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食の革命児  作者: 亜掛千夜
第三章 カルラルブ大陸編

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第45話 鍵がついた理由

 砂の鎖で簀巻きにした幸せのチキーモをつれて、カルディナ城に転移で一度戻ってくると、その足で一階にあるリアの作業場へと向かう。

 ただヘスティアだけは、このチキーモになぜ宝石がついているかなどは興味がないらしく、「ん。フローラおねーちゃんとこ行ってくる」と、パフェを求めて一時離脱した。



「リッアちゃーん。いるー?」

「姉さん? もう帰ってきたんですね。チキーモは無事に……?

 そのニーナさんが引きずってるのがそうですか?」



 扉を開けるや否や愛衣がリアの名を叫ぶと、奥で床に座って奈々と作業をしていた彼女が立ち上がり、2メートルサイズに調整されたニーナが引きずっている件のチキーモを見て目を丸くした。



「おかえりなさいですの!」

「ただいま、奈々」「ただいま、奈々ちゃん」



 奈々はそんなことはお構いなしに、竜郎と愛衣に順番に抱きついて歓迎してくれた。

 こちらも同じように抱きしめかえしながら返事をし、さっそく本題に移っていくことに。



「レベル300を超えているかもしれない魔竜ですか! いいですね! 素材欲しいです!」

「だろ! 欲しいよな!」



 それぞれ使い方は違えど、珍しい魔物の素材に目がない二人はすぐに意気投合した。



「それでなんだけど、ちょっとこのチキーモを調べてほしいの。今、大丈夫?」

「ええ大丈夫ですよ、姉さん。それじゃあ、ちょっと観せてもらいますね」



 簀巻き状態では見えないので、光魔法でブーストした生魔法で完全に眠らせてから、リアの作業場の床に寝そべらせた。

 《万象解識眼》を発動させ空色の目になったリアは、まず一番奇妙なクチバシに埋めこまれている宝石を観ていく。


 次にチキーモの全身をくまなく、それこそ口の奥の奥まで観察し結論が出たようだ。元の紅い瞳になり、黙って見ていた竜郎たちの方に向き直った。



「結論から言いますと、このチキーモは少々変わった癖を持っているようですが、基本的にただのチキーモです」

「特殊な癖?」

「ええ。幸せのチキーモの名に恥じない、特殊な癖です。

 兄さん、この子はどうするんですか?」

「幸せのチキーモとして、魔物博物館に寄贈する予定だ。

 チャックたちとしてはクチバシの宝石さえあれば十分なんだろうが、今も懸賞金目当てで探している人もいるだろうし、もういないと分かってもらうためにも必要だろう。

 個人的には、せっかくのあの大陸ならではの固有種なんだし、あの博物館にチキーモがいた方がいいとも思うしな」

「そうですか。なら、ここで倒してしまってもいいですか?」

「リアがそうしたいっていうのなら、別にいいが……」



 苦しませることなく、眠った状態のチキーモに止めを刺した。

 するとクチバシに埋まっていた宝石が勝手に外れ床に落ちてきた。

 リアはそれを拾うと、竜郎に手渡した。



「まずこの宝石についてですが、これはもともとダンジョンにあった宝物庫とやらの鍵で間違いありません。

 そしてこの鍵は本来それを守る魔物に埋めこまれていて、倒すことで入手できるという代物だったようです」

「ってことは、このチキーモは元ダンジョンの魔物ってことなの?」

「いいえ、違います。もしいたとしてもダンジョンの崩壊と一緒に、その魔物も消え去ってしまったはずでしょうし。

 魔物に埋めこまれるという要素を持っていたこの鍵は、ダンジョンの残骸として残ってしまったようですが」



 おそらくこの宝石は、ダンジョンの個が鍵のガーディアンとなる魔物をランダムで選出し、それを沢山の魔物に混ぜて探させるというコンセプトだった。

 けれど誰も人が来ないままにダンジョン自体が死んでしまったために、どの魔物にも埋めこまれることなく、宝物庫を閉じることもなく、鍵を入れっぱなしていたために入り口は空いたままで、鍵も中にあったということなのだろう。

