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食の革命児  作者: 亜掛千夜
第十五章 はらぺこドラゴン編
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第290話 大団円

 洞窟から出てきた竜郎たちの顔見ると、プークスがさっそく話しかけてきた。



「その顔は、ちゃんと何かを手に入れられたようだな」

「ああ、プークス。ここを守ってくれていてありがとう」

「タツロウに言われるまでもない。俺はキューセイとやらとは関係なく、爺さんのためにやっていただけだからな」



 そう言って口角を上げるプークスは、やっぱりいい奴で、竜郎はお礼の品として美味しい料理を椀飯振舞していくことにした。

 それに歓声を上げながら、プークスはその料理にすぐ手を付けていく。



「うまいっ、ああ、うまいっ。なんでタツロウの出す料理はこんなに美味いんだ。永遠に食べていられるぞ」

「ニーナも分かるー!」

「だろうとも!」

「いや、永遠にはさすがに無理だろうに」



 こちらのツッコミも耳に届かず、相変わらずの食べっぷりを見せてくれるプークスに、竜郎はふと気になったことがあったので彼に問いを投げかけた。



「なあ、プークス。ピークスはこれからどうするんだ?」

「ん? さあなあ。特に何をするということもないが、もうここにいる必要もないし、飢える心配のない場所にでも行ってみようと思ってるところだ。

 世界はこんなにも美味いもので溢れているようだしな」

「いやいや、クスっち。このレベルはここ以外でもそうそう手に入れらんないっすよ」

「くすっち……? 俺のことなのか? ──って、そんなことはどうでもいい! それは本当か!? タツロウ!!」

「あー……まあ、俺たちはもうプークスも何となく察してるかもしれないが、けっこう特殊でな。

 このレベルの美味しいものは、世界的にはかなり稀少なんだよ。だから他所にいっても、そうそう口にする機会はないと思う」

「──なん……だと…………」



 ショックを受けたように項垂れ…………ながらも食べているので元気なのだろうが、それでも、ここまで頑張ったプークスのために何かできないかと考えた竜郎は、一つ閃いた。



「プークスって、今のニーナみたいに小さくなったりとか、俺みたいな人型になることってできるか?」

「うん? 小さくなったり、人型にだって? ふっ、それは愚問というものだぞ、タツロウよ。見よ──!」



 自信満々に体を持ち上げたプークスは、一瞬でまずは小さなドラゴン形態に変身。それから続けて人型にも変身して見せた。

 だがプークスの場合は、そこで終わりではなかった。



「おおっ!? 器用だな」



 縮小化や人型化だけにとどまらず、オオカミそっくりな四足形態やワシのような鳥類形態、カジキのような魚形態に、トンボのような昆虫形態などなど、多種多様な変身をその場で披露した。

