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投稿37日目です!!
そして5万PVありがとうございます!!
テツさんとの話は、分かりそうでわからないと何とも微妙な話で、それ以降テツさんたちは俺の気持ちに関しては触れようとしなかった。
「お!これ旨いな」
「あ!テツさんそれ俺が狙ってた羊羹っすよ!!」
「うるせぇ、兄貴分が食べたいんだから譲るのが弟分ってもんだろう」
決してばあちゃんたちが用意した茶菓子につられて、食べるのに夢中だからではない。
さっきまでの真剣な顔はどこに行ったのか、今は必死に子供のようにお菓子を頬張るテツさんたち。
ばあちゃんたちから見れば元気な子供がやってきたみたいな感じで、こんなのもあるよと次から次へとお菓子を与えてはうまい!と叫ぶテツさんたちを見てニコニコと笑っている。
「ほれ、ユキもお食べ」
「うん」
理沙さんが連れていかれてもう1時間は経つんじゃないだろうか。
女性の身支度には時間がかかるとは聞いてたけど、ここまでとは。
近所のばあちゃんから芋羊羹をもらって、それを食べて時間が流れるのを待つ。
「かぁ、食った食った」
「兄貴、俺、ここの家の子になりたいっす」
「俺も」
ばあちゃんと世間話をしながらお茶をすすっていたら気づけばさらに1時間が経っていて、テツさんの弟分がばあちゃんたちに餌付けされていた。
手作りのおはぎとか、手作りの煮物とか。
人によっては古臭いと言われるかもしれない食べ物だが、腹がはちきれんばかりに頬張ってうまいと言いながら食べていた姿は見ていてすがすがしかった。
俺も結構食べる方だけど、やっぱり体を使うような人たちは食べる量がすごいなと、そっと村のばあちゃんたちが用意してくれた食事が盛られていた皿を見て見ぬふりをする。
俺もテツさんのことは言えないなと思っていると廊下の方から足音が聞こえる。
「おや、ずいぶんと食べたようだね」
来たのはばあちゃんだった。
てっきり、理沙さんかと思った分だけ残念な気持ちが出てくるが。
「はいはい、ばあちゃんで悪かったね。あんたの楽しみはこっちだよ」
そんな感情はお見通しと言わんばかりに、そっとその場を譲るようにばあちゃんは脇に移動した。
そして、ゆっくりと出てきた人影に。
「おお」
っと、凄いという言葉を言えないくらいに感動した。
「どう、だろうか?」
「良い仕事させてもらったよ。お嬢さんが別嬪さんだからどれ着せても似合うもんだから随分と迷ってしまったよって、聞いてないねこの孫は」
薄い青色を基調とした花火柄の浴衣を着て登場した理沙さんに俺は正直、見惚れていた。
髪も結い上げ、簪で髪をまとめていてより一層、女性としての魅力を引き上げた理沙さん。
だからだろうか。
「綺麗だ」
「そうか、君にそう言ってもらえるのはうれしいな」
照れることもなく、何も考えることもなく。
ただただ正直な気持ちが俺の口からこぼれた。
ハッとなり、辺りを見渡せば、ちょっと頬を赤める理沙さんと、それを微笑ましいように見る里香さん。
さらにそれを囲むようにごちそうさまと俺と理沙さんのやり取りを楽しむばあちゃんたちと、ニヤニヤと笑うテツさんたち。
「………」
「………」
思わず照れてしまって、顔をずらしてしまって互いに無言になってしまうが、このまま何もしないまま時間が過ぎてしまいそうだ。
少し、時間的には早いけど、もう祭りに向かった方がいいような気がした。
「それじゃ、行こうか」
「ああ、ではテツさん頼んでもいいか?」
「へい、お嬢、おい車回せ」
「うっす!あ、おばあちゃんごちそうさまでした!!」
本当だったらバスで行こうかなって思ってたけど、棚から牡丹餅的なノリでテツさんが車で送ってくれるみたいだからちょうどいいからそのまま送られてみよう。
今日この日のために貯めていたバイト代が入った財布を片手に、ばあちゃんたちに餌付けされたヤクザさんが公民館の前に車を回してくれたのでそのままそれに乗り込む。
車にナビがついていたから、調べていた駐車場の場所を指定してそのまま車が走り出す。
まだ、外は明るいけど、もう1、2時間くらい時間がたてば暗くなる山道を進む中。
俺と理沙さんは後部座席で隣り合って座っている。
テツさんは助手席で、1人が運転。
残ったもう1人は追走する形でもう1台運転している。
自然な流れで隣り合わせになってしまった。
