497話 共犯
「あの人がマジシャンだってのは知ってるよな?」
「はい・・・全く見えないですけど」
「奥さんのセリアさん。当時はまだ付き合ってもなかったと思うが。見た目は娘さんと同じだがタンクでな」
「えっ?」
「変なパーティーだったんだよ。いや、構成としては悪くは無いんだが・・・」
まぁ、マグナスさんがあの見た目でマジシャン。後衛って時点で十二分に変だし。
前衛でニーナちゃんがマグナスさんを護ってるって思うと違和感しかない。
「確か、セリアさんがマシのタンクでマグナスさんがマジシャン」
「はい」
「マグナスさんの弟もマジで、後2人アクロも居たな」
「見事に後衛ばっかですね」
「おう」
「でも、そこにジョーさんが入るのは火力過多な気もしますけど、バランスとしては悪くないんじゃないです?」
「だろ?マジかアクロが1枚減って支援アシが入れば完璧だろうが、そうそう思い通りの構成にはならなんからな」
「ですねぇ」
「小っさい女の子が1人だけ前衛で、マグナスさん程じゃないが後衛の男共は全員大柄だったからな」
「違和感しか無いですね」
「だろ?」
「はい」
「それで、ちょろ~っと男なのに護られてんのは~みたいな事をほんのりと言った様な気がしないでも無いんだよな」
「あー、そこに話が行くんですね」
「まぁ、だから。ジョーイみたいに考えなしに、手当り次第に噛み付いてた訳じゃねぇ」
「だったら分からなくもない。・・・と言う事にしておきます」
「いや、分かんだろっ」
いや、ここで認めたら共犯扱いにされそうだから一応の逃げ場は確保しておこう。
「どうですかね」
「そこは同意しとけっ」
「嫌ですよ・・・。あ、そうだ。そろそろダンジョンのドロップを納品しようと思うんですけど」
「昨日とか置いて来りゃ良かったんじゃねぇか?」
「まぁ、そうなんですけど。ロックスのホームに置いといて、それを後で回収して貰うってのも良いかな?と」
「ふむ。それだとナギトは直接行かなくても済むし、回収するヤツとも直接会わなくて済むな」
「はい」
「って事は、俺が今から取りに来る様伝えに行けば良いのか?」
「お願い出来ます?」
「おう。ちょっと行って来るわ」
「クイック」
「すまんな」
「ホームで待ってますね」
「おう」
ホームに入り、玄関のスペースに木箱を積んでいく。
中身はコピの実と砂糖だ。
アイテムボックスから出すだけなので大した時間も掛からずやる事が無くなってしまった。
「戻ったぞ」
「え?早くないです?」
「おう、途中で会ってな」
「なるほど」
「で、こっからどうすんだ?」
「えっと、大して何も浮かんでないんで。工房だけ寄ってダンジョンに帰ろうかと思ってます」
「いや、だから・・・出来んのは当分先だぞ?」
「あ、いや、そっちじゃなくてモーリス親方の方の工房です」
「ん?また何か注文すんのか?」
「そろそろ薪のストックも減ってきたんで、端材を貰いに行こうかと」
「そうか。メシの買い出しは行かねぇのか?」
「さっき食べたばっかじゃないですか。もうお腹空いたんですか?」
「別に腹が減った訳じゃねぇよ」
「あ、何か企んでます?」
「企んで無ぇよっ」
「えぇ~」
「えぇ~。じゃねぇよっ。シュールストレミングでやらかしたから何も買えなかっただろ?だから、まだ何か買いたいんじゃねぇかと思っただけだよ」
「あー、だったら」
「おう」
「露店の人がたまに簡易のオーブンみたいの組んでるじゃないですか」
「おう、あるな」
「あれをダンジョンでもやってみたいんですけど。レンガか石のブロックみたいのって買えます?」
「石工のトコ行きゃいくらでも買えるな」
「だったら、モーリス親方の所行った後で案内して貰えます?」
「おう」
モーリス親方の工房に行くとモーリス親方もフィリップさんも仕事で出ているらしく、ラルフ君に対応して貰った。
「ベッドの調子はどうですか?」
「うん。ベッドも他のも全部満足してるよ。不具合も出てないし」
「そうですか。良かったです」
「あ、それでね。今日は何の注文も無くて申し訳ないんだけど」
「はい。俺に出来る事なら何でも言って下さい」
「えっと、また薪を貰いたいんだけど良いかな?」
「はい。結構な量あるんですけど、どれぐらい持って来ましょう?」
「折角だから全部貰っても良いかな?必要な分は置いといてくれて良いから。要らないのだけね」
「あ、だったら、裏庭までお願いします」
「はーい」
ラルフ君の後ろに着いて裏庭に抜けると、見渡す限り木材の山が積み上がっていた。
「おぉ・・・凄いね・・・」
「え?まぁ、これが仕事道具なんで」
そりゃそうか。
でも、雨とか降ったら濡れちゃうと思うんだけど大丈夫なのかな?
あれ?そう言えば、こっちの世界に来てから雨って降ってない気もする。
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