第11話 顔合わせ
ひとしきり両親たちのスキルを確認し、ひとまず歩いただけでスキルを覚えてしまうようなものでもないと分かったので、そろそろ今いる場所から出ることを竜郎が提案した。
しかしそこで仁が待ったをかける。
「いや、それは良いんだが……なあ、竜郎」
「なんだ? 父さん」
「参考までに、こっちの世界で強くなったっていう竜郎と愛衣ちゃんのステータスを俺達に見せてくれないか?」
「そうね。私も仁君と一緒で興味あるかな」
「どのくらい愛衣たちと私たちとの間に差があるのかも、数字で見たら分かりやすそうだし、いいかもしれないわね」
「そんなに見たいの? 別にいいけど。ねえ、たつろー」
「ああ、別にいいですよ。それじゃあ、許可を出しておくんで各々のシステムから見ていってください」
「ありがとう。え~と、どれどれ………………」
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名前:タツロウ・ハサミ
クラス1:等級神の系譜
クラス2:竜魔産みし魔神の系譜
レベル:3313
気力:12304
魔力:1807085
神力:237900
竜力:14230
筋力:12579
耐久力:12506+100
速力:12463
魔法力:646547
魔法抵抗力:618214
魔法制御力:623343
◆取得スキル◆
《多重レベルイーター+α》《複合魔法スキル化》
《精霊眼》《精霊魔法+5》《魔法域超越》
《分霊神器:ツナグモノ》《分霊神器:カルディナ》
《分霊神器:ジャンヌ》《分霊神器:ナナ》
《分霊神器:アテナ》《分霊神器:アマテラス》
《分霊神器:ツクヨミ》《強化改造牧場+1》
《植物達の祝福》《陽光回復》《魔卵錬成+5》
《復元魔法》《魔法支配》《世界力魔物変換》
《陰陽玉》《神域陰陽玉》《侵食の理》
《親子能力共有》《魔卵属性変換》
《水神の加護》《超水圧縮》《水竜力収束砲》
《魔物大事典》《能力点変換【複製点】》
《植族創造》《無形族創造》《魔生族創造》
《鬼族創造》《死霊族創造》《怪人族創造》
《創物族創造》《獣族創造》《鳥族創造》
《蟲族創造》《水棲族創造》《爬虫族創造》
《妖精族創造》《天魔族創造》《竜族創造》
《炎風》《土尖風》《粘着水》《呪幻視》
《施錠魔法:火解風呪雷.タイプ1》
《施錠魔法:十二属性混合.タイプ1》
《施錠魔法:極十二属性混合.タイプ1》
《施錠魔法:極十二属性混合.タイプ2》
《強化改造牧場改》
《光魔法 Lv.20》《闇魔法 Lv.20》《火魔法 Lv.20》
《水魔法 Lv.20》《生魔法 Lv.20》《土魔法 Lv.20》
《解魔法 Lv.20》《風魔法 Lv.20》《呪魔法 Lv.20》
《雷魔法 Lv.20》《樹魔法 Lv.20》《氷魔法 Lv.20》
《斬魔法 Lv.20》《突魔法 Lv.20》《射魔法 Lv.20》
《打魔法 Lv.20》《盾魔法 Lv.20》《人形魔法 Lv.20》
《捕縛魔法 Lv.20》《磁力魔法 Lv.20》《反射魔法 Lv.20》
《封印魔法 Lv.20》《解毒魔法 Lv.20》《毒魔法 Lv.20》
《音魔法 Lv.20》《影魔法 Lv.20》《契約魔法 Lv.20》
《重力魔法》《時空魔法》《爆発魔法》《施錠魔法》
《魔力質上昇 Lv.20》《魔法密度上昇 Lv.20》
《魔法生成上昇 Lv.20》《魔力回復速度上昇 Lv.20》
《集中 Lv.20》《連弾 Lv.20》《多重思考 Lv.20》
《堅牢体 Lv.20》《統率 Lv.20》《全言語理解》
◆システムスキル◆
《完全探索マップ機能》《無限アイテムフィールド》《時計機能+2》
