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投稿4日目です!!
救世主の証は俺が人類を救えるかもしれない可能性だとパンドラは言っていた。
ということはパンドラに抗うために必要な力ということになる。
ただし強くなるには生き物を殺さないといけないという過程を踏まないといけないという残酷な内容を含むのは少し残念に思いつつ、ゲームとかだとありふれた話でもある。
「ん~人と限定していないだけまだマシか?」
腕を組み悩みながら、その過程の必要性を考えてみる。
納得も理解もできなくはないが、忌避感がないわけではない。
救世主の証で強くなるにはフィジカルポイント、略してFPで肉体的強さを強化することと、ジョブの獲得のための経験値EXP、そしてジョブのスキルを上げるためスキルポイント略してSPが必要なってくるらしい。
しかし、その忌避感もそこまで強くもない。
いずれものポイントを獲得するためには、俺が自分の手で生き物を殺さないといけないらしい。
強い生き物ほど大きい経験値がもらえると知識では教えてくれるが、そう簡単に生き物を殺す機会を得られるかと聞かれれば。
「う~ん、意外とあるんだよなぁ」
こちとら農業高校出身。
授業の過程で畜産課の奴らは鶏を絞めていたりして息の根を止めていたりする実習がある。
俺自身は農業科だからそこら辺の実習は少ないが、じいちゃんたちの手伝いでそういったことは経験があったりする。
「それで経験値が手に入るかなぁ?」
要は考えようだ。
生きるためにはモノを食わなければならない。
その過程で命をいただくのは生きていく上で必須。
ある意味でありとあらゆる生物の上で俺の人生は成り立っていると言っても過言ではない。
「う~ん、試してみないと何とも言えないなぁ」
この救世主の証を手に入れてまだ1日も経っていない。
調べることは山ほどあるなと思いつつ、他に何か調べることはないかと思っているとガヤガヤと外が騒がしくなってくる。
「ん?この声は」
その騒がしさには聞き覚えのある声が何にも混じっていて、一旦救世主の証を放置し窓際に寄り外を見てみると。
「やっぱりじいちゃんたちだ」
そこには村にいるじいちゃんたちが全員集合した光景が公民館のまえに広がっていた。
「おう伝三!来てやったぞ!!」
その中から大声でじいちゃんを呼ぶ声が聞こえ。
「おう!今おりっから待ってろ!」
その大声に負けないくらいの大声でじいちゃんが返事をする。
普通ならこんな朝早くから近所迷惑なのではと思われるだろうが、この村の基本が早寝早起き。
この時間帯で眠っている人の方が少ない。
「行くぞ千翔」
「行くって………どこに?」
そんな感じで活動時間が早いじいちゃんたちのノリと勢いで話が進んでしまうことなど日常茶飯事。
この村で生活している俺にはわかる、この流れに逆らってはいけないということに。
だからこうやって話についていけなくても、そのままじいちゃんについていき、そのまま公民館の外に出る。
「うわ、本当に全員いるんじゃないか?」
そして2階から見ていてなんとなくそうではないかと思ってはいたが、本当に村のじいちゃんたちが全員揃っているかもしれない。
いないのは猟銃マニアの橘さんくらいか?
あの人は確か今、アメリカに行っていたはず。
年末に入る前にアメリカにいる友人と一緒に年越しハントしてくるって言って旅立っていったのは懐かしい。
あ、あと銀二さんもいない。
あのデカイトラクターに乗ってたらさすがに目立つからすぐにわかる。
「新年早々、じいちゃんたちが全員集合って本当に何するつもりなんだ?」
これから本当に何が起こるのか、余計にわからなくなった。
切っ掛けが俺なだけに、なんだか不安がどんどんこみあげてきて、少し気持ち悪くなったような気もする。
「ようし!とりあえず全員車に乗って移動だ!」
「「「「「おお!!」」」」」
そして本当に最後まで説明しないままじいちゃんたちの大移動は始まった。
うん、せめて道中にでも説明してくれるのかなって淡い期待をしていたけど、俺はじいちゃんの運転する軽トラに乗っけられて、その後に続くじいちゃんたちの車の列。
どんどんどん山の奥に進む道を車で進む。
その道中の道に除雪された様子があるのは先に銀二さんが除雪してくれていたのだろうか?
