400話 マイナス
シフさんからの爆弾発言に依り、寄り道する気なんて吹っ飛んだ。
「って事があってね。シフさんみたいに強かったらどうとでもなるんだろうけど。俺だと逃げるしか出来ないからね」
「ナギトさんの方がどうとでも出来そうな気がしますけどね」
「え?なんで?」
「ユーダリルダンジョンに逃げ込めばいつまででも逃げれるじゃないですか」
「うん。だから逃げるしか出来ないんだよね」
「それに、気配を断てば絶対逃げ切れますよね」
「うん。逃げるだけだよね」
「でも、気配を断って逃げて。そのままユーダリルに逃げ込むってコンボが確実に決まるんですよ?」
「まぁ、たしかにっ」
「問題解決にはならないですけどね」
「う、うん・・・」
上げて落とす。
くそう、腕を上げやがったな・・・。
「それと、マヨネーズが好評だったから作る量増やして貰うかも」
「えっ!?」
「ん?これ以上は無理?」
「いや・・・誰に好評だったんですか?」
「メディン婆さんとリチャードさんに好評だったよ?」
「マジですか・・・」
「マジ、マジ。ポテトチップス・・・ジャガイモ料理との相性が良いみたいでね」
「はい・・・」
「マヨネーズの他にもそっちも作って貰うかもだから、その時はよろしくね」
「はい」
トム君の中でマヨネーズの評価が低すぎるな。
フライドポテトとかと食べると上がるのかな。
「でも、最近の俺って全然冒険者じゃないですよね」
「あー・・・防具が無いからね」
「冒険者どころかずっと混ぜてるだけなんで料理人って感じでも無いですし」
「だよねぇ」
「でも、苦では無いんですよ」
「なら良かった。トム君以外に頼めないからね」
「気付いたら大量に出来上がってるんです」
「え?」
「作ろうと思って、作業に取り掛かったと思ったら大量に出来てます」
「何その超能力っ!スキル?」
「混ぜてると無になるって言うか、何も考えられなくなるんですよ」
「え?大丈夫?」
「大丈夫ですよ。楽に終わってラッキーって感じです」
「う、うん。んと・・・」
「はい」
「明日、ジョーさん迎えに行くからさ。トム君も一緒に行こっか」
「え、はい」
「それで、トム君は1日休みにしよう」
「え、でも。街に居てもする事無いんですよね」
「うん。頑張ってくれてるトム君にボーナス出すからさ。それで買い物するなり1日ゆっくりしてきて」
「え?良いんですか?」
「うん」
トム君が心を病んだりして、労基の調査でも入ろうものなら・・・って、そんなもの無いだろうけどっ。
考えてみれば当たり前だけど。
密閉された空間で単純作業を延々と繰り返しやらされてたら辛い。
「俺も頑張ってるぞ?」
「あ、お疲れ様です」
「・・・・・・」
「なんですか?その手は」
「俺にはボーナス無ぇのか?」
「まだボーナス査定はマイナスですね」
「なんでだよっ」
「そりゃ、サボりまくってたのに。1-2日頑張ったからって取り戻せる訳無いじゃないですか」
「くそうっ」
「このペースで頑張ってくれてたら直ぐですけどね」
「本当か?本当だな?」
「本当ですよ」
「よし、ならもういっちょ頑張って来るわ・・・って、その前に飯にしてくれ」
「トム君もお昼まだだよね?」
「はい」
「それじゃあ手伝ってくれる?」
「はい」
「ブラッドさんは出来たら呼びに行くんで、それまでもう一仕事してきて下さい」
「マジかよ」
「ボーナスに近づきますよ」
「ぐっ・・・行って来る・・・」
トム君に火を熾して貰い、俺は既に薄切りにされたジャガイモを水洗いしていく。
「次は、鍋にたっぷり目に油を入れてー」
「はい」
「そしたら、火に掛けておいて」
「はい」
「これもまたやって貰うかもだから、ざっくりと手順覚えておいてね」
「はい」
油の温度が上がったので、次から次へとジャガイモの薄切りを鍋に投入していく。
「これできつね色になったら取り出すんだけど」
「はい」
「まだもうちょっと時間掛かるから、そろそろブラッドさん呼んで来て」
「はい」
丁度良い頃合いになったので、ポテトチップスを取り出していく。
が、油を切る為のキッチンペーパーどころか端切れも無い。
「まぁ、そこまで気にしなくても良いか」
「なにがだ?」
「いや、こっちの事です」
「そうか。んで、出来たのか?」
「もう食べれますよ」
「食って良いか?」
「どうぞ」
「熱っちいっ」
「揚げたてですからね。あ、塩振るの忘れてた」
「おいっ」
「どうぞー」
うーん。
端切れって便利そうだから、出来れば大量に欲しいかな。
「おぉ、こりゃ美味ぇな」
「トム君も食べてね」
「はい。いただきます」
あ、俺も食べないと食いっぱぐれる。
メディン婆さんの所為でミルフェイユでも食べれなかったし。
「ナギト」
「はい?」
「後生だ。エールをくれっ」
「えっ」
「頼むっ!」
「エールなんてある訳無いじゃないですかっ」
あるけど。
しかも、大量にっ。
いつもお読み頂きありがとうございます。
まさかこんなに続くとは思ってなかった( ´_ゝ`)




