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食の革命児  作者: 亜掛千夜
第十七章 イシュタル創卵編

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第328話 コンペ開始

 事前に決めていたメンバーたちを連れダンジョンの町に向かい、待っていた案内人に連れられ大きな会場に辿り着いた。


 会場内の壁には番号札の付いた作品がズラリと並べられており、今回はこの中から自分がいいと思った物の数字を書いて投票するシステムとなっている。

 

 誰がどの作品を手掛けたのかは隠すよう徹底しているので竜郎たちはもちろん、この国の王であるハウルや王子であるリオンですら知らない。

 他の芸術家たちを推薦してきた者たちも含めて。


 知っているのは作り上げた本人とウリエルを含むコンペの裏方──スタッフ側だけだが、そちらも厳格にルールを守って自分の主や雇い主にも話していない。

 ウリエルでさえも竜郎の意向があるので、そこはちゃんと守って一切情報を漏らしていない。

 また作風などで芸術家の紹介主には分かってしまう場合は仕方がないとされていたが、ふたを開けてみれば今回は題材が特殊なため、それも分かりにくくなっていたので都合も良かった。



「では、私はここで」

「ああ、ウリエル。よろしく頼んだ。そっちも頑張れ」

「はい、もちろんです。素敵な作品に巡り合えるといいですね」



 司会進行役としてついてきていたウリエルは竜郎たちの元から離れ、リオンたちが用意してくれたスタッフたちの方へ合流していく。

 他に会場内にいるのは連れてきた愛衣、リア、フローラ、ランスロット、シュワちゃん。プラスで審査とは関係のない楓と菖蒲。


 カサピスティ側から選ばれたのはハウル、リオン、ルイーズに、町の運営にも関わっている貴族の中から代表で老紳士が二人。

 商会ギルド側はこの町のギルド長に任命されたマックス・ハウエルに、彼が推薦した別の町で商会ギルド長をしている男女の二名。

 冒険者ギルド側はギルド長であるエディット・オロフソンのみ。

 そして最後にホルムズの職人協同組合側から、組合長──ホルストと組合長補佐──ジョーダンが自ら遠路はるばるこの町までやってきていた。


 壁に飾られている作品を手掛けた芸術家たちは、反応を見られて誰のものかバレるリスクをさけるために、ここには誰も呼んでいない。

 今頃は滞在中の自分の部屋で、選ばれるかどうかをソワソワしながら待っていることだろう。


 竜郎たちが来る前に他の者たちは揃っていたので、これで全員が会場入りしたといっていい。

 それぞれの審査員たちと軽く挨拶を交わし終わったあたりで、ウリエルの良く通る綺麗な声が拡声魔道具に乗って会場内に響き渡った。



「それではコンペを開始いたします。

 まずは魔物園ならびに遊園地のシンボルとなりうる、マスコットキャラクターのデザインが展示されています。

 時間内にその作品を見て周り気に入った作品の番号を記載した紙を──こちらの箱に入れて投票していただきます。よろしいですね?」



 参加者は事前に今回のコンペのルールを知らされていたので、追加の質問を投げかけることなくウリエルの声に全員が頷き返した。



「では皆さまの準備もいいようなので、これよりご自由にご観覧くださいませ」

「よし、それじゃあ俺たちは端から順に見て行こうか」

「うん。その方がどれを見たのか、見てないのかが分かりやすいからね」



 これから時間ごとに区切られて、テーマごとに作品がスタッフたちの手によって置き換えられ順番に選んでいく。

 竜郎たちはただ自分がいいと思った作品の番号を、渡された用紙に記入し入れていくという作業をするだけでいい。


 同じような考えの者が多いのか、一番の方に人が集中しているのを見て竜郎たちは、一番後ろの番号の方から作品を見つめつつ歩を進めていく。



「こっちの世界の住民には伝わりづらいかと思ったけど、案外みんな順応してくれたな」

「ふふふ、我が友はこういうのが好きなのか。

 ならば我がダンジョンにも、ますこっと?なるものを飾ってみるのも良いかも知れぬな」

「いやシュワちゃん、高レベルダンジョンでそれは気が抜けるから止めてくれ。

 もしそれで挑戦者に死なれたりしたら、寝覚めも悪いからな」

「む? そうか? うむ……我が友がそういうのであれば、そうなのだろう。仕方ない、諦めるとしよう」



  世界中を見て周っても類をみない、まったく新しい施設のデザインということもあり、頭の固い芸術家は誰も連れてきてなどいなかった。

 誰もがマスコットキャラクターという概念を、自分なりに噛み砕いてとらえ表現していた。

 予想以上に順応性が高いことに驚きながら、竜郎はシュワちゃんと会話しながら感心する。



「ふふっ。これなんか、ちょっと可愛くないですか? 姉さん」

「あははっ、ほんとだ。マヌケっぽいけど、それが愛嬌になってる感じ」



 リアの目に止まり愛衣も可愛いと評したのは、魔物園の三大名物に据えようとしている魔物である火竜の『ヴィーヴル』、巨大クジラの『バハムート』、子パンダ──の三種の魔物を絶妙にSDキャラ化し三等身で描いたもの。

 数ある作品の中でも、かなり竜郎たちがイメージしていたマスコットキャラ像にマッチしていた。


 ランスロットもなるほど上手いなと、リアと愛衣が見ている作品をじっくりと眺め出す。



「ふむふむ。非常にシンプルだし、これならグッズを作る際の手間もかからない気がするのだ」

「もうランちゃんったら、その考え方は野暮じゃない?

