女騎士
「第3騎士団が一人残らず消えた?」
「はい、最後に確認されたのは勇者と共に城の廊下を歩いていたところだと報告されています」
「……くっく、そうかそうか。じゃあ勇者の離反かな?」
「……いえ、恐らくそれはないかと」
「なぜかね?]
「……つい先日彼らの訓練風景を拝見する機会があったのですが、とても第3騎士団を二人だけで倒せるような実力には程遠かったと記憶しております」
「だが勇者が裏切ったという事実はもはや確実。これは調教のし直しかなー?くっくっく」
「……そう、かもしれませんね」
このゴミクズが。
思わず口に出そうになったのを押し留める。
この男、第1騎士団団長オルド・カーンは各国から英雄として称えられている。
と同時に、国に属していない村から人間を攫ってきて女は性欲の捌け口に、男は従順な労働奴隷として調教を行っている。
だが、この事実を国民は知っているにも関わらず称え続ける。
その訳は国王がこの行いを推奨していることだ。
国に属していない人間など、我々と同じ人間ではないと。
最早それは洗脳に近い。
この国はおかしい。
人の道から踏み外している。
吐き気がする。
私がなぜ洗脳されてないかだが、つい最近まで遠い村で暮らしていたからだ。
そこでは全員が家族で、全員が仲良しだった。
とても暖かいところだった。
……全員が皆殺しにされるまでは。
ある日、私が日課の散歩から帰ると火の手が上がり、知り合いの悲鳴が飛び交う地獄の光景が目に映った。
「っ!お母さんっ!お父さんっ!」
急いで駆け出した私は家に向かって一目散に駆け出した。
家に着いた私はその惨状をみて悟った。
もう何もかも手遅れということを。
家中に夥しいほどこびりつく血、血、血。
リビングの中央には折り重なっている真っ赤な何か。
「や、いやっ!!!」
なんで?
どうして?
お父さんとお母さんが何かしたの?
村のみんなが何かしたの!?
私がなにかしたのっ!?
「許さないっ!!絶対に許さないっ!」
殺してやる
絶対に殺してや……
「な、なっ!?」
外に出た私が目にした光景は、この世のものとは思えないほど悍ましい光景でした。
友達が、お母さんが、お姉さんが、男達に穢されている。
男達は下品な声を上げ、にたにた笑いながら犯している。
これが私の中で生涯にわたる覚悟が決まった瞬間だったと思います。
あいつら全員に復讐する。
それもただ復讐するだけじゃない。
この身がどうなろうと骨の髄まで地獄の苦しみを与えてやると。
お父さんとお母さんから授かった大切な名前、アリアの名に誓って。