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369話 よゆうしゃくしゃく

とりあえず今回は値段交渉はせず、コソっとアイテムボックスから取り出した鍋が満タンになる量を売って貰う様頼んだ。


「そんなに気に入ったのかい?」

「はい。なんで仲間の皆にも食べさせてあげたいと思って」

「だったら、いっその事アスガードに住んじまったらどうだい?」

「え?」

「行商か何かなんだろ?」

「いえ、冒険者です」

「そうなのかい?にしては生っ(ちろ)いけど大丈夫かい?」

「ははは・・・こう見えて意外と強いんですよ」

「本当かい?自分で自分の事を強いって言うヤツに限って大した事無いからね」

「見た目よりは。って事ですよ」

「まぁ、見た目だけならアタシの方が強そうだからね。あーっはっはっは」

「それから、もうアスガードに住んでるんで。また買いに越させて貰いますね」

「ありゃま、そうだったのかい?だったら、今後共よろしく頼んだよ」

「はい。それじゃあ、失礼します」

「次はサービスするからアタシが忘れないウチに来なよ?」

「はーい」


振り返ると、真後ろにトム君が立っていて少しビクッとなった。少しだけ。


「ごちそうさまでした」

「はい。どういたしまして」

「皿とスプーンは返しておきました」

「うん。それじゃあ、他に気になるのが無いか探そっか」

「あの・・・」

「ん?」

「流石にお腹いっぱいで・・・」


デスヨネー。


「まぁ、そうだよね。あ、ちょっとそこの路地に」

「え?はい」


路地に入り、周りに人が居ないのを確認してからアイテムボックスに鍋を収納した。


「あ、なるほど」

「うん。持ったまま歩くのしんどいから」

「そう言えば、ナギトさんって食べ物は何が好きなんですか?」

「んー、何でも好きだよ?」

「ナギトさんって、特徴だらけなのに何か掴みどころが無いと言うか・・・」

「えぇっ。めちゃくちゃ普通じゃない?」

「それだけは無いです」

「マジで?マグナスさんがマジシャンってのとどっちがありえないっ?」

「え?さっきのお店の熊みたいな人ですよね?」

「うん」

「マグナスさんがマジシャンなのとナギトさんが普通なの。どっちがありえないかですよね?」

「うん」

「・・・ぐぬぬぬぬ・・・」

「いや、悩みすぎでしょっ」

「ど・・・どっこいですっ」

「マジかっ」


ってか、やっぱマグナスさんがあの見た目でマジシャンなのは普通じゃなかったのか。ちょっと安心。


「俺、そんなヤバい?」

「ヤバいかヤバくないかで言うとヤバいです。あ、でも悪い意味じゃないですよっ」


なにそれ。ギャル的な感じ?

マジヤバくなーい?マジでヤバいんだけどー。的な?


「マジウケるんですけどー」

「えっ?」

「あ、間違えたっ」

「えっ」

「いや、心の声が漏れただけだよ」

「ええっ」

「あ、それの方がヤバいか」

「今の何ですか?」

「何なんだろうね・・・」

「呪文か何かですか?」

「似た様な物かな・・・」

「え・・・」

「あぁ、トム君が思ってる様なのとは違うよ」

「は、はい・・・」

「呪文ってよりは、合言葉みたいな物かな」


俺が理解出来ないから、斜めから見てしまうのかもしれないけど。

流行りって言うのは、ある種の集団ヒステリーだと思ってる。


言葉遣いだったり、食べ物だったり、ファッションだったり。

流行に乗らないと仲間に入れて貰えなかったりするから、合言葉ってのはある意味合ってると思う。


「ナギトさんの故郷って変わってますね」

「まぁねー」

「褒めてないですよ?」

「分かってるよ」


あれ?トム君、結構言う様になってきたな。


「それじゃあ、買い物に戻ろっか」

「はい」

「あっ!てめぇこんな所に居やがったのかっ!!」

「あ、やっべ」

「え?え?」

「ホームで集合ねっ」

「え?え?はい・・・」


誰かは知らないけど、恐らく・・・と言うか確実にロリコン軍団の1人だろう。



ピィィィィィィィィィ───。


あっ、笛まで吹きやがったっ。


「居たぞー、ここだー!」


路地裏に入り込み、角を曲がったタイミングで気配遮断のスキルを発動させる。


いや、待てよ。

これってスキルなんだっけ?加護の効果なのは確かだけど・・・今度ナールさんに詳しく聞いてみよう。


見つかる気がしないので、そんな今どうでも良い事を考えながら余裕綽々で集結しつつあるロリコン達の脇を通り抜け、普通に大通りに戻った。



何事も無くロックスのホームまで辿り着き、ドアに手を掛けてから自分が鍵を持っていない事に気付くが、何の抵抗も無くドアは開いた。


「いやいや、不用心すぎだろ・・・」

「あら?おかえり~」

「あ、ビリーさん帰ってたんですね」

「うん。今日はナギト君1人?」

「トム君も一緒なんで、もうじき帰って来ると思います」

「ジョーはいつ頃帰って来る予定なの?」

「ビリーさんに合わせますよ」

「そう?だったら明日とかどうかしら?」

「分かりました。時間はどうします?」

「そうね~。夜までに帰って来てくれるとありがたいわね」

「りょーかいです」



ロリコン共の所為で色々と予定が狂ってしまった。

昼頃に金の稲穂亭に受け取りに行って、さっさとダンジョンに逃げ込むしかないかな。


いつもお読み頂きありがとうございます。


ちょこちょこルビを振ってますけど、余裕綽々の余裕には振れるのに綽々には振れなくてルビがサブタイトルになってしまいました(*´ω`*)

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