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食の革命児  作者: 亜掛千夜
第十四章 町作り始動編
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第262話 魔物園づくり開始

 翌日、仕切り直しと魔物園予定地にまた戻ってきた竜郎たち。

 今回は地形を盛大にいじったり、加工したりするつもりなので周辺の地形調査や構築した構造の安全確認のお手伝いとしてカルディナを、精密な演算能力のために天照、竜水晶での加工のために月読と、昨日のメンバーに加えてさらに3人が加わった。



「昨日、他の皆ともいろいろ話し合った感じだと、大きく3つのジャンルにザックリ分けてくんだよね?」

「ああ、火竜──ヴィーヴルをメインに据えた、純粋なこれぞ魔物たちって感じを見せていく〝野生〟コーナー。

 クジラ──バハムートをメインに据えた、水棲魔物たちの美しさを見せていく〝鮮麗〟コーナー。

 子パンダたちをメインに据えた、可愛い魔物たちを見せていく〝清福〟コーナーって感じで、まず最初の入り口の分岐点としてジャンル分けしていくイメージになってる」



 魔物園の入り口を頂点として、最奥まで真っすぐ三角形に伸ばした土地を野生コーナーに。

 残り余った左側を鮮麗コーナーにして、右側を清福コーナーにしていく。

 全体の比率で言えば、おおよそ4:3:3で野生コーナーが他2種よりも一回りほど大きくなる予定となっている。



「まずは入り口正面の野生コーナー第1区画『サバンナ』を作っていこう。カルディナと天照は地形の調査をしてほしい」

「ピューーイ」「────」



 これから環境ごと土地をいじっていくのでカルディナと天照に念入りな調査を頼み、竜郎自身はサバンナの平原をイメージしつつ必要な植物なんかも用意していく。


 第1区画分の調査が終わったところで、竜郎は天照の杖を握って全力で土魔法、樹魔法、水魔法を光魔法でブーストして行使していく。



「おー」「「あう!」」



 愛衣や楓、菖蒲が見ている目の前で、ただの広い剥き出しの大地に草木が生え、ボコボコと均一化されていた地面が自然な形の凹凸を作り出していく。

 そして第一区画中央辺りに、魔物たちの水飲み場ともなる小さな湖が湧き出した。



「月読、ケージを作るぞ」

「──!」



 次に月読と一緒に竜水晶と闇属性による変質を混ぜた魔法を行使して、魔物たちと人を隔離する空間を作り出す。

 下は地下にまでがっつりと潜り込んで、上は大型の魔物がジャンプしても頭をぶつけないほどの高さまで伸びて、区画を丸ごと包み込む超巨大なケージがたった数秒で出来上がった。



「おっ、ちゃんと人が通る道もできてるね」

「ああ、結局普通の動物園を見に行った意味が、あまりない形になったがな」



 イメージ的には強大なケージに、大柄の人でも余裕をもって通れる程度の透明なトンネル状の通路が何本も通っていると言った感じか。

 お客はケージの外側から見るもよし、通路に入ってサバンナ区画の中を見るもよしな形になっていた。


 これはちゃんと酸素がなくならないように循環用の装置を取り付ける穴も必要な数だけ開けているので、完全な密封ではなく、魔物たちも息苦しくならないよう細心の注意を払って設計されている。


