513話 女遊び
朝食を終え、しばらくゆっくりしているとビリーさんが帰ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま~」
「朝ご飯はどうします?」
「向こうで済ませて来たから大丈夫よ」
「昨日も行ってたんですよね?何しに行ってたんです?」
「報告よ。報告」
「お好み焼きですか?」
「うん。それとか、ナギト君の女遊びとかね」
「えっ」
「冗談よ。冗談」
「ですよね・・・」
「でも、女の影があれば報告する様にって言われてるけどね~」
「ええっ」
「だって、そうでしょ。可愛い彼女が出来たら毎日ダンジョンに篭もってなんてられないでしょ?」
「まぁ・・・そりゃそうですけど・・・」
「ナギト君が居なくてもお店は回るけど。ナギト君が持って来る材料が無かったらお店は回らないのよ?」
「そうですね」
「シュガーは無くても何とかなるけど、それだとどこかが真似してライバル店が出来て売上の奪い合いになる。らしわよ」
「らしい?」
「うん。リチャードさんが言ってたから」
「なるほど」
いや、待てよ・・・それだと・・・。
「それだと、俺は何時まで経っても彼女作っちゃダメって事ですか?」
「もうしばらくはダメらしいわよ」
「もうしばらく・・・」
「でも、居るの?」
「え?」
「狙ってる娘」
「居ないですね・・・」
「だったら良いじゃない」
いや、何て言うか・・・。
作っちゃダメって言われると彼女が欲しいっ!
お金はあるし。レベルも高いし。まぁ、弱いけど。ステも振ってないしね。
もっとこう・・・ラノベの主人公みたいに無双出来る様になるまでは大人しくしときたいってのもあるけど・・・彼女は欲しいっ!
「トリーネちゃんにしとけば」
「ええっ・・・前から思ってましたけど、トリーネ推しますよね」
「可愛いし良い娘じゃない」
「まぁ、そうですけど」
「嫌い?」
「嫌いじゃないですよ。好きです」
「ほらぁ~。付き合っちゃいなさいよっ」
「いや、でも。めちゃくちゃ離れてるじゃないですか」
「ナギト君が帰って来いって言えば帰って来るわよ。たぶん」
「たぶんて・・・」
「だって、私はトリーネちゃんじゃないもの」
「そりゃそうですけど・・・」
「それに、女の子はちょっとぐらい強引な方がキュンとくるのよ?」
「そういうもんですか?」
「そういうもんよ」
「それに、好きって言っても。好きか嫌いかで言えば好きって話で・・・」
たぶん、ライクであってラブでは無いんだよね。
「あんな可愛いのに?」
「可愛いですけど」
「けど?」
「何て言うか、周りからやいやい言われる度に腰が引けて来ると言うか・・・」
「言われるウチが花よ?」
「なるようになるって感じでそっとしといて貰えると・・・」
「それじゃ、面白くないじゃないっ」
「ええっ」
「私がっ!」
「おいっ」
「人の色恋についてやいやい言うのが楽しいんじゃない」
「責任も無くですか・・・?」
「うんっ」
良い返事。
まぁ、引っ掻き回して当人達があたふたしてるのを見て楽しみたいだけか・・・。
悪質っ!
「それよりもよっ」
「え?はい」
ドンドンドンドンドン───。
「あ、俺出ますね」
「うん。お願い~」
「こんな朝から誰ですかね?」
トム君の後ろから顔を覗かせたのは・・・石屋の棟梁。あ、前棟梁か。
ちなみに、昨日は全裸で庭に転がっていた。
「おはようございます」
「おう。昨日の礼をしに来た」
「え?」
「あの庭に窯を組むんだろ?」
「あぁ・・・まぁ、はい・・・」
「ジョーも飲み込みが悪い訳じゃないが。1日2日じゃやっぱり素人仕事になっちまう」
「まぁ・・・はい」
「つー事で、昨日の礼も兼ねて俺が組んでやるよ」
「だったら、ジョーも居た方が良いわよね?」
「そうだな。手順は教えたから手伝わせるならジョーだな」
「トム君。ジョー起こして来てくれない?」
「はい」
「なんだ?まだ寝てんのか」
「酔い潰れて夜中に起きて、朝方また寝たのよ」
「まぁ、冒険者だからな。羨ましい限りだ。俺等、職人は決まった時間になったら自然と目が覚めちまうからな」
「嘘吐けっ。呑んだらお前は全然起きねぇじゃねぇかっ」
知らない人・・・たぶん、昨日は居なかった・・・はずっ。
「あぁ、すまん。勝手に入らせて貰った。レンガ職人のビルだ」
「あ、はい。冒険者のナギトです」
「持って来たか?」
「おう、表に停めてある」
玄関を出ると、荷馬車が停まっていて。荷台にはレンガが積み上げられていた。
「とりあえず、これは運び込むから手伝ってくれ」
「だったら裏に回した方が早いんじゃない?」
「あぁ、庭に作るからな。って事らしいぞ?」
「先に言っとけ・・・」
とりあえず分かったのは。
ビルさんは振り回される人だって事だ。
いや、前棟梁が振り回す人ってだけかもしれないけど。
いつもお読み頂きありがとうございます。
前までは最新話でしか評価が出来なかったと思うんですが今の仕様だとどこでも出来るようになったっぽいですね。
そのおかげか評価数が増えているように感じます。運営さんGJ!
読んで頂けるだけでもありがたいのですが。評価やブクマ等、明日を生きる活力になりますのでして頂けると小躍りして喜びますヾ(*´∀`*)ノキャッキャ




