第315話 味と原因?
海上に氷の陸地を即席で作り、その上に待っていたニーナたちも着地。今狩ってきたばかりの巨大なウニ……のような魔物を、皆で一緒に食べてみることに。
「まずは生でいってみるか」
「醤油とかかけてもいいかもだけど、まずは素材のままの味を確かめた方がいいからね」
「どんな味だろ~、ニーナ楽しみだなぁ」
「「たおちみ~」」
「「フィリリリリイ~」」
ニーナだけでなく、ちびっ子たちもかなり期待しているようなので、それを裏切ることなく美味しいことを願って、愛衣が半分に切り裂いたそれを竜郎が氷の陸地の上に取り出し置いた。
「色はよく知ってる感じのオレンジとかじゃない赤色をしているが、断面はまんまウニだな。
解魔法で調べた限りだと、ちゃんと普通の人たちが食べても体調を崩すような成分は含まれてないみたいだ」
「ってことは、これが美味しかったら普通に売ることもして大丈夫そうだね」
「こうなってくると是が非でも美味しくあってほしいところだが……はてさて」
不味かったとしても、さすがに品種改良をしてまでウニの味を求める気はないので、ここで美味しいかどうかで巨大ウニを今後生産するかどうかが決まってくる。
強さ的にはまず一般で出回るような食材ではないので、美味しければかなり需要は見込めるはずだ。
可食部分であろう、地球のウニでいうところの生殖巣の部分をスプーンですくい、それぞれのお皿に乗せていく。
もしも不味くても大丈夫なように、少しずつ……。
「香りは磯の香って感じだね。これもウニと一緒かも」
全員にいきわたったところで、いざ実食。匙を片手に生のまま、なにも付けず口に運んでいく。
「おおっ、これはいいんじゃないか?」
「うん! パチもんじゃない感でてるね。すんごく高級なウニって感じ。けっこう好きかも、これ」
「ん~~~! ニーナもこれ好き!」
「「あままっ!」」「「フィリリリィィィ」」
甘くて濃厚、それでいて磯の香りが鼻から抜けていく。苦味も雑味もなく、くどくもない。非常に上品な旨味が口の中に広がっていく。
美味しい魔物には及ばないが、準美味しい魔物に認定してもいいレベルの食材だ。
ニーナも気に入り、愛衣と一緒に自分でお代わりをよそっていく。
甘みが強いからか小さな子供──楓や菖蒲、フォルテやアルスも美味しそうに食べるので、竜郎がお代わりをよそって渡せば直ぐに口に放り込んでいった。
「俺もそこまでウニが好きってわけじゃなかったけど、これならもっと食べられるな。次は醤油をつけてみよう」
「あー! 私のもお願い、たつろー」
「ニーナもー!」
「かーでも」「あーめも」
「「フィリリイィ~~」」
「はいはい、順番にな。ついでに白飯も用意してみるか」
白いご飯の上に赤色のウニを乗せていき、その上に醤油を垂らして口の中へ。
「あ~~……これだよ、これ…………美味いわ、こいつ」
「白米、醤油、ウニの組み合わせ、やばいね!」
醤油の塩辛さとウニの甘みが見事にマッチし、白米のお供として最高の役目を担ってくれる。これならば、ご飯が何杯でもいけそうな組み合わせだ。
単体でもおいしかったが、竜郎たちの舌にはこちらの方が刺さった。
ニーナたちも似たような感想を抱き、美味しそうに白米と共にあっという間に平らげていってしまう。
「「ごちそうさまでした」」
「ごちそうさまでした!」「「ごちおーたま!」」「「フィリリリー」」
ほとんどがニーナのお腹の中に入っていったとはいえ、六メートルサイズのウニから取れる可食部を一体分全て平らげてしまった。
空となった抜け殻に、竜郎と愛衣は思わず手を合わせてその命に感謝する。それほど美味しかったのだ。
ニーナたちも竜郎たちの真似をするように、手を合わせて同じように食材に感謝を伝えた。
「これはもう生産するしかないな。ウニに嵌まりそうだ」
「だねだね! 絶対そうすべきだよ! 世界中の人に、この美味しさを届けてあげよ!」
「美味しいモノ食べると幸せだもんね。ニーナも、いっぱい皆に幸せになってほしい」
ニーナはいい子だなぁと竜郎と愛衣で頭を撫でてあげ、これから探しに行くウーウから創造できる美味しい魔物と一緒に、この巨大ウニを大量に生産することを今ここで決めた。
「しかし気になるのは、こいつらは一体全体どこから来たのかってところなんだが……」
「突然ここに、あのレベルの魔物が湧くってのも考えにくいしねぇ。なんでだろ?」
お腹が一杯になると、今度は別のことが気になってくる。
すなわち、あの魔物の出所だ。それをちゃんと調べておかなければ、またここの海で生きる人たちに被害が及ぶことだって十分にあり得るのだから。
「美味しいもの捕れたラッキー──で終わらせていいわけないしな。ちょっと調べてみよう」
