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食の革命児  作者: 亜掛千夜
第十四章 町作り始動編
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第259話 もっと派手に

 町を守護する魔物を3種配置し、安全の確保は終了。

 町の運営を担う庁舎建設終了。役人たちの住居建設地やそれぞれのおおよその区画割も決定。

 世界中に根差し信頼度の高い巨大組織、冒険者と商会のギルド設置。

 竜郎たちがもくろむ食道楽の部分を実現するための料理人の確保と、その店の建設予定地も決まった。

 各所に娯楽用の遊技場の設置も決定し場所も確保。

 町の流通や人の流れを一手に担う地下鉄の基礎も整えた。


 竜郎たちが望む町の、おおよその形が実現に向けて本格的に浮かび上がってきたと言えるだろう。

 そんな中、竜郎たちはリオンたちから貰った資料を元に、竜水晶に闇魔法による色付けまでされた町の完成予想模型を作り、他に何か足りないものは無いかと話し合っていた。



「ってなわけで、現状こんな感じになることが決まったんだが、なんか意見がある人はいるか?

 今ならまだギリギリ口出ししても、それほど迷惑せずに済むぞ」

「なんというか、聞いてはいたが、こうして形で見せられると本当にそうなんだって気がするわねぇ」

「だなぁ。まさか成人もしてない息子が町作りに関われるようになってたとか、変な気分がするな」



 竜郎の母──美波、父──仁が竜郎と月読お手製の模型を見ながらそんなことを口にする。



「町作りっていっても細かい部分や運営は丸投げだし、私たちがしてるのは精々土地とお金と技術と武力を出して、好き勝手後ろから口出ししてるだけなんだけどなぁ」

「いや、それだけ出せれば充分口出ししても文句は言われないと思うよ……」

「うちの娘も大概感覚がおかしくなってきてるわね。私たちだけでも一般の地球人の認識を忘れないように気を付けましょうね」



 竜郎や愛衣も一般人の感覚を忘れないように──なんてことを最初の頃は言っていたが、それも今は昔。

 力や権力、財力に溺れはしていないが、すっかりこちらの世界の自分たちにも順応し染まってきていた。

 そんな子供たちを見て親同士で妙な結束が生まれ出している中、竜郎は他の意見を募っていく。



「この……いわゆる色町というのは必要なんでしょうか。

 主様たちの町にこういうのがあるというのが、私はちょっと……」

「あー……、それかぁ。でもそういうのは最初に管理できる状態にしておかないと、勝手にやり出したり、勝手に仕切りだす奴らが出てくるらしいから、しょうがないんじゃないか?」

「そうですが……」



 いわゆる風俗街と呼ばれる一角があることに、そういう方面に潔癖なウリエルが渋い顔をする。

 命がけでお金を稼ぐ冒険者稼業を営む者たちは、生存本能が刺激されるのかそういう店を求める傾向が強い。

 ダンジョンを餌に冒険者たちが押し寄せてくるのなら、先回りしてそういう裏の部分も用意する必要性があるとリオンたちはもちろん、冒険者ギルドの代表としてやってくるエディットも考えたのだ。

 けれど竜郎教があったら入信していそうな彼女からすれば、主の肝いりの町を汚されているような気がしてしならないのだ。



「正直私もあまり気が乗りませんが、締め付けが厳しすぎて変なところで暴発されても困りますからね。

 治安のためにもあってしかるべきでしょう」

「そう……、そうよね。すいません、主様。今の言葉は忘れてください」

「いや、いいよ。いろいろな意見が出るのは悪いことじゃないからな」



 弟でもあるアーサーに諭され、ウリエルも一応の納得をみせていると、愛衣が竜郎の腕にギュッと抱き着いてきた。



「たつろーはそういうとこ、いっちゃダメだからね」

「当たり前だろ。俺には愛衣がいるし、愛衣以外とそういうことをするつもりは今後もない」

「えへへ、だよね!」

「うぅ……娘のそういう話なんて聞きたくない……」

「あなたったらまったくもう……。2人でこっちに来ちゃった時点で、やることやってるに決まってるじゃない。

 第一当然のようにこっちでは寝るとき一緒に部屋に行ってるんだから今さらじゃないの」

「あー……きこえないきこえないきこえない」

「はぁ……」



 愛衣の母──美鈴からすれば責任は確実に取ってくれる上に、嫁いだ先での生活面での不安も一切ないのだから、もはや好きにしなさい状態だったのだが、父──正和はその辺りはまだ受け入れきれてないようだ。

