419話 類友
「ごちそうさまです」
「お粗末さまでした」
「洗い物しますね」
「うん、お願ーい」
俺はテーブルに掛けたままトム君と会話している。
別にサボってる訳ではなく、トム君の仕事を奪わない為に仕方なくだ。
手伝いたいなー、本当は手伝いたいんだけどなー。残念だなー。
「手伝わなくてごめんね」
「こういう雑用は俺の仕事ですから」
ほらね?
俺はブラッドさんと違ってサボりたくてサボってる訳じゃないんだよねー。
まぁ、お腹いっぱいで動きたくないってのが本音だけど・・・って、これだとブラッドさんと同じかっ!
「や、やっぱり何か手伝おっか?」
「え?良いですよ。ナギトさんは座ってゆっくりしてて下さい」
「う、うん」
「食事の準備はほとんどナギトさんがやってるんですから。片付けぐらいはやらせて下さい」
やっぱりトム君は良え子や。
俺と違って。
「そういえば、今日のルアク狩りはどうだった?」
「今日は軽く流しただけだったんでだいぶ楽でしたね」
「あ、そうなんだ」
釘を差しておいたからジョーさんも手加減してくれたみたいだ。
「軽く流しただけだったんで確証は無いんですけど」
「うん」
「何か、前よりもモンスターの動きがちゃんと見えて。俺自身も前より動けてた気がしたんですよね」
「おぉ、それは強くなってるって事なんじゃない?」
「そうだと良いですけど」
「まぁ、明日にはハッキリするんじゃないかな?」
「明日もルアク狩りして良いんですか?」
「うん、俺は明日も街に行かないとだからジョーさんに任せっきりになるけどね」
「あ、もしかして俺の防具ですか?」
「うん。今度は忘れずに取って来るから」
「はい。わざわざ俺の為にすいません」
「いや、俺とジョーさんが忘れたのが原因だし」
「それじゃあ、今度は忘れない様にお願いします」
「他に用事も絡めるつもりだから、本当に忘れない様に気を付けないとなんだけどねー」
「おう、何の話だ?」
「あ、ジョーさん。ブラッドさんどうでした?」
「食ったら即効で機嫌直してたわ」
「ブラッドさんらしいですね」
「で、何の話してたんだ?」
「あぁ、明日トム君の防具を取りに街に戻るんですけど」
「おう」
「今度は忘れない様にしないとな。って」
「んなもん、忘れねぇだろ。防具仕舞ってさっさと帰って来りゃ良いだけなんだからよ」
「いやぁ、他に用事も絡めようと思ってて・・・」
「そんな横着すっから忘れんだよ」
「いや、忘れたのはジョーさんも同罪ですからね?」
「うっ、まぁ、そうだな。で、今度は何やらかすつもりなんだ?」
「やらかさないですよっ」
「分かってる分かってる。ナギトにはそのつもりが無いってだけだもんな」
「いや、やらかさないですよっ。今回は」
「自覚あんじゃねぇか」
「まぁ・・・多少は・・・?」
「で、何するつもりなんだ?」
「あぁ、その事でジョーさんに相談が」
「ん?俺にか?」
「はい」
「俺も巻き込むつもりか?」
「いや、そんなんじゃないですって。今度からビリーさんもこっちに合流するじゃないですか」
「言ってたな」
「いきなりの事ってのもあるんで、お詫びと言うか・・・ぶっちゃけるとご機嫌取りに何かした方が良いだろうなー。と」
「あぁ・・・まぁ、無いよりはマシだろうな」
「それで、ビリーさんの好みというか。何あげたら喜びます?」
「金目の物だな」
「えらくド直球なのが来ましたね・・・」
「皆、好きだろ?」
「まぁ、そりゃそうですけど」
「んー、そうだな。なんつったか、化粧水だったか?肌の手入れするヤツとか欲しいっつってたな」
「高いんですかね?」
「どうだろうな。安かったら迷わず買ってるだろうから高いのかもしれんな」
「それじゃあ、それは保留で。他に何かないですか?」
「んー。服だったりアクセサリーだったりってのも好きだが。これもそこそこ値が張るよな」
「そうですねぇ。安いのだと意味も無さそうですし」
「ってなると、食い物か」
「どんなのが好きなんです?」
「甘い物はやっぱ好きみたいだが。試食やらで食いまくってるだろうからな」
「厳しそうですね」
「まぁ、年が年だから肌のヤツが1番喜ぶとは思うがな」
「なるほど」
「お前等、口が裂けても今のはビリーに言うんじゃねぇぞ?」
「分かってますよ。ね?トム君」
「は、はいっ」
「頼むぞ?俺もまだ死にたくねぇからな」
「分かってますよー」
「信用ならねぇ顔してるがマジに頼むぞ?」
「大丈夫ですって。使い所は見極めます」
「おいっ。言う気満々じゃねぇかっ」
「ジョーさんを脅す・・・って言うと外聞が悪いですね。何かお願いする時の交渉材料として」
「外聞もクソも完全に脅しじゃねぇかっ」
「トム君。使い所が肝心だからね?」
「えっ、は、はい・・・」
「しくった・・・」
と、ジョーさんの弱みを握ったりしつつ夜も更けていった。
いつもお読み頂きありがとうございます。
年末年始に向けてストックを作成中なんですが、ストックが2話を超えるとペースが落ちる悪癖を治したいです(´・ω・`)
ステータスにはサボりグセ◎って書かれてる気がしますw




