第464話 内部処理
「話は決まったわけだし、とりあえずこの人たちはもとに戻してあげても良さそうかも?」
「小世界の移行についても、もう少し皆で相談しておきたいしな」
「そしたら、この3人はどないするん?」
「あ、そうだ、すっかり忘れてたな」
もともとここに至った発端はイヌ系、キリン系、ウマ系の3人の亜獣人たちがリンチされているところからはじまった。
今は竜郎の魔法で周囲を止めているが、それを解けば止まった時が動き出すように、再びリンチがはじまってしまう。
「これが本当に救いようのない重犯罪者であればまだしも、ただの思い込み由来のしきたりですからね。
さすがにこれで殺されるのをただ見ているというのは、気が引けますか」
「この方たちの法では死罪に値するのでしょうが、スキルを取得しただけで殺される……それも、嬲り殺すのは部外者からするとやり過ぎと思ってしまいますね」
アーサーやミネルヴァも、システムからスキルを取っただけという理由で、よってたかってタコ殴りされたうえに殺されるのはやり過ぎと感じ、思わず擁護の声を上げていた。
「そういう決まりで、それを承知の上でやったんだろうが可哀想だよなぁ。
見てしまった以上、さすがに今回は助けておくか。
レベルイーターで吸い取っておけば、無かったことにできるだろうしな」
「それならシステム画面を共有して見られても、表示されないし安全かもね」
一時的に問題ないと洗脳したところで、システム画面に表示されている。
竜郎が干渉できる今ならいいが、しなくなった後に発覚してしまったらおかしなことになる。
そのため久しぶりに竜郎は、人間相手に《レベルイーター》を使うことにした。
(まずはイヌの人……よっと)
竜郎の口から黒い球が飛び出し、イヌ系の亜獣人に吸い込まれ、その情報が頭の中に入ってくる。
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レベル:17
スキル:《忍び足》《かみつく Lv.6》《ひっかく Lv.5》
《体術 Lv.1》《二段飛び Lv.1》《脚強化 Lv.1》
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(たぶんレベル1のやつがそうなんだろうな。
体術くらいなら、自力で取得できそうだが……多分これもだよな。
間違ってたらすまん。死ぬよりはマシだろう)
イヌの亜獣人から、それらしきレベルをそれぞれ吸い取り『Lv.0』にして奪った。
そちらが終われば、今度はキリン系の亜獣人に《レベルイーター》を行使する。
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レベル:21
スキル:《大声》《体当たり Lv.8》《かみつく Lv.7》
《中・後ろ蹴り Lv.9》《強・後ろ蹴り Lv.4》
《気蹴撃 Lv.1》《シャドウダンス Lv.1》
《フックショット Lv.1》
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(シャドウダンス? 見たことないのを取ってるな)
こちらからも『Lv.1』のものは、『Lv.0』にして、最後にウマ系の亜獣人に《レベルイーター》を使う。
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レベル:11
スキル:《即睡眠》《かみつく Lv.4》《二連蹴り Lv.1》
《体術 Lv.1》
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(ああ…………。ちょっと取るのが可哀想だな。でもしょうがない)
これくらいいいだろうと思うが、この亜獣人たちの世界では許されざることであるため、ウマの亜獣人からも、せっかく取得したスキルを奪い去っていった。
3人のスキルレベルを奪ってから、システム画面を見せてもらったが、そちらでは0のものは表示されず、無事に『邪神の誘惑』に負けて取得したとされる能力は封印できた。
「しかしなんというか、この初期スキルだとシステムを使いたくなる気持ちも分かる気がするな」
「そうなの? ちょっと気になるかも」
「忍び足に大声に即睡眠だ」
「「「「あー……」」」」
竜郎と幼竜たち以外の面々が、納得しながらも苦々しい表情に変わる。
「《忍び足》はちょっと使えそうやない?」
「《忍び足》は足音が聞こえづらくなるスキルで、斥候や不意打ちの際には良さそうではありますね。
ですが……正直、この亜空間内に生息するモンスター相手で、元から基礎身体能力が高めの亜獣人たちならば、スキルに頼らず素の忍び足で十分通用するはずです」
「だよね……」
ミネルヴァの補足に、愛衣もそう言って小さく頷き返す。
他の2つも《大声》は大きな声が出せるだけ。《即睡眠》はどんな状況でもすぐ寝られ──というもの。
強さこそが全ての亜獣人たちからすると、初期スキルがこれでは絶望し、理外の力にこっそり頼ってしまおうと思うのも無理はない。
実際に3人に事情を聴いてみれば、初期スキルがあまりにも弱すぎて周りに馬鹿にされていた。
友人が凄い初期スキルを引き当て、それで暴れている姿に憧れ、羨ましく思っていた。
そして何より、初期スキルが弱いと同年代の女性たちからのウケも悪く、モテない。
そういって嘆いていた。
「というか禁忌っていうわりには、初期スキルとか気にしてるんだね。それはいいの?」
「確かに。ちょっと聞いてみるか。そこのところどうなんだ?」
老トドの亜獣人や他の亜獣人たちにも聞いてみたところ、どうやら年寄りたちは厳格にシステムを遠ざけようとしている傾向にある。
しかし若者は、やはり気になってしまうようで、使いはしなくてもどんな物なのか確認したり、見せ合ったりしているのだという。
初期スキルの使用も、たまたま使えるようになったていであれば、才能という扱いになるようだ。
「何だかざっくりした決まりなのだな……」
「まぁ法律とかで細かく決めてるわけじゃなく、フィーリングで良いか悪いか判断してるだけだろうしな。そんなもんなんだろうさ。
さてと。システムの偽装も終わったから、あとはこの人らの傷を治してっと」
竜郎が生魔法で酷い状態だった3人を癒し、さらに先ほどのリンチもなかったことにするよう、記憶を少しだけ改竄。
3人がいつも通りの日常に戻れるように、またシステムに手を出したりしないように、呪魔法で言い含めてから、時を止めるように亜獣人たちを静かにさせていた魔法を解いた。
もちろん、認識阻害はそのままに。
「とりあえず、これで問題はなさそうだな」
「だね」
念のため少し観察していたが、リンチしていたことも、禁忌を犯したことも忘れ去られ、3人は何事もなかったように亜獣人の村に溶け込んでいた。
「それじゃあ、一旦外に出よう」
内部の騒動に区切りがついたところで、今度はまた竜郎の転移魔法にて、亜空間から通常の世界へと全員が一度戻る。
人気のない場所に移動させていたため、周囲には誰もいない。
竜郎の従魔に全てなっているため、あれだけ動き回っていたモンスターたちも大人しく止まっていた。
「いい子だ。こっちに入ってくれ」
そうしたら今度は、《強化改造牧場・改》の入り口を大きく展開。
亜空間の主たちであるモンスターの群体を、竜郎が思いのままにできる亜空間へと収容していった。
竜郎たちも後に続くように、《強化改造牧場・改》内部へと入り込んでいく。
「これでひとまず、何かが起きて亜空間が解けても安心だね」
「せやね。しかしこれやと殺風景すぎへん?」
「さすがにこの状態で亜獣人たちに開放する気はないから安心してくれ」
亜獣人たち用に切り離した区画は、何もない真っ白な空間で、本当に何もなかった。
「ここからどんな世界がいいか決めていこう。皆、案を頼む」
次も木曜日更新予定です!




