能力
さて、どうしましょうか。
リリちゃんの何倍も苦しめてあげなきゃいけませんからね。
リリちゃんは腕を切られちゃったんですから。
「こいつらを殺せ」
あら?
どうやら侵入者が女の子でも容赦しないみたいですね。
外道で助かります。
ですがお兄ちゃんが居るんですよね。
流石にあまり見せたくないですね。
今お兄ちゃんは、呆気にとられた顔で私を凝視しています。
ふふっ、とっても可愛いです。
「罪人に慈悲はいらん、さっさとやれ」
どうやら命令している人以外は、少し躊躇っているみたいですね。
うーん、出来れば躊躇わずに来てほしかったですね。
そうすれば、罪悪感も湧かないでしょうから。
「団長、流石にこんな女の子達を殺すのは違うかと……」
「そうか、残念だ。こいつも殺せ」
どうやらどうしようもない屑みたいですね。
それでこそやりがいがあるという物です。
するとそれを見ていたひとりの騎士が剣を持って、私に向かっていきます。
あの人ですね。
リリちゃんに剣を投げたのは。
なので人一倍苦しませてあげますよ?
ではまず手始めに
「待ってくれ!」
お兄ちゃん?
「その女の子は妹なんだ!酷いことはしないでほしいっ!」
「おや、勇者様の妹様でしたか。ですが申し訳ありません。この王城に侵入したとなると、間違いなく死刑とです。そのことが周知の事実となれば、我が国の民が納得することはないでしょう。罪人が身内にいる勇者など信じられない、そんな奴を戦争のリーダーになんかしておけないとね」
「それはっ……」
「もしかしたら反乱がおこってしまうかもしれませんね。そうなればどうなるか分かりますよね?」
「だがっ!」
「国としても対処せざるを得ないという事です」
「ぐっ!」
お兄ちゃんは国民を盾に脅されてるみたいですね。
まぁ、私を優先してほしかったと言う気持ちはありますが、優しいお兄ちゃんの事です。
そう答えると分かっていました。
でもこれで、騎士達を遠慮なく苦しませられます。
私たちは外道だと、お兄ちゃんに最確認させてくれたんですから。
ありがたい限りです。
「やれ」
「はっ」
さっきの騎士が再びこちらに向かってきます。
にやにやと気色悪い笑みを浮かべて歩いてます。
ふふっ。
ふふふふ。
私なんかが抗っても無駄だみたいな顔をしてますね。
確かに少し前の私なら勝ち目はなかったです。
ですがリリちゃんが腕を切られた時、私の中で何かが目覚めた感じがしたんです。
私の体が私のものじゃないみたいになって少し怖かったですが、何となくこう言われた気がしたんです。
復讐の始まりだ
と。
リリちゃんを傷つけた騎士に復讐したい。
私はその欲求に身を委ねました。
すると体からオーラみたいなのが出てきたんです。
直感で分かりました。
これで復讐できると。
「ごめんなさい?これも命令なんで」
楽しそうに笑いながら騎士は剣を取り出しました。
こいつにリリちゃんが傷つけられた。
そう思うと、強く復讐心に駆られます。
まずは、その足を使えなくしてあげましょう。
そうすれば、リリちゃんが起きた時に怖がることも無いですから。
手を向けてオーラを足にまとわりつかせます。
それでも足は止まりません。
どうやらこれだけじゃ駄目なようですね。
少しお願いしてみます。
お願いします!
足を動けなくしてください!
どくっ
すると、私の体から何か吸い取られたような感じがしました。
「うわっ!?」
悲鳴を上げる騎士を見ると、剣を持ったまま床に倒れ伏せていました。
足をさすりながら焦燥した表情を浮かべた騎士に、私は成功したことを確信しました。
「おい、大丈夫か?」
先ほど殺すのはおかしいと言っていた騎士が駆け寄ります。
彼は誰にでも優しい、とても優しい方なんでしょうね。
彼のような人を騎士とひとまとめにするつもりはありません。
見境なく復讐するような外道にはなるつもりはありませんから。
「ちっ、足が動かねぇ。くそ、そこの小娘っ!てめぇ、何かしやがっただろうっ!」
足が全く動かないと分かると、憤怒の表情を浮かべて私を睨みつけてきました。
「うん、私だよ?それがどうかしたの?」
「ふざけるなよ小娘、後で犯しまくって殺してやるからな!」
「出来るものならやってみて。……生きていられるなら」
「ああ゛?ごちゃごちゃうっせーんだよ!今すぐ直しやがれ!」
「うるさいから口を使えなくするね」
オーラを口元に持っていって、しゃべれなくなる姿を想像します。
この口のせいでリリちゃんが傷つくような事があれば許せませんからね。
ふふっ。
声が出ないことに驚いているみたいですね。
目を見開いて、口をパクパクさせています。
何とも滑稽ですね。
最後は命です。
リリちゃんを傷つけた罪。
その命を持って、償ってください。
「ぐがぁぁあっ!」
どうやら苦しめ方も選択できるみたいですね。
私は今、この騎士が今まで他人に与えてきた苦しみを何倍もにして、何日も受け続けて死んでくださいと念じました。
叫び声を上げ続けながら苦しむ様子に、どれだけの苦しみを他社に与えてきたのかが想像できます。
リリちゃん……痛かったでしょうに。
リリちゃん……私はちゃんと復讐できましたか?
眠ったままのリリちゃんの髪を撫でると、少し苦しげな表情だったのが安心したような表情に変わりました。
はぁ、とっても可愛いです。
リリちゃんの顔を見てほっこりしていると、声が聞こえてきました。
「お、お前は今、な、何をしたんだ!?」
さっきの優しい騎士さんです。
彼以外の人は皆、衝撃の出来事に絶句しています。
「足と口を使えなくしたの」
「なっ!」
「あと少しくらいで死んじゃうと思うよ?」
「……殺したのか?」
「うん、殺した」
「なぜだっ!?」
「なぜって、復讐のために決まってるよ?リリちゃんにこんなひどいことをしたのに、自分だけ何もされないなんてそんな甘くないんだよ」
「だがっ!」
尚も食い下がる騎士さんに嫌気が差した私はこう言い放ちました。
「リリちゃんとお兄ちゃんを傷つけた人には復讐をする。もし二人に何かあったら……覚悟してね?」