奪還
「君は、正気か?騎士団を敵に回すような事を言っていいのか?」
「それは騎士団がまだ何かするつもりだって言いたいの?」
「そ、そういうわけじゃないんだが」
騎士さんは困ったように頭の後ろを掻きます。
ふふっ。
敵の心配もするなんて、本当に優しすぎませんか?
何だかほっこりして見ていると、突然笑い声が響き渡りました。
「ふっ、ふっはっはっはっ」
「だ、団長」
笑いを辞めた団長は気色悪い笑みを浮かべました。
「生け捕りだ。お前らっ、この女を生け捕りにしろっ!」
っ!?
私の能力を見ていなかったんですか?
いつでも殺せるんですよっ?
「どうしてって顔してますねぇ。そんなの一つしか理由はないでしょう?」
血走った目で私を凝視すると言いました。
「見た目が良くて素晴らしいスキルを持っている。こんな価値の高い女は他に居ないからですよっ!」
一人高笑いする団長に、騎士団の人は戸惑いを強めています。
それを感じた団長は、チッと舌打ちをするとさらに笑みを深めました。
「生け捕りに出来た奴には、この女をいくらでも好きにしていい権利をくれてやる」
犯したければ犯せと言う言葉に騎士達から動揺が浮かびました。
中には、私を見て唾を飲み込む人もいます。
安心しました。
どうやらほとんどの人が私を好きにしたいと思っているみたいなので。
全員遠慮なくやることが出来ます。
「悪いね嬢ちゃん、恨まないでくれ」
「団長の命令なんだし、仕方ないよな」
ふふっ。
何か言い訳をしてますけど、やろうとしてる事は外道と同じなんですからね。
こっちに向かってくる人だけをやりましょうか。
優しい人達を巻き込むのは可哀そうですからね。
手を向けてオーラを出しま……え?
出ません。
どんなに意識を集中させても、さっきみたいなオーラは出ません。
ど、どうしたら。
私が考えている間にも、外道達はこっちに向かってきます。
これじゃあ、リリちゃんを守れませんっ!
なんで、なんで出ないんですかっ!
「どうしたんです?さっきのスキルは使わないんですか?」
ニヤニヤしながら外道団長が話しかけてきます。
悔しくて俯くと、耳障りな笑い声が再び響き渡りました。
「くくっ、くっくっく。やはりそうですか?あなたのそのスキル、さっき目覚めたばかりなんでしょう?」
っ!?
なんでそれを?
「不思議でも何でもないですよ?あなた、そこの女の子が倒れるまで死を覚悟してるみたいな顔だったんですよ?なのに突然あんなスキルを使ったんです。そう思うのは当然でしょう?」
……私は今から犯されてしまうんですか。
お兄ちゃんに初めてを上げたいと思ってたのに、こんなところで知らない人たちに奪われてしまううんですか?
やだよ。
誰か助けて。
「おいっ!妹にそんなことをするなっ!俺は大切な客人なんだろう?そんな客人の身内にこんなことをしていいと思っているのかっ!?」
「くっくっく。あなたはもう我々の操り人形なんですよ。絶対に逆らえないし、歯向かえない」
とん。
お兄ちゃんの首を叩いて気を失わせた後、そのままどこかに運ばれて行きました。
「さぁ、最後の希望も消えたというところで、お楽しみタイムと行きましょうか」
「やっ、やめてっ!」
いやっ、いやですっ!
精一杯抵抗しますが、男複数の力に敵うはずもありません。
服が剥ぎ取られて行き、最後は下着だけとなりました。
「お願いっ、やめてください」
「悪いな、これも命令なんでな」
あぁ、最後の下着も取られてしまいました。
恥ずかしさと悲しさで、もう顔はぐちょぐちょです。
男のあれが私の中に入る、その瞬間でした。
「団長、俺はこっちの女の子でもいいですか?」
咄嗟にリリちゃんの方を向くと、意識を失った状態で服を脱がされ、丸裸の状態でした。
……リリちゃん。
絶対に許さない。
リリちゃんをこんな目に合わせて、挙句の果てに犯そうとするなんて。
殺してやる。
苦しめて殺してやるっ!!!!
「うわっ!」
「な、なんだ?」
あぁ、こういう事だったんですね。
私のこのスキルは復讐。
復讐したいと思わないと発動しないみたいですね。
ふふっ。
全員、殺してあげます。
「あ゛ぁ!!」
「ぐぁぁっ!」
最初はリリちゃんと私を犯そうとしたその物体を切り落としてあげました。
騎士達はうめき声をあげて痛みに悶えています。
次は、服を脱がした手を切り落としてあげましょう。
「い゛たいっ!助けてくれっ!」
「あぁぁぁぁ!」
ふふっ。
最後は二度とこんなことを考えられないように、脳を破壊してあげます。
ぶちゅ。
ぶちゅぶちゅ。
ぶちゅぶちゅぶちゅ。
「これが罪を犯した罰ですよ?」
「うっ」
私達を襲おうとしなかった騎士さん達は、みんながみんな、口に手を当てて吐き気をこらえています。
中でもひどいのは、さっきの優しい騎士さんです。
絶望したような表情を浮かべ、頭を抱えています。
なので教えてあげることにしました。
「優しい騎士さん」
「ひっ、なんだ?」
「怖がらなくても大丈夫。私達に危害を加えなければこんなことはしないからね?」
優しい騎士さんは私の言葉を聞いて、極限まで目を見開いた後に気を失いました。
では、そろそろ帰りましょうか。
お兄ちゃんもどこかへ行ってしまいましたし、眠くて死んでしまいそうです。
「うぅーん」
深呼吸をすると、体から何かが抜けていくような不思議な感覚に包まれました。
これが無かったら、私はどうなっていたんでしょうか。
確実に死んでいたでしょうし、リリちゃんも助けられませんでした。
それに犯されていたかもしれません。
今でもあれを思い出すだけで震えが止まりません。
それにリリちゃんも……
リリちゃんっ!
けがを忘れてましたっ!
腕を切り飛ばされたんです。
血も大量に出てますし……あれ?血が出てないですね?
どうしてでしょうか?
まぁいいです。
血が早めに止まっていたとするなら安心です。
ですが一応、適正でもある回復魔法を使ってみましょうか。
「えっと、んー!」
傷が治る感じでイメージします。
すると、手が緑色に光り始めました。
成功ですかっ!?
ですが、手が生えてくる気配がありません。
「治らないっ!」
傷口をよく見ても、血が止まっているだけです。
さっきと何ら変化がありません。
私には適性があるはずなのに。
適性?
そうです!
ララさんが言っていたではないですか。
少しだけしか適性が無いと。
少しの適正で腕が生やせるはずがないじゃないですか。
私はおバカですね。
「でも、もしリリちゃんが一生このままだったら……」
そんなことになったら、悔やんでも悔やみきれません。
絶対に腕を生やして見せます。
未だ眠ったままのリリちゃんの髪をそっと撫でて、額にチュッとキスをしました。
大好きだよ?
リリちゃん。