75話 お買い物デート
金の稲穂亭へ行き器の返還とお礼を伝え、装備を整えるために南門の前まで来ていた。
まず、この辺りでリュックを買うそうだ。そして、そこから東門の方ヘ向かいながら少しずつ買い揃えていくらしい。
「アイテムボックスがあるのはバレてもいいけど、規格外の性能なのはバレないようにしないとだから。普通の冒険者と同じ様な感じになるけど良いわよね?」
「うん、そんな感じでお願い。というか、全面的にお任せします」
買ったリュックを背負い、その中にどんどん買い揃えた物を詰め込みながら移動していく。
背中の重みと反比例して財布の中がどんどん軽くなっていく・・・。
そして、次は念願の武器を選ぶらしい。
「ところでアシストの武器って何使うの?」
「ナギトの場合、アシストでも支援だからワンドだったりステッキだったり人それぞれって感じなのよね」
「へー、どういう基準なんだろ?」
「マジシャンもなんだけど、魔力を集中させやすくするためと指向性と射程距離の向上が目当てなのよね」
「ほう」
「私のスタッフみたいに大きいタイプの物は指向性と射程距離が向上しやすいって言われてて」
「うん」
「ワンドみたいに小型の物は発動速度が向上するって言われてるわね」
「実際の所どっちの方がオススメ?」
「しっくりくる方?」
「能力云々よりも馴染むか馴染まないかって事?」
「うん」
「それじゃあ、触って確かめさせて貰って。ピンと来たヤツを買いますか」
結果から言うと、全く触らずに決めてしまった。一目惚れってやつです。
映画で見た魔法魔術学園に入学した主人公が持っていた杖にそっくりなやつをお店に入るなり見つけてしまい「これがいい」と一瞬で決めてしまった。
「こんな決め方で良かったのかな?」
「案外、直感で決めた方が良いって言うから良いんじゃない?」
「そういうモンかぁ」
見た目一発で決めたのもあるが、俺が選んだ杖は他のよりも安く。能力に不安はあるが財布に優しい所もありがたかった。
「次は防具ね」
「俺、正直な所。金属の鎧とか動ける気しないんだけど・・・」
「支援なんだから鎧なんて着ないわよ?」
「え?そうなの?」
「鎧なんて着るのは前衛だけよ?」
「あぁ、そうなのか」
「もしかしてアシストの人の装備を見て自分も着る気になってたの?」
「うん」
「男の人で支援って少ないから、ナギトが見たのは前衛のアシストだと思うわよ」
「あ、なるほど。こうゆう事か」
期待していた防具とは違い、トリーネが選んでくれたのは革のブーツに革の上着と革の手袋、そして厚手のズボン。
野外での探索をメインとするならマントは必須らしいが、ロックスはダンジョン専門のパーティらしく今はまだ買わなくていいそうだ。
「これでとりあえず必要な物は揃ったわね」
「うん、ありがと」
「あと、携帯食とか必要な物はいくつかあるけど、それはまたダンジョンに潜るのが決まってからでいいわ」
「うん」
トリーネのおかげで短時間で必要な物が粗方揃った。
俺だけだと何が必要なのかも分からないし、恐らく自分だけで買うよりもかなり安く済んだはずだ。
「何かお礼したいんだけど、何かして欲しい事とか欲しい物とかある?」
「そうね。なんでもいいのよね?」
「何か念を押されると怖いな・・・」
「大丈夫よ。散財した所なんだからお金の掛からない事をお願いするし」
「うん、それなら・・・」
「じゃあ。ナギトってまだ隠してる事あるわよね?それを教えて」
「お金よりよっぽど怖いお願いが来たっ」
「だってナギトから言い出した事よ?お礼がしたいって」
「たしかに。それじゃあ、明日にでも河原で見せるよ」
「なにを?」
「隠してる事。まぁ、楽しみにしといて」
「うん」
「あ、それとさ。折角ここまで来たんだからジョーさんに返事だけでもしていかない?」
「そうね」
コンコンコン───。
「おう、どうした?まさかもう返事に来たとかか?」
「はい」
「お?冗談で言ったんだがな。まぁ、入ってくれ」
「お邪魔します」「お邪魔します」
「それじゃあ、座ってから返事を聞かせてくれ」
「はい」
部屋に入るとロックスのパーティメンバー全員が席についていた。
たぶん、説得の最中だったんじゃないかと思う。
「それじゃあ、お茶でも淹れてくるわね」
「あ、お構い無く」
「皆のも淹れるから一緒よ」
「まぁ、とりあえず座ってくれ」
「はい」
「この間は酒の席だったからな。自己紹介だけしとくか」
とリーダーのブラッドさんが渋々といった雰囲気で口を開いた。
「まず俺がロックスのリーダーをやってるブラッドだ」
「はい、支援アシストのナギトです。よろしくお願いします」
「マーシナリーのジョーだ」
「アクロのスティーブンだよ」
冒険者ギルドで会った時は潰れて床で寝てた人だ。
「スティーブンはナギトに会った時、潰れてたから初対面だな」
「僕そんなに強くないのにジョーが飲ませるからじゃん」
「それと、今お茶を淹れに行ってるのが支援アシストのビリーだな」
「それじゃあ、返事を聞かせてくれ」
「はい」
説得が済んでるのか、それとも拗れて加入の話が無くなっているのかも分からないが。
少し重々しい空気に飲まれながらも返事をするために来たのだからしない訳にはいかない。
ダメならダメでトリーネと2人で活動してもいいし。と腹を括り。
俺は姿勢を正し顔を上げた。
本人は杖と言ってますが作中ではワンドという扱いになってます。
トリーネが持っているのも杖ですが大型なのでスタッフという扱いです。




