表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食の革命児  作者: 亜掛千夜
第十六章 ドゥアモス復活編
294/451

第293話 実行メンバー

「それじゃあ、プークスの住まいはこっちで?」

「町で働いてくれるというのに、町の中に住まいがないなんておかしいだろう?

 ちゃんとこちらで用意させてもらうよ」

「プークスもそれでいいか?」

「ああ、問題ないぞ」



 竜郎たちの紹介というのと、その計り知れない実力もあって、住まいも貴族待遇の場所をしっかりと用意してくれるとのこと。

 もっともプークス自身は、ずっと洞窟で暮らしていたので寝床など喧しくなければ、どこでもいいという考えのようだが。



「それじゃあ、これで俺たちは帰らせてもらうよ。騎乗する魔物に関しても、近いうちに見せに来るから、そのときまた忌憚のない意見を聞かせてほしい」

「いつでも構わないからね」



 沢山兄弟はいるが、唯一の王位継承者であるリオンにいつでもあえる人間などほとんどいないのだが、竜郎たちは王であるハウルでもいつでもふらっと城に行けば、ほぼ間違いなく会えるのでもはや気にせず、言葉通りその意味を受け取りる。



「町の中が窮屈になったら、気分転換にいつでも町の外の森の方に来てもいいからな。プークス」

「そうさせてもらおう」



 暗に元の姿──竜化したくなったら森に行ってくれと頼み、竜郎たちは一度カルディナ城へ戻っていく。

 ただしプークスのための食材は、彼に渡しておくとすぐに食べてしまうのでリオンの部下の人に渡して管理を任せて。

 そのことで「俺に直接渡しても問題ないのだがなぁ……」と名残惜し気に、プークスは食材を見送っていた。




 そんなこんなで竜郎たちはカルディナ城に帰還する。

 並行してルカピを含め、美味しい魔物たちの量産も進めながら、次のドゥアモス復活に向けての計画を練っていく。



「まず一番手に入れておきたいのは、ドゥアモスに今いる魔物の中で最も近い『アモス』っていう魔物だ」

「どの辺にいるかってのは分かってるんだよね」

「正確な位置までは分からないが、ある程度の分布場所は《魔物大事典》で分かるからな。

 いるのはどこの国の領地ともされてない、島群地帯のどこかにいるらしい」



 場所はイルファン大陸の南部。

 そこは地図上から見ると現在、竜郎たちがいるイルファン大陸を北に据え、東にセルパイク大陸、南に竜大陸、南西に妖精大陸、北西にカルラルブ大陸と、周囲をグルリと大陸に囲まれた小さな島が密集した場所。


 どの大陸ともいい塩梅に離れていて、特に資源に恵まれているわけでもなく、島の周りには一般的に強い方だとされている海洋魔物が何種か住み着いているので、わざわざ近づくのも危ない。

 そんな理由から他の大陸──他の国々からスルーされ、干渉されることなく、あり続けている島々だ。



「じゃあ、そこには誰もいないの?」

「だったら取り放題だね! パパ」



 愛衣の言葉通り誰もいないのなら話は早いと、ニーナは喜色満面。



「いや、それがだな。ミネルヴァが軽く情報を集めてくれていたんだが、いちおう人は住んでるらしい。

 それで島の中のみで完結する、小規模なコロニーを築いているんだとか」

「じゃあ、そのアモスっていう魔物は、その人たちの生活圏にいるってことかな」

「可能性は高いかもしれないな。そんなに広い島でもないだろうし、少なくとも目撃したことはあるはずだ」

「じゃあその人たちに聞けば、すぐに見つかるかもしれないね」

「そうだな。ニーナ」



 他に行きたそうな人もいない上に、とくに危険なこともないだろうからと、竜郎と愛衣、ニーナと楓と菖蒲──その5人でそんな会話をしていると、別の人物が口を挟んできた。



「話は聞かせてもらいましたわ。今回はわたくしも参加させていただきますの」

「「「──っ!?!?」」」

「「ふーたん! どーちゃ、あーちゃ!!」」

「あら、こんにちは。カエデさん、アヤメさん」「「ガウッ!」」



 口を挟んできたのは、まさかの『フレイヤ』。

 以前プティシオル大陸で水の美味しい魔物──メディク探しに同行してから、少しは怠惰生活は鳴りを潜め、ちびっ子ドラゴンたちの相手をしたりと外に出て他者とも関わるようにはなっていた。

 実際に今も聖雷のドルシオン種、ライオンのようなフォルムの竜王種──『ドロシー』と亜種の『アーシェ』二体を、左右の手にぶら下げて構ってあげている。


 だがしかし──そうそう人の本質は変わらない。

 マシにはなったのは確かだが基本的にぐーたらならのは相変わらずで、自分から具体的に何かしようとは言わないタイプのまま。


 だというのに今回付いてきてくれとも言っていないのに、自ら付いていこうと発言するフレイヤに、竜郎も愛衣、そしてニーナですら絶句するほど驚いた。

 その一方で楓と菖蒲はたまに遊んでくれるお姉さんという位置づけなので、機嫌よく彼女と姉妹の名を叫んでいた。


 ドロシーとアーシェはフレイヤの腕から離れ、楓と菖蒲と一緒に何やら座ったままじゃれ合いはじめる。



「……もしかしてダメでしたかしら?」

「い──や、いやいや、はじめてフレイヤからそういうことを言ってくれたから、驚いただけだ」

「そうそう! むしろそう言ってくれて、私たちは嬉しいよ! フレイヤちゃん」

「あらそうですの? なら良かったですわ」



 積極性が芽生えてきたのだなと竜郎と愛衣も、この機会を無為にしてはいけないと、必死でフレイヤの気が変わらないよう声をあげ、実際に二人は感動すら抱いていた。



「でもいったいどうして付いてくれようと思ったんだ?」

「私もちょっと気になるかも。でも全然、理由なんてなくてもいいんだけどね!」

「理由……ですの? 実はこの近くでドロシーさんたちと遊んでいたのですけれど、先ほどのご主人様たちの会話が少し私の耳にも聞こえていまして──」



 普通の人間ではしっかりと聞こえるような距離ではなかったが、はやり彼女は天魔の真祖。種族としての優秀さだけみても、そこいらの竜種すら上回る。少し離れている程度の場所なら、壁を隔てていても彼女の鋭い聴覚に届いてしまうのだろう。



