489話 お好みで
「で、そりゃ何作ってんだ?」
「お好み焼きです」
「へぇー。美味いのか?」
「出来たら、毒見・・・味見させてあげますよ」
「完全に毒見っつったよな?」
「大丈夫です、大丈夫です。あれ何でしたっけ?」
「ん?」
「シューなんとか」
「シュールストレミングか?」
「あ、それです。そのシューなんとかは入ってないんで安心して下さい」
「当たり前だろ。それに、あんなん入ってたら直ぐ分かるだろ」
「はい。なんで直前に入れたりもしないんで安心して下さい」
「何でそんな念押すんだよ・・・」
「そうですか?大丈夫ですよ、大丈夫。きっと」
「おい、きっとって何だっ」
「細かい事気にしますねぇ。大丈夫ですって。たぶん」
「・・・・・・俺が悪かったよ・・・」
流石に、これ以上は可哀想かな。
「懲りてるみたいだから、そろそろ許してあげて」
「あぁ、はい」
「ジョーってバカだから中身が子供のままなのよ」
「は、はい」
「それで、この年になっても憧れのジェフさんの真似してるのよね」
「はい・・・」
「子供のやるごっこ遊びみたいなモノかしらね?」
そろそろジョーさんのHPはレッドゾーンに突入・・・いや、とっくに残りHPは小数点以下になってたかもしれない・・・。
「と、とりあえず作っちゃいましょう。それで、皆で味見しましょう」
「そうね~」
お好み焼きと言っても色々と材料が足りないのでモドキだ。
リチャードさんが用意してくれた野菜や果物。その他に調理器具も色々アイテムボックスに入っていたので、その中にあった目の細かいザルを使って小麦粉を篩いに掛ける。
そこに出汁の代わりに金の稲穂亭のスープを少し入れる。
ダマが無くなるまで泡立て器で混ぜ。
そこに刻んだキャベツと塩胡椒を入れて味を整える。
後はボアファングの薄切り肉を乗せてフライパンで焼くだけだ。
「これだけで良いの?」
「はい」
「変な物は入ってないから不味くは無いでしょうけど。そこまで美味しそうな感じはしないのよねぇ」
「まぁ、これ自体は主食って感じなんで」
「郷土料理なの?」
「んー・・・どうなんでしょう?一応そうなるんですかね?」
焼き上がり。切り分けて皆に配膳する。
「お好みでマヨネーズもどうぞ」
「まずはナギトから食えよ」
「嫌ですよ。ジョーさんが悶絶するのを見たいんで先に食べて下さい」
「おい、何入れやがったっ」
「冗談ですよ」
「バカね。あんなの入れてたら、直ぐ分かるわよ」
「それもそうか・・・」
「素朴だけど美味しいわね。もうちょっと濃い味付けの方が好みだけど」
「あぁ、本当はここに味の濃いソースを掛けるんですけど。作り方も分からないんで」
「だからって、マヨネーズは無いでしょ」
「いや、マヨネーズも掛けるんですよ」
「えっ」
「他にも色々掛けたりしますけどね」
「あ、そうか。そのソースと合わせてマヨネーズが完成するのね」
「ん?どういう事ですか?」
「だって、マヨネーズって美味しくないじゃない?そのソースと一緒にする事で美味しくなるんじゃないの?」
「んー、マヨネーズはマヨネーズで完成されてますよ」
「そうなの?まぁ、私は・・・って、さっさと食べなさいよっ」
「うっ・・・でも、ナギトのヤツが・・・」
「ナギト君はジョーみたいに食べ物で遊ばないわよっ。子供じゃないんだからっ」
「くっ・・・食やぁ良いんだろっ」
「え?要らないなら私が貰うわよ?」
「食うよっ、食う食う」
怒ってる訳じゃないと思うけど、依然としてジョーさんへの当たりはキツい。
「うん、美味いな」
「トム君はどう?」
「はい。美味しいです」
「これでもっと肉が多けりゃ文句ナシだな」
「そうですね」
「まぁ、主食なんで。パンの代わりみたいな感じですよ」
「ふむ。そう考えると全然アリだな」
「肉も入ってますしね」
「だな」
ダメだコイツら。
肉の有無でしか良し悪しを判断出来ないんじゃないだろうか・・・。
「1/4じゃ足りねぇからもっと焼いてくれ」
「パンの代わりにお好み焼きってのはアリですか?」
「アリだな」
「そうね。野菜も取れるから良いんじゃない?」
「俺も全然アリです」
「なら、作り置きしときますか」
大量にお好み焼きを焼きながらビリーさんからシュールストレミングの事を聞いたけど、本当にびっくりした。
あれは、わざわざミズガルズから輸送されてるらしい。
アスガードに海は無いので、魚と言えば川魚しか無く。海の魚を食べようと思ったらミズガルズまで行くかシュールストレミングの様に長期間の保存が可能な物しか無いそうだ。
そこで初めて、あれが魚だと知ったんだけど。
クサヤとか鮒寿司もあんな感じなんだろうか・・・。
クサヤにしろ鮒寿司にしろ一部のファンは居て。
シュールストレミングにも熱狂的なファンが一定数居るらしい。
流石にあの臭いで食べ物ってのが理解出来ないけど・・・。
いつもお読み頂きありがとうございます。
花粉の季節ですね。
まぁ、1月末から食らってますが(*´-`)
切実に杉と檜の無い世界に転移したい٩( 'ω' )و




