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食の革命児  作者: 亜掛千夜
第十四章 町作り始動編

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第265話 魔物園完成(仮)

 魔物園入り口から入って右手側──〝鮮麗〟コーナー。

 他二つは形ができたので、最後にここに手を付けていく。

 ここは水棲魔物たちが主軸となり、クジラ──バハムートが主役となる場所でもある。


 こちらも大きく三つの区画に分けられるが全て繋がった状態で、行こうと思えば中の魔物たちは隅から隅まで移動できるようにする予定だ。



「確か暖かい、普通、寒いで大まかに水温で分けるんだよね」

「ああ、手前側を暖かくして、一番奥側を冷たくしていく。

 けど入るのは魔物だから暖かいはほぼ熱湯レベルだし、冷たいはほぼ氷漬けレベルの温度になるけどな」



 とはいえグラデーションのように徐々に温度が変わるように魔法で水温を調整していく予定なので、いきなり入って茹でられたり凍死したり──なんてことにはならないようにはなっている。

 熱いまたは寒いと思えば繋がっているので、魔物たちは引き返せばいい。だからこそ自ずと自分が住みやすい所に居つくようになるだろう。

 ちなみに管理のしやすさも考えて、手間をかけてでも海水の魔物も淡水に適応させた状態で産み出したりしているので、全て同じ水で飼育できるようにもしてあったりもする。


 毎度のように地形を入念に調べて整え、地面を大きくえぐって埋め込むような形で超巨大な竜水晶製の水槽を創り上げて設置する。

 後に位置の調整はあるだろうが、人が通るためのトンネルもしっかりと張り巡らせた。

 そして淡水ではあるが水槽の底にはできるだけ海の底に近い感じなるように、全体に底床を敷き詰めていく。


 それが終わったら、今度は自分の水魔法で生み出した魔力がたっぷり詰まった水を流し込み、《適解水調整》で水棲魔物たちにちょうどいい水質に調整していく。



「まあ魔物だから、よほど適応できない環境でもない限り適応していきそうではあるんだけどな」

「けど住み心地がいいに越したことはないし、やっといたほうがいいよね」

「だな」



 水温は火魔法を付与した数千年は温度が下がらない焼き石と、氷魔法で作った数千年は融けない氷を用意して、カルディナと解魔法で水温を細かく確認しながら設置し調整していく。

 こうして手前は湯気が出るほど熱く、最奥側は氷が張るほど冷たく、中央付近は熱くも冷たくもない常温と分けることに成功した。



「これでいい感じだな。後は適当に内装というか、中身も整えていくか」

「今は底床丸出し状態で寂しすぎるからねぇ」



 水草の類は普通の水草の上位互換ともいえる、環境を整えてくれる水草や藻の魔物なんかも用意しているので緑関係は後に回し、亀の魔物など陸に上がりたい水生生物たちのために小さな陸地を水槽の端に付けていく。

 次に水の中に岩場やトンネルなんかも質感は岩に見せかけた竜水晶で作っていった。



「ついでに、この辺にランスロットのデザインも入れていくか」

「水に沈んだ町がテーマだっけ」

「そうそう」



 地球でプラモデルやジオラマにはまったランスロットが、是非愛衣が言っていたようなデザインを見てみたいと言って、昨夜の魔物園会議の時にわざわざスケッチ画まで持ち込んでプレゼンを──なんてことがあったのだ。

 そしてプレゼンとデザイン画を見た他のみんなの反応も上々で、竜郎もこういうジオラマチックなアクアリウムも遊び心があっていいかもしれないと、そのデザインを取り入れることにした。

