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食の革命児  作者: 亜掛千夜
第二章 イシュタル帰還
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第10話 親たちの初期スキル

 両親たちが妙な感覚を覚え思わず目を瞑っていると、直ぐにそれは収まる。

 しっかりと床に足を付けている安心感に安堵の声を漏らしながら、ゆっくりと目を開けた。


 すると目に入った光景に両親たちは絶句した。



「なんだこりゃ……」



 思わず仁がそう漏らした場所は全面、竜水晶で作られた美しい空間で、壁はプリズム加工されており天井の明かりをキラキラと反射して非常に豪華。

 床も魔法陣風の模様が細かくあしらわれており、想像だにしなかった光景に四人は固まった。


 そんな両親たちの前に竜郎は出て、手をぱんぱんと叩いて正気に戻させた。



「驚くのもいいですが、これから父さん達にはシステムがインストールされると思います。

 ですがとりあえず、その場でじっとしていてください。

 初期スキルによっては、思わぬ行動で新しいスキルを覚えてしまう可能性もあるので」

「えーと、確か初めに覚えているスキル以外に新しく覚えちゃうと、《天衣無縫》って称号が取れなくなっちゃうんだったわよね?」

「そーだよ、美波さん。せっかくなら、それを覚えといたほうが後々お得になるからね」



 このことについては、事前に竜郎からも説明されていた。

 その時の説明で提示された最初の選択肢は、自分たちで少しずつレベルを上げていくのがいいか。それとも竜郎の恩恵を借りて、数分で一気にレベルを上げてしまうかの二つ。


 そこで両親たちが選んだのは後者だった。

 理由としては、危険な事をせずに手っ取り早くこの世界で自衛できる手段を手に入れておきたいからだそう。


 となると竜郎たち経験者がお勧めする強化プランとしては、《天衣無縫》という称号をまず取得する事だった。

 これは純粋に全ステータスを底上げすると共に、レベル50以降で変化するクラスの特殊クラスが選択できるようになるという恩恵まである。


 往々にして普通にレベル50に至ってクラスチェンジするよりも強力なクラスになっているので、ぜひとも両親たちには取ってほしいと考えたのだ。

 その取得方法はといえば、初期に与えられたスキルだけでレベル50に至る──というだけ。

 けれどそれは普通は難しく、レベルを上げるために何かしらの訓練をしたりすれば勝手に新しいスキルを覚えたりもしてしまうし、初期スキルだけでレベルを上げるのも厳しい。

 なので事前に知っていても難易度は意外と高いのだ。


 実際に竜郎や愛衣は、知らなかったというのもあったが、来て早々にスキルを取得したので、その称号は手に入れる機会を逃していたりする。



《規定値内の知的生命体を感知いたしました。》

《これよりシステムをインストールいたします。》



「「うわっ」」「「ひゃっ」」

「どうやら始まったようだな」



 そう言ったイシュタルの視線の先には、脳内に直接流されるアナウンスに思わず周囲をキョロキョロと見渡す両親たちの姿があった。

 竜郎や愛衣は当時の自分たちを思い出し、懐かしさを感じながら微笑ましげに見守った。



《システムのインストールを完了いたしました。》

《これよりシステムを起動します。》



 暫く待っているとそんなアナウンスが両親たちの脳内に響き、以下のようなシステムの項目が表示された。



 --------------------------------

 ステータス

 所持金:0

 パーティ

 スキル

 ヘルプ

 --------------------------------



「これがシステムか。ほんとにゲームみたいだ。

 ただ、この歳になって所持金がゼロって表示されるのは辛いなぁ」

「ははっ、それもそうですね。あとでこちらのお金を支給しますよ、正和さん」

「助かるよ、竜郎君」

「ねーねー、そんな事より早くお母さんたちのスキルが何なのか見せて見せて!」

「それは良いけど、どうすればいいの? 愛衣」

「えっとねー。まずは私たちのパーティに加入して~」



 同じパーティ内の人間なら、本人の許可があれば他人が閲覧できるようになっている。

 なのでまずは竜郎と愛衣を中心にして構成されているパーティに、両親たちに加入してもらった。

 それから各々のステータスを一気に確認していった。



 --------------------------------

 名前:ジン・ハサミ

 クラス:-

 レベル:1


 気力:50

 魔力:50


 筋力:10

 耐久力:10

 速力:5

 魔法力:10

 魔法抵抗力:10

 魔法制御力:5


 ◆取得スキル◆

 《卵収最懐玉》

 ◆システムスキル◆

 《アイテムボックス+4》《マップ機能+4》

 残存スキルポイント:3

 ◆称号◆

 なし

 --------------------------------

 --------------------------------

 名前:ミナミ・ハサミ

 クラス:-

 レベル:1


 気力:50

 魔力:50


