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食の革命児  作者: 亜掛千夜
第十一章 竜の王国・後編

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第218話 竜王国巡りの終わり

「おつかれさまー」



 フィスタニカと共にカルディナだけ残した状態で元に戻った竜郎が、見学者たちの方へ近づいていくと、すぐに愛衣の抱擁に迎え入れられた。



「「ぱっぱ、うーうー」」



 竜郎も同じようにぎゅっと抱き返していると、先の戦いを見て興奮状態の楓と菖蒲が私もとばかりにぴょんと左右の肩に飛びつかれた。



「「クォー?」」「「…………ガァ」」



 それにつられるようにイルバとアルバも僕らは?と足元に寄ってきて、普段は他の子よりも冷めたところのあるフレイムとアンドレでさえ、いつもよりも熱い視線を竜郎へ送っていた。

 あの姿を見たことはあれど、ちゃんと戦ったところは初めて見たせいなのだろう。


 竜郎は愛衣をもう一度ぎゅっと抱きしめた後、他の幼竜たちも順番にハグしていった。

 普段は逃げようとするフォンフラー兄弟も、今日ばかりは自分から寄っていたこともあり大人しく抱っこさせてくれた。


 そんな風に家族の団欒を楽しんでいるのを女王フィスタニカと王配ベユナーガは微笑ましそうに眺め、姫ユピタニアは羨ましそうに母の足元にすり寄っていく中、オプスアティは我関せずとばかりに先の戦いの記録がちゃんと撮れているのか確認していた。



「それじゃあ、そろそろ出ましょうか」

「それもそうだね。タツロウくん、今日はフィスタニカの我儘に付き合ってくれてありがとう」

「どういたしまして。けれどこちらも貰えるものは貰っているので気にしないでください」



 母に甘えるユピタニアをあやす妻を横目に頬を緩めながら、ベユナーガは礼を述べながら竜郎と一緒に、かまぼこ型の出口からのっしのっしと元の謁見の間へと歩み出ていく。



「ベユナーガ様!!」

「む? どうしたそんなに血相を抱えて」



 するとここまでの案内役をしてくれていた竜が、目を白黒させながらベユナーガに駆け寄ってきた。

 一体何事だとベユナーガは彼をなだめながら、後ろがつかえているので前へと進み出口からのいていく。



「どうしたもなにも──陛下も! 姫様もご無事で!!」

「はい?」「グァ?」



 ベユナーガに続いて出てきたフィスタニカとユピタニアを見て、目を丸くしながらも心底安堵したように床にうずくまった。

 しかし当の本人たちはなんのこっちゃと、女王も姫も首を傾げているが、ここでベユナーガは彼が何故このように慌てていたのか勘づいた。



「我々のような気配が大きい神格竜が、なんの知らせもなくこの場から忽然と消失すれば、さすがに何事かと慌ててもしょうがないだろう」

「あー……、そこまで考えていませんでしたね。すいません」

「いやいや、タツロウくんは気にする必要はないよ。元をたどればこちらが言い出したことなのだからね」



 つまり異空間に連れて行ったことで王家の反応が一瞬で消え去ってしまい、そのようなことは今まで経験したこともない案内役の彼は泡を食って謁見の間まで押しかけてきたのだ。

 普通の竜ならいざ知らず、ここまでの竜たちが一気に消えれば彼くらいの竜であれば近くに待機していればすぐにでも気が付ける。


 先に説明しておくべきだったとベユナーガは、まだ娘と一緒に首を傾げている妻をしり目に事情を軽く説明してから彼を下がらせた。


 それからまだ調べたりない、私は置いて行けとごねるオプスアティを愛衣が引きずって無理やり出したところで、最初の位置に戻って改めて話し合いの場を設け直す。

 結果、竜郎たちは高純度なフォンフラー鉱石の購入権を、他の竜たちにも出した料理で手に入れることに成功。


 やはり王族であってもここまでのものは食べたことがないので、上品ながらもあっと言う間に自分たちの分を食べ終わってしまっていた。

 これから竜郎たちとの交易でああいったものが食べられるのかと、フィスタニカたちは交渉が終わるそのときまでニコニコしていた──のだが、1人この場で悲壮感を漂わせている者もいた。



「あーやっちゃったぁ……、どーしよ……。エーゲリア様、意外と根に持つんだよなぁ」



 その者とはオプスアティ。最初のやらかしから必ずエーゲリアの側近眷属たちがお土産と称して半分程は持ち帰っていたサンドイッチを、「こんなものは食べたことがないよ! もっと調べなきゃ!」とバクバク食べていった結果、その全てを腹の中に収めてしまったのだ。