 彼は寝る部屋が一緒でも、ちびっ子たちも一緒なので現実逃避気味に安心していたのだ。

 けれど実際は最近、楓も菖蒲も多少の時間は誰かに預けることもできるようになってきたので、時間を見つけてはやることはやっているのだが……まさに知らぬが仏である。



「うーん、なんだか普通っぽい感じもするっすねぇ」

「これのどこが普通なの? アテナちゃん。長い間この世界で生きてきた私からしたら、充分おかしな町だと思うのだけれど」



 模型をじっと見ていたアテナが不意に誰に言うでもなくこぼした言葉を、レーラが拾った。



「いや、そうかもしんないっすけど、あたしのやってたゲームに出てきた町はもっと面白おかしい感じだったなぁって。

 ほら、あたしらなら、もっと色々できそうじゃないっすか」

「色々ねぇ。ってことだけど、タツローくんたちはどう思う?」

「うーん、そうだなぁ……」



 実力に合わせて選べるダンジョンが10個あって、美味しい食材に溢れ、見たこともない娯楽もある町。

 これだけあれば充分そうではあるが、逆に模型にしてしまったことで、あまり見た目は他の町と全く違う!と言ったオリジナリティは確かに薄く見えてしまう。

 別に竜郎本人もオリジナリティを求めて町を作ろうと思ったわけではないが、せっかくだしもっと面白おかしい見ただけで『なんじゃこりゃ!?』と叫ぶような何かがあってもいいのではないかと、少年らしい気持ちも湧き上がってくる。


 そこでふと、前に考えていたあの施設のことをここで思い出した。



「そうだ。なら魔物園も作っちゃうか」

「魔物園? って、前に言ってた動物園の魔物版的なあれですか? 兄さん」

「ああ、この世界中どこを探しても、生きている魔物を集めて直に見られる施設なんてないだろ?

 魔物たちの生態を知るきっかけにもなるかもしれないし、何より来た人がみたらびっくりすると思うんだ」

「しかしマスター、もう町の区画割はほとんど終わってしまっているぞ?

 一体どこにそんな施設を割り込ませるというのだ?」



 こじんまりとした一角に設けても、それはもうただの見世物小屋でしかない。

 もっと大きく、自然な形で魔物たちの様子が見られるような所を──なんて考えるのなら、それこそかなり広い面積が必要となってくる。

 今更その分の土地を開けてくれとリオンたちにいうのは、酷な話だろう。


 しかし竜郎だって、そのくらいは織り込み済みだ。



「ああ、だからいっそのこと町の中じゃなくて、町の外──壁の側面に作って、町と地下鉄で繋げてしまえばいいんじゃないかって思ったんだが、どうだろう」



 竜郎の構想はといえば、地下鉄をさらにもう一つ下に通して繋ぎ、地下から町の壁を越えた横側に人を運び、巨大な魔物園を建設してみてはというもの。

 町の中はもうほぼ決定状態だが、自分たちの領地内に面した外ならば何をしたって文句は言われない。



「最悪リオンたちに反対されて町の施設としては無理そうでも、妖精郷にいる子供たちの遠足用の場所にしちゃえばいいしな」

「こっちに子供たちを遊びにって話は前からあったしね♪ フローラちゃんも賛成かな♪」



 カルディナ城のすぐ近くにある妖精樹と妖精郷の妖精樹は、互いに行き来する扉にもなる。

 その関係で閉じた郷で無垢なままに育った子供たちの社会見学として、竜郎たちの住む側と安全に交流ができないかという話は前々から上がっていたことだった。

 妖精郷サイドなら竜郎たちの異常性はハウルたちより理解しているので、安全性さえ保たれているのなら反対はしないだろう。



「魔物園かぁ。それも面白そうだけど、それならもういっそのこと、その逆サイドに遊園地も作っちゃおうよ!

 千葉にある某有名テーマパークみたいなやつ!」

「左サイドに魔物園、右サイドに遊園地で町を挟む感じか」

「遊園地なら、あたしがダンジョンの中に作ったやつもあるっすよ?」

「いや、ゴーストとかピエロとか着ぐるみとかが襲ってくるのは、一般人の遊び場としてはダメだろ……」

「あたしはいきなり襲ってこられた方が面白いっすけどねぇ」



 遊園地となれば子供の遊び場であり、大人のデートスポットにもなるような場所。

 アテナがダンジョン内に階層として作った遊園地では、とてもではないがそういう雰囲気にはならない。

 そうかなぁと首を傾げるアテナはスルーして、竜郎はもし愛衣が言うように遊園地まで作ることになった場合の現実的な問題に思い至る。



「けどもし観覧車だのジェットコースターだのって話になるなら、それこそまたリアの力を借りるしかないんだが……さすがにもうキャパオーバーじゃないか?」

「あ、そっか。魔物園だけならたつろーが魔物を用意したりとか、手のかかりそうな部分はできちゃうけど、遊園地の乗り物はリアちゃん頼りになっちゃうよね。

 そこまで考えてなかったよ、ごめんね、リアちゃん」

「いえ、別に構いませんよ、姉さん。それにあのくらいの仕組みなら大した手間でもないですし、息抜きに作るくらい問題ないですから」



 自分の研究に加えて他にも色々と物作りに励んでいるリアは忙しいだろうと思ってのことだったのだが、当の本人はなんでもなさそうにそう言いながら、竜郎へと視線を向ける。



「どちらかというと兄さんやツクヨミさんの方が忙しくなるのでは?

