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食の革命児  作者: 亜掛千夜
第十二章 世界間貿易足がかり編
233/451

第232話 今後の予定

 球技大会をそこそこの成績を収めて終わってから数日が経ち、すっかりといつもの日常に戻っていた。

 その日も午前の授業を終え、竜郎は友人3人と机を囲んで昼食の時間を過ごしている最中だ。

 楓と菖蒲は竜郎の近くで小さな机と椅子について、お弁当をお行儀よくいただいている。基本的にはいい子たちなので、今日は竜郎だけで面倒を見ていた。


 竜郎と洋平はお弁当で、善樹と宗助は購買でてきとうに見繕ってきた総菜パンをぱくついている。

 そんな中、最近の竜郎の弁当の中身が妙に凝っている上に美味しそうなことに目ざとく気が付いていた洋平が口を開いた。



「なぁ、竜郎」

「ん? なんだ洋平」

「なんか最近のお前の弁当、めっちゃ豪華じゃね?」

「「「え?」」」

「竜郎はまだしも、善樹と宗助も何で疑問に感じてねーんだよ……。これまでと手のかけ方が全然違うだろ」

「いやぁ、人の弁当の中身なんて興味ねーからなぁ。善樹はどーよ?」

「俺もそうだな。目の前の食べ物で大忙しなんだ」

「この欠食男児どもめ。んで、そこんとこどーなんだ? 竜郎」

「あー、作ってくれるのが母さんや妹から親戚の子に変わったからだな。しかしよく見てるな、人の弁当の中身なんて」

「いや、普通に目に入ってくるだろ」



 竜郎と善樹と宗助が目を合わせ首を傾げる。この3人はそうでもないようだ。

 洋平はわざとらしくため息をこぼしながらも、気になるワードが出てきたのでそちらについて切り込んでいくことにした。



「それでその親戚というのは、例の美少女と噂の子だったりするのか?」

「どこの噂かは知らんが、まぁそうなのかもな」

「やっぱりだ!」「「なにぃ!?」」



 洋平はあの球技大会の時に聞いた話から半ば予想していたようだ。



「おまっ、彼女いんのにその上美少女の手作り弁当って、前世でどんな善行を積んだんだ!!」

「そーだそーだ! 八敷さんに作ってもらえばいいだろ!!」

「うらやまじぃ!!」

「いや、愛衣が作ってくれるならそれはそれで嬉しいけど、その子は愛衣の弁当もうちの両親の分も作ってくれてるぞ」

「「「は? なんで?」」」

「料理作るの好きなんだってさ。いろいろ自分で研究もしてるらしいし、味付けについて質問されたりするんだ」

「家庭的な子だ! 他になんか好きなものとかは?」

「そうそう趣味とかさ」

「あと、どんな男がタイプなんだ!?」

「趣味はいろいろ。料理に裁縫、ソシャゲもやるし、おしゃべりも好き。基本何でも楽しめるタイプだな。んで好きなタイプは知らん。

 今はいろんなことに夢中で、あんまり色恋沙汰は興味なさそうだしなぁ」

「なんだそのモテない男の理想形のような子は」

「他の子は? 他の子はどんなんなんだ? 1人じゃないんだろ? 美少女様は」

「さまて……。あー……、すぐ会えそうな子だとプログラミングとかに手を出してる真面目系?

 あとはフラフラと方々に足を延ばす旅好き系とか? 他にもいるが……そっちはすぐに会えるかは分からんな」

「インドア女子にアウトドア女子まで……それに他にも……?

