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食の革命児  作者: 亜掛千夜
第二二章 

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第466話 移住の最終準備

 亜空間での生活を知る亜獣人たちにとっては、もはや別世界ともいえるほど、広い箱庭を用意することはできた。



「これだけ広くすれば、一億人くらいに増えてもやってけるだろ」

「そんなに増えられると、たつろーが困っちゃいそうじゃない?」

「まぁ……そんなに栄えてほしいわけじゃないからな」

「放っておいたら、いつの間にか大帝国とかできとったらおもろいなぁ」

「面白くないっての……。せめて町くらいで留めておいてくれ」



 何故かこちらに移したら大繁栄を遂げていた──なんていう未来を想像し、竜郎はぐったりしてしまう。



「仲間意識は強いですが、そこまで社会性の高い種族でもなさそうですし、村という規模が限界な気もしますね」

「それでもこれだけ広いなら、あちこちに村ができるというのは普通にありそうか……。

 マスターが心配とあらば、監視役を設けてもよろしいかと」

「そこまでしなくてもいいよ。ここでのびのびと、誰にも迷惑をかけず暮らしてくれればな」

「なんだかんだ、たつろーはちょくちょく様子を見ちゃいそうだしね」

「受け入れてしまったからには、理不尽な死に方はしてほしくはないからな」



 彼らの神を気取る気はないが、自分のスキルで作った箱庭で全滅されるのはさすがに目覚めが悪すぎる。

 そのため竜郎は、よほど自業自得な展開でもない限りは、救いの手を差し伸べる気はあった。



「何かの拍子に温厚な種族に切り替わってくれることを祈っておこう」

「いうてあの亜空間で相当な年月おったみたいやし……それはさすがになさそうやけどな?」

「あくまでただの希望だから、もうどっちでもいいさ」



 ここまできたら、もはやなるようにしかならない。そう自分に言い聞かせ、竜郎は前向きに受け止めた。



「それじゃあ最後に住むところぐらいは、こっちである程度用意しておくか」

「いきなり別世界に運ばれて、住む場所がないでは困ってしまいますからね」

「こちらが亜獣人たちに気を使ってとはいえ、我々都合の引っ越しと言えなくもありませんから、それくらいのサービスは確かにありでしょう。さすがマスター」

「はいはい、ありがとう」



 アーサーのさすマスを聞き流しつつ、竜郎はどんな家を建てればいいか少し悩み、まずは亜獣人たちのなじみ深いものを適当に設置してみた。



「さすがにこれは……なんかじゃない?」

「そうか。あんまりか」

「住み慣れてそうではあるんやけどな」



 縄文人もにっこりな竪穴式住居が瞬時に立ち並ぶが、さすがにこちらがサービスで用意するなら、もっといいものにしたほうがいいのかもしれないと、愛衣や千子の微妙な反応で思い直す。