『────(自業自得ですね)』

『───、───────(これで多少まともになってくれると、いいんですけどね』

『ヒヒーーン(私は無理そうな気がするなー)』



 天照、月読、ジャンヌは処置なしと結論付けたようだ。

 それだけオプスアティのへきは年季がはいっており、今更この程度で変わるわけもない。

 大人しくエーゲリアのお小言を聞き続けてくれと、竜郎たちは追加分を渡すことはなかった。



「「グォ……」」

「グォー♪」



 さて、そんな一幕があったなか、幼竜たち……というよりもフレイムとアンドレは、大人たちが難しい話をしている間、ユピタニアと交友を深めていた。

 話し合いも終わり、そろそろ帰る気配を感じ取り、フレイムとアンドレは名残惜しそうに鳴いていた。

 けれど姫様の方は「また遊んでね!」くらいの気軽さで、別れの挨拶をしたことで、さらに男の子2人の気持ちを無邪気に撃沈させていた。



「ありゃりゃ、わりとガチでユピタニアちゃんのことが好きになったみたいだね」

「他の幼竜たちは恋愛? なにそれおいしいの? くらいの雰囲気だったんだが、ある意味この子達だけは思っていた以上に大人だったのかもしれないな」

「おませさんですの」

「この子らは恋愛とか興味ないよ、1人で静かに過ごしたいんだ……とか言ってそうだったんすけどねぇ。いやー意外だったっす」



 絵姿を見ていたときからもしかしてとは思っていたが、予想以上にユピタニアに夢中な2人に竜郎たちが目を丸くする中──。



「ふふふっ、さすが私の娘ですね。この年でもうモテモテです」

「ユピタニアは可愛いからな。それも致し方がないことか」



 親馬鹿2人は他の竜王たちのところにいるどの竜よりも幼いユピタニアが見事、最良の将来の旦那様候補を2人とも夢中にさせていることを自慢気に話していた。


 それからまた会う約束をして、竜郎たちは最後のはじめてのお見合い訪問巡りの旅を終えたのだった。






(あー、等級神。今いいか?)



 帰宅後すぐに、竜郎はカルディナ城のリビングのソファに座ると、今回得た新しい理について等級神と話すべく問いかけた。

 緊急性があるのなら向こうからすぐに連絡を寄こしていただろうからと、竜郎は落ち着ける場所に来るまで話を先延ばしにしていたのだ。

 向こうもそれは分かっていたようで、竜郎が話しかけるとすぐに応答が返ってきた。



『おお、もうよいのか?』

(ああ、ひとまず用事は終わったよ。それで今回の《崩壊の理》についてなんだが……)

『儂らからは《浸食の理》同様、悪用はするでないぞというくらいしかないのう』

(思っていたよりも軽いな)

『ジャンヌと奈々をその身に収めたことで、疑似的に天魔とフレイヤと同じ状態になっておった。

 じゃから、いずれは気づくじゃろうと予測はしていた。まぁ、気づかなければそれはそれでと黙っておったのじゃが』

(まぁ、そうか。こっちに関してはジャンヌと奈々と繋がらなければできないことだし、そうそう使う機会はないだろうし、悪用もしないと誓うよ)

『うむ、信じておるぞ』



 既に神と最低限の契約をして、この世界や重要人物たちに乱用しないと誓っている。

 それほど問題にはならないだろうと思っていたが、思っていた以上に軽い対応に胸をなでおろしながら、竜郎は自分のステータス欄に追加された、今は使えないことを示すように色が薄くなって表示されている《崩壊の理》を見つめ等級神とのやり取りを終えた。



「お話は済んだ?」

「ああ、終わったよ。それじゃあ──」



 ここでまったりしようかと楓と菖蒲も交えてじゃれついて時間を過ごしていると、今度はイシュタルから2人に念話が届いた。



『今いいか?』

『いいぞ』『いいよー』

『明日、どうしてもタツロウたちに会いたいという人物を連れていきたいのだが、いいだろうか?』

『明日? まぁ今のところ用事はないからいいが、いったい誰が会いたいって言ってるんだ? 竜王関係の誰かか?』

『いや、そういうくくりで称するのなら、星九家関係の者だ』

『そっちかぁ。ってことは、もしかして前のどろぼーさん事件のことなのかな?』

『ああ、その件の調べもあらかたついたし、その説明をしようかと思っていたところで向こうから打診があってな。双紅家当主本人から、タツロウたちに謝罪をさせてくれと』

『ってことはニーナは隠したほうがいいな』

『そうしてもらえると助かる』



 本来なら正式な使者を立て、お伺いをたててやってくるつもりだったようだが、そう何度も煩わされるほうが竜郎たちにとっては迷惑だろうと半ば無理矢理、明日連れて行こうという話になったらしい。



『あーそれは確かに、そっちの方がありがたいかも。ありがと、イシュタルちゃん』



 王侯貴族ならそれが当たり前でも、竜郎たちからしたら回りくどい。

 イシュタルを伝書竜扱いするなどありえないと本人は固辞しようとしたが、強権でねじ伏せたようだ。向こうも引け目があることもあって、竜郎たちにも都合がいいのならと最後には頷いた──とのこと。



『それとだな、……タツロウたちに限ってないとは思うが、あやつは本気で自分の首を飛ばそうとしていたんだ。冗談でもあやつが死んで詫びを──などといっても、絶対に頷かないでくれ。その場で自決しかねない……』

『『えぇ……』』



 なにそれめんどくさ、とは思うものの乗り掛かった舟である。竜郎たちはそう取られるような返事もしないように気を付けると、イシュタルに約束しておいた。



『にしてももう事件の真相を調べてくれたんだね』

『うん? ああ、それはもちろんだ。それに、もともと口が堅い者たちでもない軟弱なやつらばかりだったから、簡単に口を割ったようだしな。

 あっけなく裏にいた存在について話しくれたと、ミーティアも拍子抜けしていたくらいだ』

『裏にいた存在……気になるな』

『そちらについても詳しくは念話ではなく、直接はなそう。どうしても今聞きたいというのなら、それでもいいが』

『うーん、イシュタルちゃんが直接話したいならそれでいいよ』

『俺も愛衣がいいなら、それでいいぞ』

『分かった。ではまた明日、会おう』

『了解』『はーい』



 こうして竜郎たちは忘れかけていた星九家を騙った強盗事件のあらましと、唐突な星九家のまとめ役でもある双紅家の当主到来に備えることになるのであった。

前後する可能性はありますが、木曜更新予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言]  脳筋フィスタニカや幼いユピタニアはともかく、ベユナーガは頭脳自慢で王配に選ばれた割りには今回手抜かりをやらかしましたな。平和ボケでしょうか  さて次なるはケチな盗人の背景事情……今の星九…
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