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大好きなお兄ちゃんに復讐します  作者: さんまの刺身
第一章
9/17

誕生

私達はお兄ちゃんの部屋を探し回って、ついに最後の一番上の階にある部屋にたどり着きました。

途中で王様の部屋も見つけましたが、それよりも多い護衛が居てここがそうなんだと確信しました。

丁度扉が開いていたので好都合です。

そのまま部屋の中へするりと入りました。


お兄ちゃんっ!

お兄ちゃんです!

お兄ちゃんが居ました!

やっと会えました。

ずっと寂しかったんですよ?


「誰だっ!?」


っ!?

見つかったんですか?

一人のおじさんが私たちの方を見て叫びました。

透明化が解除されたんですか?

いえ、おじさん以外は誰一人私達の方を見ていません。

ということは、おじさんは何らかのスキルで見破ったってことでしょうか。

大変です。

おじさんがこっちを睨みつけながら、真っすぐ歩いてきます。

逃げなきゃ!

扉の方に向かって走り出すと、またおじさんが叫びました。


「おい!扉を閉じろ!」


っ!

それはまずいです。

扉以外からは外に出られません。

全力で走り出しましたが、無駄に広い部屋のせいで扉までまだ5メートルほどあります。

間に合ってください!


ばたん。


終わりました。

どうやら他の人達も異変に気付いたようで、一気に警戒した空気に変わりました。

逃げ道は、なさそうですね。

ごめんなさいリリちゃん。

こんなくだらないことに巻き込んで。

あなただけは絶対に無事に返して見せます!


「……リリちゃん。私が注意を引いてる間に扉から逃げて」

「っ!やだ!ノエルお姉ちゃんはどうなるの!?そんなの絶対にや!」

「お願い!言う事を聞いて!」

「ノエルお姉ちゃんは何にも分かってない!」

「分かってる!でも今はそんな場合じゃないの!お願いだからいう事を聞いて」

「やだったらやだ!」


言う事を聞いてくれないリリちゃんに歯噛みしてしまいます。

このままじゃどちらも殺されてしまうのに!

確かに嬉しかったですよ?

危険な所にも一緒に行ってくれるって言ってくれた時は。

ですが、もしリリちゃんになにかあったら、悔やんでも悔やみきれません!

それにっ!

この世界には、私を心配してくれる人なんていませんが、リリちゃんには大切に思ってくれる人たちがいるじゃないですかっ!

リリちゃんはみんなにとって宝物なんです!

そんな子を私なんかの為に死なせるわけにいきませんっ!


「リリちゃん、私を信じてくれる?」

「今のノエルお姉ちゃんは信じられない!」

「大丈夫。さっきは私が慌てて気が動転してたの」

「今度は違う?」

「うん、作戦を言うからよく聞いてね。まず、リリちゃんを扉の外に出す。扉から出たリリちゃんは、大急ぎでララさんの所へ行ってこれを伝えてくれる?」

「っ!それじゃ、ノエルお姉ちゃんが危ない!透明化できないんだよ?」

「大丈夫。私、こう見えて結構強いんだよ?」

「そんなの無茶だよ、ララさんのところまで何日もかかっちゃうんだよ!?」

「大丈夫、多分この辺に居ると思う。ララさんはああ見えて心配性だから」

「ゔー、分かった!すぐに連れてくる!それで助けるからっ!」


ふー、やっと納得してくれました。

嘘をついたことに罪悪感でいっぱいになりましたが、こうでもしなきゃリリちゃんは離れてくれないと思いました。

本当はララさんは来てませんし、私だって戦えるはずがありません。

強い眼差しで見つめるリリちゃんを、思わずぎゅーっと抱きしめてしまいました。

このぬくもりを感じるのはこれで最後かもしれない。

そう思うと、抱きしめずにはいられませんでした。

リリちゃんも何かを感じ取ったのでしょう。

先ほどとは打って変わって不安な表情を浮かべています。

駄目ですね。

これではリリちゃんを安心させてあげられません。

むりやり笑顔を作るとリリちゃんに向かって行ってらっしゃいと言いました。

そっと手を放して送り出すと、うんと頷いた後扉の方へ向かっていきました。


さて、これからが本番です。

私の姿がどんどんと現れていくと、騎士たちが驚愕の表情を浮かべました。

そりゃそうですよね。

いきなり何もない空間から人が現れたんですもん。

私だったらびっくりして漏らしちゃうかもしれません。


はぁ、つい余計なことを考えてしまいます。

やっぱり怖いんでしょうか。

まぁそれもそうですよね。

死ぬかもしれないんですから。

目を閉じて深呼吸をします。

はーふー、リリちゃんは扉まで着いたでしょうか?

目を開けてリリちゃんの方を見ようと、体を回転させてる途中に目に入ってしまいました。

今まさに剣を投げつけようとしている騎士が。

それも私ではなく。


っ!?

リリちゃんっ!!


「やめてっ!」


びゅん。


「きゃっ!」


剣はリリちゃんの腕を切り裂いて、扉に刺さりました。

その痛みで、リリちゃんは倒れこむように気を失いました。


リリ、ちゃん?

うそ、うそですよね?

なんで、手が無いんですか?

なんで、血を流しているんですか?

なんで、なんで。



この時、私の中で何かが崩れ落ちた感じがしました。



ふふっ。

リリちゃん、すぐに治しますからね?

少し待っていてください。

あら?

どうやら透明化が解けてしまったみたいですね。

険しい表情を浮かべた騎士たちがこちらを見つめています。


ふふっ。

ふふふっ。

絶対に許しませんよ?

リリちゃんをこんな目に合わせたんですから。

絶対にね。





世界は目撃しました。

今この瞬間に、生み出された者を。


絶対なる者の誕生を。






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