 筋力:10

 耐久力:10

 速力:5

 魔法力:10

 魔法抵抗力:10

 魔法制御力:5


 ◆取得スキル◆

 《念動極適性》

 ◆システムスキル◆

 《アイテムボックス+4》《マップ機能+4》

 残存スキルポイント:3

 ◆称号◆

 なし

 --------------------------------

 --------------------------------

 名前:マサカズ・ヤシキ

 クラス:-

 レベル:1


 気力:50

 魔力:50


 筋力:10

 耐久力:10

 速力:5

 魔法力:10

 魔法抵抗力:10

 魔法制御力:5


 ◆取得スキル◆

 《種子編集》

 ◆システムスキル◆

 《アイテムボックス+4》《マップ機能+4》

 残存スキルポイント:3

 ◆称号◆

 なし

 --------------------------------

 --------------------------------

 名前:ミスズ・ヤシキ

 クラス:-

 レベル:1


 気力:50

 魔力:50


 筋力:10

 耐久力:10

 速力:5

 魔法力:10

 魔法抵抗力:10

 魔法制御力:5


 ◆取得スキル◆

 《射極適性》

 ◆システムスキル◆

 《アイテムボックス+4》《マップ機能+4》

 残存スキルポイント:3

 ◆称号◆

 なし

 --------------------------------



「これが私たちのステータスって奴なのね。

 それでいくと《念動極適性》っていうのが、私の初期スキルってやつになるの? 竜郎」

「そうだよ母さん。それぞれ、自分のスキルのところをタップすれば、そのスキルの説明が出るから確認してみてくれ。

 だがくれぐれもまだ使おうとしないでくれよ。連動して新しいスキルを覚えるかもしれないから。

 ちなみに《アイテムボックス》と《マップ機能》は、俺の称号効果で覚えているだけだから正和さん達も気にしないでくださいね」



 竜郎のその言葉に頷きながら、両親たちはそれぞれ自分のスキルなんかを確認していった。



「それにしても、みんな知らないスキルばっかだねぇ。お母さんのは《射極適性》ってやつだけど、えーと──」



 --------------------------------------

 スキル名:射極適性

 レアリティ:20+2

 タイプ:パッシブスキル

 効果:《弓術》《投擲》《射魔法》に、極めて高い適性を得る。

    《弓術》《投擲》《射魔法》のレベルを常時プラス1。

    ただし上記以外のスキル適性が減少。

 --------------------------------------



「このスキルだけを見ると、物理職の後衛ってところですね。

 けれど射出する魔法──《射魔法》にも適性があるので、弓術と投擲のどちらかと一緒に使うだけで威力が簡単に増強できますし、かなり良いスキルな気がします」

「説明ありがとう、リアちゃん。にしても《弓術》かぁ。

 今の愛衣よりもっと若かった頃、親に落ち着きがないから弓道でもやったらどうだって言われて、一時期やってたことがあったっけ」

「初耳だよ、お母さん」

「だって全然、的に当たらなかったんだもん。直ぐにやめちゃったのよ。

 でもスパンって的に当てられたら、気持ちいいんだろうなぁとは今でも思っていたの」

「もしかしたら、その辺をくみ取って、神達が融通してくれたのかもしれませんね」

「そこまで融通してくれるのかい? 何だか凄いなあ」

「そーゆーお父さんは、またみょうちくりんなスキルだね。《種子編集》?」



 --------------------------------------

 スキル名:種子編集

 レアリティ:20+1

 タイプ:アクティブスキル

 効果:植物の種子を編集し、好きなように改良できる。

    《樹魔法》のレベルを常時プラス1。

    ただし樹魔法以外のスキル適性が減少。

 --------------------------------------



「植物の種子を編集して改良……? 病気や寒さに強くしたりできるのかな?」

「それも可能ですし、繁殖力や光合成に必要な要素も光ではなく闇などに変えたりなど、多種多様な変質が可能みたいですよ、マサカズさん」

「そうなのかい、リアちゃん。いやぁ、何だか色々できるみたいだし面白そうだなぁ。

 将来退職したら家庭菜園でも始めようかと思ってたんだけど、このスキルがあれば気楽に出来そうだ」

「あら、お父さん、そんなこと考えてたの?」

「愛衣が結婚して孫でも出来たら、お祖父ちゃんが作った野菜だよーって食べて貰いたかったんだよ」



 妻の美鈴も知らなかったようで、少し照れくさそうに語る正和に意外そうな目を向けて微笑んでいた。



「俺の場合は闇魔法で無理やり品種改良とかしてたんですけど、これは闇魔法も無く簡単にできそうですね。

 これを自衛や戦闘に使うなら、事前に改良した種をいくつか《アイテムボックス》に仕込んでおいて、状況に合わせて樹魔法で使うっていう方法が取れそうです」

「ってことは、お父さんは樹魔法使いになるって感じみたいだね。