 もはや変身芸と言える領域にまで至った見事な形態変化に、竜郎はもちろん、愛衣たちも目を丸くしながら拍手する。



「はっはっは! どうだ! 伊達に暇な時間を過ごしていたわけではないのだ!」



 話し相手もいないため、いろいろと一人でやっていたら、こういうことができるようになったようだ。

 その背景を知ってしまうとどこか悲しくも思えてくるが、この技能は素晴らしいの一言だ。



「それができるなら、プークス。近い将来できる予定の俺たちの町で、治安維持のための警備隊をやってみる気はないか?」

「む? 警備隊?」

「ああ、そうだ。荒くれ者がいたら抑え込んだり、犯罪者がいたら捕まえたり、どうしても腕っぷしが求められる仕事なんだがどうだろう。

 ちゃんと給料も沢山出すし、そのお金で今食べてるような美味しいものも買えるぞ」

「なに!?!?」



 いくら竜郎たち冒険者の頂点の町にして、王族が管理する町とはいえ、ダンジョンを目的に来る冒険者、それ以外にも乱暴狼藉を働く者は出てくることが予想される。

 だが高ランクのダンジョンに挑めるような者が狼藉者だった場合、それを抑えるためにはそれ相応の実力者がいなくては話にならない。

 その治安維持のための人員を、どうするかでもリオンは頭を悩ませていたのだ。


 だがプークスならば、あらゆる形態で見張りパトロールができる上に、腕っぷしも上級竜の中でも中堅クラスということもあって抗える存在はほぼいない。

 少し腕に覚えのある程度の調子に乗った人間を押さえつけるなど訳もないし、人柄的にもプークスは信用がおける。


 そして竜郎たちの町なら美味しいもので溢れており、お金さえあればいくらでも食べられる美食の町。

 プークスになら向いているのではないかと、竜郎はメリットを提示しながら誘いをかけた。



「やる! やるぞ! 俺の前で乱暴狼藉などさせはしないとも!!」

「ほんとか! いやぁ、プークスがいてくれるなら、こんなに頼もしいことはない」



 自分の力が友の役に立ち、なおかつ高給取りで美味しいご飯がたくさん食べられるとあっては、断る理由はない。

 プークスは一も二もなく頷き、その提案に乗ってくれた。



「もちろん、待遇に不満があるならいつでも相談するから言ってくれよ。できるだけ改善できるよう、俺たちも動くからさ」

「そこは俺も信用しているとも」

「ありがとな。となると、帰る前に俺たちも最後の仕事を片付けようか」

「だね。もう心配ないよって、カンポにいる人たちに伝えてこないと」

「これで完全にミッションコンプリートっすね」



 そもそもここに来たのは、プークスが町を滅ぼすのを止めるという依頼からだ。

 その目的を完全に果たしたのだから、無事に依頼を達成したことを伝えるのが義務である。


 そう考えて一度プークスにはここで待っていてもらおうとしたのだが。



「そういうことなら、俺もいこう。本人が直接言えば、これ以上の証明もないだろう」

「そりゃそうなんだが……いいのか?」



 つい先ほどまで恨みもしていた町の住民たちに会いに行くというのは、辛くはないのかと竜郎が確認をするが、本人は本当に何とも思っていない様子で頷いた。



「気にするな。俺はもう気にしてない。奴らもどうやら俺と同じ被害者だったようだしな」

「なら、頼めるか?」

「もちろんだ。任せておけ」



 全竜神が白と言えば白になるを地で行くような割り切り方に、思わず感心すら抱きながら、その言葉に甘えることにして、竜郎たちは麓にある『カンポ』へと急いだ。





 竜郎たちがそのままの姿をしたプークスを連れて麓に降りると、カンポの町は滅ぼしに来たのかと大騒ぎになっていた。

 なのでひとまずプークスには門の外で待機してもらい、竜郎たちだけで町に入ると、すぐにジャポネルシオン共和国の大統領──『パンジー・ギャロウェイ』。町長の羊獣人『アガピト・セルラノ』。鬼人の冒険者ギルド長『トノト・ヤイモソソ』の三人の中心人物が目ざとく見つけ、駆け寄ってきた。



「は、ハサミさん! これはどういう!?」

「落ち着いてください、ギャロウェイ大統領。

 彼はここを滅ぼしに来たわけではないと保証します。

 ですから町の人にも、そう言って落ち着かせてくれませんか?」



 竜郎の嘘のない正直な目を見て、そして大きな門越しにも見える巨大で圧倒的な威圧感を持つ竜が、何もする様子もないことも確認し、そこでようやく彼女は大統領としての落ち着きを取り戻した。