「ねぇじいちゃん一体どこに向かってるんだ?この先って確か滝があるだけだろ」
「あ?行ってみてのお楽しみってやつだ、なあに安心しろお前の役に立つものがあるんだよこの先に」
「役に立つって、人類滅亡に?」
「おうよ!」
人類滅亡に対して役に立つ代物?
それは一体どんなものなんだ?
この道は俺の記憶が正しければ突き当りに大きな滝があるだけの広い広場に繋がっているだけだ。
普段は猟友会のたまり場とか猟で山に入る前の待ち合わせ場所として使われている広場だ。
そこで取ってきた猪とかの解体とかもやるから何度か行ったことはある。
あるのはちょっとした水洗い場と火おこしができるように竈がいくつかあって、その燃料となる薪置き場が設置されていたはず。
それが一体全体人類滅亡の役に立つって言うんだろうか?
自信満々にご機嫌な様子でじいちゃんは安全に運転してくれている様子から俺を揶揄っているという雰囲気はない。
疑っているわけではないが、それでも何でこんな山奥に?って疑問もわかなくはない。
そして道の先で何をするのかって疑問を抱かないわけでもない。
じいちゃんは楽しみにしろって言ってるけど、もやもやとする俺の気持ちをどう発散すればいいのかわからない。
我慢しろって言うから一応我慢するけどさ、新年早々、初日の出を見るわけでもないのに山の中に連れてこられて不満を抱かない高校生がいるのなら是非とも見てみたい。
いや、じいちゃんたちが全員集合してこうやって大移動している原因が俺だから文句は言わないけどさ、説明くらいはしてくれって思うんだよ。
そんな不満を抱きながら黙って車に揺られていると、道の先で銀二さんが必死に広場の雪かきをしているのが見えた。
「おおい!銀二!待たせたな!」
「おせぇよ!!伝三!こちとら1人で雪かきしてるんださっさと手伝えってんだ!!」
いかつい顔の銀二さんだが、去年のクリスマスイブに女の子のお孫さんが生まれたらしく、とんでもなくデレデレとした表情を見せてくれた子煩悩なじいちゃんだ。
うちのじいちゃんに振り回されることも多くて、結構苦労人だけどなんだかんだ付き合いのいい人だと俺は勝手に思っている。
あと、銀二さんちのジャガイモはマジでうまい。
ホクホクになるまで蒸したジャガイモにバターと醤油をかけるだけでマジでうまくなる。
さっき牡丹鍋食べたばかりだけど、その味を思い出したらちょっと小腹が空いてしまったような気がする。
あとで銀二さんにジャガイモ食べたいって言おうかなぁ。
だめだよな。
いつもならぶっきらぼうでもジャガイモを箱単位でくれる銀二さんも、どこか俺に見せたくてワクワクしているご様子。
なんだろう。
じいちゃんたちが本当にワクワクしているのはあまり見ない。
人生も佳境。
あとは残りの人生を楽しむだけと言われるじいちゃんたちだが、ここまでワクワクするようなことがこの先にあるのだろうか?
「おし、千翔これ持て」
「持てって、スコップじゃん」
「おう!だからみんなで掘るぞ」
そしてじいちゃんたちが取り出したのは各々家にある除雪道具。
俺に手渡されたのは雪かき用のスコップで、じいちゃんは家から持ってきた家庭用の除雪機。
人力と機械の差を若さで補えと言うのかじいちゃん。
スノーダンプで早速雪かきを始めるじいちゃんもいるので俺も黙って従う。
「じいちゃんどっちに向かって掘ればいいの?」
「あっちじゃ」
「あっちって滝の方?水場の方?」
「滝の方じゃ」
「わかった」
てっきり水場の方に向かうと思っていたが、じいちゃんが指さした方向は滝がある方だ。
普段は危ないから近寄っちゃだめだと言われる場所。
今日はむしろ目指せとは何事か?
