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大好きなお兄ちゃんに復讐します  作者: さんまの刺身
第一章
7/17

適性

出発して数日がたちました。

最初はリリちゃんの家にあった食料とかお金とかがあったので、結構順調にいっていたのですが、日が経つにつれ、ある問題がのしかかってきました。


「リリちゃん、お金、どうしようか?」

「うーーん。分かんない」

「そうだよねぇ~。そうだ、リリちゃん。何か旅をしながらお金を稼げる仕事とかないかな?」

「旅をしながら……何か物を売るっていう仕事はあるよ?商人って言うの」


売るものは無いけどねと、苦笑いしながらリリちゃんが言いました。

確かに今の私達には売るものなんて無いですね。

何か、何か無いですか。

このままだと私たちは飢え死にです。

それに、もう何日も歩いているのでリリちゃんの体はもう限界です。

そろそろベッドで休ませてあげたいのですがね。


夜は壁にもたれかかって二人で寝ているのですが、やっぱり危ないですよね。

いつどんな人が通るかもわかりませんし。

やっぱり暗くても森を歩いて、果物とかを探すべきでしょうか。

果物、果物……あっ!クマさん!


「リリちゃん!リリちゃん!森にクマとか動物ってよくいる?」

「う、うん。森にはいろんな動物が居るってママが言ってたよ?」


それだ!

動物をやっつけたら、お肉が食べれます!


「リリちゃん!動物を食べれたら、一気にご飯問題が解決だよ!」

「だ、駄目だよ!森は魔物がたくさんいるんだよ?知ってるでしょ?」

「魔物?なーにそれ?」

「ノエルお姉ちゃん、魔物知らないの?」


魔物って何でしょう?

魔ってついているわけですし、悪い人のことでしょうか?


リリちゃん曰く、魔物は動物が魔素?というものを浴びておかしくなっちゃった個体のことを言うらしいです。

魔素というのも何だか分かりませんが、どうやら悪い空気みたいな物みたいです。

それを動物さん達が吸っちゃうと、凶暴な動物さんが生まれるという事ですね。


「魔物は力が強いの?」

「それもあるけど、魔物は魔法を使ってくるの」

「魔法!?」

「うん。魔物それぞれに固有魔法って言うのを持ってて、それが凄い強力で一般人は絶対に勝てないっていわれてるの」

「魔法か~、一回でいいから使ってみたいな」

「えっ!?ノエルお姉ちゃん使えないのっ!?」

「う、うん。私の住んでたところは使える人なんて居なかったよ?」

「そうなんだ。パパとママは、みんな何かしら適正を持ってるって言ってたよ?」

「ほんと!?魔法が使えるの!?」


魔法!

小さい頃見てたプ〇キュアの子達が使ってた奴ですよねっ!

ビームとか出して敵をやっつけてたあれですよねっ!

絶対使ってみたいです!

リリちゃんの言うとおりだったら、私にも適正があるはずです。

でもどうやって適正というものが分かるんでしょうか?


「リリちゃん、適正ってどうやったら分かるの?」

「えっと、冒険者ギルドってところで見てもらえるよ?」

「冒険者ギルド?それってどこにあるか分かる?」

「うん!今から行く?」


可愛いものを見る目で見られて少し恥ずかしくなったので、リリちゃんの手を取って歩き出すと、クスクスと笑い声が聞こえて「そっちじゃないよ?」と言われてさらに恥ずかしいことになってしまいました。



「ここが冒険者ギルドだよ」


リリちゃんの案内で着いた建物は、とっても古くてぼろい外観の建物でした。

それにおじさん達の笑い声が外まで響いています。


「ほんとにここなの?」


若干竦み気味に聞くと、そうだよと返事が返ってきました。

そのまま臆することなく足を進めるリリちゃんは、私が立ち止まっていることに気付くと、


「大丈夫だよ。みんないい人達ばかりだから」


と、声をかけてくれました。

それでも少し躊躇っていると、突然腕を組んできました。

びっくりして横を見ると、心配なしという風に胸を張るリリちゃんがこっちを見てて、心が落ち着いていくのが分かりました。

これではどっちがお姉ちゃんなのか分かりませんね。

でも、おかげで恐怖心はなくなりました。

それに、ここで立ち止まったら魔法が使えませんから。

行こうと頷くと、しっかりとした頷きが返ってきました。

扉を開けて、魔法デビューです!


