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大好きなお兄ちゃんに復讐します  作者: さんまの刺身
第一章
2/17

復讐の決意

「お兄ちゃん、最初は何乗る~?」

「うーん、最初は何にしようか。乃絵瑠の乗りたいやつでいいよ?」


今年は遊園地にやってきました。

実は初めての遊園地なので、とてもドキドキしています。

まぁそのドキドキよりも、お兄ちゃんと二人きりというほうが圧倒的にドキドキしますけどね。

けど、遊園地がこの年になって初めてってなかなかいないと思います。

行けてなかった理由は、何より両親の死です。

私が物心つく前に、事故で死んじゃったそうです。

ぶっちゃけ、顔すらも覚えていないのであまり悲しくはないですけどね。


両親が死んで当時18歳だったお兄ちゃんは、大学進学を諦め就職することを決めたそうです。

一人なら貯金を崩せば大学くらいは行けたはずなのに……

お兄ちゃんは言いませんでしたが、十中八九私がいたからだと思っています。

小学校、中学校、高校とかなりのお金がかかるのは間違いないですからね。

今になって思うととても心苦しい気もしますが、過ぎたことを嘆いてもしかたがありません。

これからお兄ちゃんに恩返ししていければいいなと思っています。


今は最初に乗りたいやつを考えることにしましょう。

遊園地をテレビで特集しているとき、大抵ジェットコースターが一番の人気乗り物として登場すると思います。

なので最初に乗るのはジェットコースターが良いです。


「私、ジェットコースターっていうやつに乗りたい!」

「……うっ、まじか。ほ、本当にジェットコースターで良いの?かなり怖いと思うよ?」


私が言うと、お兄ちゃんの顔が目に見えて青くなりました。

どうしたのでしょうか?


「どうしたの?」

「い、いやー。べ、別にジェットコースターでも良いんだけど、動きが激しいからさ。まだ朝早いし……」


もしかしてジェットコースターが嫌いなのでしょうか?

ですが、どうしても最初に乗りたいのです。

初遊園地なので記念に写真を撮りたいのです。

特集によると落ちている瞬間にカメラで撮ってくれるみたいです。

お兄ちゃんと2ショットです!


「うー、だめ?」

「だ、駄目じゃないよ。駄目じゃないんだけど……ほら、乃絵瑠って遊園地初めてでしょ?だからもう少し子供向けのやつに乗ってみたらどうかなって思ったんだけど……」


どうやら私のことを考えて言ってくれてたみたいですね。

やっぱりお兄ちゃんは優しいです。

ですが!ここはジェットコースターを優先すべきだと勘が言っています。

引き下がるわけにはいきません。


「お願い、お兄ちゃん!」


困った表情をするお兄ちゃん。

私は、目をうるうるさせながら上目遣いでお兄ちゃんにお願いしました。

あざといと思われても仕方ありませんが、お兄ちゃんはこれに弱いことを長年の経験から理解しています。

ですから押します。押して押して押しまくります!


「しょうがないなぁ、一回だけだよ?」

「うんっ!ありがとお兄ちゃんっ」


やはりお兄ちゃんはチョロいです。

私がこの戦法で頼み事をすると、確実に聞いてくれます。

これは私を愛してるという、確固たる証拠と成り得るでしょう。


ということで、最初はジェットコースターです。

果たしてどれほど怖い乗り物なのでしょうか。

とても楽しみです。


それにしてもかなり長い行列ができています。

お兄ちゃんはこれのことも考慮していたのでしょうか?

だとしたら少し申し訳ないと思います。

まだ開園直後だというのに1時間半待ち……

耐えられるでしょうか?

いえ、お兄ちゃんがいるんだから何時間でも余裕ですね。

ですがそのお兄ちゃんは、電話が来たからと言って私から離れていきました。


……かれこれ30分。

いつまでたっても帰ってきません。


もしかして何か事件に巻き込まれてしまったのでしょうか。

お兄ちゃんは巻き込まれ体質ですから、可能性としては高いです。

あるいは逆ナン?

あんな可愛い顔をしていてるのに、しぐさはかっこいいんですから注目を集めない訳がありません。

それとも……

考えだしたらきりがありません。

なので後ろに人に少しの間、順番を空けておいてもらおうと思います。


「すみません」

「ん?なんですか?」

「実は……兄が電話に行ったまま30分も戻ってこないのです。少し心配なので探しに行きたいのですが、列を離れるわけにはいきません。なので、できれば順番を空けておいていただきたいのですが……いいでしょうか?」

「はぁ、別に構いませんよ」


話の通じる人で良かったです。

空けておいてくれるという話を信じて、少し探しに行こうと思います。

もしかしたら迷っているという線もなくはないですからね。

どこに向かったのでしょうか。

電話するだけですからあまりそう遠くへは行ってないと思いますが……

まずここの周辺を探すことにします。


探すこと30分。

どこにもいません。

どこに行ってしまったのでしょうか?

本当に迷子になってしまったとか……

どうしたらいいのでしょうか?


はっ!

そうです!携帯を朝、お兄ちゃんに渡されていたのをすっかり忘れていました。

私の学校は携帯が使用禁止になっているので、今まで使ったことがありませんでしたから……

どうやら風紀が乱れるなどの理由で禁止になっているみたいです。

代わりに耳につけるタイプの無線機が支給されていて、それで連絡などをとっています。


ですが、今日みたいに外出をするときは特別に使用を許可されています。

もちろん携帯は持っていないので、学校が貸し出している携帯です。

ですがこれでは電話番号が端末に残ってしまうと思う人もいると思います。


そんなことはありません。

実は一日の終わりに緊急連絡先である学校以外全ての情報が自動的に消えてくれるんです。

これはこの学校が初めて開発に成功した特殊な携帯なんだそうです。

普通の携帯では、電話番号などを復元できると思います。

けれどこの携帯は、良く分かりませんがバックアップ機能を改造しているそうです。


なのでお兄ちゃんの番号が漏れる心配はありません。

もし漏れでもしたら……きっと大変なことになります。

なんたってお兄ちゃんは世界一かっこよくて、世界一優しくて、世界一妹を愛してますからね!