残存スキルポイント:50008070
◆称号◆
《光を修めし者》《闇を修めし者》《火を修めし者》
《水を修めし者》《生を修めし者》《土を修めし者》
《解を修めし者》《風を修めし者》《呪を修めし者》
《雷を修めし者》《樹を修めし者》《氷を修めし者》
《斬を修めし者》《突を修めし者》《射を修めし者》
《打を修めし者》《盾を修めし者》《人形を修めし者》
《捕縛を修めし者》《磁力を修めし者》《反射を修めし者》
《封印を修めし者》《毒を修めし者》《解毒を修めし者》
《音を修めし者》《影を修めし者》《契約を修めし者》
《光を極めし者》《闇を極めし者》
《火を極めし者》《水を極めし者》《生を極めし者》
《土を極めし者》《解を極めし者》《風を極めし者》
《呪を極めし者》《雷を極めし者》《樹を極めし者》
《氷を極めし者》《斬を極めし者》《突を極めし者》
《射を極めし者》《打を極めし者》《盾を極めし者》
《人形を極めし者》《捕縛を極めし者》《磁力を極めし者》
《反射を極めし者》《封印を極めし者》《毒を極めし者》
《解毒を極めし者》《音を極めし者》
《影を極めし者》《契約を極めし者》
《打ち破る者》《響きあう存在+4》《竜殺し+3》
《竜を喰らう者》《魔なる者+3》
《深淵なる到達者+3》《専心》《一意専心》
《連弾者》《極連弾者》《多重思考者》《極多重思考者》
《堅き体》《極限なる堅体》《先導者》《先導主》
《収納狂い》《地図中毒者》
《すごーい!》《エンデニエンテ》《越境者+32》
《創造主・序》《創造主・破》《創造主・急》
《高難易度迷宮踏破者》《魔物小長者》
《魔物長者》《魔物大長者》《魔物特大長者》
《神格者+1》《魔王種殺し+6》《魔王種を喰らう者》
《迷宮管理者 3/5》《理の理解者》《人竜神》
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名前:アイ・ヤシキ
クラス:武神の愛娘
レベル:3313
気力:2680871
魔力:4328
神力:154000
竜力:14230
筋力:876095
耐久力:869281
速力:872123
魔法力:2540
魔法抵抗力:2540+100
魔法制御力:2540
◆取得スキル◆
《武神》《一発多貫 Lv.20》《砲刃矢石》
《徒手万装》《神体昇華》《気力超収束砲 Lv.20》
《体術 Lv.20》《棒術 Lv.20》《投擲 Lv.20》
《槍術 Lv.20》《剣術 Lv.20》《盾術 Lv.20》
《鞭術 Lv.20》《斧術 Lv.20》《弓術 Lv.20》
《扇術 Lv.20》《槌術 Lv.20》《かみつく Lv.20》
《鎌術 Lv.20》《竜尾閃 Lv.9》
《気力回復速度上昇 Lv.20》《身体強化 Lv.20》
《空中飛び Lv.20》《遠見 Lv.20》《受け流し Lv.20》
《危機感知 Lv.20》《軌道修正 Lv.20》《溜め突き Lv.20》
《居合斬り Lv.20》《反射 Lv.20》《硬質突破 Lv.20》
《急加速 Lv.20》《重量増加 Lv.20》《錯視 Lv.20》
《隠密迷彩 Lv.20》《集中 Lv.4》
《獅子竜剣斬》《竜獅子爪拳》《竜亀掌壁》《竜猪双貫》
《蛇竜絞殺》《虎獅子舌貫》《鱗甲摩下》《牛虎鋸断》
《猪蛇猛突》《竜鳥併呑》《獅子牛叩斬》《鰐虎噛砕》
《猪虎投牙》《甲鬣纏鎧》《鰐牛振刃》《猿獅子爪手》
《十三獣神・体》《十三獣神・棒》《十三獣神・投》
《十三獣神・槍》《十三獣神・剣》《十三獣神・盾》
《十三獣神・鞭》《十三獣神・斧》《十三獣神・弓》
《十三獣神・扇》《十三獣神・槌》《十三獣神・獣》
《十三獣神・鎌》
《鑑定眼 Lv.1》《器用 Lv.8》《財宝感知 Lv.5》
