだ!!
「じいちゃん!!」
秘密基地は秘密にしてこそ秘密基地。
それっぽい仕組みがあれば男だったら誰でも興奮するだろう!!
「まぁ、そう急くな。ほれ、足元気をつけろ」
その入り口の鍵を開けたじいちゃんに早く入ろうと急かすと、今までドヤ顔をしていたじいちゃんが苦笑して、ゆっくりと中に入っていった。
俺もその後に少し急ぎ足で続いて中に入っていく。
俺の後ろにも村のじいちゃんたちが続くが、先に入った俺は中が真っ暗になっているので先に進めず立ち止まっていると。
「明かりつけるぞ!」
そう言った後にガコンと何かをはめるような音が聞こえた後に、部屋の中に明かりがともった。
暗がりから一転、部屋中が明るくなり、一瞬眩しくて目を萎めたが、すぐにその全容が見えて。
「おおおおおおお!!!」
その風景に俺はたまらず声をあげてしまった。
そこに見えたのは格納庫と言えるような広い空間。
巨大ロボットでも入りそうなほど広い空間が目の前に広がっていた。
手すりに駆け寄り、その手すりに寄り掛かるようにその光景の全体を見ようを前のめりになる。
「もともと、ここは戦車を整備したり、格納するための空間だった」
「戦車?」
「ああ、旧陸軍の主導だったからな。ここ以外にも似たような格納庫はいくつかあるんじゃ」
天上につるされたクレーンは戦車のパーツを吊るすための奴なのか。
「戦車とかないの!?」
そしてその用途の格納庫があるのなら実物があるのではと思ったが。
「あるわけなかろう、ここは開発途中で戦争が終戦して使われぬまま放棄された施設じゃからな」
「なぁんだ」
そこまでの高望みはできなかったようだ。
「じいちゃん他にも見ていい!?」
だが、それでもまだまだ見たい場所は数多く残っていると俺の勘が言っているので、その程度の落胆など簡単に復活できるほどの楽しみがこの基地にはあるはず!!
「だから急くなと言うとろうが、案内するからしっかりついてこい」
「おう!」
元気よく返事した俺を引き連れてじいちゃんたちと一緒に移動を開始する。
「そう言えば、ここって勝手に入って大丈夫なの?一応、軍事施設なんでだろ?」
どこに向かっているかはわからないが、次から次へと色々なものが見れるために飽きは来ない。
だけどそんな道を歩く最中俺はふと思った疑問を口にしてみた。
じいちゃんの話だとここは昔の軍事施設、普通なら一般人であるじいちゃんたちは入れないのではないか?
「元と言ったじゃろ。ここの施設が入ってる山はみんなワシらの山じゃ。その山1つ1つすべてがワシらの所有物になっておる。この国が定めた法律にのっとってちゃんと税金を納めておるわい。そんな山の中にある建物がワシらのモノじゃないのはおかしいじゃろ。そもそも、戦後のごたごたでこの施設のことを覚えとる国の人間はとうの昔に墓の中じゃ。今じゃ現在の政府にこの施設のことを知っておる人間なぞおらんだろうな」
「ええ~いいのそれ?」
「良いも何も、お国から何も言われておらんから問題ないじゃろ」
それって拡大解釈ってやつじゃないだろうか?
確か土地と建物の所有権って別物だった気がするし、ある意味で不法占拠になるのでは?
