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大好きなお兄ちゃんに復讐します  作者: さんまの刺身
第一章
8/17

潜入

「適性は残念だったけど、あまり気にしないでね?ほとんどの人は何かしらの属性魔法に適性があるんだけど、もしかしたら稀に生まれる特異体質かもしれないし」

「特異体質?なんですかそれ?」

「特異体質って言うのはね、10年に一度とかそれくらいのレベルで生まれる特殊な体質を持った人のことなの。記録によれば、その体質は様々なの」

「どんなのがあるの?」

「そうね、例えば勇者って呼ばれてる体質は、身体能力が凄い上がったり聖剣を唯一持つ事が出来たりするわ」

「勇者?」

「えぇ、確か違う世界から召喚された人だったかしら。昔、帝国との戦争で大活躍したそうよ」

「召喚者……もしかして私も」

「ん?何か言ったかしら?」

「ううん」


あの人たちが言っていた召喚者。

ララさんが言った違う世界。

やっぱり私は、別の世界に来てしまったんですか。

もう、帰れないんですか。

だとしたら、お兄ちゃんが来てなかったらもう二度と会えないんですか。

そんなの嫌です!

リリちゃんと3人で暮らすんです!


ですが、次に放たれた言葉に大きな衝撃を受けました。


「そういえばつい先日、新しく召喚が行われたっていう話を耳にしたわ」


っ!?

お兄ちゃん!


「確か、男の子と女の子が一人ずつだったかしら」


……絶対にお兄ちゃんだ。

あの女もいる。

今頃どんな目に合っていることか。

絶対に救い出して見せる!


「ララさん!召喚がされた場所ってどこですかっ!?」

「もしかして、あなたたちの旅の目的ってその子達?」

「うん!お兄ちゃんを探してるの!」

「なるほどね、それじゃもしかして、あなたも召喚者かしら?」


少し面白そうに尋ねてきて話すのを少しだけ躊躇いましたが、リリちゃんの前です。

あんな風になってまで、自分のことを話してくれたんです。

私が隠し事をするなんて、リリちゃんに失礼です!


「そうだと……思う。いつの間にか森の中にいたから」

「そう、それじゃその事は誰にも言っちゃ駄目だからね?」

「どうして?」

「何があるか分からないもの。これは私たち3人の秘密よ?」

「うん、分かった。でも騎士団の人達にはばれてるかも」

「そうだったわね、だから今のうちに王城へ向かいなさい。それと、ノエルちゃんは服を変えてらっしゃい。そんな格好だと目立つでしょ。私のおさがり上げるから」

「うん、ララさん。ありがとう」

「リリちゃんもいい?」

「はい」


その後、ララさんのおうちで久しぶりのお風呂を堪能した私達は、その日の夜のうちに馬車に乗って王都へ出発しました。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「おぉー!」


一晩かけて着いた場所には、とてつもなく大きなお城が建っていました。

感動して思わず声を唸らせていると、リリちゃんが隣に立って言いました。


「ノエルお姉ちゃん、気を付けてね」

「ん?なんで?」

「ここには騎士団がたくさんいるの。だからここは、敵の本拠地なんだよ」

「敵の……本拠地」


冷汗が背筋をつーっと伝っていきました。

本拠地という事は、私を知っている騎士といつ会うかもわからないってことですね。

私の顔はもう知られています。

けど、まだあそこに居た騎士たちは戻ってきてないはずです。

なら、動くには今しかありません。

さて、どうしたらお兄ちゃんを確認することが出来るでしょうか?

ララさんが言うには、召喚者はこの世界の人より高い能力を持っていてすごい大切に扱われるそうです。

なのでたくさんの人達が護衛に付いていて、めったにお城の外に出ず、見ることすら難しいことが分かりました。

これではお兄ちゃんか確認することが出来ません。

いったいどうしたら。


作戦を練っていると、服の裾がくいっと引っ張られました。

そっちを見ると、キラキラした目で私を見つめてました。


「どうしたの?」


そう聞くと、自慢げに胸を逸らしました。

何が言いたいんでしょう?

とっても可愛いですけどしゃべってくれないと何か分かりませんよ?