 なに? 竜郎の家は今、美少女のバーゲンセールでもやってんの?」

「いや、売り物じゃねーからな。洋平」

「わーてるって。そういう比喩表現なだけだから……。しかしそうなるとだ」



 洋平と、そして他の2人の友人も揃って竜郎のお弁当へと視線を向けてきた。



「それは美少女様の手作りお弁当様なわけなんだな?」

「様は余計な気がするが、まぁ客観的に見てそうだろうな」

「くれ。うちの母親が丹精込めてチンしたカレーコロッケやるからさ」

「冷凍食品かよ!」

「冷凍食品だっていいだろーが! 最近のはうまいんだぞ!」

「そーだそーだ! それじゃあ、俺はこの食べかけのパンをやろう」

「俺もだ。どーだこの焼きそばパン。良い感じに歯形が付いておいしそうだろう」

「余計に食欲なくすわ!」

「「「なーなーなーくれよー」」」



 その後、執拗に迫ってくる友人たちに辟易しながら、竜郎は自分の弁当を明け渡すのだった。

 なお、今回も普通レベルの食材しか使われていなかったが、フローラの腕がいいのと、まだ見ぬ美少女への憧れ補正で3人が大絶賛していたのは言うまでもない。



 一方、愛衣たちの方でも愛衣のお弁当に盛り上がりを見せていた。



「おいしっ! 波佐見くんの親戚の子料理上手すぎでしょ。私もその料理教室参加したくなってきた。できれば試食係で」

「いや、それなら和奏も作りなさいよ」



 奈々子の冷静なツッコミに、和奏は拗ねたように口を尖らせた。



「えー、だって自分じゃここまで美味しく作れる自信ないしー」

「あーそれは私も和奏に同感だなぁ。でもちょっとでも手料理が上手くなれば、それはそれで今後の何かに使えそうだし私も行ってもいいかな? 桃華」

「いーよ。早百合も参加ねー。んで? 奈々子はどうする?」

「んー、この味を自分で再現できるようになるってのはちょっと興味あるなぁ。お母さんにも教えてあげたい。むしろお母さんを参加させてあげたい」

「「「分かるー」」」



 桃華、和奏、早百合が揃ってそういいながら、きゃっきゃと笑みを浮かべた。自分が上手くなるより、母親が上手くなった方が食べられる機会も多かろうという打算故に。

 そんな中もくもくとお弁当を食べるれいに、愛衣が水を向ける。



「澪も参加するんだっけ?」

「興味はあるが部活を優先したいしな。時間が合えばと言ったところか。美味くて肉体造りにも貢献できる料理があるかどうかも享受願いたい」

「なーるほど。あとはお母さんたちうんぬんっていうなら、フローラちゃんなら普通にオッケーしてくれそうだけど。

 澪みたいに時間が合うなら参加してもらえばどーお?」

「いやいや、愛衣。うちのキッチンそんなに大きくないから。私たちだけでも、ぎゅうぎゅうだよ。一般家庭だよ、うちは」

「私んちだってそうだよ」



 とはいえ、今や八敷邸も地下に随分と広がっているので、もはや一般家庭の規模ではなくなっているのだが、そこは気にしない。

 結局、愛衣はお付きの人状態でついていくとして、澪以外の奈々子、和奏、早百合の参加も確定した。



「しかしその美少女フローラちゃんが作ったお弁当を彼氏も食べているわけなんだけど、そこんところどうなのさ」

「はにあ?」



 「なにが?」と奈々子の言葉に対して、口に物を入れながら素っ頓狂な顔で首を傾げる愛衣に、友人たちがそろって呆れた顔をする。



「いやいや、なんかこうジェラシー的なのはないの? 他のこの手料理なんて食べてーとか」

「そうそう、私のお弁当食べてよーとかさ」

「えー、私がお弁当作るのはちょっとめんど…………大変だしね!」

「今この子面倒って言いかけたよ」

「どーなってんだこの子は」



 また呆れる友人一同に、愛衣は慌てて言い訳を重ねていく。



「どーなってって。あの子たちは私にとってもたつろーにとっても、家族みたいな子だしね。お弁当つくったところで何とも思えないよ」

「彼氏の親戚とも家族って、気が早いなぁ。もう波佐見くんと卒業と同時に結婚しちゃいなさい」

「えー、学生結婚とか…………それはそれでありかも?」



 和奏の冗談交じりな言葉に、愛衣は一瞬ないないと否定しかけるも、真面目に考えはじめてしまう。



「いやいや学生結婚なんてお金もないんだし結婚式もあげらんないよ? 愛衣もそういうのには興味あるよね?」

「それはもちろん! キラキラのドレス着てー、どうせならバーンと派手なの挙げたいよね。海外のでっかい教会とかもいいかも! みんなも招待するからね!」

「それは社会人になってもハードルが高そうだな……」