「うんうん、それでそれで?」

「その話の中で他国と交流もなく、閉じこもって生活している人たちがいるとか言ってましたわよ?」

「ああ、言ってたぞ。わざわざ干渉しようと思うほど、魅力のある土地でもないらしいしな」

「そこですわ! わたくしはそこが気に入りましたの! そんな外界から切り離された小島が密集した場所なら、必ずわたくしが気にいるベストぐーたらスポットがあるはずですの!

 今回は一緒について行って、是非下見をしようかと。ご主人様と一緒なら、自分で飛ぶ必要もないでしょうし」

「「……………………えぇ……」」



 これは積極性が芽生えたと言っていいかどうか非常に微妙なラインである。

 予想以上に怠惰よりの事情に、竜郎と愛衣も感動が一気に薄れてしまう。

 だがこれも大事な一歩。そう二人は自分たちに言い聞かせ、フレイヤのその意思を尊重することにした。



「ついでに昨日、ご主人様の眷属に入ったあの『モヤ美』さんですの? あの子にベスト

ぐーたらスポットを見つけたら、そこにも入り口を設置するように言っておいてほしいですわ」

「うーん……理由は非常に微妙だが、行こうという意志は重要だ。それに活動圏が広がるのも悪くはない……よな?」

「だねぇ。十中八九ウリエルちゃんの目から逃れて堂々と、ぐーたらできる場所を確保しておきたいってのが隠すことなく全開で見えてるけど、私たちと関係のない土地に行くようになるってのは悪くなさそう」



 距離的にも自分で飛んで行けなくもないのに、竜郎たちに便乗し、さらに良い場所があったらモヤ美を早速便利なタクシー代わりに使おうとしている。これだけでも、ものぐさな性格が出てしまってはいた。

 しかしカルディナ城周辺にずっといるだけでは、どんなに頑張っても身内以外と接する機会もほぼ0%。けれどその小島なら竜郎たちとは関わりのない場所なので、まったくの他人とコミュニケーションを取る機会も訪れる可能性はここよりずっと高い。

 ならばと、そのことに目をつぶることにした。より怠惰が加速してしまいそうなら、すぐさまモヤ美に通路を消してもらえばいいと。



「ガウッガーウ」

「ガーウガゥ」

「んー? ねーパパ、ママ。今回はドロシーとアーシェも一緒に行きたいって」

「その二人もか? まあ楓と菖蒲は毎回連れて行ってるのに、ドロシーたちはダメってのもひどい話だしな。二人とも、いい子にできるか?」

「「ガゥ!」」



 「当たり前よ!」とでも言いたげに、二人は犬で言えばお座りの体勢で胸を張る。



「ならオーケーだ。一緒に行こう」

「「ガウガウ!」」

「ふふっ、二人とも嬉しそうだね。こんなに喜んでくれるなら、次から他の子たちも外に連れて行ってあげてもいいかもしれないよ?」

「種族的にあんまり見せびらかしてもいいわけでもないんだが……まあ、それもいいかもな。

 必要となれば姿を隠蔽する方法なんて、俺たちにはいくらでもあるわけだし」



 楓と菖蒲は新種の竜王種なので、そうそうバレることはないが、ドロシーもアーシェも既知の竜王種。

 イフィゲニア帝国以外に竜王種に詳しい国はそうそうないが、見識の高いクリアエルフなどはすぐに気が付きそうなものだし、他にも知っている人、知れるようなスキルを持っている人がいてもおかしくはない。

 だが逆にそうだからといって領地内と、事情を知る竜王たちが用意してくれた場所にだけ閉じ込めておくのも違うだろう。


 そう竜郎と愛衣は考えて、彼はドロシーを、彼女はアーシェを抱き上げて、その頭を父母として撫でた。

 そうしていると楓と菖蒲、そして密かにニーナも撫でてほしそうにしてきたので、そちらもしっかりと撫でてあげた。


 そうすると一人寂し気に残るフレイヤが。愛衣がフレイヤちゃんも?と手を伸ばそうとすると、彼女は苦笑しながら断った。



わたくしはいいですわ。その分、おチビさんたちにしてあげてくださいな」

「ふふふっ、分かった。そーするね」



 何はともあれドゥアモス復活計画の実行メンバーは、竜郎と愛衣、ニーナ、楓、菖蒲。に加えて、フレイヤ、ドロシー、アーシェといつも以上にちびっ子多めの構成に決定した。



「まあ今回はドラゴンが出るだとか、そんなこともないし、さくっと現地の人に話を聞いてアモスを手に入れてしまうとしようか」

「だね。あー早くドゥアモスのお肉が食べたいなぁ~」

「ニーナもーー!!」

「「あうあ!」」「「ガウッッ」」

わたくしも美味しい物には興味ありますわ」



 こうして竜郎たち八名は、その正式な名前すらない周囲より隔絶した島群へと向けて、いよいよ出発したのであった。

次も木曜日更新予定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