 場所は区画中央付近に近い場所で、中央にはバハムートが居座る予定なので集客も多そうな所だ。


 ランスロットのデザイン画を月読に見せて、彼女の魔力頭脳も使った演算におんぶに抱っこでできるだけ正確に水の中に再現していった。



「おー! これはいいんじゃない!?」

「「あう!」」

『ピィュィーーィィーーイ(思っていた以上に幻想的だわ)』




 縮尺は実際にある建物よりも小さめだが、かなりリアルなこっちの世界の風の町並を再現することができた。

 ところどころ建築物には崩れている壁があったりヒビが入っていたり、道にも亀裂が入っていたり途切れていたりと、質感も竜水晶だけでかなり上手く現実に落とし込んでいる。

 長年水没していたかのような苔むした感じもちゃんと出しており、水中という環境の効果もあってかなり幻想的な一角になっていた。



「乱立させてやりすぎると微妙になりそうだが、もう何か所か水槽内にこういう場所があっても面白いかもしれないな。こう……、なんか物語性もありそうな感じでさ」

「いいねぇ。でもそうなると私たちが適当にやっちゃうと変になりそうだし、あとで皆にも相談しなきゃだね。資料用に動画と写真も撮っとこっと」

「こればっかりは、やっぱりデザイン感覚のいい子らに頼むのが一番だからなぁ……」



 竜郎が自身の微妙なセンスに落胆している間に、愛衣はスマホを出して静止画と動画の両方を撮影していく。

 スマホを構える愛衣の前に何をしようとしているか察した楓と菖蒲が出て、映りこみにいこうと動き出す。

 けれど竜郎が抱っこして優しく止めると二人も抱っこの方がいいのか、直ぐに大人しくなって彼の服にしがみついた。



『ピュィーィー、ュィィーーイューゥーィ?(デザインというのなら、いっそのことパトロンになっている芸術家たちにも考えてもらうというのはどうかしら?)』

「あー……空間デザインって感じで魔物園とかのレイアウトとかを、こっちの人間の感性で考えてもらうってのもありかもしれないな」



 今手掛けている水槽もだが、他の区画も含めてまだ完成というわけではない。

 ざっくりとこういうことがしたい、この様にしたいという大枠を定めていっている感じだ。

 身内の間だけならば竜郎たちはこれでも満足だが、不特定多数の人々からお金を取って公開するというのなら、細かなデザインもしっかりと整えておきたいとも考えていた。


 そこでいくと竜郎たちの中で他人に見せられるほど優れたデザイン感覚を持ち合わせているとなると、リアやフローラなんかが候補に挙がる。

 しかしこの2人は他の分野でも優秀なため、竜郎や愛衣なんかよりも余程忙しかったりもする。

 だがカルディナの案も取り入れるのなら、その2人の負担も減らすことができるかもしれない。


 なにせ芸術家の卵とはいえ、その中でも大きく羽ばたけそうだと見込まれている者たちを紹介されて支援している。

 その中には絵画や彫刻、工芸など畑違いな分野の者が多いが、建築デザイナーのような分野を目指している者もいる。

 それでなくても才能は間違いなくあるのだから、センスは他より頭一つ二つ抜けているはずだ。

 希望者がいるなら、デザイン案を考えてもらうのも悪くはないだろう。


 ──と、そこまで考えていると撮影を終えた愛衣も会話に加わってくる。



「ならコンペ? みたいなことをしてみてもいいかもよ。

 全員が全員採用されるわけじゃないだろうし、ある程度競い合ったほうがいい案を出してくれたりもするかもだし」

「ちょっと大げさになるかもだが、それが可能ならやって見てもらうのも有りかもしれないな。

 採用されることで生まれるメリットだって、彼ら彼女らにもあるだろうし」



 竜郎たち肝いりの魔物園や遊園地。これらの一部だけの採用だったとしても、案が取り入れられれば「ここは私がデザインした」と大手を振って言うことができる。

 もしこの2つの施設が有名になれば、それだけその芸術家の卵たちにも箔が付くというもの。



『──────(自分たちの支援している子らを、自分たちの施設で採用して箔を付けさせるとなると、マッチポンプ感が少しありますね)』

『──────(けど悪い案ではないでしょう、天照)』

『──(もちろん、それはそうですよ。月読)』



 天照や月読も肯定的な意見を述べていく。



「なら施設内に通す列車のデザインなんかも丸投げしちゃえそうかも?」

「まだ他のみんなの意見やリオンたちに、芸術家たちの件でお世話になってる職人協同組合の組合長ホルストさんなんかとも、話をしてから決めたほうがいいだろうけどな。概ね採用と考えて行動してみよう」