 厚みは10センチ。これだけだと薄いと感じる人も出てくるかもしれないが、材質は竜郎と月読が作り出した竜水晶。

 イフィゲニア帝国の成熟した竜王たちなら割れないこともないだろうが、それでも簡単にヒビをいれられるような代物ではない。

 竜郎や愛衣たちでも、誰の助力なく1人で割ろうと思うと苦労する。

 少なくともレベル10のダンジョンに挑むような冒険者たちであっても、このガラスを破ることはまず不可能といえよう。


 さらに闇魔法で、竜水晶にも特殊な加工を施している。

 まずその一つとしては、規定値を越える光や音、熱が出た場合、内外に完全に通さず規定値内に抑える効果。

 これは、魔物と人を守るために全ての区画に採用しようと考えているもの。


 いろんな人を迎え入れようとした場合、ほんとうに色んな考えを持った人がやってくる。

 中には驚かせてやろうと大きな音や光を立てて、魔物たちを驚かそうとする輩も出てこないとは限らない。

 またその反対に、魔物側にはその意図はなくとも、強い光や音を出してお客の目や耳に損傷を与えてしまうこともないとは限らない。

 炎系のスキルや氷系のスキルで急激な温度変化を起こさせる魔物、または人に害が及ぶことだってあり得るかもしれないし、なにより魔物によっては快適な環境がそもそも人に害を及ぼす気温だという種もいる。

 だからこそ、闇魔法で竜水晶を変質させて全てをそういう材質に変えておいたのだ。


 外側からしばし眺めた後、竜郎たちは魔物たち用のゲートからケージの中へと入っていく。



「それじゃあ、さっそく入る予定の魔物たちにもどんな感じか確かめてもらうとするか」

「私たちがいいと思っても、魔物さんたちからすれば何か問題があったりするかもだしね」

「「おんま! おんま!」」

「ピィューー」「「────」」



 竜郎の《強化改造牧場・改》の中から最初に召喚されたのは、大型の一本角の生えたクリーム色の馬型魔物の群れ。

 一角からは火花のようにパチパチと小さな電撃が飛び散り、顔つきはとても精悍で凛々しく、サラブレットのような品の良さも漂っていた。


 ただ今は竜郎との契約で大人しくしているが、本来の気性は獰猛そのもの。

 力の差があろうとも主や仲間以外が気やすく近寄ろうとしようものなら、雷を落とし蹴りの一つもお見舞いされてしまう。


 だというのに楓と菖蒲が近寄ろうとするので、カルディナと天照、月読が防いでくれた。

 この馬の雷や蹴りごときでどうなるものではないが、着ているものが汚れてしまうからだ。



「ちょっと周辺を走り回って感想を聞かせてくれ」

「ヒヒーーン!」



 群れのリーダーが雄たけびをあげ、サバンナ区画を群れで走り去っていく。

 人の通路となっているガラスのトンネルも透明だからと無様にぶつかることもなく、ひらりと飛んで向こう側に着地する。



「ぶつかるようならマジックミラーみたいに、こっち側だけは色を付けることも考えてたんだが大丈夫そうだな」

「実際にお客さんを呼ぶときは、人側の通路に手すりとかも付けるんでしょ? そこまで過保護にしなくても大丈夫だって。

 にしても元気なお馬さんたちだねぇ。プニ太くんのお眼鏡には適わなかったみたいだけど」

「等級的に一段釣り合わないから無理だとは思ってたが、いちおう見せに行ったら鼻で笑ってたしな」

「女の子にその態度だと思うと、結構失礼な子だよね。プニ太くんって」



 プニ太くんとは竜郎と従魔契約している、スレイプニルのような8本足の馬の魔物のことだが、非常にプライドが高く竜郎が強制でもしない限り嫁選びでも妥協をする気は一切ない様子。