《全言語理解》
◆システムスキル◆
《アイテムボックス+7》《マップ機能+4》
残存スキルポイント:9864
◆称号◆
《体を修めし者》《棒を修めし者》《投を修めし者》
《槍を修めし者》《剣を修めし者》《盾を修めし者》
《鞭を修めし者》《槌を修めし者》《獣を修めし者》
《扇を修めし者》《斧を修めし者》《弓を修めし者》
《鎌を修めし者》《空飛を修めし者》《遠見を修めし者》
《受流を修めし者》《危感を修めし者》《軌修を修めし者》
《溜突を修めし者》《居合を修めし者》《反射を修めし者》
《硬破を修めし者》《急速を修めし者》《重増を修めし者》
《錯視を修めし者》《隠彩を修めし者》
《体を極めし者》《棒を極めし者》《投を極めし者》
《槍を極めし者》《剣を極めし者》《盾を極めし者》
《鞭を極めし者》《槌を極めし者》《獣を極めし者》
《扇を極めし者》《斧を極めし者》《弓を極めし者》
《鎌を極めし者》《空飛を極めし者》《遠見を極めし者》
《受流を極めし者》《危感を極めし者》《軌修を極めし者》
《溜突を極めし者》《居合を極めし者》《反射を極めし者》
《硬破を極めし者》《急速を極めし者》《重増を極めし者》
《錯視を極めし者》《隠彩を極めし者》
《一発多貫を修めし者》《一発多貫を極めし者》
《剛なる者》《剛毅なる到達者》《修練者+3》《練達者+3》
《打ち破る者》《響きあう存在+4》
《竜殺し+2》《竜を喰らう者》《すごーい!》
《高難易度迷宮踏破者》《エンデニエンテ》
《越境者+32》《魔王種殺し+6》《魔王種を喰らう者》
《神格者》《迷宮管理者 3/5》
《気獣混合奥義会得者》《十三獣神技会得者》
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「「「「…………………………?」」」」
自分たちのステータスとは比べものにならない程かけ離れた数値やスキルと称号の数に、まさに目が点状態で見間違えじゃないかと首をかしげる両親たち。
「は……はははっ、おいおい竜郎。お前たちのシステム、バグってるんじゃないか?」
「いや、それで正常だぞ、父さん」
「まじかぁ……」
「あははっ、まじだよー」
愛衣は面白がってコロコロと笑い始めていた。
だが両親たちは、だんだんと何をどうしてきたらこんなステータスに至るのか。そちらの方が気になっていた。
だが異世界に行ってきたと報告を受けたあの日から今まで、雰囲気的に二人は辛かった思い出をはっきり話したがらないので、なかなかその辺りを突っ込んで聞けないでいた。
それを少しさびしく感じながら、両親たちはため息を一つ吐いた。
「はぁ……まあいいわ。確かにこれだけ強ければ、魔物のいるこの世界でも元気でやっていけるでしょうしね。
にしても個人的にはスキルとかは分からないけど、竜郎のスキルポイントの値とか完全に理解不能なんだけど」
「ああ、それは最後に倒した魔物がちょっと特殊だったから、大量に手に入ったって感じだな」
「愛衣の方はビックリするくらい魔法に関する項目が低いのね。クラスも親としては気になる所だけど」
同じレベルの竜郎の物理系のステータスと比べて、娘の魔法系のステータスが異様に少ないので心配そうな顔になる美鈴。
けれどこの世界で途方も無い時を生きてきたレーラが、ちゃんとフォローしてくれた。
「アイちゃんのその魔法のステータスでも、普通の人の魔法特化型だとレベル70から90くらいの数値になっています。
なので一般的には、決して低いわけじゃないのでご安心ください」
この世界の現代の一般諸国の水準で強いとみなされるのは、レベル50を少し超えた程度。
それだけあれば一軍の将は無理でも、一部隊の隊長位には余裕でなれるだろう。
