第二話〜邂逅〜
気が付けば地面も空も白い空間に居た。
(やぁ、気がついたかい?)
空間に謎の声が響いたかと思うと、目の前には小学校低学年くらいの男の子が立っていた。
「ん?誰だ…?」
(すまないね。君の形を取らせてもらってるんだが…僕自身の力の限界で幼くなってしまった)
……よく見れば俺か。俺なのか。これがガキの頃の俺だと言い切られても確認する術も無し、そうなのかと納得せざるを得ない。
さらには目の前の子供俺は口を開くことなく言葉を発し、空間に声が響いている。
…頭がついてこない。
たしか俺は黒い鉄骨のようなモノに胸を貫かれたと思ったんだが、身体を見ても特に違和感はない。
(ここは君の脳内というか簡単に言えば“夢"の中だ。君の身体にはしっかり僕が突き刺さってる。安心したまえ)
「お前が突き…?何なんだお前は?」
アレは確かに物体であったはず。少なくとも俺の姿をしたナニカではなかった。
それに刺さったままかよ…安心できる要素じゃないな。
(僕はアシュタロト。君達の概念で一番近いのは神といったところか)
神と名乗った俺の姿をした奴は仰々しいお辞儀をしてみせた。
神…神と来たか…生憎俺は神なんてものは信じていない。
(信じる信じないは自由だよ。ただ厳密にいうと君達の考える神とはまた違う存在だ)
「じゃーお前はなんなんだよ?」
(簡単に言えばこの宇宙を作ったのが僕だ)
「宇宙を…作った!?」
ずいぶん荒唐無稽な話にも聞こえるがアシュタロトはさも当然とばかりに話を進める。
(そうだ。君たち人間が水槽で魚を飼っている事があるように、僕はこの宇宙自体を創造した。君たち三次元生物は空間、時間といった概念に縛られいるのは周知の事だと思う。僕たちは君たち三次元生命体のように空間や時間という概念に囚われる事のない次元の生命体だ。本来であればたとえ100億年の時の流れも100億光年先の場所でもちょっとコンビニに行く程度の労力で渡る事ができる。もちろん僕が本来の姿であればこの次元で出来る事はそんな些細な事だけじゃないけどね)
ついさっき信じられないと言ったばかりだがこれは…
これが本当であれば…
「時間とか空間とか細かい事はわからねぇけど、お前の言っている事が本当であれば神か何か以外考えられねぇ…大体何の為に宇宙を作ったんだよ?」
(それはね。趣味だよ)
アシュタロトはさも当然といったように俺に返してきた。
俺の頭に 【悲報】我々は趣味の産物 と速報が流れたかのようだった。
(君たちは趣味で動植物の飼育を行うじゃないか。それと全く同じことだよ。ただ、少しばかり君にとってはスケールの大きな話だったに過ぎない)
正直、俺程度の知能ではついていけないスケールの話だった。
(さて、君が思考停止に陥ってしまったところで、話を先に進めよう…どうやら君の身体が病院とか言うところに着いたようだ。外の会話を聞いてみるかい?)
アシュタロトの問に俺は頷きを返す。
空間に今度は中年男性と女性の声が響いた。
医者と看護師らしい彼らの会話からすると俺の胸に長さおよそ1m、直径およそ3cmの棒状の何かが胸に突き刺さっており、心臓をほぼ貫通しているらしいが、何故か心臓は止まる事無く鼓動を続けているとの事だった。
(いやー衝突の際に君の胸に飛び込んでしまったからね。なんせここでは僕の身体はロクに動かないナニかになってしまっているから。)
この宇宙の創造主様アシュタロトは笑顔で俺に話しかけてくる。
俺の笑顔を俺に向けるな。気持ちわりぃ。
(気持ち悪いは心外だね。第一君の顔だろう?)
…ぐぅの音も出ないがその通りだ。社会人一年目に「愛想がない」と言われ、鏡に向かって笑顔の練習をした時も気持ち悪いと思ったものだ。
え?俺こんな子供の頃から気持ち悪い笑顔してたの?微妙にショックを受けている。
「おい、アシュタロト。俺の身体どーなるんだ?」
このまま胸に棒を生やしたまま生活とか冗談じゃない。
(問題ない。僕の身体と君の身体は融合しつつある)
は?融合?
(そう。そのお陰で君の心臓も動いているんだ。今物理的に引き離されたらさっきの声が言っていたように君は死ぬ)
医師や医療関係者の声が徐々に遠くなっていく。
どうやら、俺の心臓を貫いている棒に関しては問題を先送りにし、生命維持のみ行うようだ。
「融合ってどういうことだ?」
(そのままの意味だよ?君と僕の身体が溶け合って1つになる。なに、君自身を僕が乗っ取ろうと言うわけじゃない。あくまで間借りさせてもらうだけだ。それに損はさせないよ?)
相変わらずの笑顔で明るく言っているが、何だろう嫌な予感しかしない。
(先ほども触れたが僕の身体は十全な状態ではない。僕の身体はこの次元においては先の医師が言っていたような金属状の物体となってしまい、単体での行動は不能。さらに僕自身の身体が砕けてしまっているので本来の力の10%出せればいいところだろう)
やれやれと言ったようにかぶりを振るアシュタロト。が、コイツのせいで生命の危機に瀕している俺よりはマシだと思うのは気のせいか。
「お前の力が10%程度しか出せない事。お前が俺と溶け合って一つになる事。死に掛けているメリットがそれだけか?どう考えてもデメリットしかないだろうが」
(何を言うんだい?僕の力が10%とはいえ使えるのはかなりのメリットだよ。さらに僕自身の身体の欠片を回収すれば右肩上がりに各能力は上がるし出来ることも増えていく)
さも、素敵な事だと言わんばかりのアシュタロト。高校生男子なら諸手を挙げて飛びつくであろうが、こちとらサラリーマンである。
今更そんなスーパーパワーを手にするより平和に暮らしていたいのだ。
「そんな漫画のキャラクターみたいな力は特に欲してないからさっさと出てってくんねーかな?」
(うん。それは無理だ。今君から離れれば君は死ぬし、僕も事実上の死を迎える。申し訳ないが君には力を貸してもらう他ないんだ)
唐突に殊勝な態度を取り出すアシュタロト。そして更に言葉は続く
(僕の力を使って“僕の欠片達”と戦って回収してくれ。それが君と僕が穏便に離れられる唯一の方法なんだ)
……やーっぱ、厄介事じゃねぇか
宇宙の解釈については私の独断と偏見で記載しております。
当然最新の宇宙物理学や宇宙の概念に関しては存じ上げませんのでその辺に関しては雰囲気でお察し下さい。




