表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食の革命児  作者: 亜掛千夜
第十章 エデペン山編
183/451

第182話 遺跡へ

「ベルケルプの件はなんとなく分かったよ。定期的に連絡を取ろうとしていたが、それも今日限りでやめておこう」



 ベルケルプに貸しを作ったさいに、ルティは彼お手製の魔道具を受け取っていたらしい。

 それを使えば彼女が会いたがっていることを、相手側に伝えるくらいはできるようになっていた。


 けれどこれを機に、彼との接触を断ってくれると何も言わずに約束してくれた。


 今までの知人ともう会うなという理不尽な要求をのませてしまったことについて、竜郎たちが申しわけなさそうにしていると、ルティは思っていた以上にケロッとしていた。



「そんなに気にしなくてもいいよ。知人と言っても所詮は互いに協力したいときに利害の一致で行動を共にしたことがあった──くらいの関係だからね。

 特別に彼と親しかったというわけではないんだ」

「あー、そういえばレーラさんも、クリアエルフ同士は基本的に一緒にいない──とか言ってたもんね」

「レーラ?」

「レーラさんっていうのは、私たちの拠点で暮らしてるクリアエルフだよ」

「ベルケルプ以外にも、クリアエルフの知り合いがいるのか。ちなみにどこの子だい? アイちゃん」

「レーラさんは、氷神さんのとこだよ」

「氷神のところということは、セテプエンリティシェレーラのことかな。

 他のクリアエルフとも少し違った子だったから、なんとなく覚えているよ」



 レーラの話からして2人が出会ったのはかなり昔、竜郎たちからしたら太古の時代であり、レーラも今ほど大人でもなかったはずだ。

 それなのに同じクリアエルフからそう評されているということに、らしいといえばらしいなと竜郎たちは思わず苦笑してしまった。



「他にもクリアエルフの知り合いはいるのかい?」

「いないですね。ちゃんと知り合いと言えるのはレーラさんくらいですし」

「なるほどな。──おっと、話がそれてしまったな。先の続きに戻ろうか」

「ですね」

「えーと、どこまで話したか。たしか妙な遺跡のようなものがあったという話か」

「古代人が作ったようなものであり、変な力の流れもあるとかも言っていましたね」

「そうだね。でも奥へと続く扉がありそうな細工はあるのに、その細工の解除方法が数秒じゃあ思いつかずに戻ってしまった」

「細工なんて無視して、扉のへんを壊して行っちゃだめなの?」



 開かないのなら壊しちゃえばいいじゃない──的な発想のニーナの発想に、ルティは確かにこの子はニーリナの孫だと認識する。

 彼女も邪魔なものがあるのなら、拳でぶち壊して突き進むようなタイプだったのだ。

 もちろんニーリナの場合は、壊すときは壊していいかくらいは考えたうえで行動するのだが。

 そして今回のパターンでは──。



「ダメだね。そもそもこの周辺に怪しい場所なんて、そこくらいしかなかったんだ。

 その扉や、その扉付近に、ラペリベレの繁殖を促す何かがあった場合、ここですら繁殖できなくなったらいよいよまずいからね」

「そっかー。それはニーナも困るなぁ」

「だろう? その場所は全てにおいて慎重に捜索しておきたい。扉一つに至るまでね。

 だからこそ私が知る限り最高の解析者を──ってことで、ベルケルプを呼ぼうとしていたくらいだ」



 なんといっても解魔法を司る神に創造されし、解神の巫子。世界で最上級に解神に愛される存在と言っても過言ではない。

 もしもそんな彼が今も神格を持ち、クリアエルフとして生きていたのなら、おそらく解析能力に限っては竜郎すら凌駕していただろう。

 まさに今回のルティの要望に応えられる人材としては、最適といえよう。


 だがこの時代でのセテプエンベルケルプは、既に神格を失いただのベルケルプとして生きている。

 今のルティの反応からして、そのことは知らないのだろう。

 それでも今の彼でも、十分に役割を果たせるだけの魔法の質を補ってあまりうる知識量を保有しているので、連絡が取れ協力してもらえたのなら、ちゃんと調査するだけの能力は備えていたのだろうが。



『といっても今のベルケルプさんにはそんな余裕はないだろうし、絶対にやろうなんて言わないだろうけどね……』

『そう……だな』



 竜郎や愛衣の脳裏に、ベルケルプの最後の光景が浮かび上がり、なんとも言えないやりきれない気持ちがこみ上げてきてしまった。

 その間にもルティは気づかず、話が進んで行く。



「だが今はウゴーくんを簡単に見つけられるほどの探査能力の持ち主の、君たちがいる。彼がダメなら今の私の当ては君たちくらいしかいないんだ。やってみてはくれないかい?