そこでレベル70~90程度の魔法使いなどと言ったら、一国でも高待遇を受けられ即戦力とみなされる。
なのでイシュタルが治める──イフィゲニア帝国。
はたまた竜の次に強いとみなされている、天魔たちが主体となって治める宗教国家──ゼラフィム。
天魔にも負けず劣らず優秀な妖精達が住まう妖精郷。
これらのような特殊な国に属する魔法使いなら危険だが、他の国の一般的な魔法使いや、そこいらの魔法を使う魔物なら、今の愛衣でも十分魔法に対して対応できるのだ。
その説明を聞いて、ようやく納得してくれたところで、竜郎は上に向かって指をさした。
「それじゃあ、外に出ましょうか。
父さん達が今の説明を聞いている間に他の皆にも連絡しておいたから、今はこの建物の前で仲間たちが揃って待っていてくれています。なんで少し急ぎましょう」
竜郎を先頭に歩き始め、皆を引き連れて部屋の隅にまでやってくると、壁にあったボタンを押した。
すると天井の一部がガコンと音を立てて円形状に外れ、下へとゆっくり降りてくる。
「ここは地下室で、安全に転移できるように作った転移部屋として使っています。
今からあれに乗って、俺達の拠点の一階中心部に上がります」
竜郎の説明を聞きながら、全員で降りてきた天井の一部に乗り込む。
そこに刻まれたカルディナの金の彫刻に目を奪われていると、直ぐに一階にたどり着く。
「部屋も沢山あまってるから、こっちで寝泊りするときはここの拠点を使ってね。
この中なら安心安全だから」
「皆に顔合わせして、レベリングをパパッと済ませたら城の内部を案内しますね」
「えっと、竜郎くん。城って言ったかい?」
「ええ、ここは通称カルディナ城と呼んでいます。理由は外に出て全体を見れば分かるかと。
あと他にもジャンヌ城と、よう──奈々城もありますから、またおいおい紹介してきますね」
「ここ以外にも拠点があるのね」
「はい。ちなみにここはカサピスティという国内で、俺達が魔物退治をしたお礼に王様から直々に貰った広大な土地の奥地に建てられています」
そんなこともしていたのかと目を丸くしながらも、竜水晶で作られている壁や床に視線を奪われ竜郎たちの後に続いていく。
リアが作った豪華な意匠のこらされた玄関扉の前にたどり着くと、竜郎はイシュタルの特殊な真竜ならではのスキルを介して翻訳する魔道具を両親たちに渡していく。
独立した完全な翻訳魔道具の製作は意外と難しいらしく、まだまだ作ることに成功していないのだ。
それを起動して、こちらの言語も分かるようにしてから扉に手をかけ、愛衣と一緒に左右の扉を同時に押していく。
完全に開かれると、そこには砂浜と、その先に広がる広大な海。
そして竜郎たちを支えてくれた仲間たちが勢ぞろいして、出迎えてくれた。
「「皆、ただいま!」」
竜郎と愛衣が同時にそう言うと、口々におかえりなさいといった言葉が返ってきた。
そして皆を代表して、明らかに普通の人ではないと見て分かる人間が二人、玄関の前で立っている竜郎たちの前にやってきた。
「そちらの方々が、主様と奥方様のご両親──ということでよろしいですか?」
「ああ、そうだ。ちゃんと、俺達の望んだ世界に帰ることが出来た。ウリエルや爺やも、そして皆もありがとう」
「いえいえ、我々に気遣いは御無用でございますよ。タツロウ様」
最初に話しかけきて、竜郎にウリエルと呼ばれた女性は、背丈が170センチほどで、絹糸のように細く滑らかな金髪は腰まで伸び、色白で透き通った肌に美しい顔。
意志の強そうな青い瞳。背中に天使の六翼を生やし、深紅のドレスに身を包んだ天魔に分類される天族。
次に気遣いは無用と言った爺や──と、竜郎が呼んだ男性は、白馬の体に人の上半身が生えたケンタウロスといった形態。