ここだけの話、鈴蘭中は女の子が好きな人がけっこういるんです。

その中で私はかなり人気らしいです。

住所を聞いてくる子もいますし、手紙や直接告白してくれる子もいます。

さらに友達の話を聞くと、私の私物を嗅いでうっとりしている子もいるとかなんとか……

と、とにかく、もしもそんな人達にお兄ちゃんの番号がばれてしまったら、きっと電話がひっきりなしに掛かってきて私のことを聞き出そうとする可能性があります。

その時もしかしたら、お兄ちゃんの優しい声を聞いて好きになってしまうかもしれません。

というか確実にそうなります。

そうなるとお兄ちゃんに迷惑がかかってしまうことになります。

それだけは絶対に避けなければいけません。

でもまぁ、消えるということは分かっているので安心ですが。


それはそうと、お兄ちゃんに早速電話をかけてみます。

プルルル……プルルル…………

8回くらい鳴った時にやっとお兄ちゃんは出てくれました。


「もしもしー、乃絵瑠ー?どうしたの?」

「お兄ちゃん、どこにいるのー?迷子になってたりしないよね?」

「ははは、迷子になんかならないよ。ちょっと知り合いを見つけたから、しゃべってたんだよ。ごめんね?今すぐ戻るから少し待っててくれる?」


どうやら知り合いが居たせいで遅くなったみたいですね。

心配して損しました。

私は先に列に戻っていることにします。


「すみません、見つかりました。ご迷惑をおかけして申し訳ないです」

「いえ。」


列に並んで待っていると、お兄ちゃんがやっと帰ってきました。

少し文句でも言ってあげたい気分です!


「遅いよー、お兄ちゃん!」

「ごめんごめん、おまたせ。あ、そうだ。この人は僕の彼女の結城 葵(ゆうき あおい)さんだよ。確か初めてだったよね」


え?

本当に女が一人、私のお兄ちゃんの横に立っています。

お兄ちゃんに言われて初めて気づきました。

何でしょう。

この女は。

何お兄ちゃんと楽しそうにしゃべっているのですか。

それに彼女だなんて。

今もこの女は、お兄ちゃんに気色悪い視線を送っているというのに。

こんな年中発情してそうな女がお兄ちゃんの彼女な訳がありません。

そう、きっと脅されているのです。

お兄ちゃんを雌狐から助け出さなければいけません。


「乃絵瑠?どうしたの?」


ですがどうしたらいいでしょうか。

私は無力です。

力は学校でも弱いほうですし、こういう女は男に媚びるのがうまいと聞きます。

私が引きはがそうとするとお兄ちゃんに嘘泣きをして、

「ひ、酷い。拓斗君、い、妹ちゃんが意地悪してくるのー!」

あぁ、気持ち悪い。

想像しただけで吐き気がします。

なんとか救う方法は無いでしょうか。


「おーい、乃絵瑠ー?」

「えーっと、乃絵瑠ちゃん?」


あぁ、あぁー、さっさと消えてください!

お兄ちゃんは私のものなんですから!

お前みたいな女は豚箱がお似合いなんです。

毎日毎日、発情してる豚同士で交尾でもしていればいい。


はやく消えて!

今すぐにお兄ちゃんの視界から失せて!


早く消えてよ。



「乃絵瑠!!」


っ!?


「お、お兄ちゃん?」

「何でそんなに葵さんの事を睨んでるんだ?失礼だろう」


え?


「ごめんね、葵さん。少しびっくりしちゃったみたいで、普段はとってもいい子だから仲良くしてほしいなー、なんて」

「もちろんよ、こんな可愛い子見たことないから私もびっくりしちゃった」

「ですよね?葵さんくらいの美人にも引けをとらないくらいだと、俺は思ってます」


なに?


「乃絵瑠?葵さん、友達とはぐれちゃったみたいだから、少し探すの手伝ってあげてもいいかな?」

「えー?いいわよ。携帯、家に忘れちゃった私が悪いんだし。それに、その辺をぶらぶらしてればいつか会えると思う」

「うーん、あっ、そうだ。良かったら俺たちと回りません?その間に見つかるかもしれないですし」

「えーっと、良いの?妹さん?」

「大丈夫ですよ。ねぇ?乃絵瑠?」


なんなの?


おにいちゃん……

なにをいってるの?


うそだよね?

おかしいよね?

ありえないよね?


ねぇ?

ねぇねぇ?


なんで?

なんでかおがあかいの?

どうしてうれしそうなの?



どれもこれもこの女のせい……

この女がお兄ちゃんを誑かしてるせい……

この女が遊園地に来ているせい……




この女がこの世に存在しているせい……



憎い……

殺す……

ころす……

ぜったいにころす……


絶対に殺してやる…………



っ!?

ここで私の体に異変が起こった。

とてつもない痛みが、頭に走ったのだ。

その痛みを拒絶するかのように、私の意識は闇に落ちた。





この時私たちがいる地面は、何かの紋章の形のように光輝いていたと、周りにいた人たちは言う。

それに男女3人組が巻き込まれたと。

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