562話 黄金
「へぇ~、そうなんだ」
「はい。金の稲穂亭は今も黄金スープが看板メニューです」
「今、お店をやってるのは?」
「ラッセおじさんです」
「あー、知らないな。ニーナちゃ・・・ニーナって人は居ない?」
「えっと・・・あ、たぶん、ラッセおじさんのお姉さんかな?それだったら、結婚して他の街に行ったはずです」
「そっかー」
あのニーナちゃんも60前とかだし。
普通に孫が居たりするんだろうな。全く想像出来ないけど。
「おばあちゃまとこの辺りでデートとかしてたんですよね?」
「でっ・・・まぁ、デートなのかな。うん、露店で買い物したり買い食いしたりしてたよ」
「そうなんですねっ」
「あ、ちょっとそこで待ってて」
「え、はい」
トリーネと出歩いてたのはアスガードに来た最初の頃だけど。
あの頃は体力も無くて歩き回ると直ぐに疲れてた気がする。
「お待たせ」
「はいっ」
「こっちがリンゴジュースでこっちがオレンジジュースだけど、どっちが良い?」
「リンゴジュースっ」
「はい」
「あ・・・リンゴジュースでお願いします」
「言い直さなくて良いのに」
俺が12歳の頃とか敬語なんて全然喋れなかった気がするし。
喋れたにしても、こんなしっかりはしてなかったなぁ。
「トリーネとね」
「は、はいっ」
「この辺りで買い物してた時に、俺が疲れちゃってね」
「はい」
「休憩してたらトリーネが飲み物を買って来てくれた事があったんだよね」
「あれ?おばあちゃまから聞いたのはナギトさんからリンゴジュースを買って貰ったって」
「そうだったっけ?まぁ、でも。そんな感じの事があったんだよね」
「私が今おばあちゃま役をやれてるんですねっ」
「役て・・・まぁ、そうかな」
「えへへへへ」
そんな感じでナタリーちゃんとまったりと買い物を済ませた。
そして、帰りが遅い。と、トリーネに怒られるまでがセット。
「明日は料理をするから。ナタリーは手伝いな」
「うん」
「じゃあ、俺はラウエルの森に採集に行って来るね」
「ナールさん?」
「そ。薬草の採集頼まれてるから」
「好きよね」
「採集?」
「うん」
「まぁ・・・薬草スレイヤー(笑)の称号があるぐらいだしね」
「そんなのもあったわね」
「何の効果も無くて。俺の事をバカにする為だけの称号らしいけどね」
「加護とか称号ってね?」
「うん」
「持ってるだけで伝説の存在みたいなものなのよ」
「うん」
「ランクSの冒険者とかで持ってる人は居るかもしれないけどね」
「持ってても隠してるって事?」
「隠すんじゃない?普通は。加護とかって、何も長所だけじゃないみたいだし」
「そうなんだ?」
「あ、物語の中ではね」
「あぁ、うん」
「火属性が強化される代わりに水属性が下がるとか」
「あー、ありそうだね」
「それだと、水属性が弱点になるでしょ?」
「それで、隠すのか」
「知らないけどね。加護持ちなんてナギト以外に見た事も聞いた事も無いし」
「あぁ、うん」
「ナギトのはそういうの無いの?」
「んー、特にデメリットがあるとは聞いてないんだよね」
「でも、そんな嫌がらせの為だけに称号を付与する神様よ?言ってないだけじゃないの?」
「いや、あのチャラ神様だけならまだしも。ナールさんもシフさんもそんなデメリットがあるなら教えてくれそうじゃない?」
「ナールさんとシフさんって?」
「冒険者ギルドの」
「え?」
「ん?あ・・・言うなって言われてるんだった・・・」
「あの2人って神様なの?」
「うん・・・そうだね・・・ってもさ」
「うん」
「50年前から見た目変わってないんだし、分かりそうなものだけどね」
「え?」
「え?」
「言われてみればそうね・・・」
「でしょ?」
「何だろ・・・」
「うん?」
「普通に考えておかしいでしょ?」
「そりゃね」
「50年も見た目変わってないなら誰か気付くでしょ」
「あ、そっちか。うん・・・確かに」
「認識を阻害する様なアイテムを使ってるとか。神様だからそういう能力があるとかかしら?」
「そんなのあるんだ?」
「知らないけど。神様なら何でもアリじゃない?」
「いや、うん、確かに」
「この事は口外しない方が良いのよね?」
「うん」
「ナタリーも良いわね?」
「うん」
まぁ、言っても何も無い気もするし。怒られたとしても、軽く怒られる程度な気もするけど。
シフさんを無駄に怒らせたくは無いから他言無用で願いたい。
「そこは本当にお願いね」
「うん」「はいっ」
採集した薬草の納品がてら聞いてみるのも良いかもしれない。
まぁ、採集自体はしなくても、アイテムボックスの中に薬草はそれなりにあるから。
わざわざラウエルの森に行かなくても良いんだけど、予定も無いから結局は採集しに行く事になるんだろうな。
いつもお読み頂きありがとうございます。
次話で悲願が達成されます。
乞うご期待っ((o(´∀`)o))