 だからこそ、この鍵もこの世に残ったのかもしれない。



「それではなぜ、このチキーモに宝石が埋まっていたのかという話になるんですが、兄さん。このチキーモを一度しまって、その内臓──砂肝だけを出してくれませんか?」

「すなぎも……? ああ、砂肝か。分かった」



 言われるがままに《無限アイテムフィールド》に収納し、その機能を使って分解して砂肝だけを取り出した。

 それをリアが用意した板の上に乗せると、彼女は躊躇することなくその砂肝を自分のナイフで切り裂いて、中身を露出させた。



「わおっ」「ピカピカだー!」「「うー!」」

「これって、宝石ですの?」

「なかにはただのガラス玉みたいのもあるが、本物の宝石もかなりあるみたいだな。しかし、なんだってこんなものが……」



 砂肝とは鳥類の特徴的な器官の一つで、人間にはない部位。

 小さくすり潰す歯を持たない鳥類などは、その中に砂利などをいれて食べたものをすり潰している。


 試しに他の内臓だけ取ってあるチキーモの砂肝をだして切り開いてみると、大きいものだとソフトボールほどもある大きな石が入っていた。



「あれ? こっちには宝石は入っていないんだね」

「それこそが、先のチキーモが持つ癖なんですよ、姉さん。

 鳥類などの中には光り物を好む習性があるものもいますが、本来のチキーモにはありません。

 ですがこのチキーモはキラキラしたものを好み、飲み込んでしまう習性があったのでしょう」



 そのため冒険者や旅行客などが砂漠に落としてしまった宝石を見つける度に、喜んで飲み込んでいた。

 そしてその中の一つに、宝物庫の宝石のような鍵も含まれていたのだ。


 けれどこの鍵は普通ではない。

 先ほども言った通り、鍵の守り手となる魔物に埋めこまれるものだった。

 今回はその機能が働き鍵を飲み込んだチキーモを守り手だと勘違いし、このチキーモが挑戦者に鍵持ちだと分かるよう、見える場所へと体内を移動してクチバシにくっ付いた。


 ──というのが、今回のチキーモに何故か埋めこまれてしまった鍵の真相だったようだ。



「宝石を飲み込んで、砂利の代わりにして溜めこむ癖をもったチキーモか。

 まさにこれは、討伐者にとって幸せのチキーモということになるな」

「ですね、兄さん」



 このチキーモを捕まえることができれば、懸賞金などなかったとしても、このチキーモが長年溜めこんできた多くの宝石が手に入る。

 肉は美味しいし宝石も──という、まさに一石二鳥な幸せのチキーモだったのだ。



「はー、謎が消えてすっきりしたぁ。ありがとね、リアちゃん」

「わぷっ──ちょっと姉さん、苦しいですよ」

「おっと、ごめんごめん」



 胸に抱かれ苦しそうにもがいていたリアを、愛衣はぱっと離した。

 そこでリアは一心地つくと、あらためて口を開いた。



「それで真相が分かったことですし、いよいよ魔竜討伐ですよね?

 私もついていきましょうか?」

「リアが行くなら、わたくしもいきますの」

「二人が来てくれれば凄く心強いが、リアも奈々も忙しいだろ?

 それに今回は竜殺しの称号を持っていない、千子とエンターと亜子も連れていこうと思ってるから、それだけいれば負けようがないだろ」

「まあ、そうですよね。正直レベル500とかある上級竜だとしても、よほどのことがない限り、兄さんたちが負けることはないでしょうし」

「そうですの。おとーさまや、おかーさまなら一撃ですの!」



 奈々が可愛らしくパンチの動作をした。

 その姿に癒された竜郎と愛衣は目じりを下げて彼女の頭を撫でると、奈々も嬉しそうに目を細めた。



「あれ? 竜殺しの称号目当てというなら、お父さんたちは連れていかなくていいんですか?」

「あー……、我ながら過保護だとは思うが、万が一があっても困るし今回は見送るよ。

 ほんの少し前までは、ただの一般人だったわけだしな」

「まーそーだよねぇ」



 竜郎や愛衣のときのように、そうしなければいけない状況であったのなら無理をしてでも戦うだろうが、今はそうではない。

 またウリエルやアーサーたちは、莫大なエネルギーと極上の素材を惜しみなく消費して生みだされた、いわば生物としての上位存在。

 そこでいえば異世界人でチートスキルをもらってはいるが、ただの人種である仁や美波たちでは少し不安もある。



「ウリエルたちが戦った中で、どういう竜なのか分かってるところに行ってもらってからのほうが安全だろう。あせって称号を付ける必要もないし」

「それにせめて仁さんを守ってくれる魔物一体くらいは、いてほしいところだしね」



 ということで今回は仁、美波、正和、美鈴はお留守番。

 その代わりに明日は千子、エンター、亜子にも予定がなければ付いてきてもらうことになった。



「にしてもアコさんですか……。できるだけ苦しまないよう、死ねるといいですね……魔竜さん」

「いじめるのは俺の趣味ではないし、そのへんは分かってくれるだろうさ。

 少なくとも俺がいるところではの話だけれども……」



 大悪魔女王とも呼称される大魔族で半神格者の女性──亜子は、竜郎たち仲間に対しては、ただのお色気お姉さんと言ってもいいくらい無害な存在だが、それ以外、特に敵対したり、余計なちょっかいを出す輩にはサディストな面を出してくる。


