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レベル4 たたかう


「ひ、ひい……」


「おぼえてやがれ!」


 定型句をのたまいつつ逃げ去ってゆくゴブリンたち。


「ふう……」


 どうやら俺はもう、ゴブリンくらいなら相手にできる力を持っているらしい。


 しかも複数!


 これでもう、あんなスライム相手にしか威張いばれないようなヤツらにイジメられることもない。


 うう……何百年もキツい修行を続けてきてよかったなぁ。


 と、俺はけっこうマジで感激していた。


「あのぉ……」


「え?」


 そんなとき。


 声をかけられて振り返ると、若くてピチピチなメスのスライムがぷるるん♡とゆれて立っている。


「助けていただいて、ありがとうございます」


 そうだ。


 このコを助けるために戦ってたんだっけ。


「……」


 じゃあさ。


 そのお礼にちょっとくらい『プニプニ』させてもらってもいいんじゃないだろうか?


 なにせこっちは命がけで戦ったんだから。


 ゲヘヘ……



 などとよこしまなことが脳裏のうりをよぎるが、



「え、あ、その……いやぁ(照)」


「?」



 いかん……


 メスを目の前にするとほおがカッと熱くなって、動きがヘンになる。


 何百年もの山ごもりは俺の戦闘能力を少なくともゴブリン以上にはアップさせたようだったが、女への耐性たいせいはだだ下がりに下げてしまったようだ。


 なんか身体が火照ほてってけてしまいそう……



 ふにゃああ



「きゃあ!けないでください」


「え?」


 ヤバ。一瞬バブリーな感じに変形してた。


 毒持ってるみたいに思われたらヤダからちゃんと『凸っ』てしてねーと。


 俺は、アタマのとんがり部分をササっと手櫛てぐしで直し、身だしなみを整えた。


「だいじょうぶですか?もしかしてどこかケガしたんじゃあ……」


「いや、そんなことは……ない、デス」


「顔も真っ赤ですし」


 俺のキョドった感じを不審げにのぞきこんでくるメス。


 うう……近い。


 若いメスのええ香りするわぁ。


 マジでプニプニしてー。



 ……よし俺!


 勇気を出して『プニプニさせてください』って言うんだ!!


 このコ、さっき俺に助けられたワケだし、きっと頼んだら断れねえって!(ゲス)


 あとは言うだけ。


 言うだけだ!



「まったく。若い女の子がこんなところでひとり歩きは危ないよ。ちょっかいかけられるのも当然だ」


「す、すいません……」


「しょうがないな。このままじゃ危ないし、よかったらおくっていくよ」


「えっ、いいんですか?」


「遠慮することないさ。同じスライムじゃないか」


「ありがとうございます!」



 あれ? プニプニは?



 ◇



 なんかカッコつけてしまったので、けっきょく『プニプニさせてくれ』とは言いずらい感じになってしまった。


 世に中には『おくりオオカミ』というヤリくちがあるらしいけれど、しょせんスライムの俺はオオカミになんてなれそうもない。


 はあ……


 まったく。


 このカッコつけるクセを直さねえと、俺は半永久的に童貞かもしれねーな……



「いけない。もう行かないと日が暮れてしまうわ。おじさん、行きましょ」


 しかも!


 おじさん、ときたもんだ。


 そりゃさ。


 たしかに俺はもう若くはねえよ。


 山で何百年も修行してきたんだから、老人と言っても過言ではあるまい。


 でも、いくらなんでも『おじさん』って……


 さっきあんなに一生懸命戦ったんだから、ちょっとくらい男として見てくれてもイイんじゃねーの?



「あのさ。俺の名前はスラだから」


「え?あ、はい。聞いてないですけど、わかりました」


「キミは?」


「はい?」


「キミの名は?」


「あ、私ですか?ミカって言います。おじさんに教えても仕方がないと思いますけど」


「……」


 なんか、助けたのにあんま好感度あがってなくね?



「つーかさ……キミ。今いくつ?」


「16です」


 まいりました!


 おじさん、でけっこうでございます。


「じゃあ早く帰らないと。お父さんとお母さん、心配してるだろう」


「私のお父さんとお母さんはもう初級冒険者たちの経験値に……」


「……そうか」


 ちょっとムカっとしたので、もうこの女放っておこうかとも思い始めていたところだったのだけれど、そーゆー話を聞くとやっぱり同調してしまうのが俺たちスライムだ。


「あ、でも。家には妹がいるんです。だからきっと心配しているわ」


 妹、か。


 俺はスラ子の顔を思い出した。


「で、キミ……じゃなくて、ミカちゃんの家はどこなんだ?」


「ちゃんづけって、キモっ……じゃなくて、私の家ですか?」


 一瞬『キモっ』って聞こえたような気がしたけど、俺は自分の心を守るために気のせいだと考えることにした。


 さっき助けてもらったばかりの相手に、そんなヒドいこと言うわけないよね!


「私の家は、スライ村ってところにあります」


「なるほどスライ村か……って、ええ!?」


「どーしました?スライムが豆鉄砲喰らったような顔してますけど」


 どうもこうもない。


 スライ村は、俺のふるさとの名前だった。

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