冷たい風が欲しい、夏初日
冷たい風が欲しい
夕立がどこかであったようで、
帰り道、風が冷たい。
七夕の空に星が見られるか
どうかより、
冷たい風が欲しいものだから、
今夜の道は嬉しい道になる。
空腹になりながらも、
頭は明日のことで忙しい。
明日のことは、誰に言ったところで、
どうなるものでもないから、
何も言わなくなった……
それは、哀しい物語かな。
冷たい風が欲しい。
願い事はただ一つ、
心と体の鮮度を保つために、
冷たい風が欲しい。
夏初日
眩しい。
朝からお日様を見るのは
何日ぶりだろう。
こんなに明るかったのか。
日差しの強さに戸惑うほど、
晴天の光を忘れていた。
おはようございます。
ご近所のお婆ちゃんと出会った。
お婆ちゃんも手で額に庇をつくり、
眩しそうにしている。
シャーシャーシャーシャー……
あっ、蝉。今年初めて聞く音。
いよいよ、夏が始まるんだ。
何故か緊張して空を見あげると、
お婆ちゃんも、同じように、
空に目を細めていた。