564話 slutet
金の稲穂亭から帰るとトリーネに盛大に怒られた。
昼までに帰って来ると思って作ってたのに、温め直さないといけない。と文句を言われまくった。
でも、追い出したのはトリーネだし。
帰る時間も指定されてなかったんだから仕方無いじゃん。
とでも言おうものなら、火に油どころの騒ぎじゃなくなるのでひたすらに平謝りをして鎮火するのを待った。
まぁ、俺の為にやってくれてるってのもあるしね。
無事、トリーネの怒りは鎮火して。
温め直した物や大量のマッシュポテトをアイテムボックスに収納してから自室で昼寝する事になった。
何故かトリーネに邪魔だから昼寝でもして来い。と、言われたので。
まぁ、異世界も2回目なのに、忙しなく動き回ってるからね。
たまにはこうやってゆっくるするのも良いかもしれない。
「おばあちゃま」
「ん?」
「マリオンさんからのお手紙。ナギトさんに言わなくて良いの?」
「後2-3日で到着するみたいだから、ナタリーはナギトを連れてユーダリルに潜って来な」
「会わせない様に?」
「そっ」
「なんで?」
「マリオンさんはユグドラシル最大の商会。マリオン商会の全権をナギトに譲渡するのよ?」
「うん」
「そしたら、ナギトの事だからダンジョンなんて行かなくなるわよ?良いの?」
「それは・・・」
「一緒にダンジョン行きたいでしょ?」
「うん」
「だから、しばらくは黙ってなさい」
「うん。分かった」
「ナギト君は相変わらず順調なクセに地味だなー」
「また来とるのか」
「あっ、ゴダン久しぶりー。こんな所に来るなんて珍しいねー」
「ここは儂の館なのに珍しいとは・・・。ローズルが儂の居らん時を狙って来とるだけじゃろう?」
「まぁ、そうなんだけどねー」
「それで?儂のフリズスキャールヴで何を覗いとるんじゃ?」
「内緒~」
「ふんっ。まぁ、良い。儂も使うからそろそろ帰れ」
「ねね」
「なんじゃ?」
「これ、しばらく貸してくれない?」
「フリズスキャールヴをか?」
「うん」
「何を出す?」
「対価取るのー?」
「当たり前じゃろう」
「う~ん。ドラウプニルは?」
「安いな。金なんぞ要らん」
「何だったら良いのー?」
「分かっとるじゃろうに」
「知識だよねー?知を欲する者だし」
「当然じゃな」
「う~ん・・・」
「お主の抱えとる最大の秘密を言うならば貸してやろう」
「えー、それは流石に無理かなー」
「ならば諦めろ」
「えぇー」
「しつこい。言わんのなら早よう帰れ」
「ちぇー。あ、ちなみにフリズスキャールヴじゃ僕の事は見れない様にイジっといたからー」
「・・・勝手な事を」
「じゃーねー」
「・・・本当にあやつは碌な事をせんな・・・」
次にローズルが現れた場所は例の真っ白な空間に存在は似ているものの見た目上は真逆な完全に暗闇の空間だった。
そこに浮いているのかの様にベッドが1台存在していた。
そして、そのベッドの上には少女が1人丸くなって眠っていた。
「アザトー。君のお気に入りのナギト君の様子見てきたけど。相変わらず地味だったよー」
穏やかな寝息を立てて眠るアザトと呼ばれた少女はローズルに声を掛けられても起きる様子は無い。
規則正しい寝息に乱れは無く、ローズルが来る前と変わらず眠り続けていた。
「まぁ、アザト程じゃないか。50年前に寝返りを打ったっきり、微動だにしてないもんねー」
ローズルは無造作にベッドに近寄り、ベッドのへりの腰を下ろした。
「よっ・・・と。アザトはホントに注文が多いんだよー。テンプレ展開が好きなクセに血生臭いのは好きじゃなかったりー。微エロは好きなクセにガチのはNGだったりさー。」
そう言うと、ローズルはベッドから腰を上げ。自分が作ったシーツのヨレを直した。
「アザトが起きちゃうと、僕たちの世界が終わっちゃうから。ナギト君の地味さには感謝だねー」
今度は少女に向かって恭しく膝を着き。
「我等が始祖様。引き続き良い夢を」
そして、暗闇に扉を召喚して次の場所へと向かった。
「テンプレ異世界転生なのに展開が地味なのって意外と大変なんだよなー」
と一言残して。
この世界はアザトが作り出した夢の世界。
坂口凪斗の目を通してアザトは夢を見る。
何故、坂口凪斗が選ばれたのか。アザトに気に入られたのかは誰にも分からない。
案外、名前が似ている。とか、そんなダーツで選ばれる様な理不尽な理由だったりするのかもしれない。
お読み下さりありがとうございました。
この物語はこれにて完結となります。