大きさは馬の四足のヒズメから人間の頭の先までで二メートル半程。
頭の上には光の輪が浮いており、ロマンスグレーという言葉が似合う白髭と白髪の渋い男性で、筋肉質な体の背には大きな天使の翼が二対四枚生えていた。
二人ともどう見ても特殊メイクやコスプレの類ではない本物で、竜郎と愛衣の両親はその姿に圧倒されていた。
「お初にお目にかかります。私は主様に生み出された眷属で、ウリエルと申します。
何かお困りのことがありましたら、どうぞお気軽にお声掛けくださいませ」
「私はジャンヌ様に生み出されました眷属で、ジーヤと申します。
カルディナ城、ジャンヌ城などの管理責任者をしていますので、建物内の事で分からないことがありましたら、直ぐに御声掛けくださいませ」
「「「「は、はあ……よろしくおねがいします……」」」」
何を言っているのか理解はしたが、四人とも空返事になってしまう。
何故なら目の前の二人以上に、白金に輝く三本の角を生やし透き通るような美しい蒼鱗を持つ、全長500メートル級の東洋龍が、空を飛んでいる事に気が付いたからだ。
「ソータ! ただいまー!」
「オカエリ、ニーナ。アルジ タチノ セカイハ、タノシカッタカ?」
「うん! いっぱい遊んできたよー」
「ソレハヨカッタ」
今まで竜郎の背中にへばりついて大人しくしていたニーナが、東洋龍──蒼太に気が付くと元の六メートルサイズに戻って、地球での生活のお土産話を始めだした。
両親はニーナの本当の大きさにも驚きつつ、トリケラトプスに似た顔の東洋龍が喋った事にさらに驚いていた。
他にも翼の生えた人間や、足が木の根っこのようになっている少女。
上半身と頭だけしかないのに、その大きさは2.5メートルもある鬼武者の幽霊。
一メートルほどの幼竜たちが四体。巨大で美しく煌めく鉱物で出来た、動く竜の骨格標本の様なゴーレム。
プラチナ色の毛皮の超巨大な豆柴の幼犬──にみえる子狼。
仮面ラ○ダーのような、ライダースーツ状の皮膚と黄金の外殻を持った人型昆虫。
外見は三つ又に別れたヘビのような下半身を持った、四つ首の巨大鳥。
十メートル級で六つの緑の目を持つ巨大カバ。金のタテガミや灰銀色の毛皮で覆われた人狼。
全長四十センチのプラチナ色の毛玉のようにフワフワの長い毛を持つ、ウサギ小人。
小さな子パンダを十体以上周りに侍らせているシロクマ──等々、竜郎や愛衣に驚かないでくれと言われていても、驚かずにはいられない存在のオンパレードだった。
「えっと、こちらの皆さんが、竜郎たちがお世話になった人たち? ってことでいいのよね?」
「ああ、一部は手間ばっかりかけさせられている様な気もするが……」
「キュッキュー!」「キュュー……」「「ギャギャゥー」」
何だかよくないことを言われたと敏感に察した四体の幼竜達が、心外だとばかりに一匹を除き、抗議の声を上げる。
この子達も竜郎が生み出した子供の竜達で、内二体は全身エメラルドグリーンの美しい光沢のある鱗で覆われていて、背中には体格に見合った両翼。額からはユニコーンの様なプラチナ色の一角。
顔立ちはまだまだ幼く、あどけない表情で竜の威厳の欠片も見せない真ん丸お目目が可愛らしいオス竜。
また他の二体は山吹色の鱗に覆われ、四足歩行するティラノサウルスといった形態をしたメス竜。
こちらはティラノサウルスと違い、左右のこめかみ辺りから「く」の字に生えたプラチナ色の2本の角。
後ろ足よりも大きく太い、トカゲのものと似た形をした前足が特徴的だ。
この子達は最近体が少し成長し元気が有り余っているのか、悪戯したり勝手にどっかに行ってしまったりと、色々とやんちゃ盛りで困っていたりする。
