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大好きなお兄ちゃんに復讐します  作者: さんまの刺身
第一章
3/17

異世界!?

「えっ!?なにここ?」


目が覚めると、私の目には木々が生い茂りたくさんの花が生えている光景が入ってきました。

意味が分からないです!

さっきまで遊園地にいたはずなのに、いきなり森に来ちゃうなんて。

確か、あの女がお兄ちゃんと楽しそうにしゃべりながら私のところに来て、何かお兄ちゃんが変な事を言ってて……っ、あの女の人!

あの女がお兄ちゃんを誑かしたんだ!


……今はそんな事を考えても意味がない事くらい分かってます。

だけど……だけど……もし二度と、お兄ちゃんに会えなかったら。

そんなことを考えると、あの女が顔に浮かんでくるんです。

憎くて仕方がないんです。

なので私は、頭の中から振り払うように森を歩いていきます。勿論出口なんてものは分かりませんが、今は何も考えたくありません。

それにいつまでもこんなところに居るわけにはいきませんからね。


 それから日が落ちるまで歩き続けましたが、一向に道さえも見つかりません。

これはかなりまずいかもしれません。

お腹も空いてきましたし、歩き疲れたのか少し眠いです。


 はぁ、ほんとにどうしてこんなことになってしまったんでしょう。

お兄ちゃんに会いたいです。

うー、お兄ちゃん……


「グルゥゥ」


っ!?

ま、まずいです!

私の目の前には、大きい熊さんが口を開けて私を睨んでいます。

ど、どうしたらいいんですか?

がぶっ!


「あ”ぁ、いー痛い!!」


う、腕が……私の腕がこの熊の口の中に……

ひ、ひどい!

絶対に後悔させてやる!


うりゃー!


バサっ。


「へ?」


え?

...今何が起きたんですか?

わ、私はあの熊さんを殴ったんですよ?

普通効くわけないですし、余計怒らせるだけだと思うんです。

な、なのにどうして熊さんの下半身が無くなっているのですか?

確かに熊さんの顔には手が届かないので、足を殴ったのですが……


今私の目の前には、何が起きたか分からないといった表情を浮かべる熊さんの上半身が倒れています。

いったい何が起きたのか考えてみましょう。

まず、私は腕を熊さんに食べられてしまいました。

その後、私はとても痛かったので熊さんを殺してやりたいと思いました。

なので、熊さんを殴りました。

……今考えたら、私本当にお馬鹿ですね。

すぐに逃げれば良かったものを。

まぁ、それはもう気にしないことにします。

問題は殴ったときですね。

なぜ、熊さんの下半身が無くなってしまったのか。


まさか……って、こんなことを考えている場合ではありません!

帰る方法を見つけるほうが先決でしょう!

だって、早くお兄ちゃんに会いたいですし。

はぁ、早く道が見つかるとい……


「あなた、大丈夫!?」

「っ!?だ、誰!?」

「私だよ、私って言っても分かるわけないかー」

「女の人?き、綺麗。はっ!まさか私を誘拐した犯人?」

「誘拐!?誘拐なんてしてないよ!というかどうしてこんなところにいるのか、もしかして分からない?」

「……うん。気づいたらこんなところに居て」

「うーん、そっか。まぁ、とりあえず自己紹介するね。私の名前はアルナ。一応冒険者やってる」

「冒険者?」

「うん、そうだよ」

「冒険者って何?」

「え?」


唖然とした表情を浮かべるアルナさん。


「え、えーと冒険者を知らないのかな?」

「うん」

「……嘘、冒険者をこの年で知らないなんて事ある?まさか……」


ぼそっとアルナさんが何か言いましたが、私には聞き取れませんでした。

それから、私の方に向いてこう聞いてきました。


「あなた……自分が誰だかわかる?名前とか出身地とか……」

「わかるよ、名前は秋風乃絵瑠。東京生まれの東京育ちだよ」

「??アキカゼノエル?とうきょう?」

「そうだよ」

「うーん、名前はともかくそんな地名聞いたことが無いわよ?」

「え?東京知らないの?東京だよと・う・きょ・う!」

「えぇ、聞いたことがないわ」


東京を知らないなんてことがあるんですか?

本当にびっくりです。

もしかしてすごく田舎とか、外国っていう線も……


「ここってなんという町なの?」

「ここはベルンって言うわ。温泉がたくさんある町なのよ」

「ベルン……か。日本じゃなさそう。国の名前はなんて言うの?」

「アースガル王国よ。……もしかして、知らないのかしら?」

「うん、知らない」


……アースガル王国なんて聞いたことがないです。

今中学校でいろいろな国の名前を学習しているのですが、王国がつく国はそれほど多くなくて大体覚えています。

これでも私は、成績がいいほうなんです。

カンボジア王国とかオランダ王国、トンガ王国なんてのもあったと思いますがアースガル王国という国は無かった筈です。

どういうことなんでしょう?