 そして自分たちの家に近い、一軒家をあちこちに建ててみた。



「マスター。あまりにも進んだ文明の住居だと、逆に妙な警戒をしてきそうではありませんか?」

「便利なはずのシステムを使うことすら、あれだけ拒んでいる種族ですからね。

 これも堕落の神による陰謀だ──なんて言っていても私は驚きません」

「確かに。これはやりすぎか」

「こういうのの方が絶対に住みやすそうなんだけどね」



 ああでもない、こうでもないと、それからもいくつかモデルハウスを建造し話し合った結果、何の変哲もない簡素な木の家を採用することにした。



「気に入らないなら、適当にぶっ壊して煮炊きの薪にでも使ってくれればいいしな」

「強度的には魔物一体でも突撃して来たら壊されそうやけど、竪穴式住居に住んどったなら関係ないやろね」

「これが気に入り、居住性の重要性に気が付けば、あとは勝手に自分たちでなんとかするでしょう」



 このレベルの家が、これ以上でも以下でもいいラインだと決定した。

 そのまま土地として平坦で、周囲の魔物は比較的弱く安全。気候も一年通して大きく崩れることのない、温暖な場所。

 なおかつ水場も近くにある、ここに住んでくださいと言わんばかりの場所に、今の亜獣人全員が住めるだけの簡易木造ハウスを並べていった。



「さすがに道を舗装するのはやり過ぎか?」

「できるだけ自然に囲まれてたほうが安心するんじゃない?」

「それもそうか。それじゃあ──────よし、完成だ」



 箱庭世界だけでなく、彼らが移住してきてもすぐに住める場所も作っておいた。

 あとはここに亜獣人たちを移動させるだけ……なのだが、その移動をどうするか考える。



「俺の呪魔法で洗脳して──っていうのが一番簡単そうではあるが……」

「この先生まれてくる次世代の亜獣人たちが、突然の世界の変質を知れば、おかしいと言い出す者もいるやもしれませんね」



 今の世代は洗脳で誤魔化しても、竜郎が放置してから生まれてきた世代の亜獣人たちは洗脳されていない。

 竜郎自身があまりやりたい手ではないというのもあるし、何度もかけ直しに来るのも面倒ではあった。



「となると……何かしらの物語性を、語り継がれるようなストーリーを与えるのがいいかもしれませんね」

「語り継ぐちゅうのは、ずっとやってたことやしな。それがええかもしれへんわ」



 ミネルヴァの意見に千子もすぐ賛同の意を示す。



「勝手に亜獣人側が、納得してくれる理由を作ればいいってことか」

「世界が変わるくらいの理由だし、壮大な感じの方が逆に信じてくれるかも?」

「そこまでいくと、まさに神話のレベルですね。ここはやはり……マスターを神として君臨させるというのはどうでしょう」

「神話というからには、神の存在がいた方が便利そうではあるが、あまり気は進まないな。

 それに神って言うなら、アーサーの方がそれっぽいだろ。

 俺なんて見た目、裕福そうな服を着た少年くらいが精一杯だぞ」

「マスターをおいて私が神などありえません!」

「別に架空の神なんだから、なんだっていいとおもうんだがなぁ……」



 神なんて柄ではないと断りたかったが、このメンバーでやりたい者もおらず、必然的にリーダー的なポジションにいる竜郎が選出された。



「どうせ見た目は、呪魔法やら幻術で変えてまえばええやろ」

「それにあの人たちの場合、自分たちの種族以外の神様なんて認めないんじゃないかな」

「それはそうだな。亜獣人たちのあの様子だと、神の姿を貰った種族みたいに思ってそうだ。

 むしろそっちの方が、喜んで語り継いでくれそうか」

「できるだけ語り継ぎたくなるような方がええやろね」

「できるだけ彼らにとって、都合のいい神話の方がよさそうですね。

 となると次は……具体的な移住理由を考えましょうか」



 亜獣人の神は亜獣神。これでメインの配役が決まった。

 続いて、その配役を活かすそれっぽい理由付けとなるストーリーを相談していく。



「案外、神がそう言ったから! で済みそうではあるがな。私ならマスターがそういえば、それで納得するぞ」

「それはアーサー兄さんが特殊なだけな気がしますが……しかし、彼らもそのあたりは単純そうではありますか」

「単純というか純粋というか、わりと強引なストーリーラインでもそういうものか──と思ってくれそうな雰囲気ではあるな。

 いやでもさすがに舐め過ぎか?」

「とりあえず今は、いろいろ案を出し合ってみようよ。

 具体的にお話を作るのは、その後からでもいいんじゃない?」

「それもそうか」



 これからまた長年語り継がれていくかもしれない話だ。

 適当すぎても良くないと、竜郎たちはイスとテーブルを用意し、そこに軽食やお菓子を並べ、飲み物も置いて長丁場にも備える。

 走り回っていた楓や菖蒲も、静かに寝そべっていたフレイムとアンドレも、食べ物の気配を感じ、竜郎たちより先にテーブルについていた。

 欲望に忠実な幼竜たちの頭を撫でながら、竜郎はホワイトボードも出して書記役をアーサーに任せる。



「というわけで皆、なんでもいいから神話っぽくなりそうな案を出していってくれ」



 できるだけ亜獣人たちが自ら進んで受け入れ語り継ぎたくなるような、そんな壮大な神話を皆で相談し組み立てていった。

次も木曜日更新予定です!

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