 大型の乗り物ならフレームやらなんやらの外装は竜水晶で作ったほうが頑丈で安全でしょうし、私はその他の機構部分や細かいパーツを作るくらいで、組み立ても説明書を渡すので作ってもらえばいいかなと思ってましたし」

「え? あー……、確かにそれならリアにそんなに負担はないか。最後のチェックはしてくれるよな?」

「はい。そこは私の目を使って確実に」



 外身は竜郎と月読が、中身はリアが、組み立ては竜郎と天照で竜念動でも使ってやってしまえばいい。説明書の読み込みは魔力頭脳を搭載した天照に覚えてもらえばミスもなくやれる。

 確かに魔物園をやって、そちらも──となると竜郎の負担もなかなかなだろう。

 しかし隣で愛衣がキラキラと期待に満ちた目を向けてくるのだから、ここで否と言える竜郎ではない。

 なにより完成してしまえば、こちらでも遊園地デートもできると思えば安いものだ。

 そう考えて竜郎は、魔物園に加え、異世界に地球にあるような遊園地の設立も決意した。


 そうと決まれば行動だ。まず魔物園と遊園地についての説明を添えた書類をミネルヴァに作成してもらい、なんとなくの予想完成模型も作ると、さっそく今も庁舎で仕事中のリオンとルイーズの王族兄妹の元を訪ねた。


 すると何やら慌てた様子で、竜郎に愛衣、おまけで楓と菖蒲が迎え入れられた。



「タツロウさん、アイちゃん! ちょうどいいところに!」

「どったの、ルイーズちゃん」

「どったの、じゃないですよ。今さっき城から連絡が入ったのですが、タツロウさん、アイちゃん、カエデちゃんにアヤメちゃん、ニーナちゃん、カルディナさん、レーラさん、エンターさん、チコさんが、ゼラフィム国において〝聖人〟認定されました!」

「「成人?」」「「あう?」」

「言っておくけど、大人になる方じゃなくて、聖なる人のほうだからね。

 いったいあの国で何をしたんだい? タツロウたちは」

「いや、特にこれと言って……なぁ?」

「うん。色々お話はしたけど、そんな話は出てなかったよねぇ? 突然なんでだろ」



 イシュタルの直筆サインの入った許可証を渡したことか? とも思ったが、それでも今更になって聖人認定いたしますと言われるのは違和感がある。

 実際はゼラフィム国にエーゲリアが訪れるきっかけを作ったからであり、彼の国では大騒動になっているのだが、ネットもないこの世界でそんな情報はすぐに入ってこない。竜郎や愛衣たちからしたら寝耳に水でしかないのだ。

 カサピスティ国側にも、聖人認定したからそっちにいる竜郎様方に伝えておいてくれない?と言った内容を堅苦しく書いた文が速達で届いただけなので、まだその理由も分かっていなかった。



「ちなみに聖人認定されるとどうなるんだ?

 いちおうこの国でも貴族相当のハイアルヴァ勲章? だったかをもらってたけど、なにか問題があったりするのか?」

「いいや、特に我が国としては問題はないよ。

 聖人といっても別に無理やり国に誘致されたり入信したことにされたりなんてこともないしね。

 ただちょっと大司教並みの権威を持った名誉勲章みたいな、それこそさっき言ってたハイアルヴァ勲章と同じようなものだから、向こうでも冒険者ランクに頼らなくても多少無茶が通るようになったくらいに思っておけばいいんじゃないかな」

「大司教並て……。そんなものを貰うような覚えもないんだが……」

「だよねぇ、返したほうがいいかなぁ」

「返上しちゃうのは逆に失礼になっちゃうから、やめておいた方がいいよ、アイちゃん。

 どうしてもイヤっていうなら、そうしても文句は言われないだろうけど……」



 竜郎たちも別にどうしても嫌だというわけではない。タダより恐いものは無い精神で、突然降ってわいたように渡された名誉称号に面喰らっているだけだった。

 聖人認定の関係で何かあったりなど、いざとなったらエーゲリアやイシュタルにでも相談すればいいかと、その元凶が含まれているとも知らずに、この件は保留にすることに決めた。


 そうして世間話もそこそこに、落ち着いたところで竜郎はさっそく本題へと移っていくことにするのであった。

前後する可能性はありますが、木曜更新予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] とうとう誕生するのでしょうかゲームセンターやロボレスリングにクマ牧場w エアホッケー、ゴーカート用のサーキットの様な遊びもありかもです
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