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328話 大人とは

80階のセーフエリアに戻るとトム君が絶賛料理中だった。


「どう?何か手伝う事ある?」

「えっと、後はもう焼くだけなんで」

「そう?何でも言ってね?ジョーさんが手伝うから」

「俺かよっ」

「勉強中なんですから、手伝わせて貰ったらどうです?」

「しかも、俺が下手かよ」

「そらそうでしょ。教わる立場なんですから」

「手伝いだろ?」

「そこは、ほら。料理番としては新入りなんですから」

「まぁ、そうだが・・・」

「それに、ジョーさんってやり出したらハマる気がするんですよね」

「料理をか?」

「はい」

「興味湧かねぇなぁ」

「でも、ブラッドさんと違って食にこだわりとかもあるじゃないですか」

「そりゃ、あんな肉さえ食えてりゃ何でも良いってのと比べたらな」

「ジョーさんはお腹が膨れれば何でも良いって訳じゃないですよね?」

「そうだな」

「って事は舌も肥えてる訳ですよ」

「まぁな」

「一手間で格段に味が上がるなら、その一手間を加えます?」

「そりゃ、やるだろうな」

「でも、味が分からない人はその手間を惜しむんですよね」

「だな」

「ほら。やっぱり素質あるんじゃないです?」

「そ、そうか?」

「それに、献立はその時の料理番が決めれますからね」

「そうだな・・・。お、おいトム。何すれば良い?」


上手い事乗せられてくれたみたいだ。

まぁ、別に全員が料理出来る必要も無いし。ダンジョン産の材料を使って調理する時もあるけど、完成品を盛り付けるだけでも何とかなるからジョーさんに無理矢理料理を覚えさせる意味は大して無い。


「つーか、俺担がれて無ぇか?」

「何の事か分かりませんのだ」

「口調変わってんじゃねぇか」

「まぁ、どうせビリーにはやらされるから覚えといて損は無ぇよな」

「良い旦那さんしてますね」

「嫌味か?」

「いや、素直にそう思いました」

「ナギトに貰った原石もまだ加工してねぇからな。そんな良い旦那でも無ぇよ」

「やっぱり指輪にするんですか?」

「いや、まだ何も考えて無ぇ。やっぱりって指輪が定番なのか?」

「俺の居た国では定番でしたね。婚約指輪と結婚指輪がありましたし」

「どう違うんだ?」

「んー。プロポーズする時に渡すのが婚約指輪で結婚してからお互いにずっと着けてるのが結婚指輪かな?」

「へぇ。平和だっつってたけど、ナギトの故郷もそこそこ危ない所だったんだな」

「え?」

「先に渡してるヤツって高いヤツだろ?」

「そうですね。月給の3ヶ月分が定番とか言いますね」

「やっぱそうじゃねぇか」

「どういう事です?」

「旦那が死んでも、それ売ってしばらくの生活費に当てろって事だろ?」

「え?あ、そうか、そういう意味もありますね」

「だろ?」

「でも、経済力を示すとかこんなにも想ってます。って意味がメインだと思うんですけどね」

「まぁ、そういう意味もあるだろが。やっぱりいざって時の為の保険って意味合いが強いと思うがな」

「んー。元々はそうだったかもですね」

「危なかったのは昔の話で。今は形骸化してるってこったな」

「・・・ソウデスネー」

「どうした?」

「・・・いや・・・あの・・・ケイガイカって何ですか?」

「ふっ」

「鼻で笑われたー。だから聞きたくなかったんですよ・・・」

「隠そうとすっからだ」

「くっ」

「冒険者なんてどーせバカばっかなんだから何でも普通に聞きゃあ良いんだよ」

「それで、どういう意味なんですか?」

「形骸化っつーのはな・・・アレだ。女に宝石を送ったりする様なチャラチャラした軽い男になるって意味だ」


軽い男・・・チャラ男?チャラ神様みたいな?

・・・ん?軽guy・・・化・・・?


「なるほど・・・」

「これでナギトも少し賢くなったな」

「はい。分からない事をジョーさんに聞いてはいけないって学びました」

「なんでだよ」

「いや、100%嘘じゃないですかっ」

「ほら、また賢くなったな」

「何がですか」

「人の言う事を鵜呑みにしてはいけないって学べたじゃねぇか」

「ああ言えばこう言う・・・」

「ま、本来の意味は無くなってるが仕様っつーか形だけが残ってるって意味だな」

「本当っぽい・・・けど、信じないっ」

「はっはっは。疑心暗鬼になっちまえ」

「この大人怖い・・・」

「これからはもっと大人を敬え」

「はい。分かりました」

「やけに素直だな。気持ち悪ぃ」

「心を入れ替えましたから」

「嘘くせぇ」

「準備出来ました」

「お?やっとか」

「結局、ジョーさん手伝ってないですね」

「さ、食うぞ」

「なるほど。それが大人のスルースキルですか」

「くっ・・・」


テーブルに着き、水を配り。

アイテムボックスからマッシュポテトパンを人数分取り出す。


「なんでそれなんだよ」

「大人は好き嫌いしないです」

「くそっ」

「おかわりはあるんで言って下さいね」



ささやかな仕返しをしつつ楽しい昼食の時間は過ぎていった。


いつもお読み頂きありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 婚約指輪がいざという時の保険云々の話は、以前ナギトが説明するシーンがありました 328話で「そうなんですか?」は辻褄が合わない
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