324話 タイムリープ
「良いね」
「え?」
良いね?自分でハードルを上げたんだよ?それで大した物じゃなかった時は分かってるね?って事・・・?
「待ってる時間も楽しませて貰えるなんて最高だね」
「え?」
「ん?」
「いや、ちょっと・・・自分でハードルを上げすぎたかな・・・。と」
「はっはっは。期待してるよ?」
「た、たぶん、喜んで貰えると思います」
「お茶が入りました」
「うん、ありがとう」
「ありがとうございます」
「ナギト様は人を楽しませる天才ですので、オレルス様もご期待されて宜しいかと」
「えっ」
「あれ?いつの間に仲良くなったんだい?」
「お迎えにあがらせて頂きました時に」
「そんな短時間でかい?流石ナギト君だね」
「楽しませたつもりは一切無いんですけどね・・・」
「流石でございます」
イジった上に思いっきりハードルを上げて、俺の抗議する視線をガン無視して頭を下げてから定位置へと戻って行った。
そして、視線をオレルスさんに戻すと。
手を組み、その上に顎を乗せてニヤニヤしていた。
「何だったら、僕に用事が無くても彼女に会いに来るだけでも良いんだよ?」
「へ?」
「僕はついでで構わないから、いつでも遊びに来てくれて良いよ」
「あの・・・」
「うん?」
「メイドさんとは何も無いですよ?」
「恍けなくて良いよ?」
「恍けてなんて無いですよ」
「だって、アンがあんなに楽しそうにしてるのは久しぶり。いや、初めて見たかもしれない。それぐらいだよ?」
楽しそうなんだ?
無表情にしか見えないから全く分からない・・・。
「いや、名前も今初めて知りましたし。会ったのも2回目か3回目ですよ?」
「男女が距離を縮めるのに時間も回数も関係が無い事が往々にしてあるよ」
「そうかもしれないですけど。無いですって」
「どうなんだい?アン」
「いや、何で後ろ向いてるんですかっ」
「ほら」
「いや、ほらじゃないですよ」
「ナギト君も男なんだからちゃんと責任を取らなければいけない時があるよ?」
「いや、だから・・・」
「オレルス様。これ以上はナギト様に嫌われてしまい兼ねないのでこの辺りで」
「まぁ、そうだね」
「お前まで確信犯かよっ!」
「はっはっは。ナギト君は奥手そうだからね」
「・・・・・・」
「でも、アンがナギト君の事を気に入ってるのは本当だと思うよ」
「はい。お慕い申し上げております」
「嘘だっ!」
「本当です」
「ナギト君。女性の言う事は疑うものじゃないよ」
紳士かっ!
「酷いです・・・」
「女性には優しくしないと」
「いやっ、あー・・・まぁ、はい。すいません」
「謝罪を受け入れます」
「はい・・・」
「では、式はいつに致しましょう?」
「式?」
「結婚式です」
「はい?」
「2人が結婚するとなると。流石に僕はこの館を出て行かないとだね」
「いや、ちょっと待って下さい」
「ん?僕も一緒に住んだ方が良い?でも、新婚さんと一緒に住むって言うのは流石にね」
「違います。話をちょっと戻して下さい」
「酷いです・・・」
「女性には優しくしないと」
「いやっ、あー・・・まぁ、はい。すいません」
「謝罪を受け入れます」
「はい・・・」
「では、式はいつに致しましょう?」
「式?」
「結婚式です」
「はい?」
「2人が結婚するとなると。流石に僕はこの館を出て行かないとだね」
「はい。ストーップ」
「うん、どこかおかしかったかな?」
「そうですね。まず、理想としては俺とオレルスさんが最初に会った時ぐらいまで話を戻されて「戻しすぎィ」ってツッコミたかったのは置いておきます」
「うん、流石ツッコミマスターだね」
「久しぶりに嫌な物を思い出しました・・・じゃなくて。なんでそんな完璧にトレースしてるんですかっ」
「戻せって言われたからね」
「はい」
「息合いすぎでしょ・・・」
「付き合いも長いからね」
「はい」
「いや、まぁ、それも本題じゃないんですよ」
「だろうね。律儀に1つずつ突っ込んで行くスタイル。僕は嫌いじゃないよ」
「くそうっ、イジられ方がイラっとするっ」
「それで?どこがおかしかったんだい?」
「いや、今の流れで結婚とか全然出て来てないじゃないですか」
「出ては無いけど、そこは空気を読もうよ」
「いや、そんな空気も無かったですよっ」
「まぁね」
「いや、認めてるしっ」
「先程のは冗談でしたが。ナギト様が望まれるのでしたら結婚も吝かではございません」
「いや、もう何も信じられないです」
「それは婚約破棄と言う事でしょうか?」
「いや、破棄の前に婚約もしてないですっ」
「・・・・・・」
「ナイスツッコミ!って感じで親指を立てなくて良いんですよっ。しかも、無表情で」
「え?ナギト君的に今のツッコミはナイスだったんだ?」
「イジられ方がイラっとする上に恥ずかしいっ」
「これ以上は本当に嫌われそうだから、これぐらいにしとこうか」
「はい」
オレルスさんと1対1だとそうでも無いのに、アンさんが加わるだけでこんなにも激変するのか・・・。
それにしても、息合いすぎだろっ。
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