 おそらく竜郎たちと一緒に魔竜退治に行かなければ、その魔竜は苦しみの果てに死ぬことになっていたことだろう。



「けれどある意味エンターも心配ですの。一撃の火力が高いですし、下手したら魔竜がワンパンで木っ端微塵ですの」

「……兄さん。ぜ~~~ったいに、それだけは阻止してくださいね!」

「りょ、了解だ。妹よ……」



 リアの圧に背中を押されるような形で竜郎たちは外に出ると、そのまま先の三人をスカウトしに向かった。

 特に三人とも大事な用事もないようなので、問題もなく付いてきてくれることとなった。


 その日の夜は一時的にカルディナ城で過ごし、朝は開門の時間に合わせて転移し戻っていった。

 面倒ではあるが、千子たちには入国の手続きをちゃんと踏んでもらって。


 そんなこんなであっという間に新たに三人増えた状態で、アクハチャックたちがいつでも連絡取れるようにと魔物博物館に詰めてくれているので、そこへ向かう。


 いちおう鍵もチキーモも手に入れたので、その報告をしておこうと思ったからだ。

 あとはなんだか思っていた以上に減らしてしまったチキーモについても、少し相談しようかな、というのもある。


 道中、容姿の美しさもあるが、種族的にも一目で珍しいと分かるエンターと亜子が増えたことで、これまで以上に注目されたのはいうまでもない。




 魔物博物館に着くと話は通っていたので、すぐに昨日の客間に通された。

 中にはアクハチャックもウィリトンも、その護衛たちもしっかり揃っている。


 軽く挨拶を交わしながら竜郎たちがソファに座ると、新たに増えた三人が気になっているようなそぶりを見せながらも、アクハチャックは別のことを聞いてきた。



「今日はどうしたんだ? タツロウ。

 やはりデイユナル砂漠の探索は、タツロウたちでも厳しかったか?」

「え?」

「え?」



 竜郎の「え?」に対して、問いかけた本人も同じように言葉を発する。

 竜郎からしたらあの領域に脅威は一切感じていないし、昨日の話し合いが終わった後には日を跨がずにチキーモ一体は確保する予定だった。

 けれどアクハチャックは自分の経験則から竜郎たちの強さを想定しているので、その頭の中では竜郎たちVSデイユナル砂漠の魔物たちで、大激戦が開かれていると思っていた。


 そんな二人の考えの違いから、妙な行き違いが生まれてしまったようだ。



「いやいや、もうチキーモは確保したし、お目当ての──コレも手に入れてきたぞ」

「「は?」」



 ここで話し合っていてもしょうがないし、今日中に魔竜を倒してしまうつもりの竜郎は、証拠である宝物庫への鍵を《無限アイテムフィールド》から取り出し机の上にコトリと置いた。


 兄弟ははじめなにを言っているのか頭が受け付けず、口をポカンとあけてその宝石のような鍵をしばらく見つめた。



「え? は? んんん? ほん、ほんもの?

 えっと……お目当てっていうことは…………そのぉ……まさかぁ……、もう見つけたのか?」

「ああ、間違いなく本物だし、チキーモもちゃんと食べた」

「ものす~~~~~っごい、美味しかったよ! なんと言っても私のお勧めの部位はね────」



 愛衣が昨日のチキーモの味を思い出しウットリした顔で、どれほど美味しかったか力説しはじめた。

 しかし竜郎たちが昨日の今日で、王族が数千年かけて探し求めてきた鍵をあっさり見つけてきたという衝撃の方が強く、その話の中身は半分も入ってこなかった。



「へ、へーーー…………、そうなのかぁ…………」

「なあ、兄さん。いったい、これまでの王族の苦労はなんだったんだろうね……」

「言うな……弟よ…………」



 そして二人はなんだか切ない気持ち一杯になって、仲良く揃って天井を仰ぎ見るのであった。

次回、第46話は4月10日(水)更新です。

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