チラチラと横を見てしまうのは仕方ない。
「そう言えば、理沙さんは祭りでやってみたいことある?」
綺麗になって、ドキドキして緊張する俺の気持ちを抑えてどうにか話の話題をひねり出す。
俺からしたら何度も行ったことのある慣れた祭り会場。
どこにどんな屋台が出るかも大体把握している。
世間の波に揉まれて段々と規模が縮小しているけど、それでも地元に農業が多いから食べ物系のラインナップはすごい。
くじ引きとかの遊び関係はちょっと少ないけど、それに反比例するように充実した食べ物。
腹6分目くらいで抑え込んであるから、まだまだ食べられる。
「そうだな………金魚すくいとかやってみたいな」
「金魚すくいか」
定番中の定番と言えるその屋台があったかどうか思い出す。
「たしか、1か所だけあったと思うからそこに行ってみようか。あとは、夕食代わりになるけど、食べたいものとか」
「そこは君のオススメで頼もうかな」
「え?」
「祭りの屋台自体は、うちの組でも出しているから大体のものは食べたことはあるけど、ここの祭りは初めてだからな。君のオススメがあったら是非とも食べたい」
「………わかった」
そして無茶振りと言うわけじゃないけど、責任重大なことを仰せつかった俺は、頑張ると気合を込める。
「そんなに気負わなくてもいいのだが」
「農業高校に通う俺に、美味しい物をリクエストしてきた理沙さんの期待に応えないわけにはいかないからな!任せて!」
ちょっと気合が空回りしているかもしれないけど、美味しいものと言うジャンルに置いては俺の得意分野だ。
いざとなれば、長谷部という食に関してはプロフェッショナルと言ってもいい食通の友達もいる。
女性は、いろんなものを少しずつ食べたいんだよな。
それだったら、小分けにできるような食べ物を優先したほうがいいだろうし、花火が良く見えるスポットに行くためにも、屋台巡りの順番はきちんとしないと。
「それなら、楽しみだな」
フンすと気合を入れると、理沙さんも笑ってくれる。
「?」
それを見て窓の向こう側を理沙さん越しで見た時にふと気になる車が見えた。
「どうかしたか?」
理沙さんを見ているわけでもなく、ちょっとずれた視線に理沙さんが首をかしげて聞いてくる。
「いや、見慣れない車がいたなぁって」
「見慣れない車?そこまでわかるのか?」
そして、何で見分けがつくのかと聞いてくる理沙さんに俺は、東京とここでは車の台数の差があって、さらには交通量も違うことに気づく。
「ああ、ここって村に行くための道路だから大体使う人が決まってるんだ。通り抜けることもできない道路だから使う人は大体顔見知りなんだ」
だからこそ、黒い大きめのワゴン車が道路の道端で停車しているのが気になった。
「道に迷ったのかな?でも、ここまで1本道だし単純に道を間違えただけかも」
すれ違うことはできる程度の道幅はあるから、もしかしたらUターンしようと思ってたのかもしれないな。
「そうなのか」
「うん、でもこんな道に入るなんて珍しいな」
たまにどこに繋がってるのか興味が沸いて入ってくる人はいるけど、もしかしたら祭りの観光客の人たちかな。
「まぁ、気にしても仕方ないか」
だけどそんなことを考えるくらいなら、これから向かう祭りの会場のことに意識を割いた方がもっと楽しめる。
「そうだ!理沙さん」
「なんだ?」
その楽しめるって言う言葉で思い出したことあった。
「テツさんって、結構食べれる方?」
「?質問の意味がよくわからないが、家にいるときは良く食べている姿は見るが」
とある屋台でやっている、巨大お好み焼き。
所謂、限定メニューと言われるもので、30分で完食出来たらタダになると言う。
祭りの中では名物と言っていい食べ物が存在する。
俺の知り合いでクリアしたのは長谷部だけ。
俺は惜しくも時間制限オーバーでクリアできなかったが完食はできた。
それを説明する。
「そんなものが………」
直径1メートルを超えるお好み焼き。
そのボリュームを小声で、テツさんに聞こえないようにひそひそと教えると理沙さんは驚いたように声を漏らした。
「そんなものを食べている姿、見てみたくない?」
さっきの車の事なんてもう気にならなくなって、ちょっとした悪戯に理沙さんを誘う。
ふむと顎に手を当てて、数秒ほど考えた理沙さんの結論は。
「見たいな」
ついさっきまで凛々しい表情をしていた理沙さんの顔に悪戯心と言うのが宿った瞬間だ。