 今後の指針も決まってきたところで、中身のレイアウトもざっくりと作り上げてから、今後ここにいてもらう予定の魔物たちを放流していく。



「綺麗な子たちばっかりだねぇ」

「そういう子らを選んだからな」



 色とりどりな小さな魚から大きな魚たち。美しい甲羅を持つカメに鮮やかな表皮を持つヘビやトカゲなどの水棲爬虫類たち。

 ペンギンのような鳥類系やイルカやアザラシのような哺乳類系まで、見栄えのいい魔物たちが一斉に自分に合った水温の方へと去って行く。

 去って行く姿も優雅で煌びやかで、非常にゴージャスな団体だ。


 他にも水草系や貝類など、水質管理の役割もかねた魔物たちも出していく。

 こちらは前述の派手な見た目をした魔物たちと比べてしまうと地味だが、それでもこういう存在がいなければ目が痛くなってしまう。

 こういう後ろを支えてくれる子たちもいてこそ、全体的な美しさが生まれるはずだ。


 ここで一度、解魔法をカルディナと一緒に使って、魔物園の内部全ての魔物たちの状態も改めてチェックしていく。



「今のところ環境が合わなくて弱ってたり、ストレスが溜まってそうな子らはいないな。よかった」

「じゃあ、これをひな形として決定しても大丈夫そうだね」

「ああ。それでも一応、毎日様子は見に来るとしても数日は過ごしてもらったほうがいいかもしれないが」

『ピィィュー、イィーュィィーィイ(長期的に見て問題が出て来ることだってあるかもしれないし、私もそれがいいと思うわ)』



 まだまだあちこち粗はあるだろうが、こうして魔物園全ての区画の大枠を埋めることができた。

 これなら最低限リオンやルイーズたち、この町の運営にかかわる人たちへお披露目することもできるだろう。



「じゃあ、あとは列車を通すところも作っておくか」

「こっちも地下鉄──だね。地表は通すとこもうないし」

「できるだけ広くスペースを取りたかったからな。

 地下に通せるなら下に降りる入り口さえあれば、どうとでも列車のスペースは取れる」



 ざっくりと駅は魔物園入り口、魔物園のど真ん中、入り口から見て左中央奥(パンダ近く)、入り口から見て右中央奥(バハムート近く)、入り口から見て最奥中央(ヴィーヴル近く)の5か所に、施設内全体で十字に繋がりあうような道筋で大きなものを。

 さらに入り口と左奥の間、左奥と最奥の間、最奥と右奥の間、右奥と入り口の間と円を描くように中継地点としての4か所の道筋に小さな駅を設置できるように。

 そんなイメージで、地上の入り口と階段、地下トンネルをできる限り頑丈に補強しながら作っていった。


 竜郎ができるまでの簡単な線路敷きなんかも済ませて、今ここでできることは終了した。



「けっこうここまでかかったが、かなり面白そうな感じになったな。完成が今から楽しみになってきた」

「ここまで形にすると、完成したとこのイメージも湧きやすいしね。

 それじゃあ、あとは遊園地も同じ感じでパパっと大枠を完成させて、ルイーズちゃんたちにお披露目しちゃおう」

「だな。けどそっちは地球の遊園地を大幅にパク──参考にさせてもらうから、こっちよりも早くできるはずだ」

「そっちも楽しみだなぁ。今夜もそのことでみんなと相談だね」

「ああ」



 さすがに今日中に遊園地に取り掛かるのは時間的にも微妙なところだったので、今夜また皆で会議して遊園地についても詰めていくことに決める。

 それからこのまましばらくここにいてもらっても大丈夫か魔物たちに従魔の契約のパスを通じて一斉に聞いてから、大丈夫そうだということで、一旦その子らはここに置いてカルディナ城へと帰宅したのだった。

前後する可能性はありますが、木曜更新予定です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >『──────(けど悪い案ではないでしょう、天照)』 >『──(もちろん、それはそうですよ。天照)』 どちらが月読の台詞でしょうか? [一言] >手間をかけてでも海水の魔物も淡水に適…
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