ギギギとうなり声を挙げながら扉を開くと、たくさんの視線が集まってくるのがよく分かりました。

好奇の視線や値踏みの視線など、今だけは手に取るように分かりました。

ごくりと唾を飲み込みます。

するとそれに気付いたのか、腕を組む力が強くなりました。

バクバクいっていた心臓も収まり、次第に落ち着きを取り戻します。


緊張した空気の中、最初に声を上げたのはリリちゃんでした。

カウンターにいる綺麗なお姉さんの方へ歩み寄ると、私が適性を知りたいことや旅をしながらお金を稼ぐ方法を全部話してくれました。

このままじゃお姉ちゃん失格です。

もしこれで嫌われちゃったら。

そう考えると、違う震えが止まりません。

リリちゃんに嫌われるなんて絶対にやだ!

そう思い、勇気を出して歩き出そうとした途端、


「久しぶりだなーリリちゃん」

「元気にしてた?」

「その女の子は誰じゃ?」


と、口々に話しかけ始めました。

え?とあっけに思っていると、おじいちゃんが私に話しかけてきました。


「ようこそベルン支部へ、お前さんはここは初めてだろう?そこら辺に座っといておくれ」


そう言うと、軽快な足取りで戻っていきました。

リリちゃんの方を見るとたくさんの人達と談笑していて、私は今までのリリちゃんのこと何にも知らないんだなと、少しだけもやもやとしました。

すると、突然リリちゃんがこっちを見たかと思うと、こっちおいでと手招きしてきました。

少しだけ嬉しくなり恐る恐る向かうと、今までリリちゃんと話していた人達が一斉にこっちを向きました。

ひっと驚くと、驚かせてごめんねと美人なお姉さんが話しかけてきました。


「こんにちは。お名前は?」

「えっと、乃絵瑠です。お姉さんは?」

「私はララよ。よろしくねノエルちゃん」


にこって笑ってなでなでしてくれたララさんは、とても綺麗で思わず見惚れちゃいました。

少し顔が熱くなっていると、いきなりリリちゃんが腕を組んできてぷくっとほっぺを膨らませています。

不思議に思い、首を傾げると


「ごめんね取っちゃって」


と、ララさんがリリちゃんに向かって謝っています。

リリちゃんはううんと首を振った後、私に思いっきり抱き着いてきました。

よしよしと頭を撫でるとふにゃ~と甘えるようにすりすりしてきてました。

か、可愛いっ!可愛すぎます!

こんなの見せられたら、もっと好きになっちゃうに決まってるじゃないですかっ!

ぎゅーっと思いっきり抱きしめて、たくさんリリちゃん成分を堪能したところで、ララさんが困ったように話しかけてきました。


「そろそろ良い?」


その言葉にびくっと反応したリリちゃんは、恥ずかしそうに私の後ろへ隠れてしまいました。

あらあらなんて言いながら歩いて来るララさんは、何か肉食獣みたいな目をしていて、少し怖くてあとずさってしまいました。

それを見たからか分かりませんが、残念そうな顔をした後、私たちの目的について切り出してきました。


「それで、まずノエルちゃんの適正検査を受けたいだったわね」

「う、うん」

「じゃあ、こっちにいらっしゃい」


そう言って歩き出したララさんを追いかけると、待っていたのは巨大な水晶でした。

どうやらこの水晶に触れると、水晶の色が光って適性が分かるらしいです。

早速やってみますっ!


あれ?

光りませんね?

もう一回。


やっぱり光りません。

故障ですかね。

二人の方を見ると、あちゃーといった顔で顔を見合わせてました。

不安になり、どうしたの?と尋ねてみると、苦笑いして二人とも私に向きました。

実はと話してくれた内容に、ショックを隠せませんでした。

なんと、私にはほとんど適性が無いみたいです。

一応、少しだけ回復魔法に適性があるみたいですが、属性魔法は使えないだろうって言われました。

これでは、リリちゃんを守れません。

その事実に呆然としていると、二人がよしよしとなでなでしてくれましたが、それを気に出来ないほどショックでした。


「大丈夫よ、魔法だけが凄いってわけじゃないからね?」

「そうだよ!私だって少ししか光魔法使えないからっ!」


ぴたっとララさんがリリちゃんの口を一瞬で押さえましたが、少し遅くて聞こえてしまいました。

リリちゃんが、魔法を使えるという事を。

がくっと膝をついた私はこう思いました。


世界は悲しみで溢れてるんだなぁと。






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