「町長、ギルド長。協力を」

「は、はい!」「お任せあれ!」



 大統領の部下やそれぞれの部下たちが一斉に散らばり、まだ町に残っていた一般市民たちを落ち着かせに走り回る。



『まずは話を通しておいてから来ればよかったな……』

『あはは……けどもう遅いよ、たつろー』

『ん、あとの祭り』

『身もふたもないっすけど、まさにその通りっすねぇ』



 いろいろな出来事があって頭がいっぱいで、そこまで考えていなかったことに竜郎は少し反省する。

 だがやってしまったものはしょうがないので、そんなことはおくびにも出さず、もう問題は解決したという意味も込めて堂々とし続けた。


 やがて騒動も収まり、町が静けさを取り戻した頃。大統領たちとの会話が再開する。



「それで、ハサミさん。ご説明、願えますか?」

「もちろんです。ですが、その前に一つ確認を。

 町長、あそこにいる彼が、この町に報復予告してきた竜で間違いないですね?」

「は、はい! 間違いありません!」

「なら良かったです。そして朗報です。彼の説得に成功しました。なのでもう二度と、ここが彼に滅ぼされることはありません。な? プークス」

「ああ。俺はここを滅ぼすのを完全に止めた。勘違いが発端だったとはいえ、騒がせたようで、すまなかったな」

「「「おおっ」」」



 やはり本人が明確に止めた事を口にし、謝罪までしたことで、窓やドアから覗き見ていた住民たちからも喜びの声が上がった。



「いえ、こちらこそ。我々の戦争に巻き込んでしまったようで、申し訳ありませんでした」

「気にするな。俺ももう気にしない」

「はい。ありがとうございます!」



 普通の人種であり、戦闘能力はほぼないというのに、その責任からしっかりとプークスに向かって、パンジーは大統領として、国としての言葉を彼に告げた。

 これで完全にプークスとジャポネルシオン共和国との和解がなったと言うことでもある。



「いや、やはり世界最高ランクの冒険者といったところか。恐れ入った。

 この件については、俺からも無事に解決したと冒険者ギルドに伝えよう。

 この町の、こんな田舎町のために尽力してくれて、本当にありがとう!!」



 冒険者ギルド長のトノトは、涙目で竜郎の手を取り心からの感謝を伝えてくれた。

 それは町長も同じようで、こちらは号泣しながら竜郎たちに何度も頭を下げて感謝してくれる。

 上級竜からの報復を告げられても、この町に残り続けた者たちだ。それだけここに思い入れもある、大事な町だったということなのだろう。


 そしてその日はこの町にとっての記念日となり、その後、この町が続く限り、末代まで竜郎たちのことが語り継がれるようになるのだった。




 悲壮感漂う町から一転、良い意味でお祭り騒ぎとなった町で、人型形態になったプークスまでも一緒に竜郎たちは猛烈な歓待を受け、その日はその町で過ごすことになり、一夜が明けた。


 また騒ぎになっても大変だと早朝に抜け出し、大統領たちなど最低限の見送りだけで出立の準備を済ませた。



「それじゃあ、僕らはこれで」

「この度は、本当にありがとうございました」

「もういいですよ。お礼だって後で十分に頂けるようですし」

「それはもちろんだ! 冒険者ギルドが責任をもって、そこはしっかりとやるから安心してくれ」



 竜郎たちとしては、その裏で手に入った物らを考えれば、タダどころかお金を払ってすらいいと思える結果だったのだが、冒険者ギルドに所属する最高ランクの冒険者たちとして報酬を自ら減らしたり、もしくは受け取らないとなると、他の冒険者たちの迷惑に繋がりかねないので受け取ることにした。

 それでも当初より上乗せしようとしてくれたパンジーたちの行為は、お気持ちだけでにはしたのだが。



「では依頼の報酬はカサピスティ王都のギルド経由でお願いできますか?」

「わかった。任せてほしい」

「ええ、こちらも早急に用意させていただきます」



 これで報告やらなんやらの、こまごまとしたやり取りは終わった。

 後はもう帰るだけ──となったのだが、ここにはプークスもまだいてくれている。

 もうプークスは、あの雪山から離れる気満々ではあったのだが、それではここの住民たちにとって、ただただ恐ろしい竜だったというイメージがずっと付いてまわることになってしまう。