「ねー。波佐見くんは真面目だし、親のお金で~とかは考えてないだろうし」



 愛衣の脳内で繰り広げられている結婚式は予算的にまず無理だろうなと友人たちは苦笑するが、それが無理でないことは知らないのだから無理からぬことである。

 その後もたわいない雑談を躱しながら、昼食を終えるのだった。




 その日の夜。竜郎は愛衣と楓、菖蒲を連れてアメリカの方の豪邸に転移して来ていた。

 結局パパラッチ対策は向こうで下手に出版社などに圧をかけたりなど、下手に動くと余計に油を注ぐことになるからと今のところ徹底的に無視をするという方策をとっている。

 少しずつ時間をかけて追い払ってくれると言っていたので、今は辛抱の時と思うしかない。

 なので今はパチローを複数用意して常駐させ、何があってもシャッターチャンスには思えないように認識妨害系の魔法を周囲に展開しておくことにしている。


 またリアの転移装置もこちらに設置したので、システム持ちならば誰でも日本とアメリカを自由に行き来できるようにもなっていたりもする。



「さて、何か進展はあるかなーっと」



 竜郎たちは広々としたリビングに腰かけ、最近購入したノートPCを開いてメールを確認していく。

 ライト家の面々からの新しいメールが届いていたので、さっそく時系列順に開いて読み込んでいく。


 その間に愛衣はポットからお湯を注ぎ、自前で用意したお茶を人数分入れてから席へと向かう。

 竜郎を姉妹で挟むように座っていた楓が愛衣に場所を開けてくれたので、愛衣は遠慮なくそこに座ると、今度はその膝の上にちょこんと乗ってきたのでその頭を優しくなでながら彼女も画面に視線を向けていく。



「どお? なんかおもしろいことあった?」

「面白いというかなんというか。あのラロ・ジャマスの絵を狂ったように買いたがる人が現れたらしいぞ」

「え? ラロさんっていえば、あのニーナちゃんの恐い絵を描いた人だよね?」

「そうそう。でも刺さる人にはどこまでも刺さったんだろうなぁ。

 もうこの作家の作品はないのかー! って普段は大人しいらしい人が荒ぶりまくってたらしい」

「まじですか」

「ああ、まじです。他にも気に入った人がいたらしいが、その人が誰よりも高い値段を付けたらしい。こりゃ他の絵も全部買い取ってくれそうだな」

「いくらになったの?」

「こいだけ」



 竜郎が値段が記載された箇所を指さしながら、ノートPCの画面の向きをクイッと愛衣の方へと向けた。



「──うげっ。え、えぇ……マジなの? これ。だってこれ円じゃなくてドル表記だよね?」

「マジなうえにドル表記だぞ。なんでも大財閥のボンボンらしい。父親にそのがあるからってピーターさんが見せてみたら、一緒にいた息子が食いついたとかなんとか。

 はぁ~やっぱ世の中お金があるとこにはあるんだなぁ。不景気って何それ? 美味しいの? って感じですわ」

「ほんとだねぇ。世界は広いですわ~」



 着々と地球でもその道を歩みだそうとしている竜郎たちが何を言ってるんだと思われそうだが、まだこの2人にその自覚はないようだ。

 現実感のないお金のやり取りに、ただ茫然とするしかなかった。



「とりあえず、まだ絵は他にもあるよ。値段交渉などはお任せで~っと。これでいいか。んで次に気になるのはこれだな」

「どれどれ~……ああ、これって例の宝石母娘の?」

「スーザンさんがその娘の方に接触してくれてたとか。

 一緒にお茶をしながら話す個人的な場を設けることに成功したらしい」

「ほうほう。そんで、そこで接触したいなら接触するのもありかもと。スーザンさん、やり手だねぇ」

「だてに大富豪の嫁はやってないってことかもな。さて、どうするか」

「とりあえずちょっとアレだけど、しばらく認識阻害状態で覗いて実際に人柄を確認してみるとかは?

 接触するかどうかはまた別にしてさ」

「それがいいかもな。問題なさそうなら実際に宝石系の何かを見せてみるのも有りか。

 よし、その方向でスーザンさんに返信しておこう」



 後日、詳しい日時を知らせてくれるとのことなので、この件に関しては一先ひとまず座して待つことにして、竜郎と愛衣は並んでライト一家からのメールを熟読していくのであった。

前後する可能性はありますが、木曜更新予定です。

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[一言] お邪魔な友達同士くっついてフェードアウトしてくれないかな
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