543話 爆笑
「え?用意って?」
「適当な屋敷を購入致します」
「いやいやいや、そんな金無いですよっ」
「代金は我々で持ちますので問題ございません」
ちょっと何を言ってるのか分からない。
「え?皆さんがお屋敷を買うんですか?」
「はい」
「で・・・あ、そこが寮と言うか、そこに皆さんが住んでって事ですね」
「お屋敷はナギト様に差し上げますのでご自由にお使い下さい」
うん。やっぱり何を言ってるのか分からない。
「俺の家になるって事ですか?」
「はい」
「その対価として、トンカツとかを提供するって事ですね」
「はい」
「いやいやいや、そこまでの価値は無いでしょ」
「確かにそうなのですが」
ん?そうは言ったけど、「あの味には~」って感じでトンカツとかフライドポテトの事を過大評価してるのかと思ったけど違うのか。
「面白そうでしたので」
そうだった。
この人達はアンさんと同じ人種なんだった・・・。
「なるほど・・・」
「他に問題はございますか?」
「俺みたいな低ランクの冒険者にメイドさんが居るとか目立ちません?」
「普段から連れて歩く必要もありませんから。別段、目立たないとは思います」
「あ、そうですね」
「ナギト様ご自身が喧伝しない限りは問題無いかと思います」
「あー、でも。お屋敷って、やっぱ大きいですよね?」
「そうですね。それなりの規模の物を考えております」
「結構な金額ですよね?そこまでやります?」
「退屈というのは時に神をも殺します」
「それって・・・俺で暇潰しをしたいって事ですか・・・?」
「端的に申し上げて宜しいでしょうか?」
「え?はい」
「イエス!!」
背筋を伸ばし、お腹の前で手を重ね。綺麗な立ち姿からの~ゲッツ!って感じでキメやがった。
マジでどういうキャラなのか分からんっ。
「お、おう・・・」
「ダメでしょうか・・・?」
今度はモジモジしながら上目遣いで来やがった。
ゲッツからのそのキャラは無理があるだろっ。
「えっと・・・俺に不利益な事って無いですよね?何かしないといけないとか」
「美味しい食事さえ提供して頂ければ、それで構いません」
「まぁ、それぐらいなら」
「我々はその対価として。側仕えをさせて頂きます」
「は、はい」
「お屋敷の維持。ナギト様のお仕事のお手伝いや護衛。素材や食材の採集。暗殺から国取りまで何でもお申し付け下さい」
「不穏っ!出だしは普通だったのに後半一気に不穏になった!」
「夜伽の方もお申し付け下されば何時でもウェルカムです」
「はい、そこ。その手を止めなさいっ。親指を人差し指と中指の間か出さないっ!」
くそう・・・。
抜けてどっか行ってた腰が帰って来て普通に立ててたのに、今度は膝から崩れ落ちそうだ・・・。
「はい、そっちもっ。左手で作った輪っかに人差し指を出し入れしないっ!」
くそう・・・。
このメイド軍団、全員こんな感じかよ・・・。
「はい、そこー。手が逆になってるだけで一緒だから出し入れしなーい。言わなくても分かってー」
横を見るとアンさんが良い笑顔でサムズアップしていた。
「ナイスツッコミ」
「うっせぇ」
この人達ヤダ・・・ものっそい疲れる・・・。
「話も纏まった様ですし。あまり引き止めても難ですので」
「まとまったの?終始、俺が翻弄されてただけなんですけどっ?物理的にもっ、精神的にもっ」
「準備が整い次第連絡させて頂きます」
ヤダー。完全にスルーされてるー。
「それではこちらからどうぞ」
そう言うと、いつもの巨大な扉が出現した。
「はい・・・」
扉を抜けると階段のあるセーフエリアに出た。何階かは分からないけど。
まぁ、来た時が3階だったから3階だとは思うけどね。
トム君を迎えに行っても良いけど、一本道じゃないから入れ違いになる可能性もあるのでしばらく待つ事にした。
「あ、お疲れ様です」
「うん。疲れた」
「何があったんですか?」
「うん。家買って貰える事になった」
「え?」
「しかも、お屋敷らしい」
「え?」
「しかも、メイドさん付き」
「え?何があったんですか?」
「俺にも良く分からない」
「「・・・・・・」」
何だろう・・・胴上げされて(無理矢理)、お屋敷を買って貰える(強制)事になって、気付いたら帰れって言われてた。
「と、とりあえず・・・これをアイテムボックスにお願いします」
「あ、うん。おー、結構狩ったね」
「はい」
「補助ナシでもこれだけ狩れるって事は結構強くなってるって事だね」
「はい。今日の狩りでだいぶ実感出来ました」
「俺もあんまりサボってると追い付かれちゃうね」
「え?いやいや、それは無いですよ」
「そう?」
「はい。ナギトさんは意味が分からないんで勝てる気しないです」
「んんっ??」
何だろう?褒められてる気がしないっ。
いや・・・被害妄想かな・・・?
被害妄想だと良いな・・・。
いつもお読み頂きありがとうございます。