 地球の植物とかこっちの世界の植物も合わせれば、すっごい種類も豊富だし、なんだか使い方によってはかなり強いだろーね」



 娘にそう言われて、正和はちょっと嬉しそうにしていた。

 その姿に薄く笑みを浮かべながら、竜郎は次に母親──美波のスキルについて調べてみた。



 --------------------------------------

 スキル名:念動極適性

 レアリティ:20+2

 タイプ:パッシブスキル

 効果:全念動系スキルに、極めて高い適性を得る。

    ただし念動系スキル以外の適性は減少。

    取得済みの全念動系スキルのレベルを常時プラス1。

 --------------------------------------



「母さんのは、ごりごりのサイキッカーって感じだな」

「これは竜力が手に入ったら《竜念動》も簡単に覚えられるみたいなので、普通の《念動》と合わせて使えば異次元の力が発揮できそうですよ」

「なんだかよくわからないけど……ねえ竜郎、一応これって魔法使いってことになるの?」

「そのはずだ。ちょっと特殊な魔法使いって所じゃないか?」



 美波の場合は家で天照が《竜念動》を使っている所を見て、日ごろから便利そうだなと思っていたようだ。

 それを感じ取って神々が便宜を図ってくれたのだろう。



「これって空も飛べるのよね? 天照ちゃんの杖はこれで浮かんでいられるんでしょ?」

「ええそうですよ、お母さん。けど今それを使おうとすると、《念動》を直ぐに覚えちゃうので、まだ試さないでくださいね」

「──はっ、危ないわ。今まさに試そうとしてた……」

「おいおい……」



 リアがすぐさま止めてくれたおかげで、《天衣無縫》の称号を覚える条件を保ったままで済んだ美波は、息子のジト目を避けるように夫のスキルに話題を移動させた。



「仁君のは一番分からないのよね。早く確認してみましょ!」

「……まあ、そうだな。えーと、父さんのは──」



 --------------------------------------

 スキル名:卵収最懐玉

 レアリティ:ユニーク

 タイプ:アクティブスキル

 効果:このスキルで生み出した玉の中に魔卵を入れ孵化させると、どんなに強力な魔物も最上級に懐いた状態になる。

    またそれと同時に最上級のテイム契約が結ばれた状態にもなる。

    ※竜種、神種、半神種は対象外


    ただし、このスキルの保持者は他の全スキルの適性が著しく低下。

    さらにこの方法以外でのテイムも不可能。

    現在このスキルで生み出せる玉の数は3つ。(スキルポイントによる拡張で増加が可能)

    一度使ったら、その魔物が死ぬまでやり直しは絶対にできない。

    孵化した魔物は玉の中に収納でき、好きな時に出し入れが可能。

 --------------------------------------



「また父さんのは、えらくピーキーなスキルだな……。ちょっと面白そうだが」

「えーと、つまりどういうことだ?」

「つまりですね。お父さんのスキルは竜種や非常に特殊な魔物以外なら、魔卵さえ手に入れられれば、どんな魔物でも仲間にできるって事ですね」

「おー! そりゃいいや。昔、竜郎が見てたポ○モンみたいなもんだな」



 仁は竜郎がもっと小さかった頃にテレビで一緒にそのアニメを見た時、その世界を楽しそうだな。一回でいいから似た様な事をやってみたいな、色んなモンスターと戯れて癒されたいな──などと、心のどこかで思っていたらしい。

 それを全ての魔物を司る神──怪神が読み取って、このスキルを与えてくれたのだ。



「しかもこれって竜種とかは対象外って書いてあるけど、魔王種は書かれてないよね。

 なら魔王種なら魔卵からって条件付きだけど、テイムできちゃうって事だよね」

「あー……、その愛衣ちゃんが言う魔王種ってのは強いのか?」

「魔王種ってのは、その魔物の種の中で最上位種族をさす言葉なんだが、正直そこいらの魔物じゃまず勝てないくらい強いし、それぞれ特殊なスキルを持ってるんだ。

 だから父さんのそのスキルで魔王種を一体でもテイムすれば、そいつに守って貰うだけで大概の戦闘は楽に片付くはずだ」

「でも仁さんのスキルは、他のスキルの適性が凄く下がるって書いてあるけど、大丈夫なのかい?」

「大丈夫だと思いますよ、マサカズさん。

 自分でスキルが使えなくても、最上級のテイマーなら魔物のスキルを借りたりする事も出来ます。

 なので色々な魔物をそのスキルでテイムしておけば、その数だけ可能性が広がるともいえますので」



 リアのその言葉に、心配そうにしていた正和もそれなら大丈夫だねと安心してくれた。

 さらに仁は、説明を聞いたことでなんだか凄そうなスキルだと改めて認識し、一人興奮しはじめたのであった。



「よっしゃ! それじゃあ、竜郎。魔王種のピカ○ュウ捕まえに行こうぜ!」

「いねーよ!」

次回、第11話は1月11日(金)更新です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後のところめちゃ笑ったw
[一言] 魔王種のヒ⚪︎カチュウ… 6V個体か?
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