319話 再確認
「おいっ、お前らいい加減にしろよっ」
「こんなもんで良いか」
「はぁ?」
「トム、離して良いぞ」
「は、はいっ」
ロックスのホームを出て、ブラッドさんが起きてからも引き摺り続けモーリス親方の工房も通り過ぎ、角を曲がれば東門が見える所まで来ていた。
「冗談じゃ済まんぞ」
「はっはっは。まぁ、これでチャラにしといてやるよ」
「何をだよっ?これだぞ?これ」
と、ズルズルになった手や腕を上に向けた。
「んなもんヒール1発で治るだろ」
「つっても痛ぇもんは痛ぇぞ」
「ヒール」
「ほれ、痕も残って無ぇから気にすんな」
「気にするわっ」
「これで起きなかったのもチャラにしてやるってんだ。安いもんだろ?」
「ま、まぁ・・・それなら・・・ん?安いか?結構、痛かったぞ・・・?」
「細けぇ事気にすんな」
「ま、まぁ、そうだな・・・って、細かいか?」
「そんな細かい事気にする様なか細い神経してんだったら寝坊なんてしねぇからな」
「うっ・・・」
「さ、気を取り直してダンジョン行くか」
「お、おう・・・」
結構、酷い事をされてるはずなのにジョーさんに言いくるめられ。
何となく勢いで納得しかけているブラッドさんを不憫に思いながらもユーダリルダンジョンへと向かう。
道中、何度か首を傾げていたので流石のブラッドさんでも納得は出来てない様だった。
当たり前か。
ダンジョンに通じる門をくぐり、守衛さんにギルドカードを提示して通路へと進む。
「まだ余裕はあるんですけど。ボアファングとラッシュブルの肉を集めたいんですけど良いですか?」
「おう。で、どうする?2手に別れるか?」
「俺が居ないと加護の効果が出ないと思うんで、どっちでも良いんですよね」
「別れた方が量は集まるだろうが、合流に時間掛かるかもな」
「そこなんですよね」
「んじゃ、このまま行くか」
「はい」
「トムがタンクで俺がアタッカーだ。ナギトは支援でブラッドを殿にして行くぞ」
「「はい」」「おう」
1階層はアイバットしか居ないのでスルー。
2階層はアイバットとボアファングが居るので最短ルートで3階を目指すがボアファングが居れば極力狩る。
そして、本番の3階層に到着した。
「トム。びびって顔を隠すな」
「はい、すいません」
「受け止める時はこう。重心を落として腕を身体に密着させて盾が動かない様にすんだが、この程度のモンスターを毎回毎回受け止めんのもアホらしいからな」
「はい」
「受け流して壁にでも突っ込ませれば良いんだよ」
「はい」
「で、そん時は腕をこう前に突き出して身体から盾を離す」
「はい」
「この方が操作性も良いのと、自然と衝撃も殺せるからいなすならこっちだな」
「はいっ」
「ブラッドさん、ブラッドさん」
「ん?なんだ?」
「あれですよ、あれ。指導ってあーやるんですよ」
「うっせ」
「おい、ナギト。まだ集めんのか?」
「飽きました?」
「肉が要るならまだ狩るし、要らねぇなら例の階層に行きてぇな」
「そうですね。肉集めはいつでも出来るんで行きますか」
「おう」
そして、人気が無いのを確認してからダンジョンの壁に扉を出し80階層へと移動した。
「えっと、まずは確認をします」
「はい」
「休憩したり、居住スペースとして使うのはここ。79階に通じる方の安全地帯を使用します。81階に通じる方の安全地帯は使用不可。立ち入りも禁止です」
「はい」
「返事が聞こえないですけど、ブラッドさん聞いてます?」
「聞こえてるよ」
「基本的に約束事はこれだけです。後はサボらずにお願いします。って所ですね」
「俺からも良いか?」
「はい」
「全員にって訳じゃなく、基本トムになんだが」
「はい」
「81階には行かないって決まりだな?」
「はい」
「トムは行くなって言われて行くか?」
「行かないです」
「だよな。でも、1人だけ信用ならんヤツが居るな?」
3人の視線がブラッドさんに集まる。
「行かねぇよ」
「まぁ、こう言ってるがコイツの口約束なんて信用ならんのは皆分かってるからな」
「朝苦手なのは仕方ねぇだろ?それに、それ以外は守ってるつもりだ」
「なら、80階に通じる安全地帯に踏み入ったり、覗き込む様な事もしないな?」
「しねぇよ」
「トム」
「はい」
「もしブラッドが81階に行こうとしてる所を見かけたら」
「はい」
「殺せ」
「「え?」」「はぁ?」
「止めたりしなくて良い。斬り殺せ」
「いやいやいや、ジョーさん何言ってるんですか?」
「いや、ナギトが言ったんじゃねぇか」
「いや、そんな事言ってないですよ?」
「そうじゃねぇよ。81階層に足を踏み入れたら全滅確定なんだろ?」
「あー、まぁ、そうですね」
「だから、これは自衛の為だよ」
「でも、だからって殺すなんて」
「ブラッドも行かねぇっつってんだから問題無ぇだろ?」
行かなければ良いだけだから、そんな事にはならないはずだけど。
何て言うか、言い方って大事・・・。
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