理沙さんは小さくつぶやくように、しかし気持ちを隠さずはっきりと言った。
その顔にはしっかりと面白そうという感情が見えている。
「そうと決まれば」
賛同を得られたってことで、さっそく行動開始。
「テツさん」
目配せで、テツさんを呼ぶように頼んでみると、俺の意図を汲んで理沙さんがテツさんを呼んでくれる。
「なんですかお嬢」
「千翔くんがお勧めの食べ物を紹介してくれるそうだ。よかったらテツさんも食べないか?」
「いいんですかい?てっきり、お嬢と坊主の2人で楽しむもんだと思ってやしたが」
2人っきりという環境に憧れはするが、それでもこうやって車で送ってくれていることには何かお礼はしたい。
少し、ほんの少しだけ、悪戯心はあるけど、味はおいしいのは保証する。
うちの学校の空腹状態の奴らでも撃沈するような量だけど、それでも味はおいしんだ。
「是非!こうやって車で送ってもらってますし。お礼に奢りますよ!」
「馬鹿野郎、子供に奢られとあっちゃ、大人として情けねぇよ。むしろ、その店教えてくれた礼に俺がそこの店の勘定持ってやるよ」
ちょっとだけ隠し事をしてそのまま車が進む。
段々、山から離れていって少しづつ人の営みが増えていき、さらに30分ほど車を走らせた先の町の祭りの会場で。
「くっそう!坊主騙しやがったなぁ!!」
「騙してないですよ!オススメなのは間違いないですし」
俺は絶賛フードファイト実行中。
「さぁさぁ!今は高田居高校の学生さんと、なんと東京からお越しのガタイのいいお兄さんが巨大お好み焼きに挑戦中だ!!同じく東京から来た綺麗なお嬢さんに見守られながらの勝負はやや、学生さんの方が有利だ!!」
最初に軽く屋台を巡って、たこ焼きとか焼きそば、りんご飴に、チョコバナナ。
理沙さんの食べ物を確保してから、その屋台についた俺とテツさんは用意されたお好み焼きを食べている。
「本当にすごいな。写真を撮っても構わないか?」
「大丈夫ですよ」
「クッソ!余裕な顔しやがって!今に見てろよ!!」
「兄貴!頑張ってください!!」
「男の見せ所っすよ!!」
「おおっとここで、お兄さんの箸のペースが上がった!マイペースに食べ続ける学生さんに追いつかんと言わんばかりのド根性ぶり!!」
用意されたお好み焼きを見て驚いている、理沙さんの希望に応えて、俺の顔と比較できるように位置取りして一旦食べる手を止める。
一緒に来た護衛さんのお兄さんの声援を背に、我武者羅に食べていくテツさん。
「このままじゃ追いつかれるか」
「は!追いつくんじゃねぇよ!追い越すんだよ!!」
花火までの時間と理沙さんと祭りを巡る時間を考えると悠長に食べている時間はない。
怒涛の勢いで迫りくる、テツさんの喰いっぷりに感化された。
俺の胃袋のスイッチが入った。
「それじゃぁ、本気を出そうか」
「何!?」
「おおっと!?ここで学生さんの速度が上がった!!みるみる減っていくぞ!!その速度はすさまじいぞ!!彼が一口頬張るたびにお好み焼きがどんどん消えていく!」
モシャモシャとドンドン胃袋の中にお好み焼きを放り込む。
だけどきちんと味わって食べているぞ。
豚肉に、イカ、サクラエビにと色々と具材が入っているから飽きは来ない。
最近はさらに体を鍛えているから食べれる容量も増えている。
時間で10分くらいかな。
「ご馳走様」
「完食!時間にして20分32秒!レコードタイムにはわずかに届きませんでしたが!学生さん見事完食です!!」
ごちそうさまと合唱して見事に完食。
箸を机に置き、隣を見てみれば。
「………」」
すでにお腹がはちきれんと言わんばかりに膨れ上がっているテツさんが死に物狂いで食べているが。
「もう、無理」
残り3分の1を残してギブアップするのであった。
「あ、あにきーーー!!」
「しっかりしてください!!」
がっくりと机に突っ伏すテツさんに駆け寄るお兄さんたち。
「すごいな、本当に食べきってしまうのか」
「食べれるとは思ってたからね」
そして理沙さんは感心したと言わんばかりに俺の側に立つのであった。
しかしさすがにこの量はきつかったなと、そっと腹をさすりながら視線をずらすと………
「………」
ワナワナと指を差し、震えている見覚えのある男を見つけるのであった。
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