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第三話~始動~

僕と共に戦えというアシュタロト。

「戦うって何でだよ?お前の身体の一部は凶悪なモンスターに変貌して襲ってくるとでも言うのか?」

いくらかぐったりしながらアシュタロトを見やると、その通りだと言わんばかりに返答が返ってくる。


(そうだ。僕の欠片を取り込んだ三次元生命体は僕の力に飲まれ間違いなく暴走する。君がそうなっていないのは僕の意識部分と融合できているからに他ならない。僕の欠片を取り込んだ生物は本能的により多くの力を求め、他の欠片保有者を襲い出すだろう。特に君はかなり大きな欠片を保有してしまっている。必然的に君が狙われやすいという事さ)


この空間に来てから何度目かの頭痛に襲われる。

何だって俺がこんなことに…


(すまないが、実質君に選択の余地はないんだ。僕の力が十全に戻れば僕も元の次元に帰れるはずだ。その際に君を元に戻すことも、なんなら僕が衝突しなかった世界に変えることもできる。まぁ、犬に噛まれたと思って諦めて欲しい)


犬に噛まれたにしてはなかなかハードな現実だが仕方ない。

正直いつまでもうだうだ文句言っていても仕方がない。現に俺の心臓は貫かれ正常な機能を果たしていないのだ。

コイツの言うことが本当であれば今のこの現実自体をゲームのセーブデータをロードするかの如くなかった事に出来る。


「わかった。しゃーない付き合うしかなさそうだな」


アシュタロトは満足そうに頷くと、虚空から剣のようなものを取り出し投げてよこす。

(納得してくれて嬉しいよ。じゃ、早速始めようか)


「始めるってなんだ?俺はこんな武器とかそういうものは幼少時のオモチャ以降使った事ないぞ?」


(だからこそだよ。君には僕が融合しきるおよそ一ヶ月間、ここで戦闘訓練をしてもらう)

確かに、ズブの素人がいきなり戦えといわれても碌な事にはならないだろう。3日で俺を野に放った今の会社に比べれば研修としてはまともと言える。


(先ほども言ったように僕の欠片は互いに引かれ合う。そして水滴同士がくっつくように一つになる。ただ、三次元生命体に取り込まれるとナノ単位まで分解し全身に滞留する。つまり相手の身体に直接触れなければ回収が出来ないんだ。体内で一番効率よく巡回しているのは血液だから血液に直接触れられれば間違いなく回収できる)


「そのためにはお前の欠片を含んだ何かを相手の身体にぶち込んで回収しきる必要があるわけだ」


(理解が早くて助かるよ。君は僕と一体化しているから、制御に関してはこちらが有利だ。ただ、君が何らかの要因で手放してしまったものに関してはその限りではないから、くれぐれも取り扱いには気をつけてくれ)


今、何かのフラグが立った気がするが気のせいと思いたい。

ようは、アシュタロトの欠片を含んだ何かを相手にぶち込み回収する。それだけだ。唯一つ気になる事が


「血液に触れるって事は相手を傷つけなければならない。それが原因で死に至るって事はないよな?」


俺とアシュタロトが無事離れるには欠片の回収は必須だ。必須だがそれで誰かを殺す事になるのはどうにも後味が悪すぎる。


(体組織を元に戻すだけであれば回収した際に行えるはずだ)


「つー事は、俺の心臓も…」


(君の心臓については簡易に修復させられるダメージを遥かに超えてしまっている。まぁ、僕と融合している限りにおいては問題なく動くだろうが、離れたらそのまま止まるね)


やはりそう上手くはいかないようだった。

渡された剣は黒曜石のような輝きを放っており、刀身が70cmほどあるにも関わらず驚くほど軽い。片手でも簡単に振り回す事が出来そうだ。


(まずは目の訓練から行こうか。僕を体内に取り込んだ事で身体能力に関しては底上げが出来る。だが、反射神経そのものの強化は難しい。回避して当てる。そこからやっていく必要があるかと思う。まずは僕が君に攻撃をしかけるから、君はそれを避ける。簡単だろう?)


どっかの絵画教室のアフロのように言ってのけるアシュタロトは俺から若干離れていく。

俺はなんとなく剣を正眼に構え、アシュタロトの全体を捉え、動きから目を離さぬよう集中した。


(じゃいくよー)

そんな気軽な声をかけるや否や、手に槍のようなものを顕現させると、川に小石を投げるように俺に向かって投擲する。


…が、それはまたしても俺の胸を貫き、意識を刈り取る一撃となったのだ。


(あぁごめん、ちょっと強すぎたかも…)


遠ざかる意識の端でそんな感じの声が聞こえたような、聞こえないような…

俺はまたしても意識を手放すのだった。




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