「……うーん、ここの国名を知らないとなるといよいよ本当っぽいわね。ねぇノエルちゃん、あなたもしかしたら……いや、言うべきではないわね」

「ん?なに?教えて」

「……あなたが傷つくだけよ」

「いい、大丈夫。教えて」

「そう、わかったわ。いい?……あなたは人体実験の被害者かもしれない」

「人体実験?なにそれ?」

「どこかの山奥でやっているみたいなのだけれど、村の子供たちを攫って記憶をいじったりしているらしいわ。」

「記憶をいじる?何のために?」

「ごめんなさい、そこまでは知らないわ。けれど最近、そいつらのアジトに騎士たちが襲撃したみたいでね」

「それでどうなったの?」

「アジトは壊滅。団員は何人かに逃げられたみたいなのだけれど、そこにいた被害者達は鎖に繋がれたままで無事だったそうよ」

「それは良かったね。それでどうして私が被害者だと思ったの?」

「……実はね、被害者の中に記憶を失くしてしまった少女がいたのよ。」

「その子が私だと?」

「もしかしたらの話ね、しかもその子は騎士たちが野営中にいなくなってしまったみたいなのよ」

「ふーん、けど私じゃないよ。私にはお兄ちゃんと暮らしてた大切な思い出があるから!」


アルナさんは記憶を失くした少女と言いました。

だけど私には、お兄ちゃんと暮らした記憶が鮮明に残っています。

なので私ではありません。

それをアルナさんに伝えると、衝撃の事実が返って来ました。


「ごめんなさい、さっきの話には続きがあるわ……その少女は別の人間の記憶を植え付けられていたのよ」

「え?」

「それは……」

「やめて!それ以上言わないで!!」

「ノエルと言う少女のお兄さんの記憶だったわ」


う、うそ……

おにいちゃんがにせもの?


違います!

そんな事があるはずがありません!

この女が適当に嘘をついているだけです。

私がお兄ちゃんを疑うなんて、そんな事があっていいはずがありません。

お兄ちゃんを疑うなんて……


ふざけるな、

おにいちゃんをうたがわせたこと、

こうかいさせてやる。

ぜったいに、

ゆるさない。

おまえがあんなことをしゃべらなきゃ、

うたがうことなんてなかった。

くるしめてやる。

きずつけてやる。

うまれたことをこうかいするくらい、

ぐちゃぐちゃにころして「「ぎゅっ」」


「へ?」

「ノエルちゃん、そんなに怖い顔しないで?

もしかしたら違うっていう可能性もあるでしょう?」

「っ!!」

「あなたにとってお兄さんは何よりも大切な人なんでしょ?

それとも、初対面の人の話し一つで疑えてしまうような人なの?」

「ち、違う!」

「なら、信じなさい。そして真実を確かめにいくのよ。

いいわね?」

「う、うん」


それから私は、アルナさんと一緒に騎士団がいるところに向かいました。


「団長、ただいま帰還しました!」

「あぁ、ご苦労。それで……女の子を見つけられたようだね」


アルナさんが団長と呼んだ男の人は、まさに美形と呼べるようなイケメンの人でした。


「見つかって良かった。もう大丈夫だから安心しろ」


こう言って、頭をがしがしと撫でてくれました。

少しびくっとしましたが、心が包まれていくような安心感を感じました。

そしたら、ほっぺにたくさんの水滴がこぼれ落ちて行きました。


「ひっくひっく」

「よしよし、もう大丈夫だからな」


泣き出してしまった私は、つい、おじさんに抱きついてしまいました。

困ったかのようなおじさんは、アルナさんと顔を見合わせた後、2人でぎゅーっと抱きしめてくれました。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



その後、どれくらい時間が経ったか分かりませんが、いつのまにか眠ってしまったみたいで知らないベッドに寝かされていました。


「んー、ここはどこ?」


するとちょうど扉が開いて、アルナさんがコップを持って入ってきました。


「あら、目が覚めたのね!気分はどうかしら?」

「アルナさん!えっと、いい感じだよ?ここはどこ?」

「そう、良かったわ。ここは騎士団の宿泊場所よ。あの後、ノエルちゃん眠っちゃったから」


くすくすと少し笑われて、ほっぺが熱くなっていくのが分かりました。

顔を下に向けていると、ふいに立ち上がったアルナさんはパンっと手を叩きました。

不思議に思い、首を傾げると


「ご飯にしようか?お腹減ったでしょう?」


そういえば今日は朝から何も食べてないんだったと思うと、突然ギュルルと音が響き渡りました。

はっと顔を上げてアルナさんを見ると、少し顔を赤くして顔を背けていました。

可愛いっ!

ちょっとからかってあげようかなと思い、口を開こうとした途端、私のお腹からギュルルルーとさっきよりも盛大に音が鳴り響きました。

思わずアルナさんと顔を見合わせると、ふふっと笑っていて、私も笑みが溢れました。

その後、騎士団のごはん係の人が呼びにくるまで、二人して笑いが止まることはありませんでした。

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