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食の革命児  作者: 亜掛千夜
第一章 再出発
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第07話 波佐見家改造

 竜郎が目を覚ますと、そこは自分の部屋のベッドの上だった。

 無意識的にいつも隣にいた愛衣を探し手が動くが、そこには誰もいない。

 そこで寂しさを味わいながら完全に眠気が去る。



「そうか……俺達は帰って来たんだ」



 昨晩帰宅後、家の中の片付けと修理を済ませた竜郎は、皆の勧めもあってリア達の部屋作りは明日に回し、久しぶりに自宅で入浴してから就寝した。

 カルディナ達魔力体生物組は竜郎の中に戻り、リアは美波が一緒に寝る?と聞くと恥ずかしがって断ったので、リアとレーラとイシュタルとニーナは客間で寝て貰った。

 


 竜郎が着替えて二階にある自分の部屋から一階のリビングに階段を下っていくと、お味噌汁の匂いが鼻を擽って来た。


 リビングに行くと既に竜郎以外の全員が揃っており、リアと美波が一緒に台所に立って料理をしていた。

 ちらりと見た限りではお互いにまだ探り探りな面も少し見えたが、それでも変な緊張感も無くちゃんと打ち解けてきているようだった。


 レーラとイシュタルとニーナはテレビにかじりついており、チャンネルをポチポチと変えたりして遊んでいた。


 それからリアと美波が作ってくれた料理を囲みながら、仁が今朝のテレビでやっていたニュースの内容を話してきた。



「どうやら普通の地震じゃなかったって事は、世界中が気付いていているみたいだぞ。

 揺れ方もおかしかった上に、あの規模の地震にしては不自然に被害も少なかったらしいしな」

「やっぱりそうか。でも詳しい所までは分かっていないんだろ?」

「そうだな。けど地面じゃなくて地球自体が揺れていた──宇宙も揺れていたようだ~なんて事は言ってたな。

 中には世界の終わりを告げる予兆だなんてことを言ってる奴らもいるらしい」

「ははっ、オカルト好きな人たちなら真っ先に言いそうだな」



 実際にはその可能性もあったので、完全に嘘というわけでもないのだが、竜郎は特に言及することなく話を進めた。



「空間のヒビ割れついては何か言ってたか?」

「世界中の人が目撃していたらしいが、学者たちが言うには現状では解明できそうにないってさ。

 だからこそ、さっきの世界終末論を本気で信じ始めてる人もいるらしいが……大丈夫なんだよな?」

「ああ、もう二度とあんなことは起こさせないよう、俺も向こうで頑張るから安心してくれ」

「それなら安心ね。でもしばらくは様子見って事で、私や仁君も会社は有給休暇ってことになったわ。

 竜郎たちの学校も今週は念のためお休みですって連絡が来たわよ」

「そうなのか。でもそうなると今日は、やっぱり店とかはやってなさそうだな」



 ということで、今日は家の改造をすることにした。

 朝食を食べ一服し終わると、さっそく地下室作りのために階段のある場所まで歩いていこうとするが、インターフォンが鳴り響き足が止まった。

 それと同時に、竜郎の脳内に直接語りかけてくるような声──念話が響いてきた。



『たつろー、あーけーてー』

『はいよー。今、玄関を開ける』



 相手は愛衣からで、玄関を開ければ私服姿の愛衣が立っていた。

 竜郎は思わず愛衣を抱きしめると、愛衣からも背に手を回してくれる。



「家族と一緒に過ごすのもよかったけど、やっぱたつろーがいないと寂しいや」

「俺も、ずっと隣にいたのに、今日は朝起きたら愛衣がいなくて寂しかった」

「私も──」



 それからまたこいつらやってるよ──という視線も気にせずに、数分イチャコラしてから波佐見家改造計画に戻っていく。



「リアとカルディナたちの分で取りあえず7部屋は欲しいな。物置部屋とかも欲しいか?」

「いいわねー。家族も増えるし収納場所が増えるのは嬉しいわ」

「お母さん、それなら持ち運びが楽なように昇降機も付けますね」

「昇降機ってエレベーターの事よね? 助かるわ~リア!」

「──わぷ。お母さん、苦しいですよー」



 美波にぎゅ~と抱擁されて、リアは小さく抵抗するも、顔は少し嬉しそうにしていた。

 その光景にホッコリしながら、竜郎は父親にも意見を聞いてみる。



「ん~……。贅沢をいうのならバーカウンターとかおいて、オシャレなホームバーとか欲しいな。

 そこで自宅に居ながら美波と一緒に、ゆっくり酒を飲んだりするとか最高じゃないか」

「仁君! それいい! ねぇねぇ、それじゃあ、お母さんはシアタールームとか欲しいわ!

