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163話 拳と言う名の肉体言語

「おーい、ナギト」

「はい。ヒールですね」

「桶に水入れて持ってきてくれ」

「えっ、あー、はい」


昭和のスポ根ドラマなノリでやるのか。


訓練場の端に水場があり、そこに置いてある桶を取って来る。

因みに、水場と言っても井戸がある訳でも水道がある訳でも無い。

排水口があり、水を使うならここで使え。と言う意味での水場だ。


「直ぐ貯めますね」「ウォーター」

「おう、頼む」


この世界に来て、生活魔法を覚えた頃はポタポタと雫が垂れる程度だったのが今では水道の蛇口を軽く捻った程度の水量が出るようになっている。


「お待たせしました」

「悪いな」


ジョーさんは水の入った桶を掴むとジョーイの顔に水をぶっ掛けた。


バシャッ───。


「ブハッ、えっ、え?え?何が?え?え?」

「いつまで寝てるんだ?早く掛かって来いよ」

「あ、え?んだ?コラァ」

「早く来いって」


ジョーイは立ち上がり両手剣を再び振りかぶる。

先程と同様に振りかぶると同時にジョーさんが突っ込み、今度は右ストレートを放った。

ジョーさんの右ストレートは綺麗に顎先を打ち抜き、ジョーイはその場で崩れ落ちた。


「ナギト、悪いが水を頼む」

「はい」



水を掛け、覚醒させては一撃で意識を刈り取る。

ジョーさんはこれを何度も繰り返した。


ジョーイの顔は腫れ上がり、腕など肌の見えている部分には擦り傷があり、服の下には痣が出来ているだろう。


何度目になるか分からない覚醒を果たした時、これまでと違う反応があった。


「ふぐう」

「「「不遇?」」」

「うわああああああああああん。ごべんなさいいいいいいいいい」


泣き出しちゃった。

まぁ、そりゃそうだよね。この世界では15歳で成人するから来年ジョーイは成人する。

とは言え、14歳ってまだまだ子供だし。

14歳の子供をガチでボコる大人の漢ジョーさん。マジ、パネェっす。


「んで、ナギトどうする?」

「はい?」

「この全く使えそうもないガキにヒール掛けてやるのか?」

「えっ」


こんなボコボコになってるのに掛けてあげるに決まってるじゃん。


「おい、ナギトはお前の事許せないから掛けないってよ」

「えっ」

「うわあああああああん。ごべんなさいいいいいいいいいい。許してぐださいいいいいいいい」

「いやいや、そこまで鬼じゃないから掛けますよ」

「おぉー、ナギトは優しいから掛けてくれるってよ」

「ありがとうございますうううううううううううううううううう」



ジョーイをヒールで治してあげた後、訓練場の端で4人で地べたに座り輪になって話し合いをする。


「まだ全然理解出来てないだろうから説明してやる」

「あの・・・ジョーイも反省してるんで、お手柔らかにお願いします・・・」

「反省してるかは関係無ぇが、気には留めておく。それと、俺は今ジョーイに言ってる」

「はい・・・」

「支援の重要性は理解したか?」

「はい・・・」

「全く理解してないだろうから説明してやる」

「・・・・・・」

「ダンジョンで深い階層まで潜って、薬草もポーションも尽きた状態で支援が居るか居ないかを考えてみろ」

「はい・・・」

「そこでお前は怪我をした訳だ。動けない前衛なんてお荷物以外の何者でも無いな?」

「はい・・・」

「生きて帰るには誰かに背負って貰うしかないな」

「はい・・・」

「前衛が怪我して動けなくなるような階層で2人が戦力外になる訳だ」

「・・・・・・」

「まぁ、お前を捨てて残りのメンバーで逃げ帰るのが正しい選択だろうな」

「うっ・・・ひぐっ・・・」


あ、また泣かした・・・。


「そこに支援が居れば更に潜る事も出来るし、引き上げる事も可能な訳だ」

「うぐっ・・・はい・・・」

「支援アシストってのはパーティにとって生命線なんだよ。分かったか?」

「うぅ、はいっ」

「まだまだ言いたい事はあるが、良く考えてみるこったな」

「うぅ・・・ずびばぜんでした・・・」

「何か言いたい事があればいつでも言いに来い。それじゃあナギト行くぞ」

「えっ、あ、はいっ」



帰り際に昼食代の精算をしてから冒険者ギルドを後にした。

聞きたい事もあったのでそのままロックスのホームへ向かって並んで歩く。


「いやぁ、楽しみだな」

「へっ?」

「あいつら2人だよ」

「あー、えっ、2人共ですか?」

「ん?ナギトから見て、どっちかは見込み無い感じだったか?」

「あ、いや。そうじゃなくて、怒ってるんじゃなかったんですか?」

「あぁ。頭に来てたら相手すらしてねぇよ」

「ちゃんと考えての指導だったんですね」

「まぁ、楽しくてやりすぎちまったがな」

「デスヨネー」

「2人共、先が楽しみで良いじゃねぇか」

「おぉ、才能ありそうですか?」

「んー、まぁ、あるんじゃねぇか?」

「あれ?何か感じた。とかじゃないんですね」

「トムはタッパもあるし、慎重そうな所はタンク向きっぽいからな」

「ふむ」

「ジョーイの負けん気の強さってのはアタッカーにとって大事だと思うしな」

「そうですね」



そうか。

思ってたよりもジョーさんからは高評価だったようだ。

生意気なガキンチョと一緒に潜るって考えると先が思いやられるけど・・・。



いつもお読み頂きありがとうございます。


未成年の飲酒に続いて今度は児童虐待。

ジョーメンバーが芸能人だったら活動自粛か引退ですね(´ε` )

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