「でも調べるっていっても、どうやって調べるの? パパ」
「まずは《魔物大事典》で調べてから、他の生息地を完全探索マップで探って、本来どういうところで生きているのかを探ってみるつもりだ。
そうすればもっと、こいつの生態について詳しく分かるだろうしな」
ということで竜郎はさっそく、《魔物大事典》のスキルで名前と詳細を調べてみた。
名前は長ったらしく発音しづらい名称だったので、竜郎たちは満場一致で巨大ウニで統一することに決める。
そして説明に書いてあった内容だが、おおむね竜郎が戦闘中に集めた情報だけだった。
あれらの能力を持ち、食欲は旺盛。本来はもっと寒い地方の海に生息している。それくらいだ。
いきなりこんなところに現れた原因になりそうな特性などは、一切見当たらない。
「じゃあ、本来はどこにいたんだ?」
《魔物大事典》でも大まかな生息地を表示できるが、名前も存在もちゃんと認識しているのだから、より確実な方法である《完全探索マップ》で検索していくことに。
調べればあっさりと、本来この巨大ウニたちがいる正確な場所が判明する。そこは──。
「……………………あぁ」
「えーと……どったの? たつろー。頭なんて抱えちゃって」
「なんか凄く悪いことが分かったの? パパ」
「…………ある意味、最悪かもしれない」
生息地が分かった瞬間、竜郎は何故ここに急にこの巨大ウニが現れたのか推測できてしまった。
それが正しいかどうかははっきりと分からないが、その可能性は高いだろうなという理由が。
「こいつらがここに来たのは…………俺たちのせいかもしれない」
「どゆこと? なんで私たちが?」
「本来の生息地は世界でも有数の魔境──『ソルルメシア』と呼ばれている海域。
つまり……俺たちがカサピスティからもらった領土なんだ。
それでいて、ここはソルルメシアから海流的に流れ着いてもおかしくない場所でもある」
「あっ…………なんか、私も嫌な予感がしてきたかも…………」
「そうだな。本来ならこんなバカ食いするやつがいれば、すぐに生態系が滅茶苦茶になる。けれど本来いる俺たちの持つ海域は、そんなことにはなっていない。
だってそうだよな。あそこにいる連中は、この巨大ウニと互角に渡り合える魔物ばっかりなんだから」
巨大ウニがいくら海を荒そうとしても、それを捕食する魔物や邪魔をする魔物が沢山いる環境であれば、そうはいかない。
ソルルメシアはそうやって、ちゃんとバランスが取れていた。巨大ウニだけが幅を利かすことなど、不可能な場所なのだ。
なんなら、もっと強力な魔物だって存在している。
しかし──ここ最近では、その魔物たちが取り合っていたバランスを大きく壊す存在が到来する。
巨大ウニ程度の力を持った魔物であっても、地球の海で素潜りして漁をする──下手をすればもっと気軽な感覚で、あっさりと狩って捕食できる存在たちが……。
「つまり……まあ、俺たちがあの海を食材の狩場として好き勝手していたせいで、その脅威から逃れようと本来とは違う生息域に逃げ出した奴がいてもおかしくないわけだ。
ちょうど、ここにいた巨大ウニたちみたいにな」
「ニーナもうちの海でオヤツを採ってたから、そのせいかも……?」
「まあ、もっと別の理由でここに流れ着いた可能性だってゼロじゃない。
流れ着いたわけでもなく、想像もつかない摩訶不思議な現象で現れることだって、こっちの世界ならあり得るかもしれないしな。
だから、必ずしも俺たちのせいって言うわけじゃないが……そういう可能性もあるのは間違いない」
「じゃあどうする? あそこで海の幸を採るのは止めにする?」
「けどなぁ……。あの海は養殖場としても使っているから、そうなると困る。
だからぱっと思いつく限りだと、海域に強力な網でも張ってヤバいのは外に出ていけないよう囲っておくとか、何かしらの対策は今後のためにもしておいた方が良いかもしれないな。
どうせあそこに入って来られる人なんていないんだから、網を張っても誰の迷惑にもならないだろうし」
「だねぇ。なんにしても早めに分かって良かったかも。
帰ったらなんか、フィクリさんたちにお見舞いの品でも渡したほうがいいかもね、こりゃ」
「ついでにこの辺で荒された海藻とかも、できる限り俺が魔法で元に戻しておくよ」
「「フィリリリリリリ~~」」
「え? フォルテたちも手伝ってくれるのか?
……というか海の植物でもいけるのか。さすが竜王種の子」
「「フィリリリィィィィ♪」」
当然、とばかりにフォルテとアルスは頷いた。
こうしてまずは、ウーウよりも先に海の再生に取り掛かることになったのだった。
次も木曜日更新予定です!