 お相手候補にどうかと連れて行った馬は、以前雷山で手に入れた馬型の魔物素材から生み出した魔物。

 こちらもそれなりに強いはずなのだが、それでもプニ太に「おいおい、主よ。俺にそんなのあてがう気なのか?」とでも言いたげな反応をされてしまったのだ。

 とんだ俺様馬である。


 それには雷山産の雌ウマもブチ切れて、あわや殺し合いがはじまるかというところだった。



「いちおう、あの群れの中で一番綺麗な毛並みの子を連れて行ったんだけどなぁ。

 相手側にも悪いし、今度はこっちでちゃんと選び抜いた嫁候補だけを見せに行くことにするよ」



 竜郎はその時のことを思い返しながら、次の種類たちを一気に召喚していく。

 翼の生えたライオンの群れ。サイズは大型犬ほどだが、ハリネズミのような毛皮を持つマンモスを3体。

 3本角に牙の生えた軽自動車ほどもある牛の群れに、大型トラックほどもある尻尾が大蛇のイノシシを2体。

 4本足にキツツキのようにとがったクチバシを持つダチョウの群れ。

 センザンコウのような鎧を背中側に持つチーターを6体。8本足に鋭い角、肉食なのを隠そうともしないナイフのような歯を持つキリンが2体。


 それぞれがどれも野生であれば魔物の本能のままに人を食らう、攻撃性の高い魔物たちだ。

 当然、他種族と仲良くするつもりもなく、同種同士で固まって別々の方へと散っていく。



「互いにケンカくらいならしていいとは言ってあるが、ちょっと心配だな。真ん中の湖に癒し効果も付与しておくか」



 ケンカをするなというのは簡単だが彼らは戦闘系の魔物たち。ある程度、戦闘をして暴れなければストレスが溜まってしまう。

 なのでケンカをするのは許可して互いに殺さないよう、やりすぎないよう注意しろと厳命はしてあるのだが、こうも仲良くする気がないと竜郎も少し心配になったようだ。

 水を飲んだり掛けたりすれば傷が癒えるように、サバンナ区画にある真ん中の小さな湖に生魔法による治療効果を付与しておいた。



「それじゃあ俺たちは次のところに行くから、しばらくここにいてくれよー!」

「「いておー!」」



 魔物たちを放浪させておいた状態のまま竜郎は自分のまねをして叫ぶ楓と菖蒲の頭を撫で、それにつられてひょこっと頭を出してきた愛衣の頭も撫でて、今度は野生コーナー第2区画『森林』を作りに一度でケージをでた。


 森林区画も同様にカルディナと天照による調査をしてから、地形の操作。

 できるだけ自然に近い形の森を再現し、こちらには湖と呼べるものはないが、湧き水と水が溜まった場所を見た目で違和感のないように設置しておいた。

 それからこちらも竜水晶製のケージで覆ってから、中に魔物たちを放ってみる。


 こちらに放たれたのは大型で魔法を使うサルの群れ、鬼が混じったゴリラを6体。

 シロ太や子パンダたちとは違う種から素材をもってきたまったく別種の6腕クマを2体、サイのように鼻先に角を持つ迷彩柄のシカの群れ。信楽焼のような、大きく太った幻術使いのタヌキの群れ、長く鋭い爪を生やした前足を持つイタチの群れ、大ワシの群れなど動物系に近い魔物たち。


 なんでも切り裂けそうなハサミを持つ大型犬サイズのクワガタを4体、なんでも貫きそうなドリル状の角を持つ大型犬サイズのカブトムシ4体。

 蜜を作らない戦闘特化の巨大ハチの群れに、巣を張らず自ら走り回って狩猟をする大グモが2体。など、こちらは昆虫系の魔物も加わっている。

 

 それらもやはり戦闘型で本来なら気性の荒い魔物たち。

 森に溶け込むようにそれぞれの種で固まって、この場の居心地を確かめに散っていく。



「こっちもやっぱり、ケンカはOKしておかないといけない子たちだよね?」

「ああ。だからこっちは、もう湧き水とかにも生魔法の回復を付与しておいた」



 魔物の持つ闘争本能という習性なのだから仕方がない。

 魔物愛護団体なんてものがあったら怒られそうだが、こちらの世界にそんな団体は存在しない。

 あえて一種一種で区分けせず、ある程度のケンカを容認したほうが魔物たちも同種同士で戦うよりストレスがないのだ。


 それから竜郎たちは『森林』に続き、『氷雪』を作って環境に適した魔物たちを放す。

 氷雪を終えたらさらに奥に進み、最奥中央を空けて左サイドには『砂漠』区画、右サイドには『沼地』区画と作り上げていき、どんどん投入予定の魔物たちを放っていった。


 そして空けておいた野生コーナー最後の『灼熱』区画。

 魔物園の象徴ともなるドラゴン──ヴィーヴルが住まうに相応しい区画の制作へと、竜郎たちは乗り出していくのであった。

前後する可能性はありますが、木曜更新予定です。

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