「もうー、なーに?」


すると今度は指で自分を指差し始めました。

……もしかして、私を手伝うってことでしょうか。

でも、私の顔を知った騎士に見つかってしまったら危険な目に合ってしまうかもしれないです。


「リリちゃんごめんね。りりちゃんはまだ小さいでしょ?作戦は夜にやるから多分眠くなっちゃう。だから宿屋でお留守番でもいい?」


いい作戦が思い浮かばない以上、多少危険でも忍び込むしかありません。

夜、護衛が少ない時間帯にお兄ちゃんがいる部屋に忍び込みます。

ふんの悪い賭けではありますが、これで行くしかないでしょう。

ですが、失敗すると最悪死が待っています。

お兄ちゃんの為にやることですから怖くはありません。

でもリリちゃんにとっては、お兄ちゃんは見たこともない赤の他人です。

お兄ちゃんの為にリリちゃんを危険な目に合わせるなんて、絶対に出来ません!


「……ノエルお姉ちゃん。ノエルお姉ちゃんが考えてることは全部分かるよ。私を危険な目に合わせたくないんでしょ?でもね、私はどうなるの?ノエルお姉ちゃんが居なくなっちゃったら、私にはもう居場所なんて無いんだよ!ずっと一緒に居るって約束してくれたよね!もっと私を頼ってよ!私だってノエルお姉ちゃんの役に立ちたい!」


……私は何も分かってなかったんですね。

リリちゃんの涙を見て、やっと気づくことが出来ました。

リリちゃんにはもう家族がいない、この意味をちゃんと考えるべきでした。

ずっと一緒に居るなんて言っておきながらこのざまですか。

これではリリちゃんを振り回してるだけです。


「ごめんねリリちゃんっ」


リリちゃんにせめてちゃんと謝ろうとすると、口を手で覆われてしまいました。

驚いてリリちゃんを見ると、悪戯が決まったかのように舌をペロッと出しました。


「ごめんねはやだ。私はありがとうの方が嬉しいよ?」


だから役に立ったら褒めて?と言うリリちゃんに、敵わないなぁと思いつつも嬉しくなった私は、頭を撫でながらこう言いました。


「リリちゃん?私と一緒に来てくれる?」

「うんっ!」


心底嬉しそうに声を弾ませながら答えたリリちゃんは、世界で一番可愛く見えました。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「それでリリちゃん。何かお城に忍び込む方法はあったりする?」

「うん!あるよ!」

「ほんと?何か教えてくれる?」

「びっくりしないでね?実はね、私……」


う、嘘っ!?

そんなことある!?


リリちゃんが教えてくれた事は、耳を疑うような物でした。

これなら行ける!

リリちゃんのおかげで作戦は上手くいきそうです。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「行くよリリちゃん」

「うん」


夜、誰もが寝静まった頃に作戦は決行しました。

お城の門番は二人居ましたが、目の前を堂々と通り過ぎていきます。

数分で無事にお城の中へ侵入することが出来ました。


「すごいねリリちゃん」

「うん、気付かれなかったね」


あの後、リリちゃんが話してくれたのは自分の特殊スキルでした。

なんとリリちゃんは、透明化できるスキルを持ってるみたいです!

それも触れている人になら透明化の能力を共有できるらしいので、私たちは今手を繋いでゆっくりとお城の中を歩いています。

ですが、物音を立てると気付かれてしまう可能性があるみたいなので忍び足です。


でもこうして手を繋いで歩いていると、私の使えなささに嫌気が差しますね。

リリちゃんはこんなにも凄いスキルを持ってるのに、私は何も出来なくて悔しいです。

せめてリリちゃんの疲れを癒すスキルとかが欲しいのですが、スキルはいつどこで手に入れられるか、全く分かってないそうです。

リリちゃんもある日突然使えたと言っていたので、私もいつか使えるようになれたらいいです。


「お兄ちゃんの部屋はどこかなぁ?」

「召喚者は特別待遇でもてなすって言ってたから、多分日当たりの良い部屋だと思うよ?」

「そうだよねぇ、手当たり次第に行くしかないか」


このお城にはいくつ部屋があるか分かりませんが、とんでもない数の部屋がありそうです。

それをしらみつぶしに行くとなると、結構時間かかりそうですね。

まぁどうせ見えないですし、ゆっくり行きますか。



この時私達は油断をしていました。

何が起こるか分からないって分かってたはずなのに。

その油断が命取りになることを知らずに……



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