 できるだけ慎重に調査をする必要があるから、面倒になるかもしれないが」

「こちらとしても興味がありますし、とりあえず見に行ってみたいですね。

 そこで調べても無理そうなら、さらに強力な助っ人たちを連れてくることもできますし」

「本当かい! それは心強いよ。ああ、でも、必ずしもそこに原因となる何かがあると判明しているわけじゃないから、一生懸命調べてみても何もなかった──ってことも十分あり得ることは頭の中に入れておいてほしい」

「ええ、分かってます。あったらいいなぁ、くらいの気持ちで行ってみようと思います。

 それでその場所はどの辺りでしょうか?」

「そこはね──」



 その場所は町からそこそこ離れた場所だが大人でも徒歩で行ける程度の距離で、竜郎たちもその上空は何度も素通りしていた場所だった。



「こんなところにあったら、あの町の人たちも存在くらいは知ってそうですが、どんな扱いになっているかは分かりますか?」

「さすがにそこまでは……。降りて気軽に聞き込みができるような種族でも、状況でもないからね。

 でもそのあたりに人間が来ることくらいは知っているから、間違いなく町側も認知はしているだろう。

 隠れるように存在するだけで、実際にウゴーくんのように隠れているわけではないんだからね。

 けどそれなりに優秀な解析者でもない限り、あそこが奇妙だとは気が付かないだろうけれど」



 特に町長からもらった情報の中にも出てこなかったし、そこを珍しい場所だと外からくる人にアピールしていたわけでもないので、その場所はただの遺跡か何かだとでも思われているのだろう。



「とりあえずここで考えていても答えは出そうにないですし、とりあえず行って──……寝てるな」

「「「「すぅ~すぅ~」」」」「クゥ~クゥ~」



 竜郎たちの話が詰まらなかったのか。はたまた美味しい果物を食べてお腹が膨れたせいか、彩人、彩花、楓、菖蒲、豆太たちがそれぞれ椅子や膝の上ですやすやと眠ってしまっていた。



「あー、でももうけっこう夜も遅いからね。もともとおねむの時間だったのかも」

「む? 言われてみればもうこんな時間なのだ。

 マスター、今日は一度帰って明日出直したほうが良いのではないか?」

「そのほうがいいかもしれないな。それでもいいですか? ルティさん」

「ああ、もちろん構わないとも。私たちにとって1日なんて、一瞬にも満たない時間なんだから。

 しばらく私とウゴー君はここでのんびり浮かんでいるから、好きな時においで」

「わかりました。ではまた──」



 クリアエルフであり信用のおける人物だと判断した竜郎は、隠すのも面倒だとそのまま転移でカルディナ城へと帰還した。



「──っ!? 転移魔法まで使えたのか。本当に多芸な子だな」



 竜郎たちが椅子ごといなくなったことに一瞬目を丸くしながらも、ルティは思っていた以上に優秀な子たちに出会えたようだと、微笑みながら今は何もない虚空を見つめるのだった。





 翌日。竜郎たちはさっそく転移で帰ってくると、そのまま例の遺跡らしき場所へと空を飛びながらやってきた。



「あれだな」



 確かに聞いていた通り、それは隆起した岩の間に隠れるようにして存在していた。

 まず目立つのは数本の柱。本来ならもっとあっただろうと思われる、根元だけが残ったものもある。


 その柱に囲まれるように存在するのは、大きな円形の台。

 厚さは一メートルほどもあり、その上で小規模な演劇ができそうなくらい広い。


 またその周囲には壁──にしてはうねうねと不規則な軌道を描く、崩壊し根本だけが残った壁跡。



「クゥ~ン?」

「どうしたの?」

「豆太?」



 意外に大きいんだなと竜郎たちが思いながら着地した途端、豆太がなにかを感じたのか首を傾げながら円形の台の上に飛び乗っていく。

 勝手に離れていく豆太に、彩人と彩花がすぐに追いかけていった。


 台の上の中央辺りで、豆太は鼻をつけて一生懸命臭いを嗅ぎはじめる。

 何をしているのかと気になるものの、意味もなくそんなことをするような子でもないので静かに見守っていると、竜郎の方へと豆太から眷属のパスを通して感情が伝わってきた。



「キャンキャン」

「えーと……………………なるほど」

「なになに、なんだったの? たつろー」

「豆太がいわく、ここに昨日俺たちに絡んできた男、あの一番最初に逃げていったやつの臭いがしたらしいんだ。

 けど来るまで臭いはたどれていたのに、ここでぷつりと途絶えているんだとか」

「昨日の絡んできた人って、こんなとこまで逃げてきてたんだね」

「あれだけ必死に逃げれば、確かにこの辺りまで来ていても不思議ではないが……匂いが途切れているということは、その男はここでいきなり消えたということになるのだろうか? マスター」

「…………みたいだな。今、解魔法で確認してみたんだが、確かに何者かの痕跡が途切れている。さすがにあの男を調べてなかったから、誰かまでは分からなかったが、豆太が言うならその男で間違いないだろう。

 そして、扉というのもここみたいだしな」



 軽く積もった砂や土を魔法で吹き飛ばしてみれば、そこには何かの模様が書かれた、けれどところどころかけたものが刻まれた丸い扉らしきものが収まっていた。

 けれど取っ手などは一切なく、普通に持ち上げて入れるようなものではない。



「この下に行ったということなのかな」

「あの程度の男が、ルティ殿が一瞬とはいえ調べて入れなかった扉を開けられるとは思えないのだが……」

「俺もそう思う。……だが実際にここで途切れているのも確かだ。ちょうどいい、調査がてらその男もついでに探してみよう」

「それがいいかもね、なんか不気味だし」



 そうして竜郎たちは、遺跡らしき場所の調査へと入っていくのであった。

次話は金曜予定ですが、4月より私のリアルでの環境が変わってしまい、今現在、具体的なスケージュールが自分でも分かっていない状態です。

水、金、日と投稿してきましたが、これからの状況によってはその更新曜日や文量が変わる可能性がありますので、その点だけご注意ください。

ふわふわした予定ですいません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