『ならせめて今残っている人たちにだけでも、プークスがいいやつなんだってのを分かってもらいたいんだが……、なにかいい案はあるか?』

『あるよ! 私たちには最強のコミュニケーションツールがあるじゃん』

『ん、皆で美味しいものを食べる。皆、仲良し。すごく簡単』

『分かりやすいっすけど、そういうわだかまりすら超えた美味しさってのがあるっすからねぇ』

『ニーナもさんせー!』

『ピュィイーー(異存はないわ)』



 竜郎も実はそうすればいいのではないかと思っていたので、全員気持ちは一緒だった。

 そうとなればやることは一つだ。竜郎はプークスも含め、今いる皆で宴会をしないかと持ち掛けた。

 最初は目を丸くしていた代表者たちだったが、竜郎たちがそこまでいうのなら……と食材や料理まで用意してくれるというので恐縮しながらも受け入れてくれた。

 プークスは言うまでもなく……。



「美味いものが食べられるのならなんだってかまわないぞ!」



 誤解だったと分かったとはいえ、嫌っていたはず人間たちと一緒でも一切気にしない図太い心も持ち合わせていたので、問題なかった。



「じゃあ、いっちょ椀飯振る舞いと行こうか」

「ねーパパ。ニーナ、ルカピも食べてみたい!」

「そっちは年代物だし、改めて新鮮なのを……と考えていたんだが…………まあ皆、直ぐ食べたいよな。俺たちじゃ料理とかもたかが知れてるんだが、刺身とか焼くくらいならできるか

 それに、プークスにもお礼がてら渡すつもりだったし」

「ん? 何か美味しい物の話をしているな?

 俺にも聞かせてくれ! 俺とタツロウの仲ではないか!!」



 そして、そのようにご機嫌で竜郎と仲良く接するプークスを見て、まずここにいる代表者たち、覗き見ている住民たちの中での恐ろしいドラゴンという印象から、はらぺこ食いしん坊ドラゴンなのではないかというイメージが生まれ始めていた。


 それは望むところなので、竜郎はありのままのプークスを見てもらいながら、料理や酒、食材の用意を済ませていった。




 その日の夕方。皆いい塩梅にお腹が空いてきたころ、暴力的なまでに空腹を刺激する臭いでカンポの町は満たされていた。

 出された料理は竜郎たちが、これまで得てきた美味しい魔物や準美味しい魔物などをぜいたくに使った最高の品の数々だ。



「では、全てが丸く収まったことを祝して────かんぱーーい!!」

「「「「「かんぱーーい!!」」」」」



 パンジーがやるものと思っていたが、どうしてもと言われ乾杯の音頭は竜郎がやることに。少し気恥ずかしさをにじませながらも、無難に済ませ愛衣たちのいる場所に戻っていく。

 プークスは竜郎の『か』の字のところでもう既に食べはじめていたが、彼らしいなと愛衣たちも笑い、住民たちの中にもポツポツとただ恐がるだけでなく、そんな彼に対して親しみが表情から見て取れるようになっていた。