「それに、この施設を作ったのはワシのじいさんだ。ワシはそのじいさんからの遺産を引き継いだにすぎんわ」
「何が引き継いだにすぎんじゃ、ここを勝手に遊び場に変えたのは伝三が最初じゃろうが」
「んだんだ。俺たちのじいさんたちが勝手に遊び場にするなって何度も説教したのにも関わらず、それでもあきらめずに侵入し続けた伝三が言うことではないわい」
「うるさいわい!孫に変なこと教えんな!それに結局はお前らも手伝っておるから同罪じゃろ!!」
だけどそれには何やら事情がありそうだ。
回りのじいちゃんたちもからかっている様子はあるが、咎めている雰囲気はない。
「はじめてじいさんたちに連れられて入ったあの日は大変じゃったなぁ。この施設が欲しいとはしゃぐ伝三を親父たちが頭叩いて黙らせても泣きわめいておったわ」
「懐かしいのぉ。そのあとも黙って何か考え始めた時は嫌な予感がしとったわ」
「だな。ワシもそうじゃ、そのまま大人になってきて戦争も終わっていざ復興って時になって伝三が山を買い取るなんて言い出して、千代乃と大喧嘩した日を昨日のように思い出せるわい」
「んだんだ。懐かしいのぉ。この施設が欲しいからって山買い取るなんて馬鹿げたこと言い出す奴なんて伝三以外いなかったわ」
「まぁ、それも仕方なかろう。戦後復興のためにこの施設の廃棄が決まったってじいさんたちが言ってたんだからのぉ」
じいちゃん。
なんて言うかすっごく無理したのはわかるよ。
あの温厚なばあちゃんを怒らせてまでこの施設が欲しかったんだね。
ただ少しだけ安心したのは、きちんと手順を追ってこの施設を手に入れたことだけはわかる。
「まぁ、そのあと色々と俺たちも結局手伝う羽目になったけどなぁ」
「だな、結局は山を買うのを手伝う羽目になったときは、今思うと若気の至りじゃな。今じゃとてもじゃないができんよ」
じゃないとこの場にいるじいちゃんたちがこんなに笑いながら話すわけないし。
予想通り、この場にいるじいちゃんたちはこの施設を手に入れるためにじいちゃんに協力した仲間と言うわけだ。
無茶をしたと言う割には、カラカラと元気に笑うじいちゃんたち。
うん、子供の俺でもこの施設を手に入れようって考えるのはすごい無理があると思うよ。
いや、まぁ、これを見たら確かに欲しいとは思う気持ちは理解できる。
古いけど見るからに軍事施設。
所々綺麗に手入れされている様子から見て、じいちゃんたちがちょくちょくここにきているのがわかる。
見た目からしてロマンが詰まっているのはわかる。
「んだけど、結局のところ手に入れた後どうすんだって話になったんだべ」
「んだんだ。戦後復興中の中で手に入れた時は大宴会で大喜びしたけど、こんな施設で住むのはなんか嫌だなって話になって、結局手に入れてどうすんだって話になったよな」
「頑固者のじいさんたち説得して、苦労して手にいれた割には、村の公民館と大して変わらない使い道しかできなかったよなぁ」
だけど、それはあくまで外見がカッコいいからという理由だけだ。
冷静になって考えてみれば、こんな山奥の施設の使い道に限りはあるのは間違いない。
いや、むしろ秘密基地として作られた建物を現代で活用できる機会の方が少ないのではないか?
パッと思いつくのはこの秘密基地を活用したちょっと特殊なホテルとかだろうか。
一部のマニアとかに受けそう。
食事とかも軍事食にしてミリタリー感をだせば、そういった客には受けそうだ。
………許可下りるかどうかはわからないけど。
そんなことを考えながらじいちゃんたちの話を聞いていると、じいちゃんの人生の中で一番無駄な買い物が山とこの施設のような気がしてきた。
いや、ロマンとしてこの秘密基地がカッコいいのは理解できる。
だけど、平和になった日本でこの秘密基地をどうやって維持して活用するのかって話になると、俺ではとてもじゃないが思いつかない。
基地の中を案内してもらいながらグダグダと聞こえる内容は、感動の話よりも苦労話の方が多いのはその所為だろ。
なんだか自慢げにここに連れて来ていたじいちゃんの背中がプルプルと震えているように見えるのは気の所為ではないだろう。
このままいくとじいちゃんの堪忍袋の緒が切れてしまう。
それだけは避けねば!
じいちゃんが怒るとばあちゃんくらいしか機嫌を取れないんだからな!
