71話 バーニングフィールド
「あ、あっぶねぇ・・・」
「どうしました?」
工房を出るギリギリの所で思い出した。
「オセロの試作品とかで要らないのがあれば1セット欲しいんですけど、貰えたりしませんか?」
「構わないと思いますが、一応商業ギルドに話を通してからじゃないとお渡しは出来ないですね」
「あぁ、なるほど」
「許可が下りましたらミルフェイユにお持ちしますよ」
「いいんですか?すいませんけどお願いします」
「どのみちショーギの事で商業ギルドには行かないといけませんから」
「それじゃあ、今度こそ失礼します」
「はい、お気をつけて」
このまま忘れてたらトリーネに何て言われるか。
いや、言われるぐらいならいいが、確実に俺への態度と扱いが変わっただろう。考えるのも恐ろしいが。
身震いをし、まずは大通りに出てから南門付近にある屋台を目指す。
市場や屋台を見て回り、昼食用にいくつか購入し。もし昨日のようにトリーネが来た事を考えオレンジジュースを2杯購入した。
料理スキルが皆無ともいえる自分でも作れる料理は無いかと見て回ったのだが異世界モノのご多分に漏れず米は見当たらなかった。
だが正直な所、そこまで米を食べたいという欲求はなかった。
異世界モノの主人公達に比べて自分はそこまで白米に対して執着が無いのかとも考えたが、この世界の食べ物がそこまで白米に合うおかずではないのが原因かもしれない。
自分が食べたい物を考えて。最近、甘い物を食べてないな。と思い、現代知識でスイーツでも売りだせばめちゃくちゃ売れるんじゃないかと思ったが、屋台等で塩や胡椒は売ってるのを見かけたが砂糖は目にしなかった。
砂糖が無いのにスイーツなんて作れるはずもなく断念せざるを得なかった。
ただ、日本に居た頃でもスイーツなんて作った事もなく、砂糖があった所でどの道な話であった。
料理に関してはこれといった収穫もなく、早々にクイックを掛けラウエルの森に来ていた。
まずは河原を目指しながらその道程で薬草類の採集。
河原に着くと、早速ナールさんから聞いたバーニングフィールドを試すべく比較的川幅のある場所まで移動する。
ステータスを開きMPが全快しているのを確認してから。
「バーニングフィールド」
一気にMPが減る感覚に驚きながらも、目前のその光景に開いた口が塞がらなかった。
直径で10メートル程だろうか。円形に広がる火の海は川の上でもお構いなしに燃え上がっていた。
1分程燃え上がっていたが突然何事も無かったかのように消え去り、残ったのは鼻孔をくすぐる焦げた臭いと川縁の焼け焦げた跡だけだった。
「うん、これは流石に無い。こんなのをアシストが使ってたら1発アウトだ」
気を取り直して、そこからはクイックを中心にスキル上げに集中する。
河原で採集したトパーズ等、見つけた時やボズさんから説明を受けている時はテンションが上がったのだが、一夜明けた事や即金にならなかった事から今は落ち着いていた。
そのため、スキル上げに集中し採集もナールさんから頼まれている事もあって薬草類を中心に採集を行い。
バーニングフィールドを試して以降は完全に森の中で採集を行っていた。
「クイック」「クイック」「クイック」「クイック」「クイック」「いい加減飽きてきた・・・。お・・・上がってる」
クイックがレベル3に上がり、ヘイストを覚えた。
「ヘイストってたしか攻撃速度が上がるんだよな」
その場で少し身体を動かしてみる。
「ヘイスト」
再び身体を動かしてみる。
「んー、言われれば速くなってるような気もするけど言われなければ分からない程度って言うかプラシーボ効果って言われたらそうな気もする」
スキルレベルがまだ1のため速度上昇も低く、元の敏捷が低いのもあり上昇率も低く体感出来る程の効果は無かった。
ただし、アクロバットの様に敏捷を多く振っていればスキルレベルが1でも十二分に効果を発揮する。
その後、昼食も1人でさっと済ませ黙々とスキル上げと採集に勤しんだ結果。陽が傾き始めた頃にはヘイストのスキルレベルが2に上がっていた。
「やっと2に上がった・・・。って、もう夕方じゃん」
本来であればラウエルの森に居ても街の鐘は微かにだが聞こえるので時間経過も把握出来るのだが集中する余り鐘の音も聞こえず、空の変化にも気付けなかったのだ。
自分にクイックを掛け家路を急いだ。
遅くなったため採集した薬草の買取は後日に回し、そのままミルフェイユへと帰宅する。
「遅くなってすいません」
「・・・・・・」「・・・・・・」
「あの・・・あ・・・」
どうやらメディン婆さんとトリーネは無言で戦っていたようだ。オセロで。
「あ、今のちょっとナシ待って」
「ダメじゃ。1回手を離れたらもう儂の手番じゃからの」
「だから、ちょっと待ってってお願いしてるんでしょ」
「あの・・・」
「あれ?ナギト帰ってたの?」
「うん、ついさっきね」
「さっきフィリップさんがオセロ持ってきてくれてね」
「あぁ、商業ギルドから許可下りたんだね」
「あれ?なんか暗くない?」
「え?俺?」
「部屋の中よ」
「もう夕方だからね」
「え?」「え?」
「フィリップさん何時頃持ってきてくれたの?」
「お昼前・・・」
「ずっとやってたのか・・・」
トリーネは兎も角、メディン婆さんまで時間を忘れる程にハマるとは思ってもみなかった。
リアルの知り合いにこの小説を読んで貰ったんですが。
評価3を頂きました(´・ω・`)