 休日に家に居ながら仁君と映画を楽しんだりできたら最高じゃない?

 それにこっちなら、竜郎やリアも直ぐに楽しめそうでしょ?」

「いいな! 竜郎、そういうのできないか?」

「出来るんじゃないか? まだ換金してないが、お金のアテもあるし、シアタールームは俺も興味がある」



 そこでリアにもスマホで画像を見せたり、どんな機材が必要なのかと相談してみると、現代技術と異世界の魔道技術の融合機材が作れそうだと楽しげに語ってくれた。



「向こうで作った酒を並べて、将来竜郎が大人になったらバーカウンターで一緒に飲むのも楽しそうだな」

「分かった。その時は喜んで付きあわせて貰うよ」

「約束だぞ?」



 男同士で数年先の約束を交わしたところで、まずは地下室へ続く階段を作る場所に穴を開けることにする。


 開けるのは二階へと上がる階段の横。光と火魔法による高火力の極細レーザー光線で床板を切り取っていく。

 それから地面を露出させると、今度は土と闇魔法で敷地内の地盤をかなり深くまで強化していく。


 土を硬く頑丈にしつつも、地震などの振動が加わると上手く分散して建物に揺れを伝えない様な材質に変化させた。


 土と解の混合魔法で地中探査、掘ったら不味そうな場所はないか確認していく。

 それが終わると地下へと続く階段を作りながら光魔法で照らし、水道管なんかが無い辺りまで降りながら部屋となる空間も広げていく。

 その時に出るいらない土はいくらでも入る《無限アイテムフィールド》に収納してしまえば良いので、手間取ることもなく作業は進んでいった。


 地下一階はバーカウンター、シアタールーム、物置の三部屋。

 地下二階はカルディナ、ジャンヌ、アテナ、天照、月読の五部屋。

 地下三階はリアと奈々の部屋プラス、リアの作業部屋の三部屋。

 ──と、十一部屋の空間と各部屋に行くための通路を作り終った。


 それから魔道具で空気が循環できるよう空気口を各部屋通していき、湿気が籠らない様にも設計。

 後は月読を呼び出し、彼女が持つスキル《竜水晶創造》で竜水晶という非常に頑丈で衝撃にも強い物質を生み出し、《竜水晶制御》で壁や床、天井をコーティングしていった。


 これでどれだけ強い衝撃を受けても、崩れて生き埋めになる事もないだろう。



「あっという間に部屋が出来ちまったな」

「まだ扉も何もない、ただの空間って感じだけどな。

 それじゃあ父さん、地下一階の家具とかどうする? とりあえず仮で適当に作っとくか?