「じいちゃんはさ!何でこの基地が欲しかったんだ!?」
だからだろう。
咄嗟に話題を変えようと思って、少ない時間で考えた結果出てきたのがこんな質問だった。
先頭を歩くじいちゃんが、少し不機嫌そうに振り返って、さらに少し嫌そうに少し考えるそぶりを見せる。
「………なんとなくじゃ」
そして、プイッと拗ねたように小さな声で答えてくれたじいちゃんの声は絶対に本心ではないってわかるほど小さな声だった。
「別に隠すことじゃねぇだろ伝三!!」
「ゲンさん」
そんなじいちゃんの機嫌など気にしないでズンズンと進む大きく見えるけど小さな背中の持ち主である自称熊殺しのゲンさん。
「お前が俺に話してくれた夢があるからこそ、俺はお前がこの施設を手に入れることを手伝ったんだぜ!」
「そうだぞ伝三!それをお前が孫に伝えないで誰が伝えるってんだ!!」
その声に続くように叫んだのが古びた丸眼鏡をクイッと位置を直しながら叫ぶ村医者のゼンさん。
「そうだぞ、伝三。きっかけはお前かもしれんが、あの日の言葉で俺はお前を手伝おうと思ったんだ。それをユキ坊に伝えんでこの先どうする」
そして、その拗ねたじいちゃんを叱るように呆れた声で言うのはダンさん。
「ほれ、機嫌直せって伝三。お前を揶揄うことなんて昔からよくやってたことじゃろ」
気づけばじいちゃんの隣に立っていたシゲさんがポンポンとじいちゃんの背中を叩きニカっと笑う。
そんな仲間たちの顔をぐるりと見まわし、観念したじいちゃんは大きなため息とともにその本心を語ってくれた。
「日本が負けたあの日、ワシは弱音を吐かなかったじいさんの弱音を聞いたんじゃ。もっとワシが頑張れば、この施設がもっと早く完成していれば日本はまだ戦えたって。終戦後も悔やんで悔やんで、悔やみ続けて、この施設の放棄が決まったその日までじいさんは弱音を吐かず懸命に国のために努力し続けた人じゃった。そんなじいさんが、この施設を前にして吐き出すようになぁ」
それはじいちゃんにとって大事な思い出なのだろう。
優しそうに懐かしむように、そして決して忘れないモノをゆっくりと引き出してきた。
「無念じゃったんじゃろう。幾人もの友を戦地に送り出して、自分1人だけ日本に残り生き残って、そのあとに何をすればいいのかわからなくなって、命令に従ってこの基地を作り続けた矢先に終戦。そして使わずに放棄が決まった。この基地の意味は何だ。何のために戦ってきたんだと自問自答を繰り返してきたんだろう」
俺の祖先である人の気持ちを想像でしかわからないが、外れてはいないだろうとじいちゃんの言葉でなんとなくわかってしまった。
「当時はまだ日本も復興を始めたばかり、もしかしたらまた戦争になるかもしれない。それをじいさんは必至に訴えて施設の完成を目指したが、復興の道のりを進み始めた日本にはこの基地は完全に邪魔だった」
悲し気に話すじいちゃんの言葉に、当時を思い出したじいちゃんたちの中で鼻をすする音が聞こえた。
「機密保持のために、完全解体の案もあったが、いざというための避難施設と言う価値はあったからその案だけはじいさんが喰いとめた。だが、その後に残ったの基地の維持費という問題だけどうにもならんかった。建物と言うのはな、ただそこにあるだけでとてつもない金がかかる。軍事施設ならなおの事じゃ。当時の日本にはそこにかける予算はなかった。誰もかれもがこの施設を諦め。このまま時の流れに任せて朽ちることを選んだ」
戦争を知る世代の人間にとって、この基地は当時はとてつもなく大事な施設だったんだろう。
その思いれがある分だけ、じいちゃんの思いも重くのしかかっているように聞こえる。
「当時のワシはただのガキだった。何の力もない戦場も知らない、只のガキだった。だけど、じいさんは自慢のじいさんだった。この基地を作るじいさんは間違いなくワシの中では英雄だった」
戦争を知る世代から、戦争を知らない世代へと語り継いだ。
それは俺もそうだ。
だが、教科書で知った話よりも、現実で物を見てきた人から語られた言葉の方がよりリアルであることは間違いない。
「そんなじいさんが、この施設を見ながら言った言葉は今でも忘れん。いざという時に、何かあったときにこの施設がなかったらきっと誰かが困るだろうなとこぼしたあの言葉がな」
そしてその引き継がれてきた思いは誰よりも濃いのだとじいちゃんの言葉から感じ取れる。
「だからこそ、そのいざという時のためにワシはこの施設があった方がいいと思った。だからこそこの施設を欲しいと思ったんじゃ」
それが理由だと締めくくったじいちゃんの顔を俺はまっすぐと見る。
その濃さがあったからこそ今この時まで紡がれてきたのだと、俺は思った。
さっきの拗ねていたじいちゃんとは違い、真剣な眼差しで俺を見つめ返すじいちゃんに俺の背筋が伸びる。
「だからこそうれしかった。千翔が持ってきた話が事実であるのなら、ワシらのじいさんの思いは無駄ではなかったってことじゃ、ここまでのワシらの努力が報われるとな」
そしてゆっくりと近くの壁を触るじいちゃんは、視線をずらさずまっすぐと俺に聞いてきた。
「お前の持ってきた大事にきっとここは役に立つ。よかったらここを使ってはくれんだろうか」
それはただ俺に頼んでいるのではなく、ここにいるじいちゃんたちの思いを込めて背負ってはくれないだろうかと問いかけられているような気がした。
どう答えようか普通なら悩むところだろうが、不思議と今の俺の中では答えは決まっていた。
「おう!使わせてくれ!じいちゃん!」
ただ直感に従って、この答えで良いと思った。俺は笑顔と共にじいちゃんたちの思い出を受け取るのであった。
いかがだったでしょうか?
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