そんな幼竜達に、はいはいと苦笑を返しながら竜郎はそれぞれ順番に紹介していった。
その途中、一人の長身の男性が両親たちの前に来た時、竜郎はジト目でその人物を見つめる。
「おい、ランスロット。なんでそっちの姿なんだ。
どうせ直ぐにばれるんだから、元の姿で挨拶しろって」
「むぅ……。最初のイメージが肝心だというのに、マスターは分かっていないのだ」
「分かってなくて結構だ。だいたい普段のままのランスロットだってかわ──カッコいいぞ」
「今、可愛いって言おうとしたのだ! ひどいぞ、マスター!」
文句を言いながらも、195センチ程と高身長で、細身ながら筋肉もしっかりと付いた20代後半くらいの外見年齢をした怜悧で涼しげな印象を抱く美丈夫が光に包まれた──かと思えば、幼稚園児くらいの男の子がその場に立っていた。
「我はマスターに生み出された眷属が一体。ランスロットなのだ!」
彼はランスロットとアーサー王伝説の英雄の名前を付けられた存在の一人で、分類的には妖精種が一番近い。
可愛らしい外見を少し気にしていたのもあって、竜郎たちの両親にはカッコいい姿を見せておこうと、スキルによって一時的に大人の姿になっていたのだ。
そんな事がありながらも、竜郎は一気に全員の紹介を終えた。
「すまん。竜郎。多すぎて覚えきれなかったんだが……」
「今はそれでいいよ、父さん。段々と接するうちに名前を覚えていってくれれば大丈夫だから」
「そうそう。うちの子達で名前を聞かれて怒るよーな、小っちゃい心の持ち主はいないからね!」
「ああでも、せめて人間と魔物の区別だけは、つくようにしておいて欲しいけどな」
「確かこの世界では、システムがインストールされていれば、どんな見た目をしていても人間で、インストールされていなければ、どんな見た目でも魔物や獣に分類されるんだっけ?」
「大体そんな感じの認識で大丈夫だよ、お父さん。
例えば、あそこにいる女の子──名前は千子ちゃんって言うんだけど、あの子は見た目は変わってないけど、つい最近まで魔物に分類されてたんだよ」
愛衣が手で指し示すと、私ですよと分かるようにぺこりと会釈する千子。
彼女は真っ赤な血のような紅の瞳をもち、黒と赤の露出の少ないドレスを纏った165センチほどの身長の少女にしか見えないが、数日前まではシステムがインストールされていない、言葉を完全に理解する事の出来ない魔物だった。
けれど最終決戦を終えた時にシステムがインストールされ人間に至り、今や真祖系吸血鬼の魔王種に分類される人間となったのだ。
その事を聞いた両親たちは、ギョッとして改めて千子を見つめれば、彼女は恥ずかしそうに「そないに見つめられると照れるわぁ」と、京都弁に近いニュアンスの異世界言語でしゃべっていた。
その反応からしても、どう見ても最初から人間だったとしか思えない。
「見ただけじゃあ、魔物か人間か区別がつかないな」
「大概は話せるか、言葉を完全に理解できているかで判断できるかと。
ただし人間の言葉を真似る魔物なんていうのもいるので、決して町の外では知らない人や魔物に不用心に近づかない方が賢明かと思います」
「なるほどな。心得ておくよ、リア」
仁はそう言ってリアの頭をわしわし撫でた。髪がぐちゃぐちゃになっていたが、少し彼女は嬉しそうだった。
「それじゃあ顔合わせも軽く済ませた所で、とにかく自衛できるように手っ取り早くレベルを上げていきましょうか。
お昼ごはんまでには、レベル1000くらいになって貰う予定です」
「「「「レベル1000っ!?」」」」
レベル1の状態から、いきなりレベル1000まであげると言われ、声を上げるのを我慢していた両親たちは、今度こそ驚きに声をあげたのであった。
次回、第12話は1月13日(日)更新です。