「────っ!!??」

「うっ──────まあああああああああああああああああああ!!?」

「うぐぅ……ぐすっ、ううぅ……美味しすぎるわ……」

「とーちゃん! 俺も将来、冒険者になるよ!」



 などなど初めて美味しい魔物を食べた住民たちは、言葉も出ない者、叫び出す者、泣き出す者、未来の夢を語りだす者などなど様々な反応を見せてくれていた。



「酒も上手いぞ!!」

「最高ランクの冒険者さまともなると、これだけ美味い酒も大量にポンポン出せるんだな……」

「今まで飲んでいた酒は何だったんだ……」




 お酒に対しても全て好評で、もはやそこにプークスへの恐れなどなく、目の前の美食と美酒に酔いしれるばかり。

 そして竜郎たちも、今回はじめて食べるルカピの実食となった。



「いくつかちょっと傷んでるのもあったが、大丈夫そうなのを用意してみた。

 ほらプークス。プークスにもこれ一匹を丸々プレゼントだ」

「なんだ? それも美味いのか? もちろんタツロウがくれるというのなら、なんでも食べるとも」

「いや、食べるのは今後も食品だけにしてくれよ……?」



 もはや食べ物をくれる凄くいい奴くらいの認識で、竜郎が剣を渡しても食べてしまいそうで少し心配になった。



「──っ!? ……これもまた格別だな。モグモグ……」



 お先にとプークスはワイルドに、上半分を一口で噛み千切り咀嚼して、その味に浸り出していた。

 それを見て竜郎たちもいよいよ我慢ができなくなったので、いざ実食。

 こちらはお上品に、全員分の皿を用意し綺麗に竜郎が氷の包丁で切り取ったお刺身だ。


 まずは醤油などは付けずに、本来の味をと一切れ取って食べていく。



「──っ! 白身だからもっと淡泊かと思ったが……魚肉の旨味がギュッと詰まってて美味いな」

「全然臭みもないし、脂身の多いのと違って歯ごたえがしっかりあって……その上でめっちゃ美味しい!!」

「「うまままーーー!!」」



 楓と菖蒲も初めて食べる種類の美味しい魔物に、思わず天に向かって叫ぶほどのリアクションを取っていた。

 カルディナやアテナ、ヘスティアたちも、各々頬を緩ませ舌鼓を打っている。



「これは醤油もいらないな……。このままで美味しすぎる……」

「これのスパイスとの組み合わせとか、はやく開発してほしいねぇ」



 そのままだったり、オブスルの塩を少し振って焼いてみたりもしたが、やはりこちらも絶品の一言。

 なんだなんだと気になっていた住民たちにも少しだが振舞っていき、いよいよ宴は最高潮に盛り上がっていく。

 お腹がいっぱいになった者は陽気に歌いだしたり踊りだしたり、楽器を弾きはじめたり──なんて者もではじめた。

 プークスもその雰囲気に乗せられるように、やいやいやと囃し立て、ここにいる人たちとだけでも、わだかまりは解けているように竜郎には見えた。



『プークスの印象まで良くしてくれるとはな。ありがとう、タツロウ。竜の生み親として、感謝する』

(気にしなくていいですよ。こっちが気になっただけですから)

『そうか……。だが恩に着る』



 少し離れたところで宴を見てまったりしていた竜郎の元に、そんな言葉が全竜神からかけられた。

 そしてここで話しかけてきたのは、もちろんただこの話をするためではなく、彼の神からの報酬の件について続けて聞かせてくれた。



『今回タツロウに取得許可を出すスキルは、《竜族創造+α》だ』

(…………+1とかでもなく、アルファですか?)

『ああ、どうしようかと悩んだが、それがいいだろうとタツロウのために改良しておいた』

(それはわざわざ……ありがとうございます。効果は何が変わるんですか?)

『本来の素材は必要となるが、真竜の持つ竜族創造系スキルに少しだけ近くなったと言っていいか。

 これからはそのスキルを使う時、具体的にどういうことができる竜がいいのか、タツロウが強く思い浮かべることで、それに寄せた竜種として誕生させられるようになる。例えこの世にない種族になろうとな』

(それは凄いですね!)

『まあ言っても、真竜のように完全なオリジナルが創れるというわけではないのだが、今までよりより望む形に近い竜を生み出せるようになり、幅が広がったと思って貰えればいい』

(なるほど……。それは是非、取得させていただきます!)

『ああ、喜んでもらえたようで何よりだ。それと……一つだけリュルレアから伝言を預かっている。タツロウから皆に伝えてくれ』

(──ホントですかっ! ニーナも喜びます! それでその伝言というのは……?)

『「あなたたちに、もう一度会えなかったことは残念だったけれど、私の人生に悔いはないわ。

 あの時あなたたちに会えて本当によかった、ありがとう楽しかったわ」

 ──だそうだ。他の皆にも、そのように伝えてくれるとアイツも喜ぶだろう』

(…………はい、分かりました。必ず皆に伝えます)

『ああ、ありがとう……。これでようやく、リュルレアの想いを伝えることができた──』

(──ありがとうございます)



 竜郎のありがとうが聞こえたかどうか分からないタイミングで、全竜神との通信は途絶えた。

 もう会うことのない、ほんの少しの出会いではあったが、それでも強い印象を与えてくれたリュルレアに竜郎は感謝の気持ちを抱きつつ、愛衣たちにも、その最後の伝言を伝えていくのであった──。

これにて第十五章『はらぺこドラゴン編』は終了です。

ここまでお読み頂き、ありがとうございました。


今回の章ではリュルレアという本来出会えない現役の九星の登場ということで、私自身、楽しんで書くことができました。


そして次章のはじまりですが、一週間お休みをいただきまして6月2日(木)から再会予定とさせていだきます。それでは、また。

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― 新着の感想 ―
[一言] ニーナの存在を隠したままルカピを遺せなかった詫び石が如き物……せっかくのリュルレア素材がそう見えて物悲しかったところに全竜神預かりの伝言 やはりもう会えないと悟っていたんだとほろ苦く噛みしめ…
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