 気に入ったらそのまま使えば良いし、後で変えたくなったらいくらでも変えられるが」

「ああ、頼めるか?」

「オーケー」



 竜郎にオシャレなセンスは望めないので、芸術的感性に優れるリアにホームバーや、普通のバーの画像を見せて助言を貰いつつ、竜水晶で適当にパパッと作っていってしまう。

 するとまるで綺麗な蒼いガラスで作ったような、美しいバーカウンターや酒棚が出来あがった。


 シアタールームもDVDやBDを入れる棚や、コーヒーメーカーなどの飲み物類を置いておく棚なんかも竜水晶で作っておいた。


 それからカルディナたちの部屋は、直接本人たちを呼び出してどんな物が欲しいか聞いていき揃えていく。

 直ぐに用意できそうにないものは、後で異世界かこちらの世界で用意すればいいだろう。



「こんな所かな。後は電化製品やら明かりを使えるようにリアが整備してくれれば、ひとまず完成って所か」

「それじゃあ、次は私の番ですね」



 一度皆で上にまで戻ると、リアは波佐見家の真ん中あたりの廊下で立ち止まった。



「この下に、この家じゅうに行き渡らせるためのエネルギー装置を設置してもいいですか? お父さん、お母さん」

「ああ、いいぞ」「ええ、いいわよ」

「ではさっそく──」



 リアは自分の《アイテムボックス》から《鍛冶術》用のハンマーを取り出した。

 それに鍛冶術で生み出した赤茶色のハンマーを重ねると、今度は赤茶の炎を纏わせる。

 そしてその炎を床に塗りつけるようにハンマーで触ると、丸く赤茶の炎が広がって定着した。


 それから軽く床をコツンとハンマーで叩くと、綺麗に丸い切れ込みが入り、さらに指をひっかけて持ち上げる為の溝まで一瞬で出来上がった。

 その光景に竜郎の両親が目を丸くしている間に、リアは溝に指をひっかけて上に持ち上げた。

 するとカポッとはずれて、床下の大地が丸見えになった。


 リアは頭に思い浮かべたイメージを紙に写して排出する水晶玉を取り出し、図を起こしてそれを竜郎に渡した。



「兄さん。こんな感じで穴と管をあけて、このワイヤーを通していってください」

「はいよー」



 五十センチ四方くらいのサイコロ状の穴をあけ、さらに地下室の各部屋に伸びる管を通し、竜水晶でコーティング。

 リアから受け取った何本もあるワイヤーを、竜郎の横に浮遊している杖のコアに収まっている天照の《竜念動》で一本ずつ管に通していった。


 それが終わるとリアは《アイテムボックス》から、四角いボックス状のエネルギー装置を取り出し、最初にあけたサイコロ状の穴に設置し、地下に張り巡らせたワイヤーを繋いでいく。


 この装置には向こうの世界のエネルギー、世界力を圧縮して固めた大きなバッテリーのようなものが入っている。

 これによりワイヤーを通してエネルギーを地下の各部屋や通路へと送れるようになるというわけだ。



「一階と二階の電気はどうするの? リアちゃん」

「それはですね、姉さん。これを各コンセントに装着し、無線でエネルギーを送信します」



 そう言ってリアが沢山取り出したのは、電源タップのような四角いもの。

 そこから伸びているプラグを本来あるコンセントに挿入し、そのタップのソケットに電化製品のコンセントをさせば、本来使われるべき電力も、今リアが設置したエネルギー装置から供給される様になるらしい。



「そんなことが出来るようになったのか」

「はい。地下は難しいのでコードを通しましたが、地上なら三階くらいまでなら問題なく届くはずです。

 エネルギーの供給率が悪いようなら、間に中継を挟めばもっと上まで対応できるはずです」



 こんな技術は向こうの世界でも異常なほど進んだものなので、遠巻きに見学していたレーラやイシュタルなんかは驚いていた。 

 だが竜郎たちはそんなこともできるようになったのかぁ、くらいの気持ちでそれを聞いていた。



「それとこの無線エネルギー供給は、兄さんたちが付けているシステムを起動するための蓄世界力池にも自動で供給されるので、このエネルギー装置があるポイントに立ち寄れば、簡単に今付けている物に補給されていくように設計されています」

「なら俺んち、愛衣んち、後はレーラさんが家を借りたらそこが、補給ポイントになりそうだな」

「予備も沢山あるけど、家にいるだけで交換する手間が省けるのは良い事だよね」



 などと竜郎と愛衣が和やかに会話をしていると、黙って聞いていた仁が質問してきた。



「なあ、竜郎。こっちの世界でシステムを使うには、何か特別な物を付けてないといけないのか?」

「認識阻害の効果で普通の人に見えない様にしているが、普段俺達はこういうのを首から下げているんだ」



 竜郎は認識阻害を切って、自分の首にぶら下がっている世界力を濃縮し固形化した畜世界力池とでも言うべきボタン電池のような形をしたものが、三つ連なってついているペンダントを外して見せた。



「ここから向こうの世界力を自身に供給し、こちらの世界でもシステムや魔法、他のスキルなんか使えるようになるってわけだ。

 向こうに行って帰ってきたら父さん達にもこれを渡すから、普段はなるべく身につけておいてくれよ。

 そうすればいつでもシステムが守ってくれるから」

「なるほど。それでこっちの世界でも魔法とかが使えるようになったわけね」

「そういう事だな、母さん。向こうじゃ有り余ってしょうがないんで、いくら持ってきても文句は言われないからタダで使いたい放題だ」

「もう電気の契約解除しちゃおうかしら。

 めんどくさそうだけど、竜郎の魔法で不自然に思われずに解約できそうだし」

「それを言うなら災害保険とかも解約しちまうか。家がぶっ壊れても竜郎が直しちまうしな」

「いや、別にいいけどさ……」



 お金ならこれからいくらでも作るアテがあるというのに、意外と貧乏性な両親だなと、竜郎はこの時思ったのであった。

 自分も貧乏性だということを棚に上げて──。

できそうなら次回、第08話は12月30日(日)に更新します。

無理そうなら31日の月曜になるかもしれません。

年末は色々と忙しく予定がたてづらいです(汗

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