トラクターでできない除雪を人力でやりつつ、滝に続く人2人がすれ違える程度の道を除雪していく。
広場から滝までの道のりはそこまで遠くはない。
精々が30メートルほどだ。
ただこれは歩くだけなら近いのであって、除雪しながらだとかなり遠く感じる。
「うぉりゃ!!農作業で鍛えられた俺の筋肉舐めるなよ!!」
だからと言って、これくらいの作業でへこたれていては農作業などできるわけもない。
誰よりも先頭に立ち。
除雪機に負けない勢いで1人スコップで道を開拓し続けること1時間。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」
新年早々テンションに身を任せすぎて、疲労困憊。
なんで俺はこんなにも疲れているんだと、疑問に思いつつ、無事滝の下に到着。
俺の目の前にはゴゴゴゴゴと結構大きめの水音を立てる結構な勢いで流れる滝が見える。
この季節にこの滝に落ちたら命の危険があると言うくらいには高さもある。
「じいちゃん、何もないぞ?」
そんな危険な場所にまで雪かきを強いたうちのじいちゃんに、何もないことを伝えたがニヤニヤと笑うじいちゃんたちにいよいよ俺の堪忍袋も限界に来そうだ。
「まぁ、見てろ千翔」
そんな俺の我慢の限界を察したのか、秘密の時間はここまでとじいちゃんは首にかけていた大きなカギを一つ取り出した。
「ゼン手伝え」
「はいはい」
ゼンさんを伴い、スコップで今度は滝の壁の方めがけて進むじいちゃんはしばらく雪をどかしていると何かを見つけたようで、その場にしゃがみカチャカチャと物音がしたと思うとカコンと何かが開く音が続いた。
「動くか?」
「馬鹿野郎、毎月毎月きちんと手入れしてんだ。動かねぇ方が悪い」
そして木で邪魔になって何をしているかはわからないが、何かを動かそうとしているのはわかる。
雪かきで疲れた体に鞭を打ち、スコップをその場に差し。
じいちゃんたちの背後に回ってみるも何をしているかはじいちゃんたちの体が邪魔でよく見えない。
ダンさんたちに何をしているのかと視線で聞いてみるがもう少し待てと言う視線で返事をされもうしばらく黙って待っていると。
「よし動いた!」
「ったく、今度本格的に整備しないとだめだなこりゃ」
「まぁ、使う機会がなかったからなぁ」
どうやら準備はできたようだ。
「いったい何が………?」
今度こそ説明してもらおうとじいちゃんたちに問いかけようとしたが、それよりも先に滝の方が妙に騒がしくなった。
水の流れる音だけではなく、それに混じる機械の音。
「ええええええええ!?」
どこから聞こえてくるのか探ろうと滝の方を見て俺はつい驚きの声で叫んでしまった。
「滝が伸びてる!?」
そう、滝が横にスライドしてどんどん伸びていくのだ。
滝の裏から黒い箱が横にスライドして現れてきて、どんどん滝が落ちる位置をずらしているのだ。
「え?じいちゃんなにこれ!?」
変化する滝とじいちゃんの顔を交互に行ったり来たりで忙しい俺に向かってどうだと言わんばかりにドヤ顔をするじいちゃんだが、正直目の前の光景のショックのおかげで突っ込んでいる暇がない。
「え?え?えええええええ!?」
機械の駆動音は最後にガコンと大きな音を立ててその箱を押しだすことを止めた。
自然の景色から一転、その不自然なまでの機械らしさを前面に押し出したその存在が出現した。
「なにこれ!?」
それしか言えない。
それしか思えない。
「じいちゃん!!」
そしてその正体を知っていて隠していたじいちゃんに詰め寄る。
「これ何!?」
そして思いっきりその物体めがけて指さす。
「これがじいちゃんたちのじいちゃんたちの代から守ってきた代物だ千翔」
俺からしたらじいちゃんのじいちゃんだから、曾々じいちゃんの代から引き継いできたものってこと?
「うちの村がなぜこんな辺鄙なところにあると思う千翔」
「そりゃぁ、確か世界大戦のときに危険を避けるために疎開してその時の村が名残で残ってたってじいちゃん言ってたじゃないか」
古そうには見えるがまだまだ現役そうにも見える黒い鉄の箱。
その正体はなにか。
「そう、それは間違いではない。だけどそれだけではないんだよ千翔」
じいちゃんはもう1つさっき使っていた鍵とはまた別の鍵を取り出してその箱に近づいていく。
「ワシの爺さんは旧日本軍の将校でな。当時はお国のため様々な任務に従事しておった。その中で戦時中、国の万が一のために天皇陛下を避難させるための防護施設の建設を仰せつかった」
そしてその鍵を真っすぐその箱にあった鍵穴に差し込みクルリと回すと鍵が開く音がする。
じいちゃんが言っている言葉と今の行動が、その音でつながったような気がした。
「それってまさか」
「そう、ここは旧日本軍が残した秘密の基地じゃ」
いかがだったでしょうか?
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