 うーん……でもフローラちゃんなら、こっちの方がいいかも♪」



 フローラがその三つ隣の作品を指さした。そちらは先ほど挙げていた物と比べると、やや複雑なデザインだ。

 けれど最低限の可愛らしさを保ちながらも、元々のモデルとなった三大名物魔物たちの偉大さ、美しさ、愛くるしさ、それらを上手く表現できていた。

 これをグッズ化となると前者と比べコストはかかるだろうが、これはこれで人気が出そうなデザイン案だ。

 こちらであれば前者よりも子供っぽさもなく、大人も身に着けたり購入しやすいようにも思えた。



「なるほど、そっちも捨てがたいですね。迷ちゃいますね、これ。皆さん素晴らしいです」

「選りすぐりの芸術家たちによる、作品のコンペだからな。さすがレベルが高いといったところか。

 楓と菖蒲は気になったのはあったか?」

「「あう!」」



 子供の意見も聞いてみようと竜郎がそう声をかけると、楓と菖蒲はそれぞれ別の作品を指さした。

 楓は分かりやすく可愛い、いかにも子供が選びそうなデザインを。

 片や菖蒲はどちらかといえば渋い印象を受ける、独特なデザインで異彩を放っているデザインを。



「ほう、瓜二つな見た目をしていながら、まったく違う作品をこの子らは選ぶのだな。面白いじゃないか、我が友よ」

「同じ主から同じ素材で生み出され、それでいてずっと二人一緒にいるのに、こうも違うとは。我も不思議な気がするのだ」

「生来生まれ持った感覚の違い──なんでしょうかね。

 そう考えると菖蒲ちゃんは、芸術家肌なのかもしれませんよ」

「フローラちゃんも普段から見ててそう思ってたよ♪

 このデザインは、なかなかちっちゃい子が選ぶとは思えないし♪」

「「あう?」」



 幼いながらもしっかりと感性の違いを見せる二人は、大人たちが何を言っているのかよく分からず首を傾げた。


 そうして魔物園や遊園地内を着ぐるみとなって練り歩くことになるかもしれない、某夢の国でいう某ネズミのような役割を担うであろうマスコットキャラクターのデザイン案を全て見終わった。

 その後、竜郎たちは各々が気に入った作品に投票していく。


 続いては遊園地のメインエントランスで、シンボルとなるモニュメントのデザイン案。

 こちらは遊園地の顔にもなるので、慎重に選んでいく必要があるだろう。



「これは──」

「こっちは──」

「これなどいいのでは──」

「これいいじゃーん♪」

「これが気に入ったのだ!」

「ほう、これは中々おもむきが……」

「「あう!」」



 楓と菖蒲も楽しそうにデザインを見つめ、竜郎たちも楽しみながら真剣に選んでいく。

 そうやって時間ごとに区切られ変化していくテーマ中で、自分がこれだと思うものに投票していき、ウリエルの手腕もあって時間通りに非常に円滑にコンペの選考ターンは終了した。



「これより我々は集計に入りますので、皆さまは発表の時間までご自由にお過ごしくださいませ。それでは──」



 ウリエルに連れられ、投票箱を持ったスタッフたちが部屋から出ていく。

 スタッフたちも選ばれた人員ではあるが、それでも芸術家たちにとっては一生を左右することになる重要な選考。

 ここで大金を渡し集計に手を加える者が出る可能性もゼロではない。


 しかしそういった手合いも、ウリエルがいるため見逃されることはないので安心だ。

 あのスタッフたちの中でウリエルの目をすり抜けられるだけの特殊な力を持った者がいないことも、リアの《万象解識眼》でチェック済みなのだから。



「じゃあ、あとは結果を待つだけだな」

「ちょっと時間があるみたいだし、町の方を軽く見てきちゃう?」

「それもいいですね、姉さん。私も今の町の様子を、軽く見てみたいですから」

「じゃあ決まりだねー♪」



 票数自体は多くはないがテーマはそれなりにあったので、間違いのないよう複数チェックを挟んだ集計には時間がかかる。

 ということで竜郎たちは改めて自分たちの保有する町を、人の営みが始まりだした町を、ここにいる皆で軽く見て回ることにしたのだった。